24 / 50
第二章 仲良しのその先へ!
はじめての喧嘩をした?
しおりを挟む
○月○日
さっちゃん先輩になでなでされて嬉しかったけど……こればっかりはだめでしょ。
だって女の子と二人で遊んでるとか、それもう浮気じゃん!
はぁ……さっちゃん先輩は私だけ見てればいいのに。
もう二度と浮気しないようにさせないと……
どうしてくれようか。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「さっちゃん先輩。昨日の女の人、誰ですか?」
「はい……?」
沙友理にしては珍しく、清々しい朝を迎えた日。
華緒が唐突に沙友理の教室へやってきて、すごい剣幕で訊いてきた。
本当に突然のことで、沙友理は最初なんのことかわからなかった。
しかし、『昨日の女の人』というワードで、すぐに同級生の顔が浮かんだ。
「あ、あの子のことなのですね」
沙友理が嬉しそうに微笑むと、あからさまに華緒の機嫌が悪くなる。
沙友理は、怒った顔も可愛いと呑気に思っていた。
「……ずいぶん親しそうでしたけど……」
顔をぷいっと背け、頬を大きく膨らませる。
そんな華緒はどこか子どもっぽくて、沙友理は思わず背伸びして華緒の頭を撫でた。
華緒は突然撫でられて恥ずかしそうな、嬉しそうな顔を浮かべた。
「大丈夫なのですよ。一番はいっちゃんなのですから」
沙友理はなぜ昨日のことを華緒が知っているのか、そんな疑問を持たなかった。
ただ、いつもとは違う一面を見せてくれたことが嬉しくて、少しずつ仲良くなれたかなと舞い上がっている。
しかし、華緒はそうじゃないらしく。
「一番とかっ! そういうことじゃないです! 私はっ! さっちゃん先輩に他の子と仲良くして欲しくないんです!」
「……え?」
「だからっ! あの女の人ともう会わないでください!」
涙目で叫ぶと、怒涛の勢いで去っていった。
嵐のように訪れた悲劇に、沙友理は目を見開いて固まった。
「……へ? ちょ、ちょっと……!?」
放心状態から我に返った沙友理は急いで華緒を追いかけるも、時すでに遅し。
廊下に華緒の姿はどこにもなかった。
沙友理は焦る。
自分にとっての“一番”に、嫌われたくなかったから。
「ど、どうしようなのです……」
とりあえず怒られた理由を探るべく、自分の席に戻る。
あの同級生と遊んでいたことがだめだったのだろうか。
しかし、ただ偶然出会って普通に遊んだだけだ。
それのどこがだめだったのだろう。
「全然わからないのです……っ!」
沙友理は頭を抱えて唸る。
同級生に恋愛感情を持ったわけでもないのに、なぜ怒られたのか。
そもそも、他の子と仲良くしてほしくないとはどういう意味なのだろう。
何もわからない。
本当に、華緒のことを何も知らない。
――どうして怒られたのか。
――どうしたら仲直りできるのか。
わからないことだらけだ。
「ううう……」
沙友理の脳みそはもはやショート寸前。
酷使しすぎて熱が高まり、爆発でも起こしそうだ。
「篠宮先輩いますか?」
教室の扉をコンコンと礼儀よくたたく音が響く。
しかし、沙友理の耳には届かない。
クラスの子が「呼んでるよ」と声をかけても、沙友理はまだ頭を抱えたまま。
それにしびれを切らしたのか、沙友理を呼んだ後輩がつかつかと歩み寄る。
「ふんっ」
「ぶぇへゃ!?」
その後輩は、声を出しながら沙友理の頭に手を置く。
そこでようやく、沙友理の意識が現実世界に戻ってきた。
「何するのですか!?」
「いえ。呼んでも気づいてもらえなかったので、ボクの存在を知らしめました」
「だからといって力いっぱい下に押さないでもらえると私の首も助かるのです……」
沙友理は自分の首が正常の位置に戻るか試しながら抗議する。
どうやらその後輩は、沙友理の知り合いのようだ。
しかし、どこか様子がおかしい。
「篠宮先輩の首は助からなくてもいいじゃないですか」
「ひどいのです!」
仲がいいのか悪いのかよくわからないやり取りをしている。
実は仲が悪いように見えて仲がいいという関係――
「そのまま死んでくれてもいいですよ」
――でもないようだ。
いい笑顔でとんでもないことを言い放つ後輩。
心底楽しそうに、沙友理で遊んでいる。
「……で、何しに来たのですか?」
涙目になりながら問う沙友理は、化粧をしているにもかかわらず、さながら本当の子どものように見えた。
そんな沙友理の様子になんとも思わない顔で、後輩は答える。
「さっき泣きながら走ってる稲津さんを見かけたよ。何かしたのか?」
「あ……そ、それが……その……」
「ま、篠宮先輩のことだから、『好きがわからないのです』とか言いながら振ったんだろ?」
「いや、その、違うのです……」
「そっか。それなら仕方ないよな」
「……もしかして、初めからわたしの話聞く気ないのですね?」
一通り遊んで満足したのか、後輩は帰る素振りを見せる。
しかし、沙友理の問題は何も解決していない。
沙友理がそのことを口に出そうとすると、後輩が先回りして言う。
「……あの人にしたことを、稲津さんにもしないでね」
「……鈴香ちゃん……」
色々なことを含んだ言葉を、後輩――宵闇鈴香は発する。
あの人とは、もちろん沙友理の同級生の子。
鈴香とは共通の知り合いがいて、そこから仲良くなった。
その知り合いがきっかけで華緒を怒らせてしまったのだが。
「ボクと稲津さんは似てると思う。特別な人には向こうからも特別な存在として見られたいって願ってるんだ」
沙友理はその言葉を聞いて、すぐに駆け出した。
さっちゃん先輩になでなでされて嬉しかったけど……こればっかりはだめでしょ。
だって女の子と二人で遊んでるとか、それもう浮気じゃん!
はぁ……さっちゃん先輩は私だけ見てればいいのに。
もう二度と浮気しないようにさせないと……
どうしてくれようか。
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「さっちゃん先輩。昨日の女の人、誰ですか?」
「はい……?」
沙友理にしては珍しく、清々しい朝を迎えた日。
華緒が唐突に沙友理の教室へやってきて、すごい剣幕で訊いてきた。
本当に突然のことで、沙友理は最初なんのことかわからなかった。
しかし、『昨日の女の人』というワードで、すぐに同級生の顔が浮かんだ。
「あ、あの子のことなのですね」
沙友理が嬉しそうに微笑むと、あからさまに華緒の機嫌が悪くなる。
沙友理は、怒った顔も可愛いと呑気に思っていた。
「……ずいぶん親しそうでしたけど……」
顔をぷいっと背け、頬を大きく膨らませる。
そんな華緒はどこか子どもっぽくて、沙友理は思わず背伸びして華緒の頭を撫でた。
華緒は突然撫でられて恥ずかしそうな、嬉しそうな顔を浮かべた。
「大丈夫なのですよ。一番はいっちゃんなのですから」
沙友理はなぜ昨日のことを華緒が知っているのか、そんな疑問を持たなかった。
ただ、いつもとは違う一面を見せてくれたことが嬉しくて、少しずつ仲良くなれたかなと舞い上がっている。
しかし、華緒はそうじゃないらしく。
「一番とかっ! そういうことじゃないです! 私はっ! さっちゃん先輩に他の子と仲良くして欲しくないんです!」
「……え?」
「だからっ! あの女の人ともう会わないでください!」
涙目で叫ぶと、怒涛の勢いで去っていった。
嵐のように訪れた悲劇に、沙友理は目を見開いて固まった。
「……へ? ちょ、ちょっと……!?」
放心状態から我に返った沙友理は急いで華緒を追いかけるも、時すでに遅し。
廊下に華緒の姿はどこにもなかった。
沙友理は焦る。
自分にとっての“一番”に、嫌われたくなかったから。
「ど、どうしようなのです……」
とりあえず怒られた理由を探るべく、自分の席に戻る。
あの同級生と遊んでいたことがだめだったのだろうか。
しかし、ただ偶然出会って普通に遊んだだけだ。
それのどこがだめだったのだろう。
「全然わからないのです……っ!」
沙友理は頭を抱えて唸る。
同級生に恋愛感情を持ったわけでもないのに、なぜ怒られたのか。
そもそも、他の子と仲良くしてほしくないとはどういう意味なのだろう。
何もわからない。
本当に、華緒のことを何も知らない。
――どうして怒られたのか。
――どうしたら仲直りできるのか。
わからないことだらけだ。
「ううう……」
沙友理の脳みそはもはやショート寸前。
酷使しすぎて熱が高まり、爆発でも起こしそうだ。
「篠宮先輩いますか?」
教室の扉をコンコンと礼儀よくたたく音が響く。
しかし、沙友理の耳には届かない。
クラスの子が「呼んでるよ」と声をかけても、沙友理はまだ頭を抱えたまま。
それにしびれを切らしたのか、沙友理を呼んだ後輩がつかつかと歩み寄る。
「ふんっ」
「ぶぇへゃ!?」
その後輩は、声を出しながら沙友理の頭に手を置く。
そこでようやく、沙友理の意識が現実世界に戻ってきた。
「何するのですか!?」
「いえ。呼んでも気づいてもらえなかったので、ボクの存在を知らしめました」
「だからといって力いっぱい下に押さないでもらえると私の首も助かるのです……」
沙友理は自分の首が正常の位置に戻るか試しながら抗議する。
どうやらその後輩は、沙友理の知り合いのようだ。
しかし、どこか様子がおかしい。
「篠宮先輩の首は助からなくてもいいじゃないですか」
「ひどいのです!」
仲がいいのか悪いのかよくわからないやり取りをしている。
実は仲が悪いように見えて仲がいいという関係――
「そのまま死んでくれてもいいですよ」
――でもないようだ。
いい笑顔でとんでもないことを言い放つ後輩。
心底楽しそうに、沙友理で遊んでいる。
「……で、何しに来たのですか?」
涙目になりながら問う沙友理は、化粧をしているにもかかわらず、さながら本当の子どものように見えた。
そんな沙友理の様子になんとも思わない顔で、後輩は答える。
「さっき泣きながら走ってる稲津さんを見かけたよ。何かしたのか?」
「あ……そ、それが……その……」
「ま、篠宮先輩のことだから、『好きがわからないのです』とか言いながら振ったんだろ?」
「いや、その、違うのです……」
「そっか。それなら仕方ないよな」
「……もしかして、初めからわたしの話聞く気ないのですね?」
一通り遊んで満足したのか、後輩は帰る素振りを見せる。
しかし、沙友理の問題は何も解決していない。
沙友理がそのことを口に出そうとすると、後輩が先回りして言う。
「……あの人にしたことを、稲津さんにもしないでね」
「……鈴香ちゃん……」
色々なことを含んだ言葉を、後輩――宵闇鈴香は発する。
あの人とは、もちろん沙友理の同級生の子。
鈴香とは共通の知り合いがいて、そこから仲良くなった。
その知り合いがきっかけで華緒を怒らせてしまったのだが。
「ボクと稲津さんは似てると思う。特別な人には向こうからも特別な存在として見られたいって願ってるんだ」
沙友理はその言葉を聞いて、すぐに駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる