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番外編:虎が見守ってきた龍の片想い(1)
しおりを挟む最近、うちの総長(族長)が頭壊れ出した。いや、賢いけれど基本アホだしな・・・アイツ。でも、いつもよりさらに頭が馬鹿になっているような気がする。
ため息をつくことが増えた。
なぜか最近バイクを使わずに登校するようになり、帰り道はうろうろと決まった場所を歩き出した。
歩き終わった後はきまって落ち込むパターンも増えた。(当時は無免許。真似しないよーに!)
学校に行く頻度が増えた・・・図書部の仕事以外は一切する気がなかったヤツが!!
勉強をまじめにするようになった・・・とはいっても、テストの点数をあげたぐらいで、授業はまともに出ていないが。
何より一番の驚きは
「あーまた、コンパかナンパか?勝手にお前らだけで行ってこい。俺はもう女狂いの名前を返上すべく女遊びを止めたんだカラ!」
とキリッという顔で言ってのけたこと。つまり禁欲宣言っつー奴だな。
族のだれもがまたまた冗談だろーと笑っていたがそいつらは全員のされた。
内心で誰もが信じなかったのも当然だ。それぐらい女遊びが途切れたときなんて一秒たりともみたことがないもん。
そしてその宣言から2ヶ月。八尋は未だに女遊びは一人たりともしていない。それどころか誘われても拒否する始末で、その上に、今まで付き合っていた女との関係も全部切ってアドレスも全部消去した模様。
・・・・どうやらマジらしい。
「・・・副族長、こりゃ、誰か好きな子でもできたんじゃないの・・・しかもマジもんの恋とか?」
幹部の一人がこっそりと言ってくる。確かにそうとしか思えないよな、ここまでくると。しょうがない、ここまで来たら話を聞かざるを得ない。それぐらいに八尋のため息がうっとうしくなり出したから。
「・・・・八尋、いい加減におにーさんにしゃべってごらん?一体誰に恋したんだよ?」
「何故わかったのーっ!?もしかして虎矢はエスパーかなんかー?」
「・・・・・・(やっぱりこいつアホだ。)」
顔を赤らめてもじもじしだした八尋にキモイとチョップをかました後、無理やり話をいろいろ聞きだした結果。
はい、やっぱり好きな子ができたというパターンでした☆
「・・・・・あのさ、女狂いのお前が女の子に惚れたぐらいで・・・あれ?」
そういえば俺はこいつから初恋うんぬんなんて聞いたことないし。第一、こいつは黙っていても女が群がるヤツだ。こういう風に片想いなんざありえん・・・それに学校に行き出したっていうのも、微妙だ。それを踏まえると・・・
っってことは、もしや。
「・・・もしや、相手は一般の子で、同じ高校にいる子か?」
「だから、なんでわかるのー!?」
「・・・・・もういいから、経緯を説明して、ハイ、いますぐに!」
「えー、でもな・・・」
「俺だったらその子について調べられるぞ?うろうろ探してるってことは未だにその子のことわからな・・」
「さすが虎矢だ。頼りになる男ダネー。おーい、マスター、俺のおごりでこいつになんか作ってー!」
・・・・見事な掌の返し方だな、オイ。
ずるずるとカウンターの方に引きずられていった。マスターである従兄も面白そうににやにやと聞いているあたり、興味津々のようだな・・・このバカの片想いに。
ちなみに、このブロッサムは基本的に俺達のアジト。
それから、従兄も10年ほど前は某暴走族をやっていたが、今は家庭を持っているので引退して父から引き継いだこの店でマスターをやっている。
話がそれたが、八尋が色々と話し出したことを繋ぎに繋いでやっと話がみえてきた。
「・・・はあ、つまり、怪我をしているところを助けてもらったと」
「そーなの。あの黒髪で三つ編みの子にこのハンカチで怪我したところを巻いてもらってねー」
「あ、思い出した。あれだな。酔っ払ってるとこに喧嘩をふっかけられた時に、しくったとかっていう・・・確か1月ぐらいだったな?」
「それそれ」
「1月で、たまたまではあるが学校の帰り道にいた女の子で、細道を通ってでも怪我していた八尋を助けて手当てしてくれた子か。で、裾からは制服のスカートが見えていたと。制服って判断したのは、コートの端からスカートがみえていたからだよね?上の方は?」
「言われてみるとそうかも。上の方はマフラーで見えなかったヨー」
「・・・・じゃ、うちの高校じゃない可能性もあるな。うちの高校は紺色のスカートだから、他の高校とかぶってもおかしくない」
「えーーー!!じゃ、学校にせっせと通った意味がないじゃん!?」
「いや、たった一つだけ可能性がある・・・」
「というと?」
「お前を助けたのが夕方ということと、場所が細道だったことからちょっと判断が難しいんだが、もしかしたら・・・中学3年生の受験生である可能性も捨てきれない」
「・・・あっ、うちの高校を受けるために―!?」
「ああ、正確な日にちをお前が覚えていないから何とも言えないが、怪我したのが入試日に近かったような気がする。それなら、帰り道にいてもなかなか会えないっていう説明がつくしな・・・」
「・・・・そうか、他の地域から受けにきた可能性もあるってこと・・・・・すげー、やっぱ虎矢は凄いネー」
さすが副族長!!と抱きしめられても嬉しくねーよ。ごつい俺と同じぐらいの体型をしたバカとなんで抱き合わなきゃならん?
おい、そこの部下、ホモになったんすか?と引くのやめろ。俺は健全なるノーマルだ、馬鹿。
「いやいや、俺だってノーマルダカラ!あと、そこのバカは後でサンドバックね」
・・・・こいつにも聞こえていたらしい。
・・・悲鳴をあげだした部下は自業自得っつーことでほっておこう。
とりあえず、八尋はそういうことなら、結果がでる4月まで待つと言い出した。その間、テスト期間以外は一切学校に行くのを止めているあたり、彼女を探すためだけに行っていたのは明白だ。
「・・・なんちゅうわかりやすいヤツ。それにしてもおかしい、前よりバカ加減が悪化しているような」
眉間に皺を寄せつつも、俺も便乗して学校に行っていないから文句は言えないけど。(良い子の皆さんは学校や仕事へちゃんといこうねー!)
そして、運命の4月。俺達が高校2年生になった日の入学式。八尋はめっちゃくちゃ機嫌よさげに俺を引きずって学校へ行きやがった。
「・・・いるのかよ?」
「ううー見つからないーーー!!」
体育館の二階にこっそり忍び込んで、双眼鏡で見回している俺ら2人。わんさかと黒髪がたくさんいる上に、上からじゃなかなか見つからない・・・こりゃ無理かと思っていた時、新入生代表の挨拶という声が聞こえた。代表は基本的に、首席が選ばれる。それにちょっと興味があった俺はそっちに目を向けた。新入生代表に選ばれた子はおさげの三つ編みをした女の子だった。八尋の言う条件に合いそうだなと思い、八尋に伝えたら、かなり食いついた。
「八尋、新入生代表の子、三つ編みだよ?」
「え、どこどこー!?あ、ほんとだ、舞台上に・・・ああっ!!!!!」
思わず声をあげだした八尋の口を必死に抑えながら俺は舞台に上がった子の名前を耳で確認した。
「・・・タシロ カホ ちゃんか。この高校に首席で入学っつーことは相当頭がイイな」
「お前にいわれたくないとおもうよーお前だって入学式で新入生代表の挨拶したじゃん」
「あれは、お前がさぼったからだろ!」
「ソウダッタカナー? と、とにかく、見つかったからいいじゃんか!」
こっそりこっそりと忍び足で二階から降りて玄関の方へと逃げていく。彼女のことがわかれば、入学式や学校に用はない。撤収とばかりにブロッサムへと向かって行く。その間にも会話はやっぱり噂のカホちゃんのことで。
「とにかく、お前の探していた子で間違いないな?」
「おう、間違いないねー!やっぱり可愛いよな、見た?よくよく見るとさらに可愛く感じるのはなんでだろう。あのふとももに白い肌!さらさらな三つ編みも綺麗。血まみれの俺にハンカチを差し伸べてくれた優しさもたまったもんじゃないよね。あードキドキしてきた」
「お前の初めての女って、胸ボインのおねーさん。胸フェチのお前が何故にあの子を」
「恋は人を変えるってマジだねー。胸なんかどうでもよくなったヨー。あの子の胸ならAカップでも喜べる自信あるもん」
「とりあえず、女狂いの族長と付き合えるような子ではないとは思うな・・あの真面目そうな雰囲気からして」
「・・・その女狂いの話はなんとしても彼女に知られないようにしないと。彼女が嫌って言うなら、喜んで族なんて止めてやるからいい。なんなら髪の毛染めてもいいぐらい」
「いや、それはちょっと俺らが困るから止めて。意外に不良好みとかかも知れないし」
「・・・・とりあえず、授業がはじまったら学校行こうっと。首席ってことは自動的に1年A組だから、屋上からカホっていう子の授業を眺められるー!嬉しいー!!」
「お前もその間は授業だぞ」
「大丈夫、さぼるから!」
(嬉しそうにスキップしていくごつい体型のピンク髪の暴走族の長・・・・シュールだ。)
嬉しそうなテンションのままブロッサムへと入っていった八尋を呆れながら追いかけていく。マスターもそこにいた部下達も全員、ピンクのオーラを漂わせている八尋に唖然としている。うん、気持ちはわかるが、俺には止められん。
カウンターで嬉しそうににやにやとカクテルを飲む八尋。ああ、キモチワルイ。(ついでに良い子は真似しないよーに。)
「うふうふふ」
「ねー八尋」
「何―?」
「どうやって知り合うつもり?」
「え・・・・・もちろん、ハンカチを理由に・・・」
「そのハンカチは返さなくてもいいって言われてるんでしょ?」
「そ、そうだけれど」
「それ、逆に言うと、もう関わりたくないってことじゃ?」
「え、ええーーーーっ!?」
そ、そうなるのか!?と今頃気づいたようにふらっと床に崩れ落ちる八尋。さっきまでのテンションがウソのようにずどんと落ち込みだした。
「・・・・・で、でも、返すことでお礼を言えるチャンスだし!」
「で、それを渡したら関係はもうなくなると」
「はっ、そういう可能性もあるのか!いやいや、あの子と関係が切れるのは嫌――!それぐらいなら、ハンカチ渡さないで見守っているっ・・・・うう、あの子と話したいよう・・・!」
「・・・女声みたいに語尾を伸ばすな、気持ち悪いっつーの!」
うわーと床に伏して泣きだした八尋を見ては呆れてため息をつく。マスターもため息をついているあたりどうしようもないと思っているのだろう。
ただ、これだけは言えた。
こいつの恋はこれから本格的な片想いへと変化していくのは間違いなかろうと。
「とりあえず、ストーカーもどきなことだけは止めろよ」
「大丈夫、上靴を眺めたり、こっそりと体育とかクラブとかを眺めるだけにする」
「それがストーカーの第一歩になる行為だっつーの!」
ドヤ顔で言った八尋の頭を思わずハリセンで叩いた俺は絶対に悪くない。
・・・・・なんで本当に前よりバカになってんだよ、うちの族長は!!
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