124 / 126
スピンオフ
現代版ザンアリ『副社長と彼女の恋愛事情』(18)完
しおりを挟む*第二王子と妃の夫婦事情【スピンオフ】現代版ザンアリ『副社長と彼女の恋愛事情』(18) 完
※ザンがアリアと同じ世界の人間だったら?という話です
胸が痛い。でも、これは言っちゃダメ。口にしちゃダメ。
だって、契約だもの。ザンは・・・私に欲情はしてくれるけれど、それ以上の感情はないと思う。
最初の出会いの時を思い出してみてもそうだ。
お互いに恋愛感情なんて持っていなかった。それは明らかで確かな事実。
そりゃあ、同棲してるから、情は沸くよ?
それに、楽しかったし、身体の相性もいいみたいだし。
それはいいかえれば、彼にとっては凄く都合がいいってことで。
・・・きっと、破棄した後、彼は会社にとってメリットがある結婚するんだろうな。
ああ、胸が痛い。
アレクサンダーはなぜかいつもと違って自信がなさそうに眉間に皺を寄せていた。
有亜が黙っていると、なぜかいつもの尊大な態度ではなく、何かを迷っている様子だった。
何か言いづらい話題なのかと思い、しばらくはじっと見つめているだけにとどめていた。ようやく意を決したとばかりにアレクサンダーが口を開く。
「まず、なんといえばいいのか。少なくとも、性急に話を勧めたことは謝らねばなるまい」
「うん・・・それは契約の話だよね?」
「そうだ。いや、そんな顔をするな。いいか、俺はあーそーのー」
「やっぱり!そうだよね、ちゃんと契約の内容を確認しないといけないもの!大丈夫、私も考えてきたの」
そう、破棄しても苦しくないように色々と。例えば、同棲はいつ解消するのか。破棄したら仕事の部署を変えてほしいとか。
「いや、だからな・・・」
「大丈夫よ。ザンがまだ細かいところを決めてないなら無理に婚約届を出すことないし、気長にいこうよ?」
彼が言いづらそうにしていた原因に思い当たり、心配ないよとばかりに彼の両手を包み込んで励ましたら彼が何とも言えない表情を見せていた。あれ?こんな顏珍しいな?
「・・・有亜。いや、そうじゃなくてだな。俺は、契約をその・・・取り消したいなと思ってる。」
有亜はまさかの発言に固まった。それは一体どういういみだろうか。思わず握り締めていた手を外して、下を向いた。
契約結婚を辞めたいということはつまり、ザンに取っては合わなかったということだ。
なんてこと。ここまで来て今更とは思ったが、何か理由があるに違いない。逆に考えれば、結婚まで行かなくてまだよかったとも言える。
・・・・多分。まだ、傷は浅いから。今の内なら、まだ引き返せる・・・!
拳をぎゅっと握り締めて、無理に笑おうとするが、顔をまともに上げられない。声がうまく出ないのは解っている。それでも、鼻をすするのをやめられない。だって、すすりでもしなきゃ涙がでそうで怖い。
「・・・そっか。じゃあ、私はここにのころ・・・」
なんとか声を振り絞ったその時、目の前に彼の顏がアップになり、そのまま口づけられた。
突然の行動に訳が分からず、有亜は必死に抵抗するが、彼の舌が口の中まで入り込み、蹂躙してくる。舌を絡みとり、歯茎を舐めとり、時折、唾液と一緒に唇を吸われるのはこれいかに。
息苦しさから彼の広い胸を叩くが、びくともしない。数秒はゆうに経った頃、ようやく解放された。
「んふ・・・なんで・・・・?」
「変なことを考えているからだ。いいか、お前が嫌いだからとかそういう理由で辞めたいんじゃない」
「じゃあなんで・・・・あっ、もしかしてあいじ・・・いたっ!」
愛人に?と聞く前に額に衝撃が来た。彼が額をごっつんごさせたのだ。地味に痛いと額をさすると、彼が頬にキスしてきた。・・・・とんでもない告白と一緒に。
「愛人になんて愚かな。それぐらいなら我が妻としてファミリーの一員に迎えるほうがよほどいいに決まっている」
「・・・でも、契約は止めるんじゃなかった?」
「そうだ。その上でこう言っている・・・俺の妻になってほしいと」
・・・・・・・・・・・・・彼の言葉を何度か嚙み締めて訳文を必死に考えるが、脳は都合のよいようにしか捉えてくれない。これではあまりにも自分に甘すぎる。これはいかんと思った有亜は思わず、彼に聞いていた。
「一応お尋ねしますが、それは・・・契約を白紙にした上で?他になんらかの意図とかは・・・」
「日本語だと穿った目になってしまうということだな。いいだろう。ならば、言い換えよう」
そういいながら、アレクサンダーはポケットから小さな箱を取り出した。その形状の箱はテレビや恋愛小説に幾度も出てくるアレが入っているのだとさすがの有亜にもわかった。
いつの間にか涙を我慢できずにぼたぼたと流していた有亜の前に、ザンが片膝をついた。
「癪ではあるが、父の言う恋愛結婚も悪くないと君との生活で認識を改めた。ああ、認めよう、本当に君と過ごした日々は楽しくてたまらなかった。そして、できるならばこれからも続けていけたらと願う」
何、これ。沖縄で一体何が起こってるの?ここ、日本だよね?
パニックになっている有亜の前に開かれた箱。その中にある台にダイヤモンドがついた指輪が鎮座している。
「さぁ、返事を聞かせてほしい。Would you marry me ?」
「い、イエス、い・・・Yes・・・もちろん!」
気付けば、有亜は精いっぱいの返事とともにアレクサンダーに抱き着いていた。その返事は届いているよとばかりにアレクサンダーもまためいっぱいアリアを抱きしめていたが。
「良かった」
「・・・・わ、たし・・だけだとばかり」
「そんなわけないだろう。少なくとも、お互い惹かれているだろうとは思っていたから、大丈夫だと過信していたんだ。君が契約をそこまで気にしてくれているとは思わなかったというか・・・」
「・・・・気にするに決まってるよ」
「等庭にもそう言われたよ・・・だから、すまないと謝っている」
「ふ、ふふ・・・謝ってるように聞こえないよ」
声を立てて笑うと、さらに抱きしめてくる力が強くなった。彼が項にキスしていることに気付き、くすぐったいと洩らすとなぜか頬の方に何度もキスしてきた。・・・もしかしたら、彼も意外に浮かれているのかなとさえ思ってしまう。
そして、我に返ったときはなぜか、周りにいた人たちが拍手していた。観光客がひゅーと口笛を吹いているのも見えた。
ここが観光地であることを思い出した有亜は慌てて降りようとするが、彼がおろしてくれなかった。かくして、有亜は羞恥心から顔を必死に上げないようにしながら彼に抱きかかえられて車へと入っていった。
「あーーーーもーーーーもう首里城には来ないっ!恥ずかしすぎる!」
「心配するな、結婚式の時はこれよりもっとたくさんの人間が来る」
「そういう問題じゃない、もうっ・・・!」
「・・・東京に帰ったらすぐに結婚式の準備にとりかかろう。ああ、そうだ、その前にこれを書いてくれないか」
彼がポケットから取り出したのは、ペンと・・・婚姻届けだった。
不思議と、最初に見た時と違って気分は高揚している。われながら単純だと思いながらペンを執った。
「これでいい?」
「完璧だ。いい機会だ、首里城でプロポーズしたことだし沖縄で受理してもらおうか」
「え、いや、それは止めて。さすがに親子二代でそれは嫌だ」
「ふむ。なら、東京か?それなら、さっさと帰らねばなるまい」
ああでもないこうでもないと言い合いながらも、有亜は色々と悩んでいたことがバカみたいだとさえ思えるようになった。そういえばと思いながらあれやこれやと聞いていたら、なんと、ザンが自慰ぐらいいくらでもするぞ、これでも人間だと言うではないか。
これを聞いた有亜はふと思った。もしかしたら、色々話し合ってみたらもっと別の見方がでてくるのではないかと。
そして、これからはそれがいつでもできるという状況になるわけだ。
それは楽しそうだ。逆に自分が聞かれることさえあるかもしれない。そう、例えば、先輩が何故ザンの秘書になっているのかとか。色々と言ってないこともたくさんある。
お互いに少しずつ話し合って、必要なことを共有していけば、もっともっと楽しみが広がると思うと嬉しくなるし、ワクワクする。
「ね、私達どんな夫婦になると思う?」
「・・・・とりあえず、毎日がハラハラドキドキになることは間違いないだろうな」
同じことを考えていたのかなと思うと、嬉しくて頬が緩む。有亜はおずおずながらも、アレクサンダーの肩にもたれ掛かった。
滅多に見せない甘えにアレクサンダーもいつものぶっきらぼうな言葉を封印したのか、無言で有亜の髪を撫でている。
撫でられている感覚に気持ちよさを感じたのか、有亜はそのまま目を瞑ろうとしたが、その前にふと言っていない言葉を思い出した。
アレクサンダーを見上げて、つんつんとスーツを引っ張ると、アレクサンダーだがいつになく優しく聞いてきた。一体どうしたんだと。
なんて伝えればいいのかな?
愛してる?
うーん、それは後でも言える。
今一番言いたい言葉ってなんだろう?
ああ、そうだ。好き。
そう、好きってシンプルに言えばいいだけだよね。
「あのね・・・アレクサンダー、私、貴方のことが好き」
「・・・あ、ああ、おれ・・・」
「ううん、返事、いらない。解っているから。ちゃんと、言いたかっただけなの。おやすみなさい」
「・・・おやすみ」
そのままトロンと目を瞑って眠りについた有亜は気付かなかった。アレクサンダーが珍しく顔を真っ赤に染めて悶えていたことに。
余談
アレクサンダーは真っ赤になった顔を片手で抑えながら、ひとまずはと運転手に向かって一言告げた。
「ふいうちは卑怯だ。このまま東京の市役所に向かう。その後は家に直行だ。仕事?そんなものキャンセルに決まっている。まずは空港だな」
「まー当然っスね、了解!!いやぁ。良かったっスね~」
「・・・・ふ、言いたいことがあるならいくらでも喚くがいい」
「ちきしょーーーー彼女ほししいぃいいsっすぅうううう!」
「ああ、その調子でいくらでも叫ぶがいい。今なら寛大な気持ちでいくらでも聞けそうだ」
「あんた、やっぱり鬼っスわ・・・」
HAPPY END!
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる