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06. 初めてのキス

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「え! キ、キスですか!?」
「嫌?」
「嫌っていうか、その、だって」
「僕と結婚したいって言ってくれた」
「言いましたけど!」
「さっきエドって呼んでくれた」
「呼びましたけど!」


 突然のキスしたい宣言もそうだけど、なんだかエドがどんどん子供みたいになっている。


「それに私は透けていますから、できないでしょう?」
「近くで顔を合わせるだけでいい」


 しばらく無言で向き合っていたけれど、真剣にこちらを見つめる姿にほだされてしまう。「わかりました。ちょっとだけですよ」と恥ずかしさにうつむいて答えると、エドは嬉しそうに体ごとこちらに向けて近づいてくる。


 最初は目を開けてエドを見ていたけど、やっぱり恥ずかしい! それに年を取って15歳のエドと違うとはいえ、私の中ではだいぶあの頃のエドと重なってきている。


「サラ……」


 どんどんエドの顔が近づいてくる。さっきは顔が近いとか私に文句言っていたのに、急に積極的になるんだから! あともう少しでエドの顔が重なると思った瞬間、自然と目をつむっていた。


 少し時間が経ってからスっと顔が離れた気配がして、目を開ける。目の前にはにっこりと微笑むエドがいて、なんだかすごく満足そう。


「幸せだ」
「よ、良かったですね……」


 私はどちらかというと頭が真っ白で何も考えられなかったけど、エドが幸せならそれでいい。


「またしようね」
「え!」


 エドは驚く私に不満を持つわけでもなく、機嫌よく食事を再開している。うう、嫌がっていないのがわかって余裕があるんだわ。でも否定するわけにもいかないし、実際落ち着いてみれば嬉しい。今度は私からして驚かしてやりたい。



 自分からキスして驚かせる状況をもんもんと考えていると、食事を終えたエドが話しかけてきた。



「まだ話しても大丈夫かい?今回君の魂を魔石と切り離したことで起こった問題を説明したいんだ」
「問題ですか?」


 確かにあんな大がかりな魔術をしたのだから、問題が起こっても不思議ではない。不安げな表情で見ているのに気づいたのだろう。エドが微笑みながら説明を始めた。


「そんなに心配しないで。魔術自体に失敗があったわけじゃないんだ。絶対とは言い切れないけど、今回の魔術で僕の魂と君の魂がくっついたのではないか?と考えている」
「くっつく…?そうするとどうなるの?」


 いつの間にか私の口調がくだけているのに気づいて、エドは少し嬉しそうにしている。


「次に生まれ変われるとしたら、僕達は同じ時代になると思ってる」
「同じ時代に生まれ変わる……」
「今回あの魔石と魔法陣に僕の血を混ぜて、僕の魔力で君の魂を引っ張って引き離したつもりなんだよ」
「つもり?」


 エドは苦笑いしながら、説明を続ける。


「それが今まで何回やっても失敗してたから、今回成功したのは魔力じゃなくて魂同士がくっついた事で引っ張り上げれたのかな?と思ったんだ」


 魔力と魂はもともとくっついているから、引っ張る際に魂同士もくっついたかもしれないという事か……


 う~ん。30年研究したとはいえ、すごい魔術だわ。頭がおかしくなりそう。でもエドは生まれ変わる時と言ったけど、私はいつ生まれ変わるんだろう?


「ねえ、1つ質問なんだけど、私はずっとこのまま?いつ生まれ変わるの?」


 その質問に私を見ていたエドの瞳は一瞬だけ下を見ると、意を決した様に私を見つめ直した。


「僕の魔力で今の姿を繋ぎ止めている状態だから、僕の魔力が尽きれば生まれ変わりが始まるのだと思う」
「魔力が尽きる?」


 なんだか言っている事が頭に入ってこない。怖くて考えたくないのかもしれない。


「簡単に言うと、僕が死んだら君の姿も消え、2人とも次の人生が始まるのではないかと考えている。すぐ生まれ変わるかはわからないけど、僕達の魂が繋がっているのなら同じ時代だと思う」


 自分はもう30年も昔に死んでいるのに、目の前のエドが死ぬと思うと胸が苦しくなってくる。それに生まれ変わるにしても、本当に会えるのだろうか。会えても記憶は無いだろうし。それに記憶があっても今みたいに親子ほど年が離れていたら?同じ性別だったら?



 今日目覚めたばかりの私は、生まれ変わりに期待が持てなかった。そんな複雑な顔をしている私とは反対に、エドはずっと考えていただろう気持ちを伝えてくる。



「それでここからはもっと真剣な話だ」


 そう言ってエドはソファーから立ち上がり、私の前に跪いた。
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