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第一章 ストーキングの恋模様!
こういうのが好き?
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○月○日
よかった。ちゃんと見つかった。データもそのまま残っててホッとしてる。
誰にも触られてなかったようだなぁ……すごく安心した。
これでまたさっちゃん先輩を尾行することが出来るぞ!
あー、そろそろハードディスクもいっぱいになってきたし、新しいハードディスク買い足さなきゃ。
思い切って高いやつ買おうかなぁ!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より
☆ ☆ ☆
「ねーちゃん、どったの?」
「え? あー……それが、今日帰る時に見つけたものがまだ少し気になっているのですよ」
「見つけたもの?」
沙友理が何やら難しそうな顔をしていると、妹の理沙が心配そうに沙友理の机に駆け寄ってきた。
妹の心配を無下には出来ず、わけを話す。
「わたしが写ってる写真が収められた一眼レフなのですけどね」
「なるほどなるほど。――って、それはどういうことだ!?」
一瞬普通に聞き流そうとしていたが、無視できなかったようだ。
沙友理の言っていることが本当だとしたら、それはもはや犯罪である。
理沙は固定電話の方へ向かって走る。そして受話器を取ろうと――
「な、何してるのですか!?」
「決まってんだろ! そいつを通報するんだよ! ってか離せよ、ねーちゃん!」
――していたのだが。
沙友理によって止められてしまった。
小学生の理沙では、高校生の沙友理の力にはどうしても勝てない。
理沙は早々に諦め、沙友理の話を聞くことにした。
「……ふぅ。で、それがどうしたんだ?」
「あー……それなのですがね、その……なんと言いますか……」
モジモジと指を絡めて、なかなか打ち明けられない沙友理。
そんな沙友理に嫌気がさし、理沙はため息をついて棚にある漫画を漁り始める。
「えーっと、まだ読んでないやつあったかな~」
「あ、その、ちゃんと話すからちゃんと聞いてほしいのです……!」
「わかってるって。ねーちゃんは大事なこと話すの苦手だもんな~」
「うう……反論出来ないのです……」
話したいのに上手く話せない。
それは、今に始まったことではない。
中学三年生のあの時から、沙友理は何一つ変わっていない。
「もしかしてあれか? そのストーカーにちょっと惚れたとか?」
ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、理沙が言う。
理沙は冗談のつもりで言ったのだが、沙友理はそれを本気で言ったと受け止めたようだ。
「それだけでストーカーって決めつけるのも……ちょっと違う気がするのですが……」
「え、どう考えてもストーカーでしょ。それ以外なくね?」
沙友理は人とは少しズレた所がある。
理沙もそれをわかっているが、ここまでとは思わなかったようだ。
そんな理沙の気づきを知らず、沙友理はまたしても突拍子もないことを言う。
「その、惚れたと言いますか……少し、いいなって……思ってしまったのですよ」
「――は?」
「だ、だから……もし私を撮った人に出会ったら、お礼ぐらいは言いたいなって思うのです」
沙友理は恥ずかしそうに顔を赤らめながら笑みを浮かべるも、理沙はと言うと――
「……ねーちゃん、まじかよ……」
ドン引きしていた。過去最高にドン引きしていた。
開いた口が塞がらないらしく、口を開けたまま固まっている。
「え? 何がなのですか?」
流石に理沙の様子を見て、沙友理は少し不安そうな様子になった。
笑顔が少し崩れ、眉が下がる。
理沙は沙友理に構っていられないのか、ついにずっと思っていたことを口走ってしまう。
「あ、ありえねー……ストーカーのどこがいいんだよ。あたしだったらとっくに通報してんぞ。ねーちゃんの考えにはついていけねーなー」
「そ、そこまで言わなくたって……」
沙友理もそこまで言われて、引き下がれなくなったのだろう。
弱々しいが、ちゃんと反論している。
「初めてなのです」
「――え、何がだよ」
いつも飽きるほど聞いている声なのに、いつもとは少し違って感じられた。
だから理沙は、少し訝しげな顔になる。
顔を上げた沙友理の表情は、今まで見たことがないほどに柔らかく、そして優しかった。
「初めてなのですよ。あんなにいっぱい、たくさんの私の姿をカメラに収めてくれた人。こんな私を、魅力的に撮ってくれた人。だから……」
「……ん? 急にどうしたんだよ」
急に言葉を切って俯きだした沙友理。
それを妙に思った理沙は、沙友理の顔を覗き込む。
すると、言葉を失った。
「ねーちゃん……」
沙友理は、大粒の涙を流して泣いていたのだ。
突然のことに、困惑することしか出来ない理沙。
「な、なんで泣いて――」
「ごめんなさいなのです。大丈夫なのです」
自分でも気づいていなかったのか、沙友理は自分の手で強引に涙を拭う。
「他人を魅力的に撮れる人なんて……そうそういないと思うのですよ。それが出来るのって、その人のことが“好き”――ということなのだと思うのです」
拭っても拭っても、沙友理の目から涙がこぼれ落ちる。
それは、沙友理の知らない感情だから。
下手をすると、その人までも傷つけてしまうかもしれない。
あの頃と同じ過ちを繰り返すことなんて、もうしたくないのだ。
「ねーちゃん……」
唯一事情を知っている理沙は、沙友理に近づき、沙友理の華奢な身体を強く抱きしめた。
よかった。ちゃんと見つかった。データもそのまま残っててホッとしてる。
誰にも触られてなかったようだなぁ……すごく安心した。
これでまたさっちゃん先輩を尾行することが出来るぞ!
あー、そろそろハードディスクもいっぱいになってきたし、新しいハードディスク買い足さなきゃ。
思い切って高いやつ買おうかなぁ!
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より
☆ ☆ ☆
「ねーちゃん、どったの?」
「え? あー……それが、今日帰る時に見つけたものがまだ少し気になっているのですよ」
「見つけたもの?」
沙友理が何やら難しそうな顔をしていると、妹の理沙が心配そうに沙友理の机に駆け寄ってきた。
妹の心配を無下には出来ず、わけを話す。
「わたしが写ってる写真が収められた一眼レフなのですけどね」
「なるほどなるほど。――って、それはどういうことだ!?」
一瞬普通に聞き流そうとしていたが、無視できなかったようだ。
沙友理の言っていることが本当だとしたら、それはもはや犯罪である。
理沙は固定電話の方へ向かって走る。そして受話器を取ろうと――
「な、何してるのですか!?」
「決まってんだろ! そいつを通報するんだよ! ってか離せよ、ねーちゃん!」
――していたのだが。
沙友理によって止められてしまった。
小学生の理沙では、高校生の沙友理の力にはどうしても勝てない。
理沙は早々に諦め、沙友理の話を聞くことにした。
「……ふぅ。で、それがどうしたんだ?」
「あー……それなのですがね、その……なんと言いますか……」
モジモジと指を絡めて、なかなか打ち明けられない沙友理。
そんな沙友理に嫌気がさし、理沙はため息をついて棚にある漫画を漁り始める。
「えーっと、まだ読んでないやつあったかな~」
「あ、その、ちゃんと話すからちゃんと聞いてほしいのです……!」
「わかってるって。ねーちゃんは大事なこと話すの苦手だもんな~」
「うう……反論出来ないのです……」
話したいのに上手く話せない。
それは、今に始まったことではない。
中学三年生のあの時から、沙友理は何一つ変わっていない。
「もしかしてあれか? そのストーカーにちょっと惚れたとか?」
ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、理沙が言う。
理沙は冗談のつもりで言ったのだが、沙友理はそれを本気で言ったと受け止めたようだ。
「それだけでストーカーって決めつけるのも……ちょっと違う気がするのですが……」
「え、どう考えてもストーカーでしょ。それ以外なくね?」
沙友理は人とは少しズレた所がある。
理沙もそれをわかっているが、ここまでとは思わなかったようだ。
そんな理沙の気づきを知らず、沙友理はまたしても突拍子もないことを言う。
「その、惚れたと言いますか……少し、いいなって……思ってしまったのですよ」
「――は?」
「だ、だから……もし私を撮った人に出会ったら、お礼ぐらいは言いたいなって思うのです」
沙友理は恥ずかしそうに顔を赤らめながら笑みを浮かべるも、理沙はと言うと――
「……ねーちゃん、まじかよ……」
ドン引きしていた。過去最高にドン引きしていた。
開いた口が塞がらないらしく、口を開けたまま固まっている。
「え? 何がなのですか?」
流石に理沙の様子を見て、沙友理は少し不安そうな様子になった。
笑顔が少し崩れ、眉が下がる。
理沙は沙友理に構っていられないのか、ついにずっと思っていたことを口走ってしまう。
「あ、ありえねー……ストーカーのどこがいいんだよ。あたしだったらとっくに通報してんぞ。ねーちゃんの考えにはついていけねーなー」
「そ、そこまで言わなくたって……」
沙友理もそこまで言われて、引き下がれなくなったのだろう。
弱々しいが、ちゃんと反論している。
「初めてなのです」
「――え、何がだよ」
いつも飽きるほど聞いている声なのに、いつもとは少し違って感じられた。
だから理沙は、少し訝しげな顔になる。
顔を上げた沙友理の表情は、今まで見たことがないほどに柔らかく、そして優しかった。
「初めてなのですよ。あんなにいっぱい、たくさんの私の姿をカメラに収めてくれた人。こんな私を、魅力的に撮ってくれた人。だから……」
「……ん? 急にどうしたんだよ」
急に言葉を切って俯きだした沙友理。
それを妙に思った理沙は、沙友理の顔を覗き込む。
すると、言葉を失った。
「ねーちゃん……」
沙友理は、大粒の涙を流して泣いていたのだ。
突然のことに、困惑することしか出来ない理沙。
「な、なんで泣いて――」
「ごめんなさいなのです。大丈夫なのです」
自分でも気づいていなかったのか、沙友理は自分の手で強引に涙を拭う。
「他人を魅力的に撮れる人なんて……そうそういないと思うのですよ。それが出来るのって、その人のことが“好き”――ということなのだと思うのです」
拭っても拭っても、沙友理の目から涙がこぼれ落ちる。
それは、沙友理の知らない感情だから。
下手をすると、その人までも傷つけてしまうかもしれない。
あの頃と同じ過ちを繰り返すことなんて、もうしたくないのだ。
「ねーちゃん……」
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