それでもあなたは銀行に就職しますか 第2巻~彰司と佳奈子の勉強会~「木室建設事件」

リチャード・ウイス

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ネット報道

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「ただ今戻りました」
彩香は、支店一階の営業室の机に座ってパソコンを見ていた副支店長に帰社の挨拶をした。時計は四時を少し回っていた。
そしてそのまま足早に自分の机に向かった。

「ああ、工藤さん」
「はい?!なんでしょうか」振り向いて副支店長に返事をした。
「君がいま行ってきた、あの木室建設の記者会見の件ねぇ・・・もうネットのニュースに出てるんだけど。ほらここに」
「(えっ・・・ )」
そう思い、彩香はその画面を覗き込んだ。
副支店長は(君がわざわざ車を飛ばして三時間以上もかけて行ってきたのにねえ・・・無駄足だったのじゃないのぉ)というような言い方をした。

 ネットのニュースでは、短く五行ほどの文章で会見の内容が報道されていた。
彩香はその画面を覗き込みはしたが、見た瞬間、その内容の薄っぺらさに
「(読むのも馬鹿らしい)」と思い、あきれ顔で営業課の自分の机に向かった。

報道の内容は次のとおりだった。
『十一月二十一日以来、ゆくえが一時的に分からなくなっていた木室建設の社長の記者会見が、本日、二十四日二時〇〇分より、西熊本市の弁護士会館でおこなわれた。
冒頭、木室社長は姉波設計事務所の偽造問題については『大変ご迷惑をかけた』と述べるとともに、関係者に説明が遅れたことを謝罪した。
今後については十二月の頭までに熊本地裁に自己破産を申し立てることを表明した。なお、借り入れをしている金融機関は七行におよぶ』

自分の机に着いた彩香は、手早くパソコンを立ち上げ、新規のワードを開いた。
そしてバッグから自分が速記した記録書を取り出し、それを眺めてから大きく息をすいこみ、
「(よし・・・・!)」
と精神統一した。
彩香は打ち始めた。ただひたすら、パタパタと、それは気迫を感じさせるものがあった。
心の中では(今日、午後五時半までに本店審査部にこれを必ず送り込むわ)と自分に言い聞かせながら・・・ただパタパタと・・・・・。

その報告書には、ネットでは出ていない、注目すべき、生々しい事実が書き連ねてあった。
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