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25 竜たちのお悩み相談②
(どうしよう! 何も話してくれない!)
領主も少し怪訝そうに私を見始め、子どもたちもヒソヒソと「ダメなのかな?」と話している。その時だった。
『……している』
食事を取らない竜が、ようやく何かを話し始めた。しかしあまりにも弱々しい声なので、まったく聞き取れない。
「ごめんなさい。なんとおっしゃいました?」
するとその竜はゆっくりと瞼を開け、私をじっと見つめてきた。その瞳は潤んでいて、とても淋しそうに見える。そしてなんとか私に聞こえるほどの声で、話し始めた。
『喪に服しているんだ』
「喪に服している?」
(竜が喪に服してる? 私の聞き間違いかな?)
意味がわからず、竜にもう一度聞いても、同じ様に『喪に服している』と返ってくる。不思議に思いつつも、本人がそう言っているのだからと、私は領主に事情を聞くことにした。
「この竜が言うには、自分は喪に服しているらしいのですが……。どなたか最近亡くなった方は、いらっしゃるのですか?」
全く予想していなかった質問に、領主はポカンと口を開けている。気持ちはわかる。私も意味がわからない。
「いいえ! カルルが会う人物は、誰も死んでおりません! そうだよな?」
領主が竜舎の外にいる領民に同意を求めると、みんな大きくうなずいている。う~ん、ますますわからない。私はもう一度カルルさんに聞いてみることにした。
「カルルさん、言いにくいかも知れませんが、どなたが死んだのですか?」
「……思い出すのもつらいが、この家で飼っている犬のシーラだ」
人じゃなかった。私はすぐさま、さっき聞いた言葉を領主に伝える。
「シーラさんというワンちゃんが死んだと、言っているようなんですが……」
「シーラ? あの子は生きてますが」
『なに? じゃあなんで三ヵ月も姿を現さないんだ! しかも最後に会った時は、苦しそうにヨボヨボと歩いていて……うう、かわいそうなシーラ……』
竜気が強い領主の言葉は理解できるのだろう。死んだと思っていた犬のシーラが生きていると聞いて、竜のカルルは勢いよく立ち上がった。
私がすぐさまカルルの言っていることを通訳すると、領主は目を丸くして驚き、シーラに何が起こったのかを叫び始めた。
「それはシーラが妊娠していたからだよ! あの子は今、子育て中で、本館のほうで毎日寝不足だ! おい!誰かシーラを連れてきてくれ!」
領主のその言葉に、女性があわてて出て行った。犬のシーラちゃんを連れてくるのだろう。しばらくすると予想通りシーラちゃんを抱っこした女性が、竜舎に入ってきた。
しかもそのまた後ろには、バスケットを持った女性がおり、その中にはシーラちゃんが産んだであろう子犬が五匹入っていた。
『おお! シーラじゃないか! 死んだかと思ったぞ! それはおまえが産んだ子どもか? かわいいじゃないか!』
喜びいっぱいのカルルの言葉に応えるように、シーラちゃんがキュンキュンと鳴いている。しっぽがちぎれるんじゃないかと思うくらい振って、カルルの体を舐めていた。
するといつの間にか隣にいた竜王様が、大喜びでじゃれ合う二匹の様子を見て、私のほうを振り返った。
「リコは犬の言葉はわからないのか?」
「わかりませんね。キュンキュン鳴いて嬉しそうにしていると思うだけです」
「俺たちと一緒だな」
「ふふ。そうですね。でも良かったです」
「ああ、本当に良かった」
『よかった、よかった! ママだいかつやく!』
食べない理由が判明し、領主も安心したのか、私達をランチに誘ってくれた。するとその話が聞こえたのだろう。竜舎を出る時には、カルルのこんな声が聞こえてきた。
『安心したら腹が減った~! ご飯くれ~』
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