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第二章 仲良しのその先へ!
突然また会えた?
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○月○日
さっちゃん先輩に会うまいとしていたのに、なぜかばったりと会ってしまった。
いや、嬉しいよ!? 嬉しいんだけど……
なんか複雑というか、申し訳なさというか……色々な感情が混ざり合っておかしくなりそう。
さっちゃん先輩にならおかしくされてもいいな……まあ、どっちかって言うと私が先輩をおかしくしたい。
……いや、違う。そういう事じゃない。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
沙友理は唐突に一人になりたくて、人気のない場所に来ていた。
ここがどこなのか、三年間通ってきた沙友理でもわからなかった。
星花女子学園の敷地はとても広いため、こういうこともありうるだろう。
だから、沙友理は探検気分でうろついてみることにした。
自分だけが知っている秘密の場所みたいな感じがする。
ちょっとした冒険のようで、沙友理は少し胸が高鳴った。
それにしても、華緒はどうして姿を見せなくなったのだろうか。
もしかしたら自分は避けられているのではないかと、沙友理は疑ってしまった。
沙友理は華緒と仲良しだと思っていたのに。
嫌われているという自分の考えがもし合っていたら……沙友理はそう思うだけで、胸が張り裂けそうだった。
そんな事を考えながら、二階の端にある空き教室を見つけ、ドアを開く。
そこには、予想外の人物がいた。
「い、いっちゃん?」
まるでここが異次元の中のような異質な感じ。
沙友理が素っ頓狂な声を出すと、その人物も振り返って沙友理に気づき、驚いたような表情を見せた。
「あ……さっちゃん先輩……」
しかし、すぐ気まずそうに目を逸らす。
やはり、避けられているのだろうか。
「め、珍しいのですね。いっちゃんがこんなところまで来るなんて……」
「あー、その……人がいないところが落ち着くので……よく一人で空き教室に来てるんですよ」
一応会話はしてくれているものの、やはり目を合わせようとしない。
「えっと……そうなのです! わたし、いっちゃんのためにクッキー作ったのです! あまり上手くはないと思うのですが……」
「そうなんですか……それはどうもありがとうございます」
「あ、あったのです。はいこれ、もしよかったらいっちゃんのおばあさんと一緒にどうぞなのです」
「え……うちの祖母にも? わざわざありがとうございます……ここまでしてもらえるなんて……」
沙友理が渡したクッキーを、華緒が受け取る。
一瞬、とても嬉しそうに頬が紅潮しているように見えたが、気のせいだろうか。
それはとりあえず置いておいて、華緒は一向にクッキーに口をつけようとしない。
ラッピングしてあるため、すぐに食べるものではないと判断されたようだ。
「い、いっちゃん……その、わたしが作ったクッキー、食べてくれないのですか?」
「えっ!? いや、その、なんていうか……食べるのがもったいないというか……ずっと取っておきたいというか……」
目を少しキラキラさせている華緒の幻影が見えた気がした。
しかし、沙友理の困惑気味な視線に気づき、すぐに表情を元に戻す。
「す、すみません……今食べた方がいいですか?」
沙友理の視線をどう解釈したのか、華緒はクッキーを指さして問う。
確かに食べて欲しいとは思っていたが、強要するのは何か違う気がする。
「あー、いいのですよ。取っておきたいのならそれで……」
「そうですか……」
そして、またも気まずい空気が流れる。
だが、それではだめだと、沙友理は首を振って話を切り出す。
華緒に近づき、自分の想いを伝える。
「わたしは、いっちゃんと親友になりたいと思っているのです……! だから……その……わたしに何か非があれば言って欲しいのです! わたしは――いっちゃんの“特別”になりたいのです!」
沙友理が勇気を出して言った言葉に、華緒はクッキーを落として固まる。
その顔は、見たことがないぐらい赤かった。
熟しすぎて、すぐに腐ってしまうのではないかと心配になるほどだ。
案の定、その赤みは消えることなく――
「え……あ……え!? と、特別!? もっと仲良くってことですか……!? 親友!? えっ!? さっちゃん先輩と私が!?」
――むしろヒートアップしている。
頭から煙のようなものを噴き出し、鼻からは血が垂れていて、目線があちこちに行ったりと忙しない。
それがなんだか面白くて、ずっと見ていたいと思った。
「ふふっ」
「な、なに笑ってるんですか!!」
沙友理の笑い声に、華緒はムキになる。
華緒の表情がコロコロ変わるところが面白い。
そして、いつもは見せないようなふくれっ面が面白い。
要するに、一緒にいて飽きないのだ。
「いっちゃん、可愛くて面白いのです」
「か、かわ……おもしろ……」
沙友理の畳み掛けに、完全にキャパオーバーになる華緒。
そんな時、不意にプツンと、華緒の中の何かが切れる音がした。
「さっちゃん先輩……なめないでください!」
華緒は勢いよく沙友理に近づき、沙友理を壁に追いやる。
沙友理は、華緒に壁ドンされた事実に思考が追いつかない。
顔を限界まで赤くさせて精一杯そうな華緒は、ずいっとその赤い顔を沙友理に近づける。
「私だって、やる時はやりますから」
そう言って、華緒は顔を離す。
沙友理は困惑と緊張で視界がぼやけながらも、改めて華緒の顔を見る。
その顔は、先程までの赤みが引いていた。
代わりに、恍惚としたような嗜虐的な笑みを浮かべている。
「どうしたんですか、さっちゃん先輩。――顔赤いですよ?」
「はぇ……?」
言われて気づく。
どうやら、華緒の頬の赤みを移されたらしい。
心臓が狂ってしまったかのように、おかしなリズムを刻む。
だが不思議と、嫌な感じはしなかった。
さっちゃん先輩に会うまいとしていたのに、なぜかばったりと会ってしまった。
いや、嬉しいよ!? 嬉しいんだけど……
なんか複雑というか、申し訳なさというか……色々な感情が混ざり合っておかしくなりそう。
さっちゃん先輩にならおかしくされてもいいな……まあ、どっちかって言うと私が先輩をおかしくしたい。
……いや、違う。そういう事じゃない。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
沙友理は唐突に一人になりたくて、人気のない場所に来ていた。
ここがどこなのか、三年間通ってきた沙友理でもわからなかった。
星花女子学園の敷地はとても広いため、こういうこともありうるだろう。
だから、沙友理は探検気分でうろついてみることにした。
自分だけが知っている秘密の場所みたいな感じがする。
ちょっとした冒険のようで、沙友理は少し胸が高鳴った。
それにしても、華緒はどうして姿を見せなくなったのだろうか。
もしかしたら自分は避けられているのではないかと、沙友理は疑ってしまった。
沙友理は華緒と仲良しだと思っていたのに。
嫌われているという自分の考えがもし合っていたら……沙友理はそう思うだけで、胸が張り裂けそうだった。
そんな事を考えながら、二階の端にある空き教室を見つけ、ドアを開く。
そこには、予想外の人物がいた。
「い、いっちゃん?」
まるでここが異次元の中のような異質な感じ。
沙友理が素っ頓狂な声を出すと、その人物も振り返って沙友理に気づき、驚いたような表情を見せた。
「あ……さっちゃん先輩……」
しかし、すぐ気まずそうに目を逸らす。
やはり、避けられているのだろうか。
「め、珍しいのですね。いっちゃんがこんなところまで来るなんて……」
「あー、その……人がいないところが落ち着くので……よく一人で空き教室に来てるんですよ」
一応会話はしてくれているものの、やはり目を合わせようとしない。
「えっと……そうなのです! わたし、いっちゃんのためにクッキー作ったのです! あまり上手くはないと思うのですが……」
「そうなんですか……それはどうもありがとうございます」
「あ、あったのです。はいこれ、もしよかったらいっちゃんのおばあさんと一緒にどうぞなのです」
「え……うちの祖母にも? わざわざありがとうございます……ここまでしてもらえるなんて……」
沙友理が渡したクッキーを、華緒が受け取る。
一瞬、とても嬉しそうに頬が紅潮しているように見えたが、気のせいだろうか。
それはとりあえず置いておいて、華緒は一向にクッキーに口をつけようとしない。
ラッピングしてあるため、すぐに食べるものではないと判断されたようだ。
「い、いっちゃん……その、わたしが作ったクッキー、食べてくれないのですか?」
「えっ!? いや、その、なんていうか……食べるのがもったいないというか……ずっと取っておきたいというか……」
目を少しキラキラさせている華緒の幻影が見えた気がした。
しかし、沙友理の困惑気味な視線に気づき、すぐに表情を元に戻す。
「す、すみません……今食べた方がいいですか?」
沙友理の視線をどう解釈したのか、華緒はクッキーを指さして問う。
確かに食べて欲しいとは思っていたが、強要するのは何か違う気がする。
「あー、いいのですよ。取っておきたいのならそれで……」
「そうですか……」
そして、またも気まずい空気が流れる。
だが、それではだめだと、沙友理は首を振って話を切り出す。
華緒に近づき、自分の想いを伝える。
「わたしは、いっちゃんと親友になりたいと思っているのです……! だから……その……わたしに何か非があれば言って欲しいのです! わたしは――いっちゃんの“特別”になりたいのです!」
沙友理が勇気を出して言った言葉に、華緒はクッキーを落として固まる。
その顔は、見たことがないぐらい赤かった。
熟しすぎて、すぐに腐ってしまうのではないかと心配になるほどだ。
案の定、その赤みは消えることなく――
「え……あ……え!? と、特別!? もっと仲良くってことですか……!? 親友!? えっ!? さっちゃん先輩と私が!?」
――むしろヒートアップしている。
頭から煙のようなものを噴き出し、鼻からは血が垂れていて、目線があちこちに行ったりと忙しない。
それがなんだか面白くて、ずっと見ていたいと思った。
「ふふっ」
「な、なに笑ってるんですか!!」
沙友理の笑い声に、華緒はムキになる。
華緒の表情がコロコロ変わるところが面白い。
そして、いつもは見せないようなふくれっ面が面白い。
要するに、一緒にいて飽きないのだ。
「いっちゃん、可愛くて面白いのです」
「か、かわ……おもしろ……」
沙友理の畳み掛けに、完全にキャパオーバーになる華緒。
そんな時、不意にプツンと、華緒の中の何かが切れる音がした。
「さっちゃん先輩……なめないでください!」
華緒は勢いよく沙友理に近づき、沙友理を壁に追いやる。
沙友理は、華緒に壁ドンされた事実に思考が追いつかない。
顔を限界まで赤くさせて精一杯そうな華緒は、ずいっとその赤い顔を沙友理に近づける。
「私だって、やる時はやりますから」
そう言って、華緒は顔を離す。
沙友理は困惑と緊張で視界がぼやけながらも、改めて華緒の顔を見る。
その顔は、先程までの赤みが引いていた。
代わりに、恍惚としたような嗜虐的な笑みを浮かべている。
「どうしたんですか、さっちゃん先輩。――顔赤いですよ?」
「はぇ……?」
言われて気づく。
どうやら、華緒の頬の赤みを移されたらしい。
心臓が狂ってしまったかのように、おかしなリズムを刻む。
だが不思議と、嫌な感じはしなかった。
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