これは私が望んだ復讐です

四葉美名

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3話 自分勝手な婚約者

 
「殿下、お待ちください! スカーレット様はモーガン侯爵家のご令嬢です。勝手に国外追放などしては大問題になります」


 あわてふためきオーエン殿下を止めるのは、この国の宰相だった。今夜の夜会はオーエン殿下主催だったため、陛下と王妃様は顔を見せない。主催といっても私が指示を出し、準備したものなんですけど。


 それすらも誰かがしているだろうと思ってなにも感じていないオーエン様は、割って入ってきた宰相をジロリと睨んでいる。


「宰相! なにを言う。スカーレットは私を愚弄したのだぞ!」
「い、いいえ……そのようなことは。それに婚約を破棄することは、殿下の一存では……」


 コソコソと周囲に聞こえないよう配慮しているつもりらしいが、皆が聞き耳を立てている。


 だいたいこの夜会だって、未来の王太子夫妻である私たちの技量を試されている場なのだ。


 ――結局大恥をかいて大失敗でしたけど。本当にこの場をどうすればいいのか、私にもわかりませんわ。


 するとそんな殺伐とした場に、殿下の名を呼ぶ甘ったるい声が響いた。妹のシャルロットだ。


「あのぅ、オーエン様。わたくし、もう疲れてしまいました。お部屋に戻りませんか?」


 妹のその提案に私だけじゃなく、宰相もそして周囲の人も言葉を失っている。婚約者でもない、しかもその家族である未婚の女性が部屋に誘うなどあってはならないことだ。


 ――王宮では見逃されていたから、わからなくなっているのかしら? さすがにこれは注意しないと!


 しかし私がシャルロットに近づこうとすると、先にオーエン殿下が妹をかばうように立ちはだかった。


「スカーレット! 今宵のおまえの愚行はシャルロットに免じて不問にする! とにかく婚約者はおまえではなく、シャルロットだ。さあ、愛しの姫。部屋に戻ろう」

「で、殿下! お待ちを! 今日の主催は殿下なのですぞ!」
「うるさい! 私はもう挨拶を終えた。あとは好きにすれば良いだろう」


 オーエン様の頭には、もうシャルロットとの睦み合いしかないのだろう。宰相様のことを手で追い払う仕草をし、招待客に背を向け私室に戻ろうとしている。


 ――もうここまで見られたら、取り繕いようがないわ


 諦めた私は招待客に向かって騒がせたことを謝罪し、宮廷楽団に演奏をお願いする。恥ずかしいことに殿下が最初に挨拶をしてすぐにあの様な騒ぎを起こしてしまったので、音楽も流れていなかった。


「宰相様、パートナーのいないわたくしがこの場にいたら、皆様楽しめないと思うのです。申し訳ないのですが、わたくしもお部屋に下がらせていただきます。なにかありましたら、すぐに動きますのでよろしいでしょうか?」

「ええ! それはもちろん!」


 ――きっと私が出ていったらすぐに噂が始まるわね。はあ……嫌な夜だわ。


 それでもこのホールを去るまでは、令嬢らしくしておかねばならない。私は口元に微笑みを浮かべ、通り過ぎる人に軽い挨拶をして歩いていく。


 そしてようやく誰もいない廊下に出た時だった。曲がり角から急に人が出てきて、私の体にぶつかった。

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