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第一章 ストーキングの恋模様!
あの子ってもしかして?
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○月○日
今日はさっちゃん先輩と理沙ちゃんと一緒に帰った。
やっぱり理沙ちゃんのひたむきな姿勢は本当に尊敬するなぁ……
でも、やっぱ……ライバルってことになるのかな。
理沙ちゃんがどういう想いを抱いているのかまではわからなかったけど……そういうことだよね。
……頑張らなきゃ。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
校門を出てすぐの街路樹の下に、純白のワンピースを纏った少女が立っている。
その茶色の短髪と深緑色の両目は、暫く前に見たままだった。
「おまたせなのです、理沙」
「ねーちゃん! ……と、華緒さん!」
理沙はチラッと沙友理の背後を見て、緊張で縮こまっていた華緒と目が合う。
華緒はこの前のこともあり、気まずそうに震えた声を出す。
「えーっと……久しぶり。元気だった?」
「はい。華緒さんもお元気そうで何よりです」
相変わらず大人びた小学生である。
だが、子どもっぽい部分もあるようで。
理沙は的確に華緒の手を取ると、きゅっと握ってぴょんぴょん跳び跳ねだした。
「本当にお久しぶりです、華緒さん! また会えて嬉しいです」
「え、えーっと……わ、私も嬉しいよ」
未だ握られたままの手を振りまくられながらふと沙友理の方を見ると、何やらケータイで誰かと話しながら既に歩き出していた。
チラチラ華緒たちに視線を寄越してはいるが、髪に隠れて表情はよく見えない。
「もう一度会いたかったんです。ねーちゃんの高校での様子が聞きたくて——」
「ちょ、遅れちゃう! 話しながら行こ! ね??」
華緒は慌てて理沙の手を引っ張り、沙友理を追いかける。
理沙が転んだりしないようゆっくり、できるだけ足元に気を付けながら手を引いていく。
「理沙ちゃん、漫画の方は順調?」
「あー、そうですね……最近は色々調べたりするのが主になっててあまり描けてはいないんですけど……」
そう言って、恥ずかしそうに笑う理沙。
理沙は頑張り屋なのか、色々と漫画について研究しているらしい。
将来はプロの漫画家になったりするのだろうか。
もしプロにならなくとも、素直な尊敬の念が湧いてくる。
先を歩く沙友理が華緒たちを全く気にしないのは、誰かと話しているからだけでなく、きっと理沙のことを信頼しているからというのもあるのだろう。
「……あたし、薄々気づいてるんです。華緒さんが――ねーちゃんのこと意識してるの」
華緒は息を呑んだ。
理沙の表情は読み取りづらいが、少し手を強く握られたことでその感情は伝わってくる。
これは、華緒もよく知っている感情だ。
「初めて会った時からずっと、華緒さんがねーちゃんのこと目で追いかけてるのを感じてました。華緒さん、ねーちゃんといると表情柔らかくなるし……」
理沙はぱっちりした目でまっすぐ前方を見つめる。
その先にはもちろん、沙友理が居た。
「——でも、ねーちゃんの一番はあたしです。あたしが……ねーちゃんを幸せにします。華緒さんは、自分がねーちゃんの一番に相応しいと思いますか?」
華緒の手を取った時とは打って変わって、鋭い眼差しが向けられる。
理沙が、いかに沙友理を大切な人だと思っているかがわかる。
「……まあ、ねーちゃんも華緒さんのこと大事に思ってるみたいだし、下手に口出す気はないけど……やっぱりあたしは、ねーちゃんが――」
「理沙ちゃんっ!!」
握られた手にぎゅっと力が込められた……ところで、華緒も強く握り返す。
理沙はすごく驚いた顔をしていたが、同時に予想通りという表情も浮かべていた。
「は、華緒さん? なんですかいきなり……」
「……えっ、あ……その……理沙ちゃんの気持ちはよくわかるから……私も、引き下がる気はないよ」
「……ま、そうですよね。いつもねーちゃんのこと追いかけてますもんね」
少し先では、電柱に寄りかかった沙友理が華緒たちを待っている。
だが、華緒にとってはそれが今はどうでもよかった。
理沙が言い放った言葉には、どうにも裏があるようにしか聞こえなかったから。
「……それって、どういう……」
「そのままの意味です。――よく、家の前まで来てますよね」
その一言で、華緒は表情が凍りついた。
そんな華緒の様子を見て、理沙が年相応の笑顔で笑う。
「あはははっ! それほどねーちゃんが好きなんですよね!」
理沙はまたぴょんぴょん跳びはねながら、先程の含みを感じさせない活発さで歩いていく。
それに引かれるままにしながらも、理沙や沙友理の表情を窺う。
「……」
理沙は華緒の手を固く繋いでいるものの、それが表面上だけだとばかりに表情も固くする。
沙友理はそんな二人のやり取りを知らないようで、微笑ましそうに華緒と理沙を見つめている。
「ほら、速くねーちゃんのそばに行きましょう! ねーちゃんが退屈そうに待ってますから!」
「ちょ、ちょっと理沙ちゃん……! 転んだら危ないよ……?」
グイグイと手を引かれるうちに放したりしないよう、理沙の手を強く握る。
その時、理沙が一瞬手を離しそうになった気がしたが……すぐに強く握り返してきた。
「ちょっとー、二人だけが仲良しみたいなのです。わたしだけハブられてるみたいなのです」
「ねーちゃんも繋ぐか?」
「いや、車道まではみ出すからやめとくのです」
沙友理はまたも華緒と理沙の前を歩く。
さっき誰と何を話していたのかが気になるが……しかし。
「華緒さん、聞いて欲しいことがあるんです! あのですね……」
理沙との会話は途切れることなく続き、そのうち聞く機会もないまま交差点に差し掛かる。
ここで、理沙とも沙友理とも別れてしまった。
「また明日聞けばいいよね……」
華緒はそう思っていたのだが。
翌日、そしてさらにその次の日と……沙友理は学校に顔を出さなかった。
今日はさっちゃん先輩と理沙ちゃんと一緒に帰った。
やっぱり理沙ちゃんのひたむきな姿勢は本当に尊敬するなぁ……
でも、やっぱ……ライバルってことになるのかな。
理沙ちゃんがどういう想いを抱いているのかまではわからなかったけど……そういうことだよね。
……頑張らなきゃ。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
校門を出てすぐの街路樹の下に、純白のワンピースを纏った少女が立っている。
その茶色の短髪と深緑色の両目は、暫く前に見たままだった。
「おまたせなのです、理沙」
「ねーちゃん! ……と、華緒さん!」
理沙はチラッと沙友理の背後を見て、緊張で縮こまっていた華緒と目が合う。
華緒はこの前のこともあり、気まずそうに震えた声を出す。
「えーっと……久しぶり。元気だった?」
「はい。華緒さんもお元気そうで何よりです」
相変わらず大人びた小学生である。
だが、子どもっぽい部分もあるようで。
理沙は的確に華緒の手を取ると、きゅっと握ってぴょんぴょん跳び跳ねだした。
「本当にお久しぶりです、華緒さん! また会えて嬉しいです」
「え、えーっと……わ、私も嬉しいよ」
未だ握られたままの手を振りまくられながらふと沙友理の方を見ると、何やらケータイで誰かと話しながら既に歩き出していた。
チラチラ華緒たちに視線を寄越してはいるが、髪に隠れて表情はよく見えない。
「もう一度会いたかったんです。ねーちゃんの高校での様子が聞きたくて——」
「ちょ、遅れちゃう! 話しながら行こ! ね??」
華緒は慌てて理沙の手を引っ張り、沙友理を追いかける。
理沙が転んだりしないようゆっくり、できるだけ足元に気を付けながら手を引いていく。
「理沙ちゃん、漫画の方は順調?」
「あー、そうですね……最近は色々調べたりするのが主になっててあまり描けてはいないんですけど……」
そう言って、恥ずかしそうに笑う理沙。
理沙は頑張り屋なのか、色々と漫画について研究しているらしい。
将来はプロの漫画家になったりするのだろうか。
もしプロにならなくとも、素直な尊敬の念が湧いてくる。
先を歩く沙友理が華緒たちを全く気にしないのは、誰かと話しているからだけでなく、きっと理沙のことを信頼しているからというのもあるのだろう。
「……あたし、薄々気づいてるんです。華緒さんが――ねーちゃんのこと意識してるの」
華緒は息を呑んだ。
理沙の表情は読み取りづらいが、少し手を強く握られたことでその感情は伝わってくる。
これは、華緒もよく知っている感情だ。
「初めて会った時からずっと、華緒さんがねーちゃんのこと目で追いかけてるのを感じてました。華緒さん、ねーちゃんといると表情柔らかくなるし……」
理沙はぱっちりした目でまっすぐ前方を見つめる。
その先にはもちろん、沙友理が居た。
「——でも、ねーちゃんの一番はあたしです。あたしが……ねーちゃんを幸せにします。華緒さんは、自分がねーちゃんの一番に相応しいと思いますか?」
華緒の手を取った時とは打って変わって、鋭い眼差しが向けられる。
理沙が、いかに沙友理を大切な人だと思っているかがわかる。
「……まあ、ねーちゃんも華緒さんのこと大事に思ってるみたいだし、下手に口出す気はないけど……やっぱりあたしは、ねーちゃんが――」
「理沙ちゃんっ!!」
握られた手にぎゅっと力が込められた……ところで、華緒も強く握り返す。
理沙はすごく驚いた顔をしていたが、同時に予想通りという表情も浮かべていた。
「は、華緒さん? なんですかいきなり……」
「……えっ、あ……その……理沙ちゃんの気持ちはよくわかるから……私も、引き下がる気はないよ」
「……ま、そうですよね。いつもねーちゃんのこと追いかけてますもんね」
少し先では、電柱に寄りかかった沙友理が華緒たちを待っている。
だが、華緒にとってはそれが今はどうでもよかった。
理沙が言い放った言葉には、どうにも裏があるようにしか聞こえなかったから。
「……それって、どういう……」
「そのままの意味です。――よく、家の前まで来てますよね」
その一言で、華緒は表情が凍りついた。
そんな華緒の様子を見て、理沙が年相応の笑顔で笑う。
「あはははっ! それほどねーちゃんが好きなんですよね!」
理沙はまたぴょんぴょん跳びはねながら、先程の含みを感じさせない活発さで歩いていく。
それに引かれるままにしながらも、理沙や沙友理の表情を窺う。
「……」
理沙は華緒の手を固く繋いでいるものの、それが表面上だけだとばかりに表情も固くする。
沙友理はそんな二人のやり取りを知らないようで、微笑ましそうに華緒と理沙を見つめている。
「ほら、速くねーちゃんのそばに行きましょう! ねーちゃんが退屈そうに待ってますから!」
「ちょ、ちょっと理沙ちゃん……! 転んだら危ないよ……?」
グイグイと手を引かれるうちに放したりしないよう、理沙の手を強く握る。
その時、理沙が一瞬手を離しそうになった気がしたが……すぐに強く握り返してきた。
「ちょっとー、二人だけが仲良しみたいなのです。わたしだけハブられてるみたいなのです」
「ねーちゃんも繋ぐか?」
「いや、車道まではみ出すからやめとくのです」
沙友理はまたも華緒と理沙の前を歩く。
さっき誰と何を話していたのかが気になるが……しかし。
「華緒さん、聞いて欲しいことがあるんです! あのですね……」
理沙との会話は途切れることなく続き、そのうち聞く機会もないまま交差点に差し掛かる。
ここで、理沙とも沙友理とも別れてしまった。
「また明日聞けばいいよね……」
華緒はそう思っていたのだが。
翌日、そしてさらにその次の日と……沙友理は学校に顔を出さなかった。
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