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第一章 ストーキングの恋模様!
これって重いの?
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○月○日
お弁当を作ってみた。
これでいいのだろうか……少し気合いが入りすぎて量が多くなってしまった気がする。
重いって思われないかなぁ。それは今更か。
どうしよう……気に入ってくれるといいな……
それにしても、親しげに話してたあのかっこいい人とはどんな関係なんだろう。すごく気になる。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「え、友だちでそこまでするのかい?」
「ん? そういうものじゃないのですか?」
翌日の休み時間。またナオくんに、華緒とのことを色々と聞かれていた。
話しているうちに分かったのだが、どうやらナオくんもずっと華緒を気にかけていたらしい。
そのことに親近感を感じながら、しかしそれとは逆の感情も湧き出てくる。
沙友理がナオくんに華緒のことを話すことで、華緒のことを知る人が増えてしまう。
それが嫌だという、ほんの少しの黒い気持ちがある。
しかし、華緒のことを考えれば友だちは多い方が良いに決まっているだろう。
だから華緒の為にも黒い感情を押し潰し、沙友理は華緒を紹介する機会を設けようとナオくんに声をかけたのだが——
「いや、今は遠慮しておくよ。そのうち気が向いたときにでも話しかけてみるから」
——と、断られてしまった。
沙友理は何ともないが、他の人は話しかける時は結構な勇気がいるのだろう。
そう思い、沙友理は特に何も言わなかった。
だが、今は話しかける気がないのに、ナオくんは華緒のことを沙友理に聞くわけで。
迷惑ではないのだが、少しもどかしく感じてしまっている。
「でも、お弁当か……ちょっと大変そうじゃないか?」
「大変?」
「あぁ……少し言いづらいんだけど、今日から毎日お弁当を作るって言ってるんだろう? それってちょっと……沙友理ちゃんには荷が重いんじゃないかなって」
「荷が重い……のですか?」
荷が重い、と言われても沙友理にはピンと来なかった。
今まで、こういうことがなかったわけではないから。
家庭科で習った手作りのお菓子をもらったり、バレンタインデーには友チョコをいくつかもらったことがある。
そのせいなのか、お弁当を作ってもらうということも、特に大きなことには感じない。
もちろん、嬉しくないわけじゃないし、しっかり感謝もするつもりだが。
ただ、それよりも。
もしそれが沙友理には「荷が重い」のだとしても、沙友理の目的は華緒ともっと仲良くなることなのだ。
なんとしても、そのチャンスを手放すわけにはいかない。
とにかく、沙友理にとってはあまり気になるところではなかった。
それを伝えると、ナオくんは「そうか……だけど、気をつけなよ?」と沙友理の目をしっかりと見て。
「――あの子の愛を、君は受け止められるかい?」
そんな意味深な言葉を残して去っていった。
授業開始のチャイムが鳴る中、なんとなく華緒の教室がある方角へ視線を向ける。
すると、なぜか華緒と目が合った気がして……少し、寒気を覚えた。
――そして、待ちに待った昼休みの時間。
大いに期待していた華緒のお手製弁当は、その期待を上回るものだった。
卵焼き、ミートボール、たこさんウィンナー、ほうれん草のソテー、ミニトマトなどなど。
色とりどりで、どれも優しく温かい美味しさをしていた。
「めっちゃ美味しかったのです……最高なのです……」
「えへへ、大げさですよ。でも、ありがとうございます」
ニコニコとしながら空になったお弁当箱をバッグに仕舞う華緒を見ていると、将来は凄くいいお嫁さんになるのだろうかと感じる。
そこに何となくな寂しさが込み上げてくる。
まるで、華緒の母親にでもなった気分だ。
「いっちゃんは、気になってる人とかいるのですか?」
「ぶふっえっ……! な、ななななんですかいきなりっ! げほっごほっ!」
「少し気になって――というか、大丈夫なのですか?」
むせて呼吸が大変そうな華緒の背中をさする沙友理。
優しく背中を触られている華緒は、そのことに動揺し、またむせてしまう。
くだらないことで忙しい二人だったが、沙友理はなぜか充足感を感じていた。
これこそ、自分の望んでいたものだと。
「ふー……はー……な、なんとか落ち着きました……」
「そうなのですか? それならよかったのです」
と、そんな言葉を交わしているうちに、ふと気付く。
「そう言えば、いっちゃん声明るくなった……っていうより、色々と遠慮してる感じがなくなった気がするのです」
「そ、そうですか? もしご迷惑でしたら、もう少し——」
「いや、もっと砕けてくれてもいいのですよ? 遠慮しないで接してもらえれば、こっちも気を遣わないで済むのです」
「まあ、別に今も気を遣ってるわけじゃないのですけど」と付け足す。
華緒も同じ考えだったのだろうか。
今までのように控え目ながら……少しばかり、大きく顔を綻ばせていた。
その素敵な顔に、何かを感じて。
「……これ……」
たった今、沙友理の胸の中に湧き出た感覚。
家族との会話や、クラスメイトとワイワイやっていた時には感じたことのない感覚。
ナオくんは「沙友理には荷が重い」なんて言っていたが、沙友理が感じているものは全くの逆。
身体がふわふわするような、宙に浮いているような……そんな感じだった。
自分にこれをもたらしてくれている存在は、間違いなく隣に居てくれている華緒なわけで。
「……ありがとなのです」
華緒の耳に届いてほしいような、恥ずかしいから届いて欲しくないような。
沙友理はそんな言葉を呟いた。
お弁当を作ってみた。
これでいいのだろうか……少し気合いが入りすぎて量が多くなってしまった気がする。
重いって思われないかなぁ。それは今更か。
どうしよう……気に入ってくれるといいな……
それにしても、親しげに話してたあのかっこいい人とはどんな関係なんだろう。すごく気になる。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「え、友だちでそこまでするのかい?」
「ん? そういうものじゃないのですか?」
翌日の休み時間。またナオくんに、華緒とのことを色々と聞かれていた。
話しているうちに分かったのだが、どうやらナオくんもずっと華緒を気にかけていたらしい。
そのことに親近感を感じながら、しかしそれとは逆の感情も湧き出てくる。
沙友理がナオくんに華緒のことを話すことで、華緒のことを知る人が増えてしまう。
それが嫌だという、ほんの少しの黒い気持ちがある。
しかし、華緒のことを考えれば友だちは多い方が良いに決まっているだろう。
だから華緒の為にも黒い感情を押し潰し、沙友理は華緒を紹介する機会を設けようとナオくんに声をかけたのだが——
「いや、今は遠慮しておくよ。そのうち気が向いたときにでも話しかけてみるから」
——と、断られてしまった。
沙友理は何ともないが、他の人は話しかける時は結構な勇気がいるのだろう。
そう思い、沙友理は特に何も言わなかった。
だが、今は話しかける気がないのに、ナオくんは華緒のことを沙友理に聞くわけで。
迷惑ではないのだが、少しもどかしく感じてしまっている。
「でも、お弁当か……ちょっと大変そうじゃないか?」
「大変?」
「あぁ……少し言いづらいんだけど、今日から毎日お弁当を作るって言ってるんだろう? それってちょっと……沙友理ちゃんには荷が重いんじゃないかなって」
「荷が重い……のですか?」
荷が重い、と言われても沙友理にはピンと来なかった。
今まで、こういうことがなかったわけではないから。
家庭科で習った手作りのお菓子をもらったり、バレンタインデーには友チョコをいくつかもらったことがある。
そのせいなのか、お弁当を作ってもらうということも、特に大きなことには感じない。
もちろん、嬉しくないわけじゃないし、しっかり感謝もするつもりだが。
ただ、それよりも。
もしそれが沙友理には「荷が重い」のだとしても、沙友理の目的は華緒ともっと仲良くなることなのだ。
なんとしても、そのチャンスを手放すわけにはいかない。
とにかく、沙友理にとってはあまり気になるところではなかった。
それを伝えると、ナオくんは「そうか……だけど、気をつけなよ?」と沙友理の目をしっかりと見て。
「――あの子の愛を、君は受け止められるかい?」
そんな意味深な言葉を残して去っていった。
授業開始のチャイムが鳴る中、なんとなく華緒の教室がある方角へ視線を向ける。
すると、なぜか華緒と目が合った気がして……少し、寒気を覚えた。
――そして、待ちに待った昼休みの時間。
大いに期待していた華緒のお手製弁当は、その期待を上回るものだった。
卵焼き、ミートボール、たこさんウィンナー、ほうれん草のソテー、ミニトマトなどなど。
色とりどりで、どれも優しく温かい美味しさをしていた。
「めっちゃ美味しかったのです……最高なのです……」
「えへへ、大げさですよ。でも、ありがとうございます」
ニコニコとしながら空になったお弁当箱をバッグに仕舞う華緒を見ていると、将来は凄くいいお嫁さんになるのだろうかと感じる。
そこに何となくな寂しさが込み上げてくる。
まるで、華緒の母親にでもなった気分だ。
「いっちゃんは、気になってる人とかいるのですか?」
「ぶふっえっ……! な、ななななんですかいきなりっ! げほっごほっ!」
「少し気になって――というか、大丈夫なのですか?」
むせて呼吸が大変そうな華緒の背中をさする沙友理。
優しく背中を触られている華緒は、そのことに動揺し、またむせてしまう。
くだらないことで忙しい二人だったが、沙友理はなぜか充足感を感じていた。
これこそ、自分の望んでいたものだと。
「ふー……はー……な、なんとか落ち着きました……」
「そうなのですか? それならよかったのです」
と、そんな言葉を交わしているうちに、ふと気付く。
「そう言えば、いっちゃん声明るくなった……っていうより、色々と遠慮してる感じがなくなった気がするのです」
「そ、そうですか? もしご迷惑でしたら、もう少し——」
「いや、もっと砕けてくれてもいいのですよ? 遠慮しないで接してもらえれば、こっちも気を遣わないで済むのです」
「まあ、別に今も気を遣ってるわけじゃないのですけど」と付け足す。
華緒も同じ考えだったのだろうか。
今までのように控え目ながら……少しばかり、大きく顔を綻ばせていた。
その素敵な顔に、何かを感じて。
「……これ……」
たった今、沙友理の胸の中に湧き出た感覚。
家族との会話や、クラスメイトとワイワイやっていた時には感じたことのない感覚。
ナオくんは「沙友理には荷が重い」なんて言っていたが、沙友理が感じているものは全くの逆。
身体がふわふわするような、宙に浮いているような……そんな感じだった。
自分にこれをもたらしてくれている存在は、間違いなく隣に居てくれている華緒なわけで。
「……ありがとなのです」
華緒の耳に届いてほしいような、恥ずかしいから届いて欲しくないような。
沙友理はそんな言葉を呟いた。
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