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第一章 ストーキングの恋模様!
どうやって仲良くなるんだっけ?
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○月○日
今日はさっちゃん先輩とたくさんお話出来た。すごく嬉しい。
さっちゃん先輩の家はなんだかいい匂いがした。暖かくて優しい匂い。
……だけど、ずっと隠してた素の部分が出てしまった。
しまった。これはかなりしまった。さっちゃん先輩に距離置かれたかもな……
それならそれでこっちにも考えがあるけど。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
沙友理が華緒をお泊まりに誘った日の週末。
華緒は大荷物で沙友理の家に遊びに来ることになった。
たった一泊するだけだと言うのに、なぜそんなに荷物がいるのだろうか。
そんな華緒が家に来てから数十分。
お菓子やジュースを食べたり飲んだりしながら、ゆったりと話をしていたのだが。
「——って感じで、なぜか妹が必ず止めにくるのですよねー」
「……」
「……華緒ちゃん?」
「——えっ、あ! はい! 妹さんしっかりしてそうですもんね!」
華緒の様子がどこかおかしい。
いや、家に大荷物で来た時からおかしかったが。
ボーっとしてると思ったら、いきなりそわそわしながら沙友理の顔を見たり。
ちょっとしたことだが、確実な違和感がある。
本当に、今日はどうしたのだろう。
「もしかして具合が悪いのですか? それならすぐ病院に――」
「だ、大丈夫で——ひゃあっ!」
もしかして体調が悪いのかも知れない。
そう思った沙友理は額をくっつけてみたのだが、顔が赤い割にはそんなに熱くはないようだった。
「よかったのです。大丈夫そうで」
「は、はい……ありがとうございます……」
しかし、華緒は顔を伏せて、どことなく緊張している風だったりする。
熱くはなくともその顔の赤みが耳まで達していて、どうにも心配になってしまう。
もしかして何か悩みがあったりするのかも知れない。
しかしながら、沙友理にはそういうデリケートなものをカバーしてあげられる器用さはなく。
だったら、安直な方法ではあるが、とりあえず元気付けてあげるのが一番だろうと思い至る。
そのために、あえて前振りもなく。
「……華緒ちゃん。今、部屋に二人きりなわけなのですよ」
「え? あ……は、はい」
「わたしと華緒ちゃん、二人とも年頃の乙女なわけなのです。こういう時にする……というか、確かめるべきことがひとつあると思うのですよ」
「そ、そうなんですか? ってさっちゃん先輩……? 目がちょっとなんか怖……! っていうか鋭いですよ??」
理由として「元気付ける」というのは半分本当ではあるが、半分は嘘だった。
前々から気になっていたこと……それを実行に移すための口上だったりする。
すごく真剣な目付きで華緒を見つめる沙友理。
この顔に何かを感じたのだろう。
華緒は、顔をひきつらせながら後ずさりをしている。
そんな華緒の様子に構わず、一直線に手を華緒の後ろにある本棚へ。
そして、目的のものを手に取り、華緒に手渡す。
「はいなのです、華緒ちゃん」
「……ふぇ?」
沙友理が手渡したものは、いわゆる『少女漫画』。
年頃の乙女とは、つまりそういうことである。
「え、あ、ど、どうも……?」
確実に自分に何かされると思っていた華緒は面食らって、それをつい反射的に受け取っていた。
高校生でも充分ターゲット層に入っているが、華緒はもう何年も読んでいない。
「すごくいいのですよ、少女漫画。妹と一緒によく読んでいるのです」
「え、あ、でも……私……その……少女漫画はちょっと……」
「あ、もしかして苦手だったのですか? それは悪かったのです……」
今は少女漫画よりも百合漫画にハマっている華緒は、どうしても少女漫画を読む気になれなかったのだ。
それをどう思ったのか、沙友理はすごく悲しそうに声のトーンとテンションを下げる。
悲しそうに俯く沙友理を見て、華緒はすごく嗜虐心をそそられた。
「……先輩はまだこんなの読んでるんですか? 子どもですね」
内心は相当ニヤニヤしているであろうトーンで、冷たく言い放つ。
そんな冷たい言葉を浴びせられた沙友理はさらにヘコむ。
「そ、そうなのですよね……クラスメイトたちにも不人気ですし……」
星花女子学園ではずっと女子ばかりと関わってきた子や百合な子が多いため、男女の恋愛に重きを置いた少女漫画はウケが悪い。
共学であればそんなことはなかったのだろうが……
「それなら、こっちはどうです?」
「あ……そ、それ……! 隠してたやつ……っ! いつの間に見つけたのですか!?」
華緒がどこからか取り出したのは、いわゆる『百合漫画』。
それは、沙友理がずっと隠してきた漫画である。
「こういうの、星花女子の生徒なら喜ぶ子多いんじゃないですか?」
すごくニヤニヤした顔で主導権を握っている華緒。
こんなにも生き生きとした華緒を、沙友理は見たことがない。
困惑や羞恥を隠しきれない沙友理は、もうどうすればいいかわからなかった。
百合漫画は“好き”を学ぶために買ったものだったが、密かにハマっていたというのは内緒である。
それをどこかで、普通じゃないのではと悩んでいるのだ。
「さっちゃん先輩。先輩は――」
「ごめんなさいなのですっ!」
近づいてきた華緒を突き飛ばし、沙友理は部屋から猛ダッシュで逃げていく。
涙と赤面で顔をぐしゃぐしゃにしながら、どこへ行くでもなく走り去った。
今日はさっちゃん先輩とたくさんお話出来た。すごく嬉しい。
さっちゃん先輩の家はなんだかいい匂いがした。暖かくて優しい匂い。
……だけど、ずっと隠してた素の部分が出てしまった。
しまった。これはかなりしまった。さっちゃん先輩に距離置かれたかもな……
それならそれでこっちにも考えがあるけど。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
沙友理が華緒をお泊まりに誘った日の週末。
華緒は大荷物で沙友理の家に遊びに来ることになった。
たった一泊するだけだと言うのに、なぜそんなに荷物がいるのだろうか。
そんな華緒が家に来てから数十分。
お菓子やジュースを食べたり飲んだりしながら、ゆったりと話をしていたのだが。
「——って感じで、なぜか妹が必ず止めにくるのですよねー」
「……」
「……華緒ちゃん?」
「——えっ、あ! はい! 妹さんしっかりしてそうですもんね!」
華緒の様子がどこかおかしい。
いや、家に大荷物で来た時からおかしかったが。
ボーっとしてると思ったら、いきなりそわそわしながら沙友理の顔を見たり。
ちょっとしたことだが、確実な違和感がある。
本当に、今日はどうしたのだろう。
「もしかして具合が悪いのですか? それならすぐ病院に――」
「だ、大丈夫で——ひゃあっ!」
もしかして体調が悪いのかも知れない。
そう思った沙友理は額をくっつけてみたのだが、顔が赤い割にはそんなに熱くはないようだった。
「よかったのです。大丈夫そうで」
「は、はい……ありがとうございます……」
しかし、華緒は顔を伏せて、どことなく緊張している風だったりする。
熱くはなくともその顔の赤みが耳まで達していて、どうにも心配になってしまう。
もしかして何か悩みがあったりするのかも知れない。
しかしながら、沙友理にはそういうデリケートなものをカバーしてあげられる器用さはなく。
だったら、安直な方法ではあるが、とりあえず元気付けてあげるのが一番だろうと思い至る。
そのために、あえて前振りもなく。
「……華緒ちゃん。今、部屋に二人きりなわけなのですよ」
「え? あ……は、はい」
「わたしと華緒ちゃん、二人とも年頃の乙女なわけなのです。こういう時にする……というか、確かめるべきことがひとつあると思うのですよ」
「そ、そうなんですか? ってさっちゃん先輩……? 目がちょっとなんか怖……! っていうか鋭いですよ??」
理由として「元気付ける」というのは半分本当ではあるが、半分は嘘だった。
前々から気になっていたこと……それを実行に移すための口上だったりする。
すごく真剣な目付きで華緒を見つめる沙友理。
この顔に何かを感じたのだろう。
華緒は、顔をひきつらせながら後ずさりをしている。
そんな華緒の様子に構わず、一直線に手を華緒の後ろにある本棚へ。
そして、目的のものを手に取り、華緒に手渡す。
「はいなのです、華緒ちゃん」
「……ふぇ?」
沙友理が手渡したものは、いわゆる『少女漫画』。
年頃の乙女とは、つまりそういうことである。
「え、あ、ど、どうも……?」
確実に自分に何かされると思っていた華緒は面食らって、それをつい反射的に受け取っていた。
高校生でも充分ターゲット層に入っているが、華緒はもう何年も読んでいない。
「すごくいいのですよ、少女漫画。妹と一緒によく読んでいるのです」
「え、あ、でも……私……その……少女漫画はちょっと……」
「あ、もしかして苦手だったのですか? それは悪かったのです……」
今は少女漫画よりも百合漫画にハマっている華緒は、どうしても少女漫画を読む気になれなかったのだ。
それをどう思ったのか、沙友理はすごく悲しそうに声のトーンとテンションを下げる。
悲しそうに俯く沙友理を見て、華緒はすごく嗜虐心をそそられた。
「……先輩はまだこんなの読んでるんですか? 子どもですね」
内心は相当ニヤニヤしているであろうトーンで、冷たく言い放つ。
そんな冷たい言葉を浴びせられた沙友理はさらにヘコむ。
「そ、そうなのですよね……クラスメイトたちにも不人気ですし……」
星花女子学園ではずっと女子ばかりと関わってきた子や百合な子が多いため、男女の恋愛に重きを置いた少女漫画はウケが悪い。
共学であればそんなことはなかったのだろうが……
「それなら、こっちはどうです?」
「あ……そ、それ……! 隠してたやつ……っ! いつの間に見つけたのですか!?」
華緒がどこからか取り出したのは、いわゆる『百合漫画』。
それは、沙友理がずっと隠してきた漫画である。
「こういうの、星花女子の生徒なら喜ぶ子多いんじゃないですか?」
すごくニヤニヤした顔で主導権を握っている華緒。
こんなにも生き生きとした華緒を、沙友理は見たことがない。
困惑や羞恥を隠しきれない沙友理は、もうどうすればいいかわからなかった。
百合漫画は“好き”を学ぶために買ったものだったが、密かにハマっていたというのは内緒である。
それをどこかで、普通じゃないのではと悩んでいるのだ。
「さっちゃん先輩。先輩は――」
「ごめんなさいなのですっ!」
近づいてきた華緒を突き飛ばし、沙友理は部屋から猛ダッシュで逃げていく。
涙と赤面で顔をぐしゃぐしゃにしながら、どこへ行くでもなく走り去った。
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