ストーキングは愛の証!【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
2 / 50
第一章 ストーキングの恋模様!

こんなのはありえない?

しおりを挟む
 ○月○日

 ありえない。ありえない!
 さっちゃん先輩を追いかけている時の必需品をどこかに落としてしまった!
 あれがないとだめなのに。
 さっちゃん先輩を写真に収めることが出来なくなってしまう。
 今日は追いかけるのはやめて、あれを探すことに専念することにした。

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より

 ☆ ☆ ☆

「ふむぅ……今日は何も感じないのです」

 下校時、沙友理はそんなことを呟いた。
 ここ最近ずっと感じていた視線を感じなくなって、ホッとするどころか、少し不安になっている。

 見られることが好きなわけではないが、何もなくなるとそれはそれで寂しくなるのだ。
 ストーキングされているからと言って、実害があるわけではないため、ずっと放っておいた。
 それなのに、どうして。

「んー、体調が悪くなったのですかねぇ……?」

 少し気味が悪いと思っていた視線も、毎日続けば慣れてくるものだ。
 裏を返せば、毎日続いていたものが急に途切れると、なんだかモヤモヤしてしまう。

「ここまで慣れちゃってる自分が怖いのです……」

 苦笑しながら、沙友理は歩を進める。
 すると、目の前に何か見覚えのないものが落ちているのが目につく。
 なんだろうと思って近づくと、一眼レフのようだった。

「なんでこんなものがここに……?」

 沙友理は無意識にキョロキョロと辺りを見回してしまう。
 交番に届けるべきか、中身を確認するべきか。

「す、少しなら……いいのですよね?」

 自分に言い聞かせるように言うと、起動ボタンを押す。
 恐る恐る画面を見てみると、そこにはありとあらゆる沙友理が写っていた。

 登校時の眠そうな沙友理、通学路で楽しそうに野良猫と戯れている沙友理、下校時に地元の小学生を見て顔を顰めている沙友理……などなど。
 様々な表情の沙友理がそこに収まっていた。

「こ、これは……っ!」

 沙友理は驚愕し、目を見開く。
 だが、次の瞬間には――

「め、めちゃくちゃいいのです……!」

 目を輝かせた沙友理がいた。
 自分にあまり自信が持てなかった沙友理でも、この写真の中ではすごく輝いて見えるのだ。
 この写真を撮る人はきっと、人をよく観察する力があるのだろう。

「……っと、少し魅入ってしまったのです。持ち主がここを探しに来るかもなので、元の場所に置いておくのです」

 沙友理は上機嫌になりながら、家に帰った。

「ねーちゃーん! おっかー!」
「ただいまなのです、理沙りさ

 沙友理が家のドアを開けると、真っ先に妹が飛びついてきた。
 妹――理沙は、現在小学四年生。年齢が二桁になったばかりである。
 子供嫌いの沙友理が唯一平常心でいられるのは、この理沙だけだろう。

「ねーちゃん、ドッジボールしようぜ!」

 沙友理と同じ茶色の髪を揺らし、そんなことを提案する。
 だけど、沙友理はというと。

「ドッジボールは一対一でやる球技じゃないのですよ?」

 笑いながら冷静に言う。
 理沙も本気でドッジボールをしようと言い出したわけではないようで「ちぇっ、つまんね」と言いながら部屋に戻っていく。
 同じ部屋なのだから先に入らなくてもいいのに。

「ちょっと待つのです~」
「お、沙友理。帰ったか」

 理沙を追いかけようとした時、ちょうどお父さんが出てくる。
 どうやら洗濯物を取り込んでいたようだ。

「ただいまなのです、お父さん」

 沙友理は朗らかな笑みを浮かべ、帰ってきたことを報告する。

「そういえば、理沙がドッジボールしたいって言ってたのですけど」
「おー、そうか。なら相手になってやるか」
「わたしはもうツッコまないのですよ」

 沙友理が呆れながら言うと、お父さんは理沙と同じく「ちぇっ、つまんね」と発した。
 やはり親子である。
 そう考えると、沙友理はこの二人と血が繋がっていないことになってしまうが。

「ま、お前が理沙の面倒見てくれてて嬉しいよ。背丈は同じぐらいなのにな」
「……どういう意味なのですか?」

 答え次第では、父親だろうと容赦はしない。
 そんな殺意を滲ませて穏やかな笑顔を浮かべる。
 それに恐れをなしたお父さんはそそくさと逃げてゆく。

「ふぅ……まあ、確かに子供は嫌いなのですけど……」

 沙友理が子供を嫌いなのは、デリカシーがないというか……
 以前、理沙と公園で遊んでいた時に「お前どこ小だ?」と小学生の男の子に声をかけられたのがショックだったのだ。
 そんな時、理沙がそいつに言ってくれた。

「てめー、さては頭悪いな?」

 その後殴り合いの喧嘩に発展して、沙友理が必死に止めたのだが。
 あの一言は嬉しかった。
 他にも、理沙は沙友理を庇ってくれることが多かった。
 だからこそ、理沙とは良好な関係を築けている。
 これからも、そうしていきたいと思っている。

「出来るかは……わかんないのですけどね……」

 理沙が部屋の扉を開けて沙友理をじーっと見ている。
「早く来い」というサインだ。
 おそらく、ゲームを一緒にしたいのだと思われる。

「今行くのです~!」

 声を躍らせて、沙友理は自分の部屋へと急いだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...