25 / 58
記念小説
猫の日記念:香帆が猫耳と尻尾持ちの子どもだったら?
しおりを挟む突然ですが、もし猫耳がついた子どもになっていたらどうしますか?
香帆は困っていた。起きた時に手が小さくなっていることに気づいたからだ。慌てて身体を確認すると、足も身体も小さくなってしまっている。着ていたパジャマもブカブカだ。
「・・・・これはなんでしょうかにゃ」
心なしか、声も幼くなっていることにも気づいた。
慌ててベッドからそろそろと降りて、鏡で姿を確認してみると、猫耳がついた幼い頃の香帆がそこに立っていた。ちなみに猫耳だけではなく、長い尻尾もついていた。黒い色を見るに、黒猫のイメージなのだろう。困惑したが、額に月のマークがなかっただけ良しとしよう。
「にゃふ・・・これ・・・・・にゃにゃと・・・言いにくいですにゃ」
どうしても猫っぽい声が出る。語尾ににゃーと付けたくないのにどうしてもにゃとつけて言ってしまうのはこれいかに。
こうなってしまった以上、仕方がないとばかりに、香帆は押入れからなんとか着れそうなTシャツを引っ張り出し、尻尾の部分だけ穴をあけてから、頭からかぶった。丁度すっぽりと腕がおさまり、ワンピースのような形で着ることが出来た。
「つぎは・・・とりあえず、せんぱぃに電話ですにゃね・・・・きょぉのデート無理にゃと連絡をするです・・・・にゃ」
机に置いてあったスマホをなんとか操作して電話をかけてみた。
『香帆?おはよう、朝から電話なんて珍しいね。嬉しいけれど、どうしたのさ・・・はっ、もしかしてデートキャンセルとか?!』
「キャンセルですにゃが、できれば、うちに来てくださいにゃ。ちょっと大変なことが起きたのですにゃ」
『はうっ?なんで語尾がにゃにゃーになってるの―――?!!とりあえず、なんだかわからないけれどすぐそっちに行くからね!俺が行くまで絶対にドアを開けちゃだめだよ!窓も開けないようにね~?マジですぐ、超特急で行くからねっ、安全運転で飛ばすカラ!』
「はいにゃ・・・・お願いしますにゃ」
電話を切った直後に、へのたりと耳が項垂れたのは、自分の情けなさによるもの。
というのも、香帆の今の身長も小さくなっているので、どうしても玄関のドアを開けられる身長ではない。
一生懸命箱を積み重ねてよじ登って、なんとか鍵を開けることぐらいはできた。
しかし、小さくなった体では力も入らないので、重いドアを開けることはできない。だからこそ、八尋先輩に来てもらうようにとお願いしたのだ。
しばらくすると、外からバイクの音が聞こえた。窓を覗くと、ヘルメットを外してこちらを見てきた先輩と目があった。
唖然としている先輩の顔を見た香帆はやっぱりという顔でがっくりと項垂れた。
しばらくしてから扉が開いて、八尋先輩が箱をどけながら入ってきた。
「香帆・・・なに、その可愛い猫耳に尻尾っ・・それに、小さくなってるよねー!?」
「・・・・・うにゃ・・・わかんないのですにゃ」
とてとてと歩いて、八尋に近寄って両手を広げると、八尋が抱き上げてくれた。
「可愛い~。何、このふわふわな耳の手触り!髪の毛もさらさらだし、何、この天使の輪のような艶は!!この頃から髪の毛もさらさらで長かったんだね~?今は何歳ぐらいなの?」
「えっと、多分、三歳の頃なのにゃと思いますにゃ・・・」
小さな指を三本立てて答えると、何故か先輩に再びぎゅっと抱きしめられた。ちょっと苦しいですにゃ・・・。
「何、この凶悪な可愛さは。しかも、よく見たらTシャツじゃん」
「小さいサイズの服がないのですにゃ」
「おおう、指も小さくて可愛い。とりあえず、服を買ってくるから待っていて。あ、ご飯は?」
「冷蔵庫、重くて開けられないのですにゃ」
「悪いけど、冷蔵庫開けるよ・・・・あ、これなら、材料は揃っているから大丈夫かな。先に料理だけしてから、買い物行くね」
そういいながら、八尋はてきぱきと冷蔵庫から野菜や卵、ミソなどを取り出して、キッチンを使って、あっという間に香帆の朝食を作ってくれた。
(先輩は以前にお父さんと2人暮らしだから家事は大の得意だって言っていましたっけ。
普段は面倒だからやらないだけで、八尋の作る料理は美味しいよと、虎矢さんが言っていました。・・・・まさかこの姿で、味わうことになるとは思いませんでしたけれど。)
「はい、一応子どもサイズで作っておいたよ。味噌汁、ごはん、卵焼き、魚、ポテトサラダ。王道の和食だけれど、食べられないものはない?大丈夫?スプーンとフォークも用意したからね?」
「・・・美味しそうですにゃ。いただきますにゃ」
居間のテーブルに運ばれた朝食を見た香帆は、目をキラキラさせてフォークを手に持って食べだした。尻尾がバタバタと嬉しそうに揺れている。
「テザートはこれね、苺ジャム入りのヨーグルト。じゃあ、俺は買い物に行ってくるからね~。大人しく待っているんだよ。あ、鍵は借りて行くねっ!」
頭を撫でてから、勢いよく出ていった八尋を見送った香帆は再び朝食に没頭した。身体が小さくなったせいか、お腹が膨らむのも早かった。
ごちそうさまと手を合わせて、フォークをおいて、次にヨーグルトをちまちまと食べた。
食べ終えた香帆は、テレビをつけ、ニュースをじっと見つめながら、八尋が来るのを待っていた。しばらくすると、八尋が大量の荷物を持って戻ってきた。
「おかえりなさいにゃ」
「ただいま、急いで買ってきたけれど、足りなかったらごめん。でも、なんていうか・・・調子が狂うねぇ・・・俺も、いつもの口調がなんかうまく出ない気がする~」
「せんぱぃ、ごめんなさいにゃ」
「香帆は全然悪くないんだけれどねぇ。とりあえず、コレに着替えてみて~?さっきダグを取るついでに、尻尾の穴もあけておいたから」
そう言いながら服を渡してきた八尋に頷いた香帆は、八尋が買ってきたワンピースを持ってお風呂場へ着替えに向かった。
少し大きい花の柄で赤いワンピースを着終えた香帆は、Tシャツをカゴへ入れて、再び台所へ戻った。
すると、丁度、八尋が後片づけをしてくれているところだった。
「あれ・・・片付けてくれましたにゃ?ありがとうございますにゃ」
ペコリとお辞儀をすると、先輩が頭を撫でてくれた。ふと、香帆は思いだした。頭を撫でられるのも結構久しぶりだなと。
そう思うと、ついつい、甘え声が出てしまう。
「・・・・せんぱぃの手、気持ちいいですにゃ・・・ってなしですにゃにゃ!!」
我に返ってみると何故かにゃにゃと語尾が続いてしまう。それにとどめを刺されたとばかりに項垂れた香帆。
だが、八尋はそれぐらい気にしないと笑い、香帆を抱き上げて頭を撫で続けてくれた。
香帆は照れ隠しも含めてなけなしの文句を口にしたが、完全に八尋が上手だったことは言うまでもない。
「せんぱぃは、甘やかしすぎなのですにゃ・・」
結局、八尋は一日中香帆の傍にいて、ずっと甲斐甲斐しく世話をしてくれていた。
昼は香帆のリクエストでサンドイッチを作り、おやつはホットケーキ。
でろでろに甘やかされたが、お風呂だけは絶対に一緒に入りたくないと拒否しまくった。
子ども姿をいいことに泣いて暴れてただこねてやった。
「やだですにゃああああ、風呂は別でいいのですにゃ!!」
「でも、1人でお風呂は危ないよ?」
「シャワーでいいのにゃ!」
「いや、1人じゃ、シャワーのホースも取れないんじゃ・・・?」
「・・・せんぱぃ、これでもわたにゃは、おにゃごなのですにゃ!!むりじぃしたにゃら、そのときはおわかれなのにゃ――――!!」
「うーん、それは嫌だし・・・じゃあ、妥協して、濡れタオルしかないよね~」
ということで、八尋はせっせと大量の熱い濡れタオルを大量に用意してカゴに入れてくれた。
香帆はそれを受け取って、脱衣所で一人せっせとタオルを使って体を拭いた。
拭き終わったタオルは先輩に頼んで、全部カゴから洗濯機に入れて洗ってもらった。経済的でとってもエコだと八尋も香帆も頷いた。
「エコはとってもいいことなのですにゃ」
「そうですにゃ」
「せんぱぃもにゃにゃ言ってますにゃ」
「うん、ちょっと語尾が移っちゃったね~」
テレビを見ている時には尻尾まで揺れていたので、八尋に笑われていた。
八尋にドライヤーで髪を乾かしてもらい、猫耳や尻尾も綺麗にしてもらった。
なんだかんだ言って、八尋は香帆が寝付くその時まで、傍にいてくれていた。
「・・・八尋せんぱぃは甘いですにゃ。わにゃしは・・・そんなかちないのですにゃに」
うつらうつらと瞼が閉じそうになるのは、きっと身体が小さいからなのだろう。布団にすでに入っていた香帆は次第に眠気に負けて瞼を閉じた。
「香帆はそのままでいいんだよ。ありのままの香帆だからこそ、惚れたんだから」
その眠りにつく少し前に額に八尋の唇が触れたのはきっと気のせいなのだろう・・・と思いたい。
次の日の朝、目を覚ました香帆は自分の身体や手が縮んでいないことに気づいた。
頭を触っても猫耳がないし、お尻を見てみても尻尾は生えていなかった。
その割にはリアルな夢だったと、香帆は首を傾げた。
「・・・・・・あれ・・・・夢・・・・だったのですか?」
疑問を口にしていると、物音がして引き戸から八尋が顔を見せた。
「あ。起きたね、香帆~もう大丈夫?熱は下がった?」
「先輩・・・」
「どうしたの、びっくりした顔をしてさ」
「・・・なんで、先輩がいるんですか?」
「なんでって・・・昨日の朝に香帆から電話してきたんだよ~?風邪だからデートをキャンセルしますって言っていたじゃん。心配だから、慌てて泊まりで看病にきたんだよ。ちなみに、さっきまで、おかゆを作ってたの~」
八尋が持ってきたおかゆを見て、納得した香帆は、長い間見ていた夢を思い出していた。
(夢っていうか・・・リアルすぎて、私の願望かと思ったぐらい。そうか、子ども姿とにゃ以外は現実だったのね。)
「・・・とりあえず、八尋先輩・・・ありがとうございましたにゃ」
自分らしくもない。だからこそ、熱に浮かされている今しかお礼を言えないと、香帆は解っていた。だからこその『にゃ発言』である。
この発言に唖然としていた先輩の顔を見た香帆は手を合わせてからおかゆを食べだした。
(・・・最後につけ足した『にゃ』は・・・サービス料ですよ、看病と頭を撫でてくれたことに対する、ね。)
何故か先輩は、「・・・・我慢したご褒美なんですにゃな、ありがとう、神様!」とかなんとか言ってましたけれど。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる