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マンション耐震偽装事件
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「あっ、あれでしょう」
早い時間からバンドがマドンナをガチで演奏しているワケを和泉が語った
「今日からあの曲をレパートリーに加えるらしく、お披露目 兼 練習をやっているんですよ。なかなかいいでしょう、あのリンダちゃんのボーカル」
それは練習には見えなかった。お金を取って聞かせてもいいプロのステージだった。
二人が今日の仕事について『あれには参った、これには笑った』をひとしきりしゃべった後に、
「ところで、今日の勉強会のテーマは何だっけ」と彰司は切り出した。
「そうそう、本題ですよね・・・」
手元のジョニーウォーカーのハイボールをクッと飲み、彰司の方を向いた。
「先週、テレビを見ていたら、京都にある割と大きな会社が倒産して、その記者会見をやっていたんですよ」
「あっそう、それは見てないな」
「テレビでは、決まりきったように年を取った社長ほか重役さんたちが『申し訳ありませんでした』って、頭を下げているんですよね。そして、完全に自分の息子や娘と同い年の新聞記者から、あれは何故だ、経営責任は誰がとるんだ、債権者に対してどう責任を取るんだ、なんてツメられていました」
「まあ、普通そうだな」
ここで佳奈子はおつまみのスライスされたソーセージを一切れフォークで取った。
「それで、私が思ったのが、ああ言う記者会見を融資した先からやられると、銀行はとたんに『たいへんだ、えらいことだ』って上ヘ下への騒ぎになるんですかね。
東郷さんはああ言う『倒産だ!会見だ!』は経験したことありませんか?あんな事態になったらどう対応したらいいんでしょう」
佳奈子はハイボールをここでまたひと口、クイッと飲んで彰司の顔を覗き込んだ。
「絶対あると思うんですよねぇ、私がこれから銀行で、それも融資業務をしていく過程で・・・」
「(・・・確かに起こりうることだ)」
彰司はそう思った。そして、残っていたハイネケンの残りを一気に飲みほした。トンと瓶をカウンターに置きそして一言いった
「経験は、ある」
遡ること十カ月前、一級建築士事務所が耐震設計を偽装するという事件が東京で起きた。
内容は、姉波(あねは)次郎と言う建築士が、中小ゼネコンがこの事務所に依頼する『建築確認済証』作成と当局への申請業務において、ビルの耐震強度を偽装し、震度五強の地震では倒壊の恐れがあるものを『耐震強度問題なし』として通過させていたというものである。
その耐震強度に問題のある設計図で、複数のマンションやビジネスホテルがすでに建設され、市民にも販売が完了していたことから全国的な事件となった。
「聞いたことがあるだろう」
「あー知ってる、このあいだの、あれでしょ」
「最初は、ウチの銀行の誰しもが『大変な事件が起きているな。あらら・・・』と思っていた程度だった」
「『最初は』という事は、うちに影響があったんですか?それは全く聞いてなかった」
「まぁ、普通、行内でこのような騒ぎがあっても、関わってくるのは本店審査部と担当の支店だから、西村に話が伝わってこなくて当然だ」
うんうんと佳奈子もうなずいた。
「ねぇ東郷さん、お腹すいているでしょう、何か食べない」
そう言って佳奈子はメニューに手を伸ばした(マスターすいません。パスタのボロネーゼと、季節の野菜フルフルピザをお願いしていいですか・・・)。
(・・・西村って、食事会の席じゃ、結構仕切るタイプの娘だな)彰司は苦笑した。
「あの事件で、ヒューダーって言うマンション開発・販売会社が売り出した神奈川のマンションが、当局の命令で確かものの見事に取り壊されませんでしたっけ」
早い時間からバンドがマドンナをガチで演奏しているワケを和泉が語った
「今日からあの曲をレパートリーに加えるらしく、お披露目 兼 練習をやっているんですよ。なかなかいいでしょう、あのリンダちゃんのボーカル」
それは練習には見えなかった。お金を取って聞かせてもいいプロのステージだった。
二人が今日の仕事について『あれには参った、これには笑った』をひとしきりしゃべった後に、
「ところで、今日の勉強会のテーマは何だっけ」と彰司は切り出した。
「そうそう、本題ですよね・・・」
手元のジョニーウォーカーのハイボールをクッと飲み、彰司の方を向いた。
「先週、テレビを見ていたら、京都にある割と大きな会社が倒産して、その記者会見をやっていたんですよ」
「あっそう、それは見てないな」
「テレビでは、決まりきったように年を取った社長ほか重役さんたちが『申し訳ありませんでした』って、頭を下げているんですよね。そして、完全に自分の息子や娘と同い年の新聞記者から、あれは何故だ、経営責任は誰がとるんだ、債権者に対してどう責任を取るんだ、なんてツメられていました」
「まあ、普通そうだな」
ここで佳奈子はおつまみのスライスされたソーセージを一切れフォークで取った。
「それで、私が思ったのが、ああ言う記者会見を融資した先からやられると、銀行はとたんに『たいへんだ、えらいことだ』って上ヘ下への騒ぎになるんですかね。
東郷さんはああ言う『倒産だ!会見だ!』は経験したことありませんか?あんな事態になったらどう対応したらいいんでしょう」
佳奈子はハイボールをここでまたひと口、クイッと飲んで彰司の顔を覗き込んだ。
「絶対あると思うんですよねぇ、私がこれから銀行で、それも融資業務をしていく過程で・・・」
「(・・・確かに起こりうることだ)」
彰司はそう思った。そして、残っていたハイネケンの残りを一気に飲みほした。トンと瓶をカウンターに置きそして一言いった
「経験は、ある」
遡ること十カ月前、一級建築士事務所が耐震設計を偽装するという事件が東京で起きた。
内容は、姉波(あねは)次郎と言う建築士が、中小ゼネコンがこの事務所に依頼する『建築確認済証』作成と当局への申請業務において、ビルの耐震強度を偽装し、震度五強の地震では倒壊の恐れがあるものを『耐震強度問題なし』として通過させていたというものである。
その耐震強度に問題のある設計図で、複数のマンションやビジネスホテルがすでに建設され、市民にも販売が完了していたことから全国的な事件となった。
「聞いたことがあるだろう」
「あー知ってる、このあいだの、あれでしょ」
「最初は、ウチの銀行の誰しもが『大変な事件が起きているな。あらら・・・』と思っていた程度だった」
「『最初は』という事は、うちに影響があったんですか?それは全く聞いてなかった」
「まぁ、普通、行内でこのような騒ぎがあっても、関わってくるのは本店審査部と担当の支店だから、西村に話が伝わってこなくて当然だ」
うんうんと佳奈子もうなずいた。
「ねぇ東郷さん、お腹すいているでしょう、何か食べない」
そう言って佳奈子はメニューに手を伸ばした(マスターすいません。パスタのボロネーゼと、季節の野菜フルフルピザをお願いしていいですか・・・)。
(・・・西村って、食事会の席じゃ、結構仕切るタイプの娘だな)彰司は苦笑した。
「あの事件で、ヒューダーって言うマンション開発・販売会社が売り出した神奈川のマンションが、当局の命令で確かものの見事に取り壊されませんでしたっけ」
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