王国の彼是

紗華

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どうやら俺は男色らしい

4:驚愕の展開

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「そこでだ、名案を思いついたんだが、其方の負担を少しでも減らす為、立太子した暁には、を護衛にーー」

「守るべき対象が!王族から民へ、ひいては国となる重責は、未熟な私には直ぐに務まるものではありません。ですが陛下方の国を思って出した決断に、私も覚悟を決めなくてはならない事は重々承知しております」

陛下を遮ぎることは不敬だが、男色前提で話す陛下の名案は迷案でしかない。父の憐れむ様な視線も勘弁だ。

「女性が苦手なのは否定しませんが、私は男色ではありません。余計な気遣いは無用です。、デュバル公爵。オレリア嬢との面会を許可して頂けますか?」

「そ、そんなこと?」

「…最重要事項だろう?」

はそんな事で重要ではない。

固まる陛下と父に用はないとばかりに、身体ごとデュバル公爵に向き直り、オレリア嬢との面会を求める。

娘が息子じゃなくて申し訳ないと、至極頓珍漢で失礼な謝罪するデュバル公爵から、オレリア嬢との面会の許可をもぎ取り、執務室を後にした頃には、俺の精神力も限界を超えていた。

チラリと横目で伺ったイアン団長は、話し合いの間は壁に控え、今も深刻な顔をして隣を歩いている。

困惑するのも当然だよな…

2人で黙って歩く王宮の廊下は、カオスな夜会会場と違って気味が悪いくらいに静かで、距離もいつもより長く感じる。
この後はどうするか、隊舎に戻って荷物を纏めて、朝一で隊舎を出たら復籍の手続きを…その前に除籍の手続きか…?
疲れた頭で考えを巡らせながら、ふと前に目を向けると、前方から宰相閣下が、やはり疲れた顔で歩いて来るのを視認して、イアン団長と共に騎士礼で迎える。

「イアン団長に、フラン殿、陛下達との話合いは終わったんですね」

「はい。まだ戸惑っておりますが…」

「正に、晴天の霹靂でしたからな。戸惑わない方がおかしいでしょう」

「夜会会場の方は?だいぶ混乱してましたが」

「皆、帰路に着きました。空いてる馬車に適当に投げ込んだので、誰が、どの屋敷に帰ったかまでは分かりかねますがね」

「適当に…投げ込んだ…?」

「多少雑に扱ったところで、私とは分からないでしょう。大丈夫ですよ」

「……」

カオスな夜会会場は、宰相閣下を紳士でなくさせてしまったようだ。

「と、ところで、ナシェルは今何処に?」

「ラヴェル騎士団長に任せてきました。今の私はフラン殿にが最優先事項ですから。フラン殿にご満足頂けるよう、護衛に関してはジーク副団長に助力を願い、必ず明日の立太子の発表に間に合わせますので、暫しお待ちを。それからもう一つ。立太子以降で構いませんが、私に敬語は不要です」

「……はい」

宰相閣下。あなたは冷静な判断力も馬車に投げ込んできたのか?

ボーゼンと宰相閣下を見送る俺の横で、ブハッとイアン団長が噴き出した。

「ここまで耐えたが、もう…無理だ。くくっ…フラン、道は険しいな」


肩を震わせながら目尻を拭うイアン団長が、先程まで見せていたあの深刻な顔は、単に笑いを堪えていただけだった。
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