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覚悟
18:声
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「リア、緊張していないか?」
「…二度目ではありますが、場所も違いますし、前回より緊張しております。フラン様はいかがですか?」
「立太子の儀を終えたばかりだから、緊張より安堵が勝っているかな」
婚約の儀は参列者への宣言と誓約書の署名のみ。
本来は王城で執り行うのだが、立太子の儀の後に、大人数で王城へ移動するのは時間も手間もかかる為、婚約の儀も大聖堂で行う事になった。
結婚式とは違い、大司教の長い祈りはなく、水晶にマナを注ぐ必要もない。
入場も正面ではなく翼廊の扉からとなる為、今は扉の前で伯父上に呼ばれるのを待っている。
「これより、王太子フラン・ダリア・スナイデル。デュバル公爵家令嬢オレリア・ファン・デュバルの婚約の儀を執り行う」
伯父上の始まりの宣言と共に扉が開き、参列者達が立ち上がった。
オレリアの手を取り入場すると、国色天香のその姿に参列席から感嘆の溜め息が漏れる。
…その気持ちは存分に理解できる。
主祭壇の前で待つ伯父上の隣に並び立って気付く。
高位のみとは言え、王侯貴族の当主と後継者達が一堂に会する事は滅多にない。
立太子の儀は、参列者の間の身廊を歩いて入退場こそすれど、儀式の間は、女神ユノンの像と向き合って大司教の祈りを聞き、ユノンに宣言し、マナを注いで儀式を終えた。だが、婚約の儀は参列者に宣言し、証人になってもらわなければならない。
視線の殆どはオレリアに向けられているのだろうが、今更ながらに緊張してきた。
「王太子フラン。宣言を」
伯父上に促され、宣言しようと口を開くーー
『…満ちた』
立太子の儀で聞いた子供の声が聞こえてきた。
満ちたとは?
今回の声はここに居る全員に聞こえたらしく、高位貴族の当主と後継者達なので、騒ぐ事はしないが、視線を動かして声の元を探している。
壁に控えていた近衛騎士達が王族を囲む。
隣に立つオレリア抱き寄せると、立っているのが漸とといった様子で、顔は青く身体も冷たい。
「リア?だいーー」
ーーカツンッーー
髪飾りが外れ、絹の銀糸の様な髪がサラサラと零れる。意識を失い崩れ落ちるオレリアを、膝を着いて抱きとめる。
「リアッ!?」
「オーリアッ!」
「レリッ!!」
最前列に立っていたデュバル公爵とアレンが駆け寄って来た。
何があった?状況が全く分からない。控室でも、扉の前で待つ間も何も異常はなかった。
入場後もオレリアは隣りで立っていただけ。飛び物か、それとも毒か、オレリアを狙ったのか?
「皆は動くなっ!近衛は馬車を入口に着け、広場を封鎖しろ!!」
伯父上の命令に参列者は動きを止め、イアン団長が騎士達に指示を飛ばす。
大司教も侍祭に広場の封鎖を命じる。
『この時を待っていた…』
再び聞こえてきた声に、移動を始めた騎士達と侍祭達は動きを止め、聖堂内の緊張感が高まる。騎士達は抜剣こそしないが、剣に手をかけ臨戦態勢を取り、周りを窺う。
デュバル公爵とアレンは俺とオレリアを守る様に立ち上がった。
『ジュノー……加護…持つ……よ…』
その日、王都中に銀粉が舞った
「…二度目ではありますが、場所も違いますし、前回より緊張しております。フラン様はいかがですか?」
「立太子の儀を終えたばかりだから、緊張より安堵が勝っているかな」
婚約の儀は参列者への宣言と誓約書の署名のみ。
本来は王城で執り行うのだが、立太子の儀の後に、大人数で王城へ移動するのは時間も手間もかかる為、婚約の儀も大聖堂で行う事になった。
結婚式とは違い、大司教の長い祈りはなく、水晶にマナを注ぐ必要もない。
入場も正面ではなく翼廊の扉からとなる為、今は扉の前で伯父上に呼ばれるのを待っている。
「これより、王太子フラン・ダリア・スナイデル。デュバル公爵家令嬢オレリア・ファン・デュバルの婚約の儀を執り行う」
伯父上の始まりの宣言と共に扉が開き、参列者達が立ち上がった。
オレリアの手を取り入場すると、国色天香のその姿に参列席から感嘆の溜め息が漏れる。
…その気持ちは存分に理解できる。
主祭壇の前で待つ伯父上の隣に並び立って気付く。
高位のみとは言え、王侯貴族の当主と後継者達が一堂に会する事は滅多にない。
立太子の儀は、参列者の間の身廊を歩いて入退場こそすれど、儀式の間は、女神ユノンの像と向き合って大司教の祈りを聞き、ユノンに宣言し、マナを注いで儀式を終えた。だが、婚約の儀は参列者に宣言し、証人になってもらわなければならない。
視線の殆どはオレリアに向けられているのだろうが、今更ながらに緊張してきた。
「王太子フラン。宣言を」
伯父上に促され、宣言しようと口を開くーー
『…満ちた』
立太子の儀で聞いた子供の声が聞こえてきた。
満ちたとは?
今回の声はここに居る全員に聞こえたらしく、高位貴族の当主と後継者達なので、騒ぐ事はしないが、視線を動かして声の元を探している。
壁に控えていた近衛騎士達が王族を囲む。
隣に立つオレリア抱き寄せると、立っているのが漸とといった様子で、顔は青く身体も冷たい。
「リア?だいーー」
ーーカツンッーー
髪飾りが外れ、絹の銀糸の様な髪がサラサラと零れる。意識を失い崩れ落ちるオレリアを、膝を着いて抱きとめる。
「リアッ!?」
「オーリアッ!」
「レリッ!!」
最前列に立っていたデュバル公爵とアレンが駆け寄って来た。
何があった?状況が全く分からない。控室でも、扉の前で待つ間も何も異常はなかった。
入場後もオレリアは隣りで立っていただけ。飛び物か、それとも毒か、オレリアを狙ったのか?
「皆は動くなっ!近衛は馬車を入口に着け、広場を封鎖しろ!!」
伯父上の命令に参列者は動きを止め、イアン団長が騎士達に指示を飛ばす。
大司教も侍祭に広場の封鎖を命じる。
『この時を待っていた…』
再び聞こえてきた声に、移動を始めた騎士達と侍祭達は動きを止め、聖堂内の緊張感が高まる。騎士達は抜剣こそしないが、剣に手をかけ臨戦態勢を取り、周りを窺う。
デュバル公爵とアレンは俺とオレリアを守る様に立ち上がった。
『ジュノー……加護…持つ……よ…』
その日、王都中に銀粉が舞った
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