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第一章 ストーキングの恋模様!
誰かに見られている?
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○月○日
今日は久々にさっちゃん先輩と話をした。
夏休みの間も時間がある時はさっちゃん先輩に会いに行ってたけど、話をしたわけじゃなかったからなぁ。
だからすごく嬉しい。
だけど、さっちゃん先輩にあの事を気づかれてしまいそうになったから……気をつけなきゃ。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
残暑である。
太陽がアスファルトを焼き、とてつもない暑さを生み出す。
とある一人の小さな少女――篠宮沙友理にとっては、この暑さは大敵であった。
沙友理は高三なのだが、身長は小学生並みである。そして、腰まで伸びた狐色の髪を鬱陶しそうにかきあげている。
「あ、あっついのです……」
なぜこんなにも暑いのか。昔はこんなに暑くなかった気がするのに。
沙友理は教室の中にある自分の席に突っ伏していた。
暑いのもそこそこ苦手だが、もっと重大な問題があるのだ。
それは何かと言うと――
「う、汗でメイクが落ちるのです……」
何時間もかけて完成させたメイクが、汗によって垂れ流されてしまう。
このままでは、努力が水の泡になって――
――ピッ。
「はーい、皆さんおはようございます。今日も暑いですが頑張りましょうね」
「とか言って先生。ちゃっかり教室入って早々にエアコンつけてるじゃないですか」
「そうですが、何か問題でも?」
教室中から笑い声が溢れ出す。
そう。先生がエアコンの管理をするため、先生が電源を入れてくれたのだ。
生徒のために入れてくれたのかはともかく。
「はい、ではホームルームを始めます。日直は――」
なんという至福のひととき。
教室が涼しくなって最高だし、なにより汗でメイクが落ちることがなくなる。
「嬉しいのですぅ……」
心の中で感謝しながら、先生の話を聞く。
その時、どこからか視線を感じた。
(なんなのでしょうか……?)
それが今日だけなら、気のせいということにも出来るのだが。
なにせ、夏休み中にも頻繁に視線を感じていたのだ。
まあ、あまり気にしていなかったけれど。
「――先輩。さっちゃん先輩」
ハッと我に返る。
時間が過ぎ、気づけば12時。お昼時だった。
「どうしたんですか、先輩。なんだか上の空って感じですけど」
「あー……いや、なんでもないのです。大丈夫なのですよ」
食堂に来た時、知り合いの稲津華緒がいたため、一緒に食事をとることにしたのだった。
華緒とは高校に入ってからの知り合いで、年の差を感じさせないほどにお互い親しみやすいらしい。
華緒は高一なのだが、沙友理よりも背が高い。前髪はきちんと切りそろえられており、短く黒い髪は快活そうな印象を与える。
どこで出会ったのか、今でも覚えている。
なにせ、あの時はすごく衝撃的だったから。
「そんな風には見えませんけど……」
沙友理の思考を遮るように、華緒の心配そうな声が発せられる。
どんなに深く考えて周りが見えなくなっても、華緒の声だけはハッキリと聞こえてくるのだ。
「か、顔に出てましたのですか……?」
「まあ割と。てか、その口調なんなんです?」
沙友理は軽くパニックになって、変な口調になってしまう。
やはり、華緒は特別な存在だ。
なぜだか自分の全てを見透かされているようにも思えてくる。
「で、何かあったんですか?」
華緒はオムライスを口に入れようとしながら訊いてくる。
美味しそうなふわとろたまごだ。
「あ、あー……実は……最近誰かに見られているような気がするのですよ」
「――へ?」
「さすがに授業中は感じないのですが……登校中とか下校中とか、家にいても時々感じるので――華緒ちゃん? 大丈夫なのですか?」
華緒は目を丸くしながら、持っていたスプーンをテーブルの上に落とす。
結構な音が響いたが、周りもうるさいせいかあまり気にしている人はいなかった。
だが、華緒の様子がどこかおかしい。
心なしか、少し目が泳いでいるような気もする。
「お、おーい? 華緒ちゃーん?」
「――はっ! ……な、なんでもないです」
「そうなのですか?」
明らかに動揺している感じだが、沙友理は華緒の言葉を信じることにした。
それにしても、あの視線は一体なんなのだろうか。
家にいても感じるのは、よっぽどだ。
「何か恨まれるようなことでもしたのですかねぇ……?」
「違う!!」
今度は大きな声を上げ、机を叩きながら立ち上がった。
スプーンの時よりも大きく出た音に、周囲は驚いた眼差しで二人を見ている。
その眼差しに気づいた華緒は、恥ずかしそうに俯きながら座る。
「……さっちゃん先輩を恨む人なんて、いるわけないです」
そうして華緒は、先程放った沙友理のセリフに答えた。
面と向かってそんなことを言われたのは初めてなので、沙友理はどう反応したらいいのかわからない様子だ。
「あ、ありがとうなのです……華緒ちゃんは優しいのですね」
はにかみながら、思ったことを口にする。
それを受けた華緒は、なんだか物足りなさそうな顔をしている。
だけど、すぐに笑顔になった。
「当然です。私は優しい人ですから」
「あはは。そんな華緒ちゃんが大好きなのですよ」
得意げになって華緒が冗談を言うも、それが通じていないのか、沙友理は本当のことを言う。
冗談が通じなかった華緒は微妙な顔をして、「次体育なので失礼します」と言って去っていった。
「……さっちゃん先輩は、いじわるですね」
悲しそうな顔をした華緒も、その言葉も、沙友理には届かなかった。
今日は久々にさっちゃん先輩と話をした。
夏休みの間も時間がある時はさっちゃん先輩に会いに行ってたけど、話をしたわけじゃなかったからなぁ。
だからすごく嬉しい。
だけど、さっちゃん先輩にあの事を気づかれてしまいそうになったから……気をつけなきゃ。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
残暑である。
太陽がアスファルトを焼き、とてつもない暑さを生み出す。
とある一人の小さな少女――篠宮沙友理にとっては、この暑さは大敵であった。
沙友理は高三なのだが、身長は小学生並みである。そして、腰まで伸びた狐色の髪を鬱陶しそうにかきあげている。
「あ、あっついのです……」
なぜこんなにも暑いのか。昔はこんなに暑くなかった気がするのに。
沙友理は教室の中にある自分の席に突っ伏していた。
暑いのもそこそこ苦手だが、もっと重大な問題があるのだ。
それは何かと言うと――
「う、汗でメイクが落ちるのです……」
何時間もかけて完成させたメイクが、汗によって垂れ流されてしまう。
このままでは、努力が水の泡になって――
――ピッ。
「はーい、皆さんおはようございます。今日も暑いですが頑張りましょうね」
「とか言って先生。ちゃっかり教室入って早々にエアコンつけてるじゃないですか」
「そうですが、何か問題でも?」
教室中から笑い声が溢れ出す。
そう。先生がエアコンの管理をするため、先生が電源を入れてくれたのだ。
生徒のために入れてくれたのかはともかく。
「はい、ではホームルームを始めます。日直は――」
なんという至福のひととき。
教室が涼しくなって最高だし、なにより汗でメイクが落ちることがなくなる。
「嬉しいのですぅ……」
心の中で感謝しながら、先生の話を聞く。
その時、どこからか視線を感じた。
(なんなのでしょうか……?)
それが今日だけなら、気のせいということにも出来るのだが。
なにせ、夏休み中にも頻繁に視線を感じていたのだ。
まあ、あまり気にしていなかったけれど。
「――先輩。さっちゃん先輩」
ハッと我に返る。
時間が過ぎ、気づけば12時。お昼時だった。
「どうしたんですか、先輩。なんだか上の空って感じですけど」
「あー……いや、なんでもないのです。大丈夫なのですよ」
食堂に来た時、知り合いの稲津華緒がいたため、一緒に食事をとることにしたのだった。
華緒とは高校に入ってからの知り合いで、年の差を感じさせないほどにお互い親しみやすいらしい。
華緒は高一なのだが、沙友理よりも背が高い。前髪はきちんと切りそろえられており、短く黒い髪は快活そうな印象を与える。
どこで出会ったのか、今でも覚えている。
なにせ、あの時はすごく衝撃的だったから。
「そんな風には見えませんけど……」
沙友理の思考を遮るように、華緒の心配そうな声が発せられる。
どんなに深く考えて周りが見えなくなっても、華緒の声だけはハッキリと聞こえてくるのだ。
「か、顔に出てましたのですか……?」
「まあ割と。てか、その口調なんなんです?」
沙友理は軽くパニックになって、変な口調になってしまう。
やはり、華緒は特別な存在だ。
なぜだか自分の全てを見透かされているようにも思えてくる。
「で、何かあったんですか?」
華緒はオムライスを口に入れようとしながら訊いてくる。
美味しそうなふわとろたまごだ。
「あ、あー……実は……最近誰かに見られているような気がするのですよ」
「――へ?」
「さすがに授業中は感じないのですが……登校中とか下校中とか、家にいても時々感じるので――華緒ちゃん? 大丈夫なのですか?」
華緒は目を丸くしながら、持っていたスプーンをテーブルの上に落とす。
結構な音が響いたが、周りもうるさいせいかあまり気にしている人はいなかった。
だが、華緒の様子がどこかおかしい。
心なしか、少し目が泳いでいるような気もする。
「お、おーい? 華緒ちゃーん?」
「――はっ! ……な、なんでもないです」
「そうなのですか?」
明らかに動揺している感じだが、沙友理は華緒の言葉を信じることにした。
それにしても、あの視線は一体なんなのだろうか。
家にいても感じるのは、よっぽどだ。
「何か恨まれるようなことでもしたのですかねぇ……?」
「違う!!」
今度は大きな声を上げ、机を叩きながら立ち上がった。
スプーンの時よりも大きく出た音に、周囲は驚いた眼差しで二人を見ている。
その眼差しに気づいた華緒は、恥ずかしそうに俯きながら座る。
「……さっちゃん先輩を恨む人なんて、いるわけないです」
そうして華緒は、先程放った沙友理のセリフに答えた。
面と向かってそんなことを言われたのは初めてなので、沙友理はどう反応したらいいのかわからない様子だ。
「あ、ありがとうなのです……華緒ちゃんは優しいのですね」
はにかみながら、思ったことを口にする。
それを受けた華緒は、なんだか物足りなさそうな顔をしている。
だけど、すぐに笑顔になった。
「当然です。私は優しい人ですから」
「あはは。そんな華緒ちゃんが大好きなのですよ」
得意げになって華緒が冗談を言うも、それが通じていないのか、沙友理は本当のことを言う。
冗談が通じなかった華緒は微妙な顔をして、「次体育なので失礼します」と言って去っていった。
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悲しそうな顔をした華緒も、その言葉も、沙友理には届かなかった。
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