26 / 239
第一章 高校一年生(一学期)
ばかとあほ(美久里)
しおりを挟む
「馬鹿って言うなよ! 阿呆の方がマシだ!」
「どうしてですか? どっちも一緒でしょう?」
「違うって言ってんだろ!?」
「あ、あの~……二人とも何してるの?」
萌花との言い合いに、美久里が不安そうに入ってくる。
美久里の様子に勢いをそがれた朔良は、険しい顔のまま萌花から顔を逸らした。
萌花も気まづそうに目をしきりに動かしている。
「じ、実はね……些細なことで……その……朔良ちゃんに『馬鹿ですね』って柔らかい意味で言ったんですけど……でも……」
「馬鹿って言われたくないんだよなー。阿呆の方が何倍もいいよ」
申し訳なさそうに顔を俯かせる萌花と、まだ怒りが抜けていないらしい朔良。
そんな二人の様子を見て、美久里は不思議そうに首を傾げる。
「……馬鹿と阿呆って、同じじゃないの?」
馬鹿と阿呆はどちらも、共に『愚かなこと』『愚かな人』を表す言葉だったはず。
一体何が朔良をそこまで機嫌悪くさせるのだろうか。
だが、美久里の言葉が不満だったようで、朔良は顔を逸らして視線も合わせずに言う。
「同じじゃねーよ。いいか? 阿呆にはないが馬鹿にはある言葉の意味ってのがあるんだよ」
「へー……そうなんだ……」
それは初耳だ。
純粋にそれは興味があった。
阿呆にはなくて馬鹿にはある言葉の意味……どんなものが隠されているのだろう。
「それはな――度が過ぎていることや社会的常識に欠けている、って意味もあんだよ」
「……え、それ本当?」
朔良は物知りらしい。
美久里は心の底から感心した。
つまり馬鹿という言葉にはそれがあり、阿呆という言葉にはそれがないようだ。
「それなのに萌花が馬鹿って言うからさー……」
「そ、それは……! 全然知らなくて――っていうか細すぎませんか!?」
「じゃあお前は馬鹿って言われたいか?」
「うぐっ……そ、それは……その……」
まあ、この二人なら仲裁しなくてもそのうち仲直りするだろう。
美久里は一つ賢くなった気がして、賑やかなその場を離れた。
「どうしてですか? どっちも一緒でしょう?」
「違うって言ってんだろ!?」
「あ、あの~……二人とも何してるの?」
萌花との言い合いに、美久里が不安そうに入ってくる。
美久里の様子に勢いをそがれた朔良は、険しい顔のまま萌花から顔を逸らした。
萌花も気まづそうに目をしきりに動かしている。
「じ、実はね……些細なことで……その……朔良ちゃんに『馬鹿ですね』って柔らかい意味で言ったんですけど……でも……」
「馬鹿って言われたくないんだよなー。阿呆の方が何倍もいいよ」
申し訳なさそうに顔を俯かせる萌花と、まだ怒りが抜けていないらしい朔良。
そんな二人の様子を見て、美久里は不思議そうに首を傾げる。
「……馬鹿と阿呆って、同じじゃないの?」
馬鹿と阿呆はどちらも、共に『愚かなこと』『愚かな人』を表す言葉だったはず。
一体何が朔良をそこまで機嫌悪くさせるのだろうか。
だが、美久里の言葉が不満だったようで、朔良は顔を逸らして視線も合わせずに言う。
「同じじゃねーよ。いいか? 阿呆にはないが馬鹿にはある言葉の意味ってのがあるんだよ」
「へー……そうなんだ……」
それは初耳だ。
純粋にそれは興味があった。
阿呆にはなくて馬鹿にはある言葉の意味……どんなものが隠されているのだろう。
「それはな――度が過ぎていることや社会的常識に欠けている、って意味もあんだよ」
「……え、それ本当?」
朔良は物知りらしい。
美久里は心の底から感心した。
つまり馬鹿という言葉にはそれがあり、阿呆という言葉にはそれがないようだ。
「それなのに萌花が馬鹿って言うからさー……」
「そ、それは……! 全然知らなくて――っていうか細すぎませんか!?」
「じゃあお前は馬鹿って言われたいか?」
「うぐっ……そ、それは……その……」
まあ、この二人なら仲裁しなくてもそのうち仲直りするだろう。
美久里は一つ賢くなった気がして、賑やかなその場を離れた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる