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08. 本当のキス
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「エド!!」
慌ててエドに駆け寄るが、魂の私には声をかける事しかできない。
「エド! しっかりして!」
「う、ううん……」
気がついたのかうつ伏せで倒れていたエドは、ゆっくりと体を転がし仰向けになる。それでも息が苦しそうで、顔色も悪い。
「大丈夫? どうしたの?」
「……」
エドは無言でゆっくりと起き上がり、ソファーにどさりと横たわった。しばらくすると息も落ち着いてきたが、顔色は悪いままだ。私は今回の魔術の事で気になっていた事を思い出し、エドを問いただす。
「もしかして、私がエドの魔力を使っているから?」
「……」
「そうなのね」
「もともと魔力持ちは寿命が短いからね。これでも長く生きた方だよ」
たしかに魔力持ちは普通の人よりも寿命は短いけど、それでも数年の差だったはず。今のエドは45歳で平均寿命まではまだ10年以上ある。
「実は今日君を呼び戻すのに成功したけど、今まで19回は失敗してるんだ」
「19回!?」
「魔力を大きく使うからね。1年に1回だけ。20回目でようやく君に会えた」
エドは今までの失敗を思い出すように、クスクスと笑いながら話している。時折頭を抑えているのは、頭痛がしているからかもしれない。
「あんな大掛かりな魔術を、20回もしたなんて」
1年に1回とはいえ魔力を一気に使う魔術は体に負担がかかり、魔力の巡りが悪くなり病気になる人や、最悪死んでしまう人だっている。それなのにエドは私のために何回もあの魔術をして、体を酷使していたなんて。
「そんな顔しないで。君のためだけじゃない。一番は僕自身のためにしてたんだよ? 僕の生きがいは君ともう1度会う事だったんだから」
弱々しく笑いかける顔は、さっきより青ざめて唇が乾いている。エドの急激な体調の変化に自分が魔力枯渇で急死した時を思い出し、触れられない私にはどうもできない事を悟った。
「だから今日君が現れた時、本当に嬉しかったな」
「エド、もう話しちゃだめ。もっと悪くなるよ」
「もういいんだ。君と会えて謝ることもできた。許してくれて、キスまでできた」
「キスしてないよ。あんなのキスじゃない。だからまだ死なないで。もう私に魔力を流さないで」
「ひどいな……キスだよ」
たぶんもう私に魔力を流さなくても、エドの体の中は魔力がうまく巡らずボロボロなんだろう。私もパニックになっていて、自分が何を言っているのかわからなくなってしまった。
「サラ……愛してるよ……」
「エド!」
エドの周りがキラキラと光り始める。待って! 私まだ伝えてない!
「エド! 私も愛してる!」
エドがゆっくりと目を閉じて、ふわりと部屋中に広がるように体が光った。その光はまた1つになり天井を抜け、空に向かっていく。
私は眠っている様なエドの顔に近づき、唇を重ねる。
トン、と私の唇とエドの唇が初めて触れ合った。
ああ、もうすり抜けなくなったのね。
初めて触れ合った本当のキスなのに、胸が痛い。驚いて起きてくれればいいのに。
気づくと私の手もキラキラと金色の粒に変わり始め、形が無くなっていく。私もエドと同じところにいけるかな?
私はエドの体にそっと寄り添い、自分の体が消えるのに身を任せていた。
どのくらい経ったのだろう? 前と違って今度は明るくてキラキラしてるし、あの部屋でもないしエドもいない。でも同じ様に眠たいな。今度はなんだかポカポカしたお日様の下で眠っているみたいで気持ちが良い。
エドが頑張ってくれたから、私には次の人生があるのかもしれない。エドが言うように魂がくっついて、同じ時代に生まれるかもしれない。
エドには幸せになってほしいし、できるなら幸せにしてあげたかった。でも私じゃなくてもいい。あなたが幸せになれるなら。
私はゆっくり瞼を閉じた。
次に「私」が気づいた時には、ある人がキラキラした目でこちらを見ている瞬間だった。
「サラ! やっと会えた!」
その人の瞳を見たとたん、私の中に彼との思い出が全部蘇った。それこそ辛い思い出もすべて。今まで忘れていた事が信じられないくらいだ。
あの日私を魔石の中から救い出し、初めてのキスをしたあの人だ。でも今回は気づかないふりをしなくては。彼には私よりもっと素敵な人と幸せになるべきだし、私は彼を幸せにできそうにない。最初に彼に気づいた時は突然の事で目を見開いてしまったけど、なんとかごまかさなければ。
「申し訳ございません! キース国の王子の歓迎パーティーに来ていて、迷ってしまって。すぐ立ち去ります!」
ペコリと謝罪をし慌ててパーティー会場に戻ろうとするが、パシっと手を掴まれて動けない。
「サラ、無理だよ」
彼も私を見て、全て思い出したのだろう。ごまかしても無理なのがわかるので、正直にならざるおえない。
「出会いが突然すぎて、ごまかせないじゃない!」
はあ~と大きくため息をつきながら小声で言うと、彼はふふんと得意げに笑っていた。
エドことエドワード王子は先日25歳になったばかりのこの国の第3王子に、サラだった私は今年10歳になった伯爵令嬢として再び出会ってしまったのだ。
慌ててエドに駆け寄るが、魂の私には声をかける事しかできない。
「エド! しっかりして!」
「う、ううん……」
気がついたのかうつ伏せで倒れていたエドは、ゆっくりと体を転がし仰向けになる。それでも息が苦しそうで、顔色も悪い。
「大丈夫? どうしたの?」
「……」
エドは無言でゆっくりと起き上がり、ソファーにどさりと横たわった。しばらくすると息も落ち着いてきたが、顔色は悪いままだ。私は今回の魔術の事で気になっていた事を思い出し、エドを問いただす。
「もしかして、私がエドの魔力を使っているから?」
「……」
「そうなのね」
「もともと魔力持ちは寿命が短いからね。これでも長く生きた方だよ」
たしかに魔力持ちは普通の人よりも寿命は短いけど、それでも数年の差だったはず。今のエドは45歳で平均寿命まではまだ10年以上ある。
「実は今日君を呼び戻すのに成功したけど、今まで19回は失敗してるんだ」
「19回!?」
「魔力を大きく使うからね。1年に1回だけ。20回目でようやく君に会えた」
エドは今までの失敗を思い出すように、クスクスと笑いながら話している。時折頭を抑えているのは、頭痛がしているからかもしれない。
「あんな大掛かりな魔術を、20回もしたなんて」
1年に1回とはいえ魔力を一気に使う魔術は体に負担がかかり、魔力の巡りが悪くなり病気になる人や、最悪死んでしまう人だっている。それなのにエドは私のために何回もあの魔術をして、体を酷使していたなんて。
「そんな顔しないで。君のためだけじゃない。一番は僕自身のためにしてたんだよ? 僕の生きがいは君ともう1度会う事だったんだから」
弱々しく笑いかける顔は、さっきより青ざめて唇が乾いている。エドの急激な体調の変化に自分が魔力枯渇で急死した時を思い出し、触れられない私にはどうもできない事を悟った。
「だから今日君が現れた時、本当に嬉しかったな」
「エド、もう話しちゃだめ。もっと悪くなるよ」
「もういいんだ。君と会えて謝ることもできた。許してくれて、キスまでできた」
「キスしてないよ。あんなのキスじゃない。だからまだ死なないで。もう私に魔力を流さないで」
「ひどいな……キスだよ」
たぶんもう私に魔力を流さなくても、エドの体の中は魔力がうまく巡らずボロボロなんだろう。私もパニックになっていて、自分が何を言っているのかわからなくなってしまった。
「サラ……愛してるよ……」
「エド!」
エドの周りがキラキラと光り始める。待って! 私まだ伝えてない!
「エド! 私も愛してる!」
エドがゆっくりと目を閉じて、ふわりと部屋中に広がるように体が光った。その光はまた1つになり天井を抜け、空に向かっていく。
私は眠っている様なエドの顔に近づき、唇を重ねる。
トン、と私の唇とエドの唇が初めて触れ合った。
ああ、もうすり抜けなくなったのね。
初めて触れ合った本当のキスなのに、胸が痛い。驚いて起きてくれればいいのに。
気づくと私の手もキラキラと金色の粒に変わり始め、形が無くなっていく。私もエドと同じところにいけるかな?
私はエドの体にそっと寄り添い、自分の体が消えるのに身を任せていた。
どのくらい経ったのだろう? 前と違って今度は明るくてキラキラしてるし、あの部屋でもないしエドもいない。でも同じ様に眠たいな。今度はなんだかポカポカしたお日様の下で眠っているみたいで気持ちが良い。
エドが頑張ってくれたから、私には次の人生があるのかもしれない。エドが言うように魂がくっついて、同じ時代に生まれるかもしれない。
エドには幸せになってほしいし、できるなら幸せにしてあげたかった。でも私じゃなくてもいい。あなたが幸せになれるなら。
私はゆっくり瞼を閉じた。
次に「私」が気づいた時には、ある人がキラキラした目でこちらを見ている瞬間だった。
「サラ! やっと会えた!」
その人の瞳を見たとたん、私の中に彼との思い出が全部蘇った。それこそ辛い思い出もすべて。今まで忘れていた事が信じられないくらいだ。
あの日私を魔石の中から救い出し、初めてのキスをしたあの人だ。でも今回は気づかないふりをしなくては。彼には私よりもっと素敵な人と幸せになるべきだし、私は彼を幸せにできそうにない。最初に彼に気づいた時は突然の事で目を見開いてしまったけど、なんとかごまかさなければ。
「申し訳ございません! キース国の王子の歓迎パーティーに来ていて、迷ってしまって。すぐ立ち去ります!」
ペコリと謝罪をし慌ててパーティー会場に戻ろうとするが、パシっと手を掴まれて動けない。
「サラ、無理だよ」
彼も私を見て、全て思い出したのだろう。ごまかしても無理なのがわかるので、正直にならざるおえない。
「出会いが突然すぎて、ごまかせないじゃない!」
はあ~と大きくため息をつきながら小声で言うと、彼はふふんと得意げに笑っていた。
エドことエドワード王子は先日25歳になったばかりのこの国の第3王子に、サラだった私は今年10歳になった伯爵令嬢として再び出会ってしまったのだ。
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