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番外編
番外編)アリアからの暗号文(ラティス目線)
しおりを挟む俺はラティス。兵団に在籍中。前は門番が主な仕事だったが、家出ならぬ城出したアリア様と関わったことが縁で、総団長でもある第二王子のザン様に目を付けられた。
いろいろいろいろいろいろあって、今はアリア様の護衛隊長を務めている。
・・・間違っても昇進だとか出世だとかそんなおめでたい話ではない。
目を付けられている=やつあたり対象にもなっているのと同意義なのだから。
何にしろ、ザン様とは最初の会話からして最悪すぎたのだ。そもそも、ザン様を殿下と呼ぶほど格下だった俺がまさか名前を覚えられ、嫉妬によるやつあ・・・ゲフンゲフン、訓練相手にされるほどになるとはだれも予想できまい。
そして、その原因があのくそ親父だったことを後になって知ったわけだが、過去は巻き戻せん・・・あ、目から変な汁が・・・うう、しょっぱい。
「よう、ラティス?」
「おお・・・」
「何だ、またあの夫婦の痴話喧嘩に巻き込まれでもしたか?」
「解ってるなら助けてくれっス・・・」
「嫌だね、俺も命が惜しい」
・・・俺の被害を身近で見ているこの悪友もさすがにザン様の素に薄々気付いている節がある。それでも敢えて踏み込まないあたりがさすがだなと思う。
・・・ザン様が隠すのが下手というわけじゃない。ただ、さすがのザン様もアリア様を前にすると素に戻るようで、口調がアレになる。その様子を目撃した兵士もちらほらいるわけで。この悪友もその中の一人だった。
ちなみにこの悪友、真っ先に俺のところにきてまさか、今までの訓練の原因はあれか!と見破った数少ない心の友である・・・あ、また変な汁がだらだらと。
「もういい加減泣くな。泣きたくなる気持ちはわからんでもない。しかし、こんなに始末しなきゃいけないとか大変だな」
悪友が言う通り、俺の目の前には包装された彩り豊かな箱やら手紙やらいろいろと積み重なっている。アリア様が仕事の間だけ他の兵士に任せて、これらを処分するのが最近の仕事になっている。悪友は大変だと言ってくれるが、俺にとっては苦にはならない作業だ。
「アリア様は聖女であり、ザン様の弱点でもあるっスからねー狙われる理由なんてそれだけでもうお腹いっぱいっスわ。あ、これは開けちゃダメなヤツだ。あ、これは大丈夫っぽいな」
「お前、本当に仕事になると真面目になるのな・・・」
「何を当たり前のことを言っているんスか?」
「ああ、うん・・・はぁ、俺も仕事に戻るかな」
そういっても、悪友もなかなかに真面目なやつだと思う。ちなみに彼はアリア様への献上品の窓口兼管理担当者だ。だから、仕事といってもすぐそばにいてくれるし、同じ部屋だ。
「む?これはザン様に頼むか」
開けても大丈夫なもの、開けたらダメなものを仕分けしていく。・・・大概悪意がある魔力がこもっているから判別は簡単だ。面倒なのは、魔呪符とか呪いとかそんな類。特に魔呪符や魔導具で作られたヤツの中には精巧なものだってある。そういうのだけはさすがの俺でもなかなか見分けがつかない。そういうものはザン様直々に確認していただくことになっている。
今日のノルマをやっと終えて少し落ち着いた頃、ドアが開いた。
背伸びしながらドアの方を見ると、不機嫌マックスなザン様が立っていた。
(あ、何かあったな・・・今度は何をyarakasita!?)
はた目にはキラキラスマイルだけれど、もう猫かぶりなど見飽きた俺には眉毛一つでわかる。
ちなみに、アリア様からザン様の機嫌検定なるものを出されて全問正解して認定書をもらったこともある。
・・・嬉しさ(ということにしてくれ)のあまりに涙を流したのは秘密だ・・・そういうことにしてくれ。でないと、ザン様からの仕置きが(以下略
「ラティス、君はどう思うのかな?」
「ザン様、さすがの俺も説明がなければわかりません」
アリア様でいう似非スマイルだか似非笑みだかを眺めながら返事を返すと、困惑した様子でメッセージカードを差し出してきた。
失礼を詫びながらそのメッセージカードを見ると不思議な文字が並んでいた。一番下には動物が書かれている。その動物の下にもこれまた不思議な文字が書かれている・・・。
『たざぬん、きよるたごたはぬんはとたくぬせきいきはんばーたきぐだぬよた。いったしぬょにきたべよたうぬねぬ!』
これはザン様も困惑するわな・・・と納得して見上げると、ザン様は笑顔で俺の首を掴んできた。
「ということで、これの解読を手伝いなさい」
「はぁ。でも心当たりはあるんスか?」
「フェルディ老ならこれを解析できる可能性があるでしょうね」
あ、だから、俺が必要だったわけですね、なるほどなるほど。
理解すると遠い目になってしまうのも無理ない。
フェルディ老という方はすごく厳格な人で、図書館の司書長を務めている。護衛を連れずに歩き回ることを心配してくれるので、ザン様にとっても頭が上がらない人である模様。
ようするに俺を護衛として連れて行くというわけだ。
つまり、アリア様の傍にはシャラさんがいると。
それなら問題ないか・・・と思っていたら、いきなり後ろから引っ張る力が消えた。
あれと思っていたら、一瞬で真っ暗に。
・・・何かあった?
「いますか、フェルディ老?」
「ふぉ?珍しいですなぁ、ザン殿下がこちらに来られるとは・・・む?護衛はどうされました?」
「今日は休みと聞いたので。ここに来るまで随分苦労しましたよ。ちゃんと護衛もこちらに」
「オジャマサセテイタダキマス」
「ぼろぼろのようじゃが、大丈夫なのかね?」
「心配いりません。彼はかなり頑丈にできていますので」
「ザン様、いくら俺でもいきなり支えがなくなったら危険です」
気付いた時には、フェルディ老とお会いしていた不思議。
頭にできたこぶは気にしない・・・気にしたら負けだ・・・ぐふふ、もう何度も流した汁は酸っぱさを通り越して味すらしなくなってる、コワいっスわ・・・。
俺は一応護衛という手前、座りあっている二人の会話を立ちながら聞いていた。
ザン様が真剣に相談したいことがあるとメッセージカードを見せると、フェルディ老はそれを一読した後、いきなりふぉふぉと笑い出した。
「ああ、なるほどなるほど。これはかわいらしいことですな」
「は?」
「ザン様、これは暗号文になっております。それに・・・」
「暗号文・・・まだ何か?」
「これは時間に制限がありますな。そう・・・家に帰るまでに解かねばならない暗号文であります」
「・・・しかし、かわいらしいことというと、そう緊迫した問題ではないということですよね?」
「そうです。しかし・・・これを解けなかった場合、アリア様が悲しまれる可能性はおありかと」
ザンはその瞬間すっと能面になった。あ、これは俺にも理解できる。
きっとザン様は思っている。アリア様がそんなしおらしい人間か?と。
うん・・俺もクチにだせないけれどそう思う。どちらかというと・・・暗号文なら挑戦状というほうがしっくりくる。
うん、アリア様ならやりかねない。
「そうですね、ラティスの考えている通りだと思いますよ」
ぎゃふん・・・また当てられた!!
やっぱりコワイの通り越してすげーわ、この人。
俺の考えてることを軽々さくさくっと当てていくんスから。
「・・・ヒントぐらいはいただけませんでしょうか。それに、この言語は何なのです?」
「ふむ、では、特別に五十音表を貸して差し上げましょう。これはアリア様の世界の言葉ですな・・・日本語という特殊な言葉でございますじゃ。今回は時間がない故、ゆっくり話はできませぬが、ザン様はこちらの文字を覚えるのもまた楽しかろうかと」
ふぉふぉと笑っているフェルディ老は本当にザン様にすべて解かせるつもりでいるのだろう。ザン様は眉間にしわを寄せながらしばらく五十音表とにらめっこしていた。
「そういえば、ラティスといったか? そなた、護衛という割には殿下と仲がよさそうじゃな?」
フェルディ老の指摘に敬礼して返事を返すとなるほどと笑われた。一体何でだろう?
「はっ、普段はアリア様の護衛を担当しており、その縁で話をする機会が多いためであります。」
「おお、そうか、そういうことであったか。なるほどの・・・」
フェルディ老の笑いに困惑していると、ザン様がいきなり声をあげた。驚いてザン様をみやると、慌てた様子で時計を確認して帰る!と言い残して一瞬にして消えていった。
あの、残された俺は一体・・・・
「どうやら、本当に解読されたようですなぁ。よかったですじゃ。そなたもおかえりになるがよかろう」
「・・・何のために俺はついてきたのか・・・うう・・・」
「まぁ、夫婦の仲が良いのはいいことですじゃ」
しんっと静まった部屋に再びフェルディ老の笑い声が響いたが、俺にとってはむなしいだけだ。
本来ならぼやくことは許されない立場だが、哀れに思ってか見逃してくださったのだろう。
しょうがない、帰ろうと思った時にふと聞いてみようと思い立った。
「フェルディ老、せめてあのメッセージカードの意味を教えてくださいませんか?」
「ふぉふぉ、それはやめたほうがよろしかろう。またザン様の嫉妬を受けるはめになりますからの」
「ああ、それは困りますね・・・ってなんでそれを!?」
「孫娘からよう聞いておったからのう、さぁ、気を付けて帰るのじゃぞ」
「・・・・まご、むすめ?」
一歩玄関に出ると一瞬にして扉が閉じた。フェルディ老の姿ももちろんもう見えない。しょうがなく、城へ歩いて戻ることにした。
へろへろになりながら城に着くと、シャラさんが迎えに立ってくれていた。
「あれ、シャラさんじゃないスか。どうしてこちらに?」
「お爺様が心配して連絡をくださったのよ」
おじいさま と まごむすめ
ああ、なるほど・・・・・・・・!!
「世の中狭いっすね・・・」
「それを言うならあなたもでしょうよ」
「それは言わないお約束っス・・・・・!!」
シャラさんの言いたいことはわかる。
わかるけれど、それは言っちゃダメなんすよ・・・特に、弟がまだ幼い今は・・・!!!!!
あのくそ親父がやらかしたせいで、いろいろとあれだから!!
「そういえば、ザン様はどうされてるんすか?」
「え?普通にアリア様と一緒にいますけれど」
・・・ほんと、なんだったんスかね、謎の暗号文っていうやつは。
ザン様に聞きたいけれど、嫉妬かと誤解されても嫌だし・・・いつかアリア様に教えてもらおうかな~
・・・ザン様がいないところでこっそりと聞いてみよう。
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