ストーキングは愛の証!【完結済み】

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第二章 仲良しのその先へ!

はじめての喧嘩をした?

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 ○月○日

 さっちゃん先輩になでなでされて嬉しかったけど……こればっかりはだめでしょ。
 だって女の子と二人で遊んでるとか、それもう浮気じゃん!
 はぁ……さっちゃん先輩は私だけ見てればいいのに。
 もう二度と浮気しないようにさせないと……
 どうしてくれようか。

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

「さっちゃん先輩。昨日の女の人、誰ですか?」
「はい……?」

 沙友理にしては珍しく、清々しい朝を迎えた日。
 華緒が唐突に沙友理の教室へやってきて、すごい剣幕で訊いてきた。
 本当に突然のことで、沙友理は最初なんのことかわからなかった。
 しかし、『昨日の女の人』というワードで、すぐに同級生の顔が浮かんだ。

「あ、あの子のことなのですね」

 沙友理が嬉しそうに微笑むと、あからさまに華緒の機嫌が悪くなる。
 沙友理は、怒った顔も可愛いと呑気に思っていた。

「……ずいぶん親しそうでしたけど……」

 顔をぷいっと背け、頬を大きく膨らませる。
 そんな華緒はどこか子どもっぽくて、沙友理は思わず背伸びして華緒の頭を撫でた。
 華緒は突然撫でられて恥ずかしそうな、嬉しそうな顔を浮かべた。

「大丈夫なのですよ。一番はいっちゃんなのですから」

 沙友理はなぜ昨日のことを華緒が知っているのか、そんな疑問を持たなかった。
 ただ、いつもとは違う一面を見せてくれたことが嬉しくて、少しずつ仲良くなれたかなと舞い上がっている。
 しかし、華緒はそうじゃないらしく。

「一番とかっ! そういうことじゃないです! 私はっ! さっちゃん先輩に他の子と仲良くして欲しくないんです!」
「……え?」
「だからっ! あの女の人ともう会わないでください!」

 涙目で叫ぶと、怒涛の勢いで去っていった。
 嵐のように訪れた悲劇に、沙友理は目を見開いて固まった。

「……へ? ちょ、ちょっと……!?」

 放心状態から我に返った沙友理は急いで華緒を追いかけるも、時すでに遅し。
 廊下に華緒の姿はどこにもなかった。
 沙友理は焦る。
 自分にとっての“一番”に、嫌われたくなかったから。

「ど、どうしようなのです……」

 とりあえず怒られた理由を探るべく、自分の席に戻る。
 あの同級生と遊んでいたことがだめだったのだろうか。
 しかし、ただ偶然出会って普通に遊んだだけだ。
 それのどこがだめだったのだろう。

「全然わからないのです……っ!」

 沙友理は頭を抱えて唸る。
 同級生に恋愛感情を持ったわけでもないのに、なぜ怒られたのか。
 そもそも、他の子と仲良くしてほしくないとはどういう意味なのだろう。

 何もわからない。
 本当に、華緒のことを何も知らない。
 ――どうして怒られたのか。
 ――どうしたら仲直りできるのか。
 わからないことだらけだ。

「ううう……」

 沙友理の脳みそはもはやショート寸前。
 酷使しすぎて熱が高まり、爆発でも起こしそうだ。

「篠宮先輩いますか?」

 教室の扉をコンコンと礼儀よくたたく音が響く。
 しかし、沙友理の耳には届かない。
 クラスの子が「呼んでるよ」と声をかけても、沙友理はまだ頭を抱えたまま。
 それにしびれを切らしたのか、沙友理を呼んだ後輩がつかつかと歩み寄る。

「ふんっ」
「ぶぇへゃ!?」

 その後輩は、声を出しながら沙友理の頭に手を置く。
 そこでようやく、沙友理の意識が現実世界に戻ってきた。

「何するのですか!?」
「いえ。呼んでも気づいてもらえなかったので、ボクの存在を知らしめました」
「だからといって力いっぱい下に押さないでもらえると私の首も助かるのです……」

 沙友理は自分の首が正常の位置に戻るか試しながら抗議する。
 どうやらその後輩は、沙友理の知り合いのようだ。
 しかし、どこか様子がおかしい。

「篠宮先輩の首は助からなくてもいいじゃないですか」
「ひどいのです!」

 仲がいいのか悪いのかよくわからないやり取りをしている。
 実は仲が悪いように見えて仲がいいという関係――

「そのまま死んでくれてもいいですよ」

 ――でもないようだ。
 いい笑顔でとんでもないことを言い放つ後輩。
 心底楽しそうに、沙友理で遊んでいる。

「……で、何しに来たのですか?」

 涙目になりながら問う沙友理は、化粧をしているにもかかわらず、さながら本当の子どものように見えた。
 そんな沙友理の様子になんとも思わない顔で、後輩は答える。

「さっき泣きながら走ってる稲津さんを見かけたよ。何かしたのか?」
「あ……そ、それが……その……」
「ま、篠宮先輩のことだから、『好きがわからないのです』とか言いながら振ったんだろ?」
「いや、その、違うのです……」
「そっか。それなら仕方ないよな」
「……もしかして、初めからわたしの話聞く気ないのですね?」

 一通り遊んで満足したのか、後輩は帰る素振りを見せる。
 しかし、沙友理の問題は何も解決していない。
 沙友理がそのことを口に出そうとすると、後輩が先回りして言う。

「……あの人にしたことを、稲津さんにもしないでね」
「……鈴香ちゃん……」

 色々なことを含んだ言葉を、後輩――宵闇よいやみ鈴香すずかは発する。
 あの人とは、もちろん沙友理の同級生の子。
 鈴香とは共通の知り合いがいて、そこから仲良くなった。
 その知り合いがきっかけで華緒を怒らせてしまったのだが。

「ボクと稲津さんは似てると思う。特別な人には向こうからも特別な存在として見られたいって願ってるんだ」

 沙友理はその言葉を聞いて、すぐに駆け出した。
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