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第二章 仲良しのその先へ!
愛は時に人を傷つける?
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○月○日
やっとさっちゃん先輩に打ち明けることができた。
さっちゃん先輩も受け入れてくれたし、すごく嬉しい!
ほんとに、さっちゃん先輩を好きになれてよかった。
こんなにいい人なんだもん!
じゃあ明日から……早速やっちゃおうかな……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「……いっちゃん、話ってなんなのですか?」
沙友理は華緒に呼ばれ、華緒の家の前まで来ていた。
華緒は何やら神妙そうな面持ちをしている。
どうやらよほど深刻な話らしい。
ということは、まさか……
「もしかして、わたし振られるのですか……?」
「えっ!? そんなつもりは微塵もないですけど!?」
「そ、それならよかったのです……」
沙友理が捨てられた子犬のような顔をすると、華緒は必死で誤解を解こうとする。
その様子が本気っぽかったため、沙友理はほっと安堵する。
しかし、それでないなら、一体どんな話なのだろうか。
「じゃあ、なんでわたしを呼んだのですか……?」
「……そ、それは……さっちゃん先輩には、話しておいた方がいいかと思いまして……」
何か重要な話でもあるのだろうか。
鈍感な沙友理にも、華緒が言いにくそうな話をしようとしていることは伝わっている。
沙友理は、華緒が話してくれるのをじっと待った。
やがてそんな雰囲気に耐えられなくなったのか、華緒が口を開いた。
「と、とりあえず私の家にあがってください。話はそれからしますので」
華緒に促されるまま、沙友理は華緒の家にあがった。
「私の部屋に案内しますね……」
華緒はそう言いながら、手を少し震わせている。
よほど勇気がいる話らしい。
沙友理は内心「頑張れ」と、華緒の頭を撫でた。
「大丈夫なのですよ。たくさん時間かかっても、わたしは待ってるのですから」
「さっちゃん先輩……」
沙友理の優しさに、華緒の震えが弱まったようだ。
割といつも通りな感じに戻った華緒は、落ち着いた様子で沙友理を案内する。
華緒はいざという場面に弱いようである。
そんな短所な部分も含めて、キュンと胸が苦しくなるような幸福感を覚えるのは、やはり華緒のことが好きだからだろうと思う。
「ここがいっちゃんの部屋なのですか……」
家の外観からして『ザ・和風』という雰囲気が漂っていたが、中もそう変わらない。
年季が入っているが、古臭くない。
相当大事にされてきたのだろうと感じる。
畳のいい匂いが漂っていくる。
「落ち着くのです……」
「そうですか? 私は洋風の方が好きなんですけど……さっちゃん先輩にそう言われて悪い気はしませんね……」
沙友理は目を閉じて、空気をいっぱい吸い込みながら言う。
そうすると、華緒は嬉しそうに赤面する。
「おおー、わたしが使ってる化粧品もたくさんあるのですね」
「あ、はい。さっちゃん先輩のことはよく知ってますから!」
ふふんと手を腰に当てて自信満々な華緒を見て、沙友理は笑った。
「ふふふ、さすがいっちゃんなのです」
「えへへ……あ、そうだ。そろそろ本題について話しますね」
「わかったのです」
華緒が適当に座ると、沙友理もそれに倣った。
だんだんと華緒の表情が真剣になってきて、沙友理は身構える。
何を言われても驚かないようにするため、ある程度のシミュレーションをしておく。
沙友理が色々考えていると、華緒が口を開いた。
「あ、あの……実は私、その……加虐趣味があるといいますか……えっと、端的に言えばSってやつなんですけど……」
「ふむふむ、なるほどなのです」
「んと、それで……好きな人ほどいじめたくなるといいますか……さっちゃん先輩のこともいじめたくなるといいますか……」
「ふむふむ……え?」
真剣に話を聞いていた沙友理だが、だいぶ気になる部分があり、そこを放っておくことが出来なかった。
だから、ずっと縦に振っていた首が止まる。
「えっと……わたしをいじめたくなるっていうのは……どういう意味なのですか……?」
「そ、そのままの意味ですよ……さっちゃん先輩のこと痛めつけたりしたくなっちゃうんですよ……普段は抑えてますけど……」
思ったよりも意味のわからない話をされて、沙友理は戸惑った。
しかし、引くほどではない。それには沙友理自身も驚いた。
だが、問題はそこではないのだ。
「痛めつけたりしたいって……具体的にはどんな……」
「そうですね……痛めつける行為そのものが好きというよりも、私は相手が痛がってる顔とか様子が好きなので……特にこれと言って具体的にはないですね……」
「そ、そうなのですか……」
沙友理は悩む。
華緒のことは好きだけど、痛いのは苦手だ。
痛いのは苦手だけど、華緒のことは大好きだ。
華緒が今まで我慢してきたというなら、今度は沙友理が妥協する番なのかもしれない。
好きならば、それくらいはすべきだろう。
沙友理はそう考え、腹を決める。
「いっちゃんがしたいなら、いいのですよ。痛いのは苦手なのですが……」
「ほ、ほんとですか!?」
「あ、でもほんと、お手柔らかにお願いしたいのですけど……」
「もちろんです! えへへ、嬉しいなぁ……」
沙友理に受け入れてもらえて、華緒は心の底から嬉しそうな顔を浮かべた。
それだけで、沙友理は満足する。
華緒が幸せなら、沙友理も幸せなのだ。
だから今は、それでいいのだ。
その先にどんな苦痛が待っていても、華緒が望むならそれがいい。
……襖で仕切られたその奥に、大量の写真が眠っていることを知らずに、沙友理は呑気にそんなことを考えていた。
やっとさっちゃん先輩に打ち明けることができた。
さっちゃん先輩も受け入れてくれたし、すごく嬉しい!
ほんとに、さっちゃん先輩を好きになれてよかった。
こんなにいい人なんだもん!
じゃあ明日から……早速やっちゃおうかな……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「……いっちゃん、話ってなんなのですか?」
沙友理は華緒に呼ばれ、華緒の家の前まで来ていた。
華緒は何やら神妙そうな面持ちをしている。
どうやらよほど深刻な話らしい。
ということは、まさか……
「もしかして、わたし振られるのですか……?」
「えっ!? そんなつもりは微塵もないですけど!?」
「そ、それならよかったのです……」
沙友理が捨てられた子犬のような顔をすると、華緒は必死で誤解を解こうとする。
その様子が本気っぽかったため、沙友理はほっと安堵する。
しかし、それでないなら、一体どんな話なのだろうか。
「じゃあ、なんでわたしを呼んだのですか……?」
「……そ、それは……さっちゃん先輩には、話しておいた方がいいかと思いまして……」
何か重要な話でもあるのだろうか。
鈍感な沙友理にも、華緒が言いにくそうな話をしようとしていることは伝わっている。
沙友理は、華緒が話してくれるのをじっと待った。
やがてそんな雰囲気に耐えられなくなったのか、華緒が口を開いた。
「と、とりあえず私の家にあがってください。話はそれからしますので」
華緒に促されるまま、沙友理は華緒の家にあがった。
「私の部屋に案内しますね……」
華緒はそう言いながら、手を少し震わせている。
よほど勇気がいる話らしい。
沙友理は内心「頑張れ」と、華緒の頭を撫でた。
「大丈夫なのですよ。たくさん時間かかっても、わたしは待ってるのですから」
「さっちゃん先輩……」
沙友理の優しさに、華緒の震えが弱まったようだ。
割といつも通りな感じに戻った華緒は、落ち着いた様子で沙友理を案内する。
華緒はいざという場面に弱いようである。
そんな短所な部分も含めて、キュンと胸が苦しくなるような幸福感を覚えるのは、やはり華緒のことが好きだからだろうと思う。
「ここがいっちゃんの部屋なのですか……」
家の外観からして『ザ・和風』という雰囲気が漂っていたが、中もそう変わらない。
年季が入っているが、古臭くない。
相当大事にされてきたのだろうと感じる。
畳のいい匂いが漂っていくる。
「落ち着くのです……」
「そうですか? 私は洋風の方が好きなんですけど……さっちゃん先輩にそう言われて悪い気はしませんね……」
沙友理は目を閉じて、空気をいっぱい吸い込みながら言う。
そうすると、華緒は嬉しそうに赤面する。
「おおー、わたしが使ってる化粧品もたくさんあるのですね」
「あ、はい。さっちゃん先輩のことはよく知ってますから!」
ふふんと手を腰に当てて自信満々な華緒を見て、沙友理は笑った。
「ふふふ、さすがいっちゃんなのです」
「えへへ……あ、そうだ。そろそろ本題について話しますね」
「わかったのです」
華緒が適当に座ると、沙友理もそれに倣った。
だんだんと華緒の表情が真剣になってきて、沙友理は身構える。
何を言われても驚かないようにするため、ある程度のシミュレーションをしておく。
沙友理が色々考えていると、華緒が口を開いた。
「あ、あの……実は私、その……加虐趣味があるといいますか……えっと、端的に言えばSってやつなんですけど……」
「ふむふむ、なるほどなのです」
「んと、それで……好きな人ほどいじめたくなるといいますか……さっちゃん先輩のこともいじめたくなるといいますか……」
「ふむふむ……え?」
真剣に話を聞いていた沙友理だが、だいぶ気になる部分があり、そこを放っておくことが出来なかった。
だから、ずっと縦に振っていた首が止まる。
「えっと……わたしをいじめたくなるっていうのは……どういう意味なのですか……?」
「そ、そのままの意味ですよ……さっちゃん先輩のこと痛めつけたりしたくなっちゃうんですよ……普段は抑えてますけど……」
思ったよりも意味のわからない話をされて、沙友理は戸惑った。
しかし、引くほどではない。それには沙友理自身も驚いた。
だが、問題はそこではないのだ。
「痛めつけたりしたいって……具体的にはどんな……」
「そうですね……痛めつける行為そのものが好きというよりも、私は相手が痛がってる顔とか様子が好きなので……特にこれと言って具体的にはないですね……」
「そ、そうなのですか……」
沙友理は悩む。
華緒のことは好きだけど、痛いのは苦手だ。
痛いのは苦手だけど、華緒のことは大好きだ。
華緒が今まで我慢してきたというなら、今度は沙友理が妥協する番なのかもしれない。
好きならば、それくらいはすべきだろう。
沙友理はそう考え、腹を決める。
「いっちゃんがしたいなら、いいのですよ。痛いのは苦手なのですが……」
「ほ、ほんとですか!?」
「あ、でもほんと、お手柔らかにお願いしたいのですけど……」
「もちろんです! えへへ、嬉しいなぁ……」
沙友理に受け入れてもらえて、華緒は心の底から嬉しそうな顔を浮かべた。
それだけで、沙友理は満足する。
華緒が幸せなら、沙友理も幸せなのだ。
だから今は、それでいいのだ。
その先にどんな苦痛が待っていても、華緒が望むならそれがいい。
……襖で仕切られたその奥に、大量の写真が眠っていることを知らずに、沙友理は呑気にそんなことを考えていた。
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