ストーキングは愛の証!【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
9 / 50
第一章 ストーキングの恋模様!

なるべく一緒にいたい?

しおりを挟む
 ○月○日

 今日は少し寝坊しちゃった……
 だけどさっちゃん先輩と初めて一緒に登校できて嬉しい!
 いつもはさっちゃん先輩を後ろから追いかけてるだけだったから。
 こういうのも“仲良し”って感じで幸せだなぁ……
 遠くからじゃわからないこともあるけど、近いからわかることもあるんだな。

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

 晴れ晴れとした青い空の下。
 沙友理と理沙はそれぞれ学校に向かうべく歩いていた。

「あたしもねーちゃんと同じ学校行こうかな! 中学受験するつもり!」
「おー、いいのですね。わたしはその時にはもう卒業しちゃってるのですが……仕方ないのです」
「まあな~。けど、ねーちゃんの後輩さんたちと仲良くなろうかなって思ってんだ」
「それいいのです! 後輩ちゃんたちと理沙が仲良くなるの大歓迎なのです!」

 何気ない会話を交わし、横断歩道を渡ろうとしていた時。
 ドドドと、沙友理たちに何かが近づいてくる音がした。
 それも猛スピードで。

「うわー!! やばいやばい!! 急がないと!!」

 朝のだるい時間帯にはつらいほどの大音量で、髪やスカートを揺らしている者。
 それは――

「……は、華緒ちゃん?」
「あっ……! さ、さっちゃん先輩……」

 大声を出して走っていたのが恥ずかしいのか、華緒は気まずそうに目を逸らした。
 そんな華緒になんて言ったらいいかわからず、沙友理もなるべく華緒を見ないように辺りを見回している。
 そんな中で動いたのは、理沙だった。

「はじめまして、華緒さん」

 礼儀正しい理沙の言葉に、華緒も沙友理も驚いて目を丸くする。
 その間に、青だった信号が赤になってしまう。
 だが、誰もそのことに気づかなかった。

「あ、は、はじめまして……えっと……さっちゃん先輩の妹さん……」
「あ、すみません。名前言い忘れてましたね。あたしは篠宮理沙と言います」

 丁寧にお辞儀をする妹に、沙友理は感心していた。
 理沙がしっかりしていることは知っていたが、それほどまでに礼儀正しいとは思わなかったから。
 小学生とは思えぬ対応に、華緒はもう何も言えなかった。

「理沙ってほんとにしっかりしてるのですね~」
「ま、伊達に先生の前でいい子ぶってないからね!」
「しっかりと言うよりちゃっかりしてると言った方がいいのですね……」

 理沙の意外な一面を垣間見た沙友理は、呆れ気味にため息をついた。
 と、ここで、無駄な時間を過ごしていることに気づく。

「やばいのです! 急がないと遅刻するのです!」

 沙友理は理沙と華緒の手を取り、横断歩道の上を走っていく。
 手を取られた二人は、突然のことに呆気にとられている。
 されるがままの状態で、転ばないように必死に走る。

 だけど、途中からだんだん楽しくなってきたようで、二人は笑顔を浮かべた。
 沙友理は運動が苦手だが、今走っている時だけは心の底から楽しそうに笑っている。

「あ、ねーちゃん。あたしこっちだから」
「そうだったのです。じゃあ、また後でなのです~」
「じゃあね、理沙ちゃん」
「はい。華緒さんもお気をつけて」

 沙友理と華緒とでは態度や振る舞いが変わる理沙に、沙友理は少し苦笑いをした。
 そういう切り替えは大事だと思うが、目の前でやられると複雑な気持ちになってしまう。

 そんな沙友理の内心には気づかずに、理沙は小学校へと急いだ。
 しばらく呑気に見送っていたが、自分たちも急がなければならないことに気づく。

「あっ! ち、遅刻するのです!」
「ほんとだ……! 急ぎましょう!」

 沙友理の言葉に、華緒もハッとしたような表情になる。
 さっきから急いだりゆっくりしたり、忙しない。
 だけど、沙友理と華緒は嬉しそうに顔を見合わせて笑うので、それも悪くないのではないだろうか。

「ほらー、遅刻するよー」
「す、すみません……!」

 校門前で、今日の挨拶回りの当番をしている先生と会う。
「遅刻するよ」と言っているので、まだ遅刻してはいないらしい。
 急げば間に合いそうだ。

「今度からは早く来いよー」
「は、はい……っ!」

 沙友理と華緒は既に息が上がっているが、なんとか踏ん張って下駄箱まで走り抜く。
 ゼェゼェと息を切らし、お茶を自分の身体に入れる。
 少し休んだら、だんだんと疲れが取れてきた。

「はー……さて、教室へたどり着かなきゃなのです……」
「そ、そうですね……頑張らないと……」

 もう既にやり切った感の出ている二人は、教室への道のりが遠く感じられた。
 だけど、どこか満たされたような気持ちになっている。

「あ、あの……さっちゃん先輩」
「ん? なんなのですか?」

 華緒はすごく勇気を振り絞ったような顔で、沙友理を見据えている。
 射抜かれたような錯覚を覚えた沙友理は、不思議と華緒から目を逸らせなかった。

「あの……また、一緒に登校してもいいですか!?」

 すごく真剣に沙友理を見つめて言うので何かと思えば……

「わたしと一緒に、登校したいのですか……?」

 そう訊くと、華緒はコクコクと勢いよく首を縦に振った。
 その様子がおかしくて、思わず吹き出してしまう。

「あはは。いいのですよ。わたしと華緒ちゃんの仲なのですから」
「えっ……あ、いいんですか……? 嬉しいです……!」

 沙友理が笑った時はすごく不安そうな顔をしていたのに、今はすごく幸せそうな顔をしている華緒。
 その変化が面白くて、沙友理はまた笑うのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...