夢のありか

生徒

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 予鈴が鳴るまで僕は教室に戻れなかった。
 恥ずかしさと息苦しさ、そして彼女の存在を受け入れられなかったからだ。僕は遠くの席にいる彼女に安堵しながらそんなことを思っていた。
 「それにしても、よくもまあこんなおおっぴらな所で熱い抱擁かませたね」
 にやにやと下品な薄笑いを白川花音は浮かべている。彼女は隣の席にいる女子で何か事があるとよく話しかけてくる。
 「僕もそれはびっくりした」
 「彼女?」
 「中学の時の同級生」
 「でも、あんなことしてたら勘違いされてそうだよね」
 「されてるだろうね、多分。なんか、もう疲れた」
 「お疲れさまだよ」
 僕が大きくため息をつくと、白川は鞄のなかから飴を一つ渡してくれた。僕は流れるようにそれ食べた。リンゴ味だった。
 

 一時限目のホームルームでは転校生の紹介をかねて、みんなで自己紹介をすることとなった。
 一人目は転校生の彼女だった。彼女は先生に呼ばれ、教卓の上に立って話し始める。すると、なぜかざわついていた教室が張りつめた空気に変わった。
 「初めまして、岸田高校から来ました雪城音葉と申します。ここのクラスメートの清水君とは昔に交友があり、お会いできることを少し楽しみにしておりました。また、皆さんとも今後仲良くしていきたいと思っておりますので、気軽に話しかけてくれると幸いです。あと、そうですね、昔に声楽を習っておりましたので歌とか結構好きです。もし、よかったらカラオケとか誘って下さい。よろしくお願いします」
 そして、彼女が話し終わると教室が拍手で包まれ、空気がぐっと暖まる。まるでさっきまでの緊張感が嘘のように思えた。
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