喫茶店のマスターと男の娘の恋の行方

巴月のん

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番外編

昔の倫の想い(番外編 ツイッター企画より)

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「つまらないわね。」
「そういうでないよ。君達はお嬢様だ。SPがつくのは当然のことだろう。」
「くだらないわ。私ごときがいないぐらいでつぶれる家ではないでしょうに。」

幼馴染だった光や啓仁が、SPのスペシャリストである市松家の人間であることと、私と姉の護衛担当であると知ったのは、つい最近のことで、あれよあれよという間に、光は正式に私の姉の護衛になった。ちなみに、私の護衛は、光の兄である啓仁だが、今は姉である菜津姫の相手をしている。
4人でいるのが当たり前ではあるが、彼らの正体に気づいてしまうと、以前のように接することができず、鬱陶しくさえ感じるのはなぜだろうか。

どうやら、思っていたことが顔に出ていたらしく、光が宥めてきた。

「まぁまぁ。それより、今日はどこへ買い物へ?」

光に質問を受けたのを迷わず姉に振った。光の眉間にしわが寄ったが、見なかったことにする。

「姫、今日はどこへ?」
「私ね、前に光が言っていたパフェが美味しいお店に行きたいの・・・ダメかしら?」

見た目だけは清楚系の姉はおっとりとした口調で光に返事をしていた。どう見てもしなを作っているのはバレバレだが、光は敢えてスルーしているのだろう。

(まあ、光の今の対応は妥当な判断だよ。一応は姉の方に継承権があるわけだから・・・今は、ね。)

「もちろん問題ありません。・・・あそこは前に倫と一緒に行ったな。兄さん、手配を頼む。」
「待て、なぜお前が倫姫様と一緒に行ったのだ?」
「学校の帰りにちょっとね」

ぎろりと光を睨みつけてくる啓仁を見た私と光はお互いに目配せしあった。

(・・・こうしてみると私達だけじゃなくどこの兄弟(姉妹)も大変なのね。)

私から見ても光は才能があるとすぐにわかる。少々融通が利かないが腕は確かだといわれている啓仁だが、光に対してはコンプレックスがあるようだ。

(無理はないよね・・・だって、ほとんどの依頼人に頼られるのは啓仁。でも、人脈が広くてリピーターが来るのは光の方らしい。)

「どうしたのだ、倫よ。」

(・・・まぁ、光の場合は素っ頓狂なしゃべり方が面白いってこともあるんだろけれど)

光から呼びかけられたことで、我に返る。納得がいっていない啓仁に対して、強引に押し切ったのは、らちが明かないと判断したから。

「別に。それより、啓仁・・・早く予約してきて。」
「っ・・・わか、りました。」

命令には逆らえないとばかりに携帯電話を取り出して交渉を始めた。彼に対して思うことがあったのか、姉がこてんと、首を傾げながら口を開いた。

「少し言いすぎじゃないかしら?」
「これぐらいは普通でしょう。」
「そうかしら、ちょっと啓仁がかわいそうじゃない?」
「・・・」

納得がいかないと眉間にしわを寄せている菜津姫だが、光は首を傾げている。
お陰で、私自身が普通だと分かってよかったが。菜津姫は昔から、倫姫のすることなすことに文句をつけてくることが多い。
いろいろやっても変わらず、結局今日まで来てしまったわけだが。

「・・・とりあえず、行きましょうか。」

交渉が終わった啓仁が戻ってきたのを機に、みんなで出発した。


「わぁ、とっても美味しい!ここに来れて嬉しいわ。ありがとう、光」
「どういたしまして。」
「・・・・・ちらっちらっとこっちを見てるけれど、貴方もほめてほしいの?」
「い、いや、そんなことはありませんっ!俺は、俺はもうその、一人前ですから!」
「そう。」
「・・・・・・・。」

一応姉に言われたから、少し啓仁を気にしたのに、なぜかこちらを恨めし気に見てくる。「変なの・・・」と思いながらも、会話している姉と光をぼんやりと眺めた。

(あ、向こうは楽しそうだなぁ・・・)

今のところ、光は姉に会話を合わせている。彼は、対象者のリサーチを欠かさない。それもあって、姉は光に懐いている。
・・・ただ、それを面白くないと思う自分がいることも確かで。


(あ、ダメだ、落ち込むな・・・自分。光は私の護衛じゃないし、彼は私との約束を果たそうとしている。)



ここで、私が折れるわけにはいかない
諦めるわけにはいかない



佐野家を掌握するその時までは




笑え、笑って、笑うんだ、この想いに蓋を



私は、佐野 倫姫




『我が家の家訓は惚れた相手ならだれが相手であろうとも全力で守るべし』



(そうですよね、おじい様・・・!!)


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