17 / 50
第二章 仲良しのその先へ!
風邪を引いた?
しおりを挟む
○月○日
今日はさっちゃん先輩が心配で何もする気が起きなかった。
まさか、電話の相手に何かされたんじゃ……!
早速今日も見に行――きたいけど、理沙ちゃん気づいてるしなぁ……
もう、どうすればいいのか!
そ、そうだ……差し入れ持ってけばいいよね。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
『ん?』
ブランが疑問を感じたのは、夏祭り中盤での出来事だった。
何が……と言うわけでもなく、なんとなくとしか言いようがない。
ブランは長いウサギの耳を持っているため、他人より多くの情報がこの耳に入ってくる。
だからかもしれないが、凄く音に対して敏感になっている。
誰か……神か、それとも霊なのかよく分からないが、実体のない“何か”が居るような……そんな気がした。
違和感を覚えた方へと足を進める。
『はぁ……はぁ……』
どれぐらい歩いたのだろう。辺りは森のようで、木々が騒めいてる。それでいて、ちゃんと土で出来た道が整備されている。
『それほど歩いたわけでもないのに……すごく辛い……』
そうなのだ。時間にしてわずか10分くらいしか歩いていないはずなのに。
息は切れ、体力も物凄く削られているのが分かる。
まるで外からの侵入者を拒むかのように、ブランの好奇心を削いで来ている。
『帰ろうかな……』
ポツリと独り言を呟いた、その時だった。
『――帰るのか?』
ブランの目の前に突如として現れた“それ”はあまりにも眩しくて……すごく、綺麗だった。
「――……ちゃん、ねーちゃん! 『シシミミ国のブランちゃん』始まったぞ……!」
「ごほっ……り、理沙……頭に響くのです……」
理沙の好きなアニメが始まり、理沙のテンションはものすごく高くなっている。
対照的に、沙友理は顔色が悪く、ベッドに横たわっている。
「ねーちゃんが風邪引くなんて珍しいよな~。ほとんど体調崩したことないのに」
沙友理の看病をしながら、理沙が言う。
昔から沙友理は健康優良児といった感じで、小中学校で皆勤賞を取っていた。
それなのに風邪を引いてしまうなんて、何かあったとしか思えない。
「ねーちゃん、なんか変なものでも食ったのか?」
「けほっ……特に変なものなんて食べてないのですよ……いっちゃんのお弁当食べただけなのですから……」
「――今、なんて……」
沙友理の言葉を聞き、理沙は目を見開く。
料理部に所属しているのに一向に料理が上達しない沙友理だから、お昼は食堂で食べているものだと思っていたのだ。
それは間違っていないが、最近の沙友理は華緒のお弁当を食べている。
そのことを知った理沙は、唖然として言葉が出なかった。
その時――
『え……シシミミ? それって“あの”シシミミ様!?』
『? 他に誰が居るんだ?』
ポカーンとする事しか出来なかった。
まさかシシミミに拝謁出来るとは思ってもみなかった事だから。
シシミミの容姿は――一言で言うと、獅子だった。
太陽に照らされて一層輝きを増す茶色のたてがみに、もっさりふわふわしたマフ、全身が黄金の毛に覆われた獅子の姿がそこにあった。
――少し長いCMが終わり、『シシミミ国のブランちゃん』の続きが始まっていた。
それに気づき、理沙はいち早くテレビの前に戻る。
理沙の瞬速スピードが、沙友理の目では追いきれなかった。
まあ、沙友理でなくともあの瞬間移動を目にできるものはいないだろう。
「ふおおお! シシミミ様かっけー!」
理沙は年相応の無邪気さではしゃぐ。
理沙の周りに花が咲いているように、とても綺麗な情景が浮かんでいる。
それを見ていると、沙友理は自然と口元が綻んだ。
「理沙は本当に子供なのですね~……」
感慨深そうに呟くと、タイミングよくインターホンが鳴った。
「げほっ……だ、誰なのでしょう?」
少し体調が良くなっておかゆに口をつけたのだが、インターホンの音でむせてしまった。
理沙も好きなアニメの観賞を邪魔され、怪訝な顔つきをしている。
そんな時、か細くて儚い声が沙友理の耳に届いた気がした。
「……さ、さっちゃんせんぱーい……」
「いっちゃんなのですか!?」
「え、な、なに!?」
突然飛び起きた沙友理と、状況を理解できない理沙。
少しばかりドタバタした後、沙友理は病人だと思わせない足取りで玄関へ向かう。
理沙には姉の奇行がわからず、ただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「いっちゃん!!」
「えっ、さ、さっちゃん先輩!? だ、大丈夫なんです――」
沙友理が勢いよくドアを開けると、そこには案の定、華緒の姿があった。
感極まったのか、はたまた勢い余ったのか。
気づけば華緒が言い終わらないうちに、沙友理は華緒に抱きついていた。
あまりにも突然のことに、華緒は思考が追いつかない。
なぜこんなことになっているかわからず、石のように固まる。
沙友理の小さな身体から、熱を感じる。
それは普通の体温というわけではなく、本当に熱っぽかった。
「さ、さっちゃん先輩……おでこ失礼します……」
そう言い、華緒が沙友理の前髪をかきわけておでこを触ると、とても熱かった。
火傷しそうになるぐらい。
「あっつ!?」
華緒が叫び終わる前に、沙友理はその場に倒れてしまった。
今日はさっちゃん先輩が心配で何もする気が起きなかった。
まさか、電話の相手に何かされたんじゃ……!
早速今日も見に行――きたいけど、理沙ちゃん気づいてるしなぁ……
もう、どうすればいいのか!
そ、そうだ……差し入れ持ってけばいいよね。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
『ん?』
ブランが疑問を感じたのは、夏祭り中盤での出来事だった。
何が……と言うわけでもなく、なんとなくとしか言いようがない。
ブランは長いウサギの耳を持っているため、他人より多くの情報がこの耳に入ってくる。
だからかもしれないが、凄く音に対して敏感になっている。
誰か……神か、それとも霊なのかよく分からないが、実体のない“何か”が居るような……そんな気がした。
違和感を覚えた方へと足を進める。
『はぁ……はぁ……』
どれぐらい歩いたのだろう。辺りは森のようで、木々が騒めいてる。それでいて、ちゃんと土で出来た道が整備されている。
『それほど歩いたわけでもないのに……すごく辛い……』
そうなのだ。時間にしてわずか10分くらいしか歩いていないはずなのに。
息は切れ、体力も物凄く削られているのが分かる。
まるで外からの侵入者を拒むかのように、ブランの好奇心を削いで来ている。
『帰ろうかな……』
ポツリと独り言を呟いた、その時だった。
『――帰るのか?』
ブランの目の前に突如として現れた“それ”はあまりにも眩しくて……すごく、綺麗だった。
「――……ちゃん、ねーちゃん! 『シシミミ国のブランちゃん』始まったぞ……!」
「ごほっ……り、理沙……頭に響くのです……」
理沙の好きなアニメが始まり、理沙のテンションはものすごく高くなっている。
対照的に、沙友理は顔色が悪く、ベッドに横たわっている。
「ねーちゃんが風邪引くなんて珍しいよな~。ほとんど体調崩したことないのに」
沙友理の看病をしながら、理沙が言う。
昔から沙友理は健康優良児といった感じで、小中学校で皆勤賞を取っていた。
それなのに風邪を引いてしまうなんて、何かあったとしか思えない。
「ねーちゃん、なんか変なものでも食ったのか?」
「けほっ……特に変なものなんて食べてないのですよ……いっちゃんのお弁当食べただけなのですから……」
「――今、なんて……」
沙友理の言葉を聞き、理沙は目を見開く。
料理部に所属しているのに一向に料理が上達しない沙友理だから、お昼は食堂で食べているものだと思っていたのだ。
それは間違っていないが、最近の沙友理は華緒のお弁当を食べている。
そのことを知った理沙は、唖然として言葉が出なかった。
その時――
『え……シシミミ? それって“あの”シシミミ様!?』
『? 他に誰が居るんだ?』
ポカーンとする事しか出来なかった。
まさかシシミミに拝謁出来るとは思ってもみなかった事だから。
シシミミの容姿は――一言で言うと、獅子だった。
太陽に照らされて一層輝きを増す茶色のたてがみに、もっさりふわふわしたマフ、全身が黄金の毛に覆われた獅子の姿がそこにあった。
――少し長いCMが終わり、『シシミミ国のブランちゃん』の続きが始まっていた。
それに気づき、理沙はいち早くテレビの前に戻る。
理沙の瞬速スピードが、沙友理の目では追いきれなかった。
まあ、沙友理でなくともあの瞬間移動を目にできるものはいないだろう。
「ふおおお! シシミミ様かっけー!」
理沙は年相応の無邪気さではしゃぐ。
理沙の周りに花が咲いているように、とても綺麗な情景が浮かんでいる。
それを見ていると、沙友理は自然と口元が綻んだ。
「理沙は本当に子供なのですね~……」
感慨深そうに呟くと、タイミングよくインターホンが鳴った。
「げほっ……だ、誰なのでしょう?」
少し体調が良くなっておかゆに口をつけたのだが、インターホンの音でむせてしまった。
理沙も好きなアニメの観賞を邪魔され、怪訝な顔つきをしている。
そんな時、か細くて儚い声が沙友理の耳に届いた気がした。
「……さ、さっちゃんせんぱーい……」
「いっちゃんなのですか!?」
「え、な、なに!?」
突然飛び起きた沙友理と、状況を理解できない理沙。
少しばかりドタバタした後、沙友理は病人だと思わせない足取りで玄関へ向かう。
理沙には姉の奇行がわからず、ただ呆然と見ていることしか出来なかった。
「いっちゃん!!」
「えっ、さ、さっちゃん先輩!? だ、大丈夫なんです――」
沙友理が勢いよくドアを開けると、そこには案の定、華緒の姿があった。
感極まったのか、はたまた勢い余ったのか。
気づけば華緒が言い終わらないうちに、沙友理は華緒に抱きついていた。
あまりにも突然のことに、華緒は思考が追いつかない。
なぜこんなことになっているかわからず、石のように固まる。
沙友理の小さな身体から、熱を感じる。
それは普通の体温というわけではなく、本当に熱っぽかった。
「さ、さっちゃん先輩……おでこ失礼します……」
そう言い、華緒が沙友理の前髪をかきわけておでこを触ると、とても熱かった。
火傷しそうになるぐらい。
「あっつ!?」
華緒が叫び終わる前に、沙友理はその場に倒れてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる