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どうやら俺は男色らしい
11:王太子 エルデ
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「オレリア様。本日のフラン殿下との面会はガゼボに場所が変更されたそうです。フラン殿下御自らお出迎えして下さるそうですよ。良かったですね」
王城の馬車寄せを警備する騎士から、場所の変更と、フラン殿下御自らお出迎え下さることを知らされ、馬車の中で待つオレリア様に伝える。
「フラン殿下御自ら…では、馬車を降りてお待ちしないと」
「オレリア様。フラン殿下はかの方とは違います。陽射しも強いですから中でお待ちになられてはいかがですか?」
「いいえ、外で待つわ。これは礼儀よ」
「分かりました…では、せめて日陰のある所でお待ちしましょう」
「ありがとうエルデ。そうするわ」
小さく微笑んで礼を言うオレリア様から緊張が伝わる。
以前の婚約者のナシェル様からは理不尽な小言や叱咤を受け続けてきた。
馬車もその一つで、中で待つとは何様だと言われて以降、天気も季節も関係なく、馬車から降りて待ち、決して中で待たなかった。
年月をかけて刷り込まれてきた事は習慣となって、心の傷と共に深く根付いている。
今日の面会の後に新しい婚約者となるフラン殿下に期待を寄せるが、貴族の間で囁かれる男色の噂が気になる。
噂は信じていないが、おそらく女性が苦手か、又は忌避しているのだろう。
王族にまともな男が居ないのか、オレリア様の男運が悪いのか…
暫くして護衛の騎士を伴って現れたフラン殿下は、王族特有の金髪碧眼。左肩から流した癖のない髪は胸の当たりまで届く長さで、高級な金糸を思わせる。
低めの声は落ち着いていて耳心地良く、緊張も和らぐ。
ナシェル様よりだいぶ大人に感じるフラン殿下は、オレリア様より4歳上だと聞いた。
騎士としては細身だが、ナシェル様より上背もあり、王子様然りの美しい容貌と相まって、多くの令嬢達を虜にしてきたというのも頷ける。
この方になら、オレリア様をお任せ出来る…と思ったフラン殿下の第一印象は、この後霧散することになる。
ーーー
だいぶ動揺してるわね…
ネイト様の発言にフラン殿下が異常な反応を見せ、ネイト様も涙目になっている。
フラン殿下の男色を信じていると思われている故のあの動揺っぷりなのだろうが、下らない茶番劇を見るのではなく、ガゼボでオレリア様を休ませたい。
昨夜の夜会からまともに休めないまま呼び出され、疲れていらっしゃるのに遠回りだなんて…
フラン殿下が男色と噂される片鱗が見えた気がした。
青々と茂る木々の葉と、その隙間から溢れる陽の光、優しい風が葉を揺らすと光も揺れる。
派手好きな貴族は、王城の前に広がる庭園を、花やオブジェを愉しみながら歩くため、庭園の両脇を通る緑一色の緑道を歩く者はいない。
そんな静かな緑道を、フラン殿下にエスコートされながら歩くオレリア様の表情は暗い。
フラン殿下の男色を疑わない旦那様から言われた事を気にしているのだろう…
廃太子騒ぎの一端を担ったと、自身を責めるオレリア様に、他に望む相手が在ると、フラン殿下に望まない結婚を強いるのだと、旦那様は追討ちをかけた。
フラン殿下の男色を信じていないオレリア様は、フラン殿下に他に想う令嬢がいると思われただろう…それ故の暗い顔なのだ。
登城する前の旦那様とオレリア様のやり取りを思い出してると、隣から間抜けな声が聞こえてきた。
「へっ?…令嬢?なんで…」
「オレリア様は、フラン殿下には他に望む方が在ると旦那様から聞かされて、フラン殿下とお相手のご令嬢の仲を裂いてしまう事になると気にされているのです。その様なご令嬢はいらっしゃらないのに…そうですよね?ネイト様」
「エルデ殿、貴女、もしかして…」
「オレリア様も、私も、フラン殿下の噂は信じていません。ご安心を」
その言葉に脱力したのか、ネイトは座り込んでしまった。
護衛の仕事はいいのかしら?
視線を前に戻すと、オレリア様を抱き締めて天を仰ぐフラン殿下と、立ったまま気絶するオレリア様が目に入った。
男色王太子じゃなく破廉恥王太子だった。
王城の馬車寄せを警備する騎士から、場所の変更と、フラン殿下御自らお出迎え下さることを知らされ、馬車の中で待つオレリア様に伝える。
「フラン殿下御自ら…では、馬車を降りてお待ちしないと」
「オレリア様。フラン殿下はかの方とは違います。陽射しも強いですから中でお待ちになられてはいかがですか?」
「いいえ、外で待つわ。これは礼儀よ」
「分かりました…では、せめて日陰のある所でお待ちしましょう」
「ありがとうエルデ。そうするわ」
小さく微笑んで礼を言うオレリア様から緊張が伝わる。
以前の婚約者のナシェル様からは理不尽な小言や叱咤を受け続けてきた。
馬車もその一つで、中で待つとは何様だと言われて以降、天気も季節も関係なく、馬車から降りて待ち、決して中で待たなかった。
年月をかけて刷り込まれてきた事は習慣となって、心の傷と共に深く根付いている。
今日の面会の後に新しい婚約者となるフラン殿下に期待を寄せるが、貴族の間で囁かれる男色の噂が気になる。
噂は信じていないが、おそらく女性が苦手か、又は忌避しているのだろう。
王族にまともな男が居ないのか、オレリア様の男運が悪いのか…
暫くして護衛の騎士を伴って現れたフラン殿下は、王族特有の金髪碧眼。左肩から流した癖のない髪は胸の当たりまで届く長さで、高級な金糸を思わせる。
低めの声は落ち着いていて耳心地良く、緊張も和らぐ。
ナシェル様よりだいぶ大人に感じるフラン殿下は、オレリア様より4歳上だと聞いた。
騎士としては細身だが、ナシェル様より上背もあり、王子様然りの美しい容貌と相まって、多くの令嬢達を虜にしてきたというのも頷ける。
この方になら、オレリア様をお任せ出来る…と思ったフラン殿下の第一印象は、この後霧散することになる。
ーーー
だいぶ動揺してるわね…
ネイト様の発言にフラン殿下が異常な反応を見せ、ネイト様も涙目になっている。
フラン殿下の男色を信じていると思われている故のあの動揺っぷりなのだろうが、下らない茶番劇を見るのではなく、ガゼボでオレリア様を休ませたい。
昨夜の夜会からまともに休めないまま呼び出され、疲れていらっしゃるのに遠回りだなんて…
フラン殿下が男色と噂される片鱗が見えた気がした。
青々と茂る木々の葉と、その隙間から溢れる陽の光、優しい風が葉を揺らすと光も揺れる。
派手好きな貴族は、王城の前に広がる庭園を、花やオブジェを愉しみながら歩くため、庭園の両脇を通る緑一色の緑道を歩く者はいない。
そんな静かな緑道を、フラン殿下にエスコートされながら歩くオレリア様の表情は暗い。
フラン殿下の男色を疑わない旦那様から言われた事を気にしているのだろう…
廃太子騒ぎの一端を担ったと、自身を責めるオレリア様に、他に望む相手が在ると、フラン殿下に望まない結婚を強いるのだと、旦那様は追討ちをかけた。
フラン殿下の男色を信じていないオレリア様は、フラン殿下に他に想う令嬢がいると思われただろう…それ故の暗い顔なのだ。
登城する前の旦那様とオレリア様のやり取りを思い出してると、隣から間抜けな声が聞こえてきた。
「へっ?…令嬢?なんで…」
「オレリア様は、フラン殿下には他に望む方が在ると旦那様から聞かされて、フラン殿下とお相手のご令嬢の仲を裂いてしまう事になると気にされているのです。その様なご令嬢はいらっしゃらないのに…そうですよね?ネイト様」
「エルデ殿、貴女、もしかして…」
「オレリア様も、私も、フラン殿下の噂は信じていません。ご安心を」
その言葉に脱力したのか、ネイトは座り込んでしまった。
護衛の仕事はいいのかしら?
視線を前に戻すと、オレリア様を抱き締めて天を仰ぐフラン殿下と、立ったまま気絶するオレリア様が目に入った。
男色王太子じゃなく破廉恥王太子だった。
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