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束の間
51:名誉挽回
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「エイラ…?」
「お久しぶりにございます。お三方は…相も変わらずですね」
「……何故ここに?」
「それは私がお聞きしたいです。ボックス席でコソコソと…不審者かと思いました」
「「「………」」」
ボックス席で揉める俺達に声を掛けてきたのは、エルデに代わってオレリアと共に学園に来ているエイラだった。
「そのご様子だと、オレリア様に会いに来られたわけではなさそうですね。もしかして…付け回していらっしゃるのですか?」
「?!ちょっと待て、今日はたまたま騎士科に用があって、学園長からたまたま剣舞の公開練習の事を聞いたんだ。ネイトと一緒にしないでくれ」
「ちょっと待て、俺は付け回してないぞ」
「護衛の職務を放棄してエルデのことを付け回してるだろ!お前はいったい誰の専属護衛だ?婚約までしてるのに、もっと余裕を持て」
「お2人共…必死なのですね」
「エイラ。俺は偶然だと言っているだろ、それよりも、あれはいいのか?」
舞台の上ではエレノアとヨランダ嬢の応酬が続いており、最早舞台は戦場と化している。
「構いません。学園の令嬢達の間で交わされているいつもの談笑ですから」
「……談笑?」
「男女間で、談笑の定義に大きな隔たりがある様ですね」
「カイン殿が関心を持つのはそこですか…」
「談笑であれば問題ないな、リアの学園生活が充実しているのであれば重畳」
「ですが、今日は見学の方も沢山いらっしゃいますから、そろそろ練習を再開されないと…殿下、お願い致します」
「………」
ーーー
「その様に肌を晒して、羞恥心はないのかしら?海でお育ちになると開放的になるのですね」
「ダリアの繁栄、発展の為、デュバル家とラスター家は海を開放し、多国と有益な貿易をしているのです。この衣装もその内の一つ。閉鎖された山でお育ちの方には…ご理解頂くのが難しいかしら?」
「それは…セイド家を冒涜しているのかしら?」
「とんでもない!セイド公爵閣下とアリーシャ様は尊敬に値する方ですから」
「エレノア様、貴女はーー」
「失礼、令嬢方」
「「「「フラン様((殿下))?!」」」」
突然の王太子殿下の登場にオレリア達は驚きの声を上げたが、高位貴族だけあり即座に持ち直し、片膝を着いて首を垂れる。
客席の教員や生徒達も立ち上がり、腰を深く折って首を垂れた。
王族の御尊顔を許可を得ずに見る事は不敬に当たる。
夜会などの公式な場でも、顔は上げても王族から声を掛けられるまでは目を合わせる事は許されない。
学園では公平を説いてるが、既に学園を卒業したフランには通用しない為、目を向けない様に首を垂れる。
「皆、楽にしてくれ。海の舞を見せてもらったよ、実に見事だった。衣装もエレノア嬢達が苦心してデザインしたとオレリアから聞いているが、舞によく合っていたよ」
「過分なお言葉痛み入ります、フラン殿下」
「ヨランダ嬢達の軍服を模した衣装も、国を守る者達への敬意を充分に感じられる。衣装だけでなく、山の舞も見せてもらえるだろうか?」
「勿論にございます、フラン殿下」
「久しぶりに学園に足を運んだが、学園生達の活気に溢れていて嬉しく思う。ダリアは建国から、ダリア貴族を代表するデュバル、ラスター両家の貿易外交がもたらす発展、繁栄と、セイド、ボーエン両家の強固な守護により安泰と安寧が保たれて今代にまで至っている。公侯爵家だけではない、ダリアの全貴族、そして民達の働きも等しく同じ。ここに居る学園生達はダリアの未来だ。民も含め、ここに居る皆が、これからのダリアを担う事になる。次代を受け継ぐ私に、君達にも助力してもらえることを期待している」
客席から拍手と歓声が湧き上がると、ヨランダ嬢とエレノアは再び片膝を立て首を垂れた。
「フラン殿下のお言葉を深く胸に刻み、セイドの名に恥じぬ様精進して参ります。」
「ラスターも、フラン殿下の代に更なる発展と繁栄を誓います」
「重畳。ヨランダ嬢、山の舞はボックス席から観覧させてもらうよ」
「ありがたき幸せ」
「エレノア嬢、リアを連れて行っても構わないか?」
「勿論にございます」
「エレノア嬢もカインと会うのは久しぶりだろう。カイン、エレノア嬢も共に連れて来るといい」
「「ありがとうございます」」
「リア、行こうか」
「はい」
オレリアの手を取り、汗で額に張り付いた前髪を除けると、擽ったいという様にはにかんだ。
抱き寄せたいのを堪えて、指を絡めて繋ぎ直し、客席の拍手に手を上げて応えながら舞台を後にして戻ると、ボックス席にはエイラとエレノアの専属侍女マリーが待っており、令嬢2人の支度を整えると言って連れ行った。
山の神の化身と言われる、鷲の羽根で作られた羽根扇と長剣で舞う山の舞も、重厚な伴奏とで力強い舞が強固な砦を連想させ、ヨランダ嬢達の剣舞も大いに盛り上がり、興奮の内に公開練習は終わりを迎えた。
ーーー
「……こんなに疲れたのは久しぶりだな」
見学を終えた俺達は、ボックス席まで迎えに来たロイド先生に案内され、学園内の食堂にある個室で一息吐きながらオレリア達を待っている。
「見事に名誉を挽回されましたね、フラン様」
「騎士としての名誉は失墜したままだけどな」
「それはお前もだろ、ネイト」
「それを言うな。帰城したら、ジーク副団長に何を言われるか…」
「とりあえず、エルデへの接近禁止令は間違いないだろ」
「!?それは困る!」
「全く…お前は何をそんなに必死になっているんだ」
「ネイト殿、貴方もしかして叔父上のーー」
ーーコンコン…ガチャー
「お待たせ致しました。オレリア様とエレノア様をお連れ致しました」
「お久しぶりにございます。お三方は…相も変わらずですね」
「……何故ここに?」
「それは私がお聞きしたいです。ボックス席でコソコソと…不審者かと思いました」
「「「………」」」
ボックス席で揉める俺達に声を掛けてきたのは、エルデに代わってオレリアと共に学園に来ているエイラだった。
「そのご様子だと、オレリア様に会いに来られたわけではなさそうですね。もしかして…付け回していらっしゃるのですか?」
「?!ちょっと待て、今日はたまたま騎士科に用があって、学園長からたまたま剣舞の公開練習の事を聞いたんだ。ネイトと一緒にしないでくれ」
「ちょっと待て、俺は付け回してないぞ」
「護衛の職務を放棄してエルデのことを付け回してるだろ!お前はいったい誰の専属護衛だ?婚約までしてるのに、もっと余裕を持て」
「お2人共…必死なのですね」
「エイラ。俺は偶然だと言っているだろ、それよりも、あれはいいのか?」
舞台の上ではエレノアとヨランダ嬢の応酬が続いており、最早舞台は戦場と化している。
「構いません。学園の令嬢達の間で交わされているいつもの談笑ですから」
「……談笑?」
「男女間で、談笑の定義に大きな隔たりがある様ですね」
「カイン殿が関心を持つのはそこですか…」
「談笑であれば問題ないな、リアの学園生活が充実しているのであれば重畳」
「ですが、今日は見学の方も沢山いらっしゃいますから、そろそろ練習を再開されないと…殿下、お願い致します」
「………」
ーーー
「その様に肌を晒して、羞恥心はないのかしら?海でお育ちになると開放的になるのですね」
「ダリアの繁栄、発展の為、デュバル家とラスター家は海を開放し、多国と有益な貿易をしているのです。この衣装もその内の一つ。閉鎖された山でお育ちの方には…ご理解頂くのが難しいかしら?」
「それは…セイド家を冒涜しているのかしら?」
「とんでもない!セイド公爵閣下とアリーシャ様は尊敬に値する方ですから」
「エレノア様、貴女はーー」
「失礼、令嬢方」
「「「「フラン様((殿下))?!」」」」
突然の王太子殿下の登場にオレリア達は驚きの声を上げたが、高位貴族だけあり即座に持ち直し、片膝を着いて首を垂れる。
客席の教員や生徒達も立ち上がり、腰を深く折って首を垂れた。
王族の御尊顔を許可を得ずに見る事は不敬に当たる。
夜会などの公式な場でも、顔は上げても王族から声を掛けられるまでは目を合わせる事は許されない。
学園では公平を説いてるが、既に学園を卒業したフランには通用しない為、目を向けない様に首を垂れる。
「皆、楽にしてくれ。海の舞を見せてもらったよ、実に見事だった。衣装もエレノア嬢達が苦心してデザインしたとオレリアから聞いているが、舞によく合っていたよ」
「過分なお言葉痛み入ります、フラン殿下」
「ヨランダ嬢達の軍服を模した衣装も、国を守る者達への敬意を充分に感じられる。衣装だけでなく、山の舞も見せてもらえるだろうか?」
「勿論にございます、フラン殿下」
「久しぶりに学園に足を運んだが、学園生達の活気に溢れていて嬉しく思う。ダリアは建国から、ダリア貴族を代表するデュバル、ラスター両家の貿易外交がもたらす発展、繁栄と、セイド、ボーエン両家の強固な守護により安泰と安寧が保たれて今代にまで至っている。公侯爵家だけではない、ダリアの全貴族、そして民達の働きも等しく同じ。ここに居る学園生達はダリアの未来だ。民も含め、ここに居る皆が、これからのダリアを担う事になる。次代を受け継ぐ私に、君達にも助力してもらえることを期待している」
客席から拍手と歓声が湧き上がると、ヨランダ嬢とエレノアは再び片膝を立て首を垂れた。
「フラン殿下のお言葉を深く胸に刻み、セイドの名に恥じぬ様精進して参ります。」
「ラスターも、フラン殿下の代に更なる発展と繁栄を誓います」
「重畳。ヨランダ嬢、山の舞はボックス席から観覧させてもらうよ」
「ありがたき幸せ」
「エレノア嬢、リアを連れて行っても構わないか?」
「勿論にございます」
「エレノア嬢もカインと会うのは久しぶりだろう。カイン、エレノア嬢も共に連れて来るといい」
「「ありがとうございます」」
「リア、行こうか」
「はい」
オレリアの手を取り、汗で額に張り付いた前髪を除けると、擽ったいという様にはにかんだ。
抱き寄せたいのを堪えて、指を絡めて繋ぎ直し、客席の拍手に手を上げて応えながら舞台を後にして戻ると、ボックス席にはエイラとエレノアの専属侍女マリーが待っており、令嬢2人の支度を整えると言って連れ行った。
山の神の化身と言われる、鷲の羽根で作られた羽根扇と長剣で舞う山の舞も、重厚な伴奏とで力強い舞が強固な砦を連想させ、ヨランダ嬢達の剣舞も大いに盛り上がり、興奮の内に公開練習は終わりを迎えた。
ーーー
「……こんなに疲れたのは久しぶりだな」
見学を終えた俺達は、ボックス席まで迎えに来たロイド先生に案内され、学園内の食堂にある個室で一息吐きながらオレリア達を待っている。
「見事に名誉を挽回されましたね、フラン様」
「騎士としての名誉は失墜したままだけどな」
「それはお前もだろ、ネイト」
「それを言うな。帰城したら、ジーク副団長に何を言われるか…」
「とりあえず、エルデへの接近禁止令は間違いないだろ」
「!?それは困る!」
「全く…お前は何をそんなに必死になっているんだ」
「ネイト殿、貴方もしかして叔父上のーー」
ーーコンコン…ガチャー
「お待たせ致しました。オレリア様とエレノア様をお連れ致しました」
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