トラック魔法を極めた王女の幼馴染兼護衛があらゆる困難を逆異世界転生させていきます【完結】

右助

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第5話 星降の剣

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「うわああああ!!!」

 叫ぶしかなかった。何せこの勇者、全く手加減する気がないのである!
 空気が震え、地面が振動し、ライドに無数の殺意が絡みつく! 何の罰ゲームなのか、彼には理解が追いついていなかった。
 ヴァレヘイムが大剣を振るうたびに、光の柱が生まれ、それがライドへ襲いかかる!

「僕に危ないと思わないのかァァァァ!」

「本気で思っているのなら、頭の病気だからさっさと消し去ってあげよう!」

 防戦一方だった。
 ヴァレヘイムの神速の攻撃をすんでのところで避け続けるだけ。そんなライドに、ヴァレヘイムは感嘆の声をあげる。

「とっくの昔に細切れになっているはずだ。だが、お前は私の攻撃に当たっていない。何かの手品かな? それとも……実力かァァァァァ!!!」

「避けられるだけの訓練を積んできたんだ! 悪いが一瞬では死んでやれない!」

 ヴァレヘイムの斬撃、そして迫りくる光の柱が徐々にライドを追い詰める。
 しかし、ライドはパニックになることはなく、ただじっと見て、回避行動を選択し続ける。しかし、このままでは避け続けているだけ。反撃には一切繋がっていない。
 唐突にヴァレヘイムは攻撃を止めた。

「しかし、君はどうしてこうも避けられる? いつもなら、相手は死にかけで、私に命乞いをする場面なのだがね」

「はぁ……はぁ……!」

「ふむ……君の回避の癖、何か思うところを感じる。これならどうかな?」

 ヴァレヘイムがおもむろに大剣を掲げた。すると、大剣に光が収束するッ!

「『星降ほしふりの剣』よッ! 力を寄越せッ!」

 突如、ライドの四方から光の柱が出現し、突撃してきた!
 いつかはやると思っていた攻撃だったので、ライドはそこまで狼狽えることはなかった。しかし、心構えと対処できるかはまた別問題。

「こ……れ……はぁ!」

 同時に突撃してくるヴァレヘイム。光の柱をやり過ごせたとしても、ヴァレヘイムの剣が待っている。

(解禁する勇気を持たなくてはならない……!)

 ライドは魔力を全身に巡らせ、そして魔法を起動する。
 起動とほぼ同時、光の柱がライドへ着弾した! 爆音、そして土煙が上がる!
 一度立ち止まったヴァレヘイムは手応えを感じていた。木っ端微塵に出来た感触だ。

「ははははは!!」

 顔を手で覆い、ヴァレヘイムは思わず高笑いをあげた。絶対的な力を振るい、圧倒的な勝利を飾る。なんたる愉悦。これ以上の快楽がどこにあろうか。
 お付きを粉砕された気分はどんなものだろうかと、ヴァレヘイムは指の隙間から、ルピスを見た。泣きわめいている姿が目に――。

「……? 奇妙だな。死んだのだぞ、今、お前の大事な護衛が」

「ライドが? それはないわ。だってライドが死んだと思ったら、私はもう自決しているもの」

「……」

 そこでヴァレヘイムは少し違和感を抱いた。土煙が薄くなってきたが、妙な影があった。壁、というには些か妙だ。何せ、そのシルエットは……。

「なんだ……と」

 鈍色に光る巨躯、どんな悪路でも走破できそうな駆動輪、獲物を絶対に逃さぬフロントライト。
 そう、様々な世界を観測してきた有識者の皆さまなら、既にこの存在が何なのか知っている。

「なんだあの物体は!?」

「鋼鉄の猛牛……トラックとも言う」

 トラックの下からもぞもぞとライドが這い出てきた。その身には一切の傷はない。

「トラック……だと? それがその召喚獣の名か?」

「召喚獣? トラックに呼吸はない。……燃える水を餌にしているようだけどな」

 役目を終えたトラックがどこかへ走り去っていく。
 ヴァレヘイムは油断なくそれを目で追っていた。

「あれは特にお前の言うことを聞いて、柔軟に動いている訳ではなさそうだな」

「そうだ。奴はその時に下した命令を忠実に実行するだけだ」

「はははは! そうか、少し驚いてしまったが、タネが分かれば何も怖くない」

 再び大剣を構え、ヴァレヘイムはライドに対し、死刑宣告をする。
 真正面から殺気を浴びるライドの顔にまだまだ諦めはなかった。

「さて、終わりだ。いよいよ私は本気を出す。そうなれば、もうお前に止める術はない」

 言いながら、ヴァレヘイムが大剣を前に突き出した。

「この剣は『星降ほしふりの剣』という。星の光を収束し、使用者の力と為す聖剣の一種だ。私はこの剣の潜在能力を解放する。すると、どうなると思う?」

「まさかこの一帯が吹き飛ぶだなんて言わないよな」

「正解だ。景品として、お前には間近で我が剣の解放を見た瞬間、爆散する権利をあげよう」

「絶対にいらん。というか、申し訳ないが、僕に死ぬつもりは一切ない。そのための用意はしている」

「見せてもらおうか」

 ヴァレヘイムの剣に星の光が収束するッ! 天地海が震えるッ! 刀身に秘められた力の量は、そのまま破壊力と同義ッ!
 勇者の言に偽りはなく、比喩表現抜きでこの周辺が焼け野原になる。
 このままライドとルピスはまとめて吹き飛ばされてしまうのか? 否、そんなバッドエンドはありえない。

 遠くから轟音が迫っていた。

「この音は……さっきのかァ!!!」


 鋼鉄の猛牛、またの名はトラックッ!


「人々の想いを載せたトラックが! たかが星の光を集めたぐらいじゃあ破れない!!!」

「吠えるなよ戦士未満がァァッ!! 私はガラリガリア帝国の勇者だ! その程度の鉄塊、叩き斬れぬと思ったかァァァァァ!!!」

 ヴァレヘイムの向きがトラックへと向き直るッ!
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