ストーキングは愛の証!【完結済み】

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第一章 ストーキングの恋模様!

知られたかもしれない?

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 ○月○日

 やってしまった。うっかり口を滑らせた。
 知られてしまったかも……いや、まだそうと決まったわけではない。
 遠くから見てるだけの方が性に合うんだけどなぁ。
 さっちゃん先輩の隣にいたいだなんて分不相応なこと考えてたせいだ。
 これからは気をつけよう……

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

 いつの日だったか。
 物心ついた時から暗い場所が好きだった。
 何故かはわからない。
 だけど、そこにいると落ち着くのだ。

 明るいところが嫌いなわけではないが、暗闇の方が安心出来るようだ。
 沙友理は病んでいるわけではない。
 ただ、好きなものは好きというだけである。

「はぁ……朝なのですか……」

 朝日が気持ちいいという人は一定数いるが、沙友理はどうにも気持ちいいと感じられない。
 それどころか、鬱陶しいとすら思っている。
 ずっと夜になってくれたら、それほど素晴らしいことはないのに――

「ふぅ……そろそろ起きないとなのです」

 そう呟いて、出かける準備をする。
 休日なので特にやることは無いが、あてもなくブラブラするのも気分が晴れるから。

 そうして町へ出かけた沙友理だったが、人波に気圧され、気分がブルーになっていた。

「うへぇ……なんでこんなに人多いのですかね……」

 だいぶグロッキーな感じになってきた沙友理は、休める場所を求めて歩き出す。
 だが、どこもかしこも人で溢れかえっており、休めそうな場所がどこにもない。

 そんな時、ふと暗く不穏な空気を感じた。
 その方向を見てみると、いわゆる路地裏と呼ばれる場所がある。
 沙友理はそれを見た瞬間、半ば無意識的に吸い込まれた。

「ふぅー……やっと落ち着け――るのです……?」
「……あ、さっちゃん先輩……」

 深呼吸をし、やっとリラックスできた沙友理。
 その視線の先には――バニーガールのような格好をした華緒がいた。

 しばらくの間、時間が止まったのではと錯覚させるほど、二人は動かなかった。
 ……というより、動けないのだ。
 沙友理は見慣れないものに思考が止まり、華緒はあまりの恥ずかしさに身体を丸めることしか出来ないから。

「……な、なんで華緒ちゃんがここに……っていうか、なんて格好してるのですか!?」
「……うぅ……こ、これは……バイトの制服って言いますか……」

 華緒はバイトをしているらしい。
 それも際どい類の。
 祖母と二人暮しと聞いているため、仕方ないこと……なのかもしれないが。

 ――それにしても。
 身体のラインがくっきりとした衣装に、艶やかな網タイツ、おまけに可愛いうさ耳カチューシャまで付いている。

「めちゃくちゃ可愛いのです……」
「ふぇ……!?」
「……あれ?」

 沙友理の――自分でも知らない趣味が反映された格好に、思わず本音が零れてしまった。
 そしてその言葉に、二人とも困惑してしまう。

「あ、いや、その……ごめんなさいなのです。なんか、つい……」
「い、いえ……別に。少し驚いただけです」

 沙友理の一言により、微妙な空気が流れる。
 その空気に耐えきれなくなったのか、沙友理がこの場を離れようとした。
 色々と見て回りたいところもあるようで。

「じゃあ、わたしはこれで失礼するのです。華緒ちゃん、バイト頑張るのですよ」

 そう言って、そそくさと去っていこうとする沙友理。
 自分にそういう趣味があると知って、よほどショックを受けているようだ。
 華緒も、きっと沙友理にとっとと帰って欲しいと思っているはずだから。

「あ、ま、待ってください……!」

 そう思っていたのに、華緒に腕を掴まれた。

「な、なんなのですか??」
「その、さっちゃん先輩は、こういうのが“好き”……なんですか?」

 自分の服装を恥ずかしそうに見せて言う華緒。
 なんというか……同性だとわかっていても意識してしまうからやめてほしい。

「ま、まあ……それなりに……」

 沙友理が恥ずかしそうに目を逸らしながら言うと、華緒はずいっと近づいた。
 そして、沙友理の隣へと移動する。

「なら、こうして私がここに来たら……どうでしょうか?」

 目を潤ませて問う華緒。
 華緒は一体、何を訊いているのだろうか。
 沙友理が疑問に思っていると、華緒は我に返ったように慌てる。

「って、あ! そ、そろそろ戻らないと! また明日です、さっちゃん先輩!」
「え? あ、さよならなのです……華緒ちゃん?」
「ではさらばです~!」

 華緒は嵐のように爪痕を残して去っていった。
 その背中を追いかけようかとしたが、はたと止まって気づく。

「そういえば、最近視線を感じないのですね」

 すごく今更だが、そんなことに気づいてしまった。
 毎日当たり前のように視線を送ってきた主がいない。
 普通はホッと安堵するか、罠だと思って危機感を抱くかどちらかなのだが。
 沙友理は少し寂しそうな顔をした。

「あの写真のこと……すごく話したいのですが……」

 沙友理の写真が収められたカメラを落とした人と、毎日のように視線を送ってきた人は同一人物だろう。
 ……とは、思っているのだが、あいにく沙友理からコンタクトを取るのはすごく困難だ。

「いつか、お話することが出来るのですかね……」

 寂しそうに呟きながら、この場を後にした。
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