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第三章 これが真実だ!
そんなことで悩んでいるの?
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○月○日
今日のさっちゃん先輩はずっとベッドの上でうずくまってたな……
もしかして体調でも悪いのかな……!?
あー、でも弱ってるさっちゃん先輩も素敵……いじめたくなっちゃう。
……それはいいとして、ちょっと心配。
さっちゃん先輩の家に入る勇気はまだないから……家族へのご挨拶とかいつかはしないといけないと思ってるんだけどね……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
クリスマス当日まではまだ時間がある。
実はまだ華緒のことを誘えていない。
プレゼントを買ってから気づいたが、そもそもクリスマスに会う約束をしていなかった。
なぜプレゼントを先に買ってしまったのか。
まあ、当日に会えなくてもプレゼントは他の日に渡すことはできる。
「でも、どうせなら当日会って遊びたいのですね……」
しかし、どう誘えばいいのだろう。
不審がられないだろうか。
今まで恋人なんてできたことなかったから、どう誘ったらいいかなんて沙友理にはわからない。
クリスマスは恋人と過ごすものなのだろうか。
沙友理はその日を、ずっと家族と一緒に過ごしてきた。
いつもは夜遅くまで仕事をしていて忙しいお母さんも、その日は早く帰ってきて家族全員で楽しく過ごすのだ。
そのため、沙友理の中では『クリスマスは家族と過ごすもの』というイメージが強い。
「うーむ、困ったのです……」
華緒も、もしかしたら家族と過ごすかもしれない。
だから気軽に誘えないでいる。
「うむむむ……」
「ねーちゃん、さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」
沙友理がベッドの上でうずくまっていると、理沙が訝しみながら近づいてきた。
そのことに気づいていたが、あえて無視する。
無視しているというより、気にしている余裕がないのだ。
「うぅ……理沙ぁ、誘う時ってどう言えばいいのですかね……?」
「え、なに……? もしかして華緒さんのことどう誘えばいいか悩んでるの?」
「そうなのですよ……」
「そんな気にせず普通に誘えばいいのに」
理沙は実にあっけらかんと言う。
それほど気楽になれたらどんなにいいか。
そんな風に唸りながらうずくまっている沙友理の頭に、理沙はチョップを繰り出した。
「あいたぁ!?」
痛みのあまり頭を押えて飛び上がると、理沙が仁王立ちしながら言った。
「気にしなくていいんだよ! 恋人なんだから遠慮すんなよ!」
理沙は、沙友理を元気づけようとしている。
それは沙友理にもわかった。
そうだ。華緒とは恋人同士で、何も躊躇うことはない。
第一、華緒は誘いを断らないような気がする。
根拠はないが、なんとなく沙友理の中の華緒像は『いい子』なのだ。
「明日、誘ってみるのです!」
「おー、その意気だよ! てか、ねーちゃんがこんなことで悩んでいるなんて珍しいよな」
「そうなのですか?」
「うん。だってねーちゃん、誘いたい時普通に誘ってそうだし。人当たりよさそうだからあんまり断られないだろうし」
理沙にそう言われて、沙友理はこれまでのことを振り返る。
確かに、断られた経験の方が少ない気がする。
「それに、華緒さんなら絶対断らないと思うけど」
「そうなのですよね!?」
理沙にそう言ってもらえて、はじめて安心できた。
実際どうなのかというのはわからないけど、他の人にそう言ってもらえると何か凝り固まっていたものが解されたような感覚がある。
一気に自由になったような、そんな気がした。
それがただの思い込みだとしてもいい。救われたのは事実だから。
「あ、でね、ねーちゃん。あたしがここに来たのは――」
「やっほー! ただいまー!」
ガチャンというドアが開く音がして、明るく元気な声が響いた。
幼く聞こえる声だが、沙友理よりもうんと年上の声だ。
「お母さん……!」
「おー! 娘たち! 元気にしてたかー!?」
「おう! あたしは元気だぜー!」
「そうかそうか、そりゃよかった!」
そう笑って、理沙の頭をわしゃわしゃ撫でる。それを受けて、理沙はお母さんと同じように笑う。
こう見ると、お母さんと理沙は本当に似ている。
さすが母娘という感じだ。
そうなると沙友理とは母娘でないということになってしまうが。
「沙友理はどう? ……って、ぐーたらしてるな。体調悪い? 悪いなら薬飲んでさっさと寝ろ! 悪くないならいつまでも寝てんじゃねー!」
「うわわ……お母さんバイオレンスなのです。わたしがもし病人だったらどうするのですか」
「“もし”ってこたぁ、病人じゃねーよな。ならさっさと起きやがれこんにゃろー!」
「起きる! 起きるのです!」
相変わらずパワフルな人である。というか、押しとか圧がすごい。
さすがはキャリアウーマンといったところか。
関係あるのかわからないけど。
「ところで、今日は帰りが早いのですね?」
「まーね。たまには仕事が早く終わる日もあるってことよ」
「なるほどなのです」
お母さんは連日の仕事の疲れも見せず、歯を見せて笑う。
沙友理は、そんなお母さんのことを尊敬している。
「ね、せっかく早く帰ってきたなら一緒になんかして遊ぼーぜー」
「おー、それもいいねぇ。沙友理はどーする?」
理沙がお母さんの手を引っ張って外へ連れ出そうとしている。
でも、今起きたばかりの沙友理には少しきつかった。というか、だるかった。
「わたしはいいのです……二人で遊んでていいのですよ……」
「そ? じゃ、行こうか!」
「おー!」
そう仲良く二人が消え去ると、急に部屋が静かになる。
それが落ち着くような寂しいような……よくわからなかった。
でも、これならどう誘おうか考えられる。
リビングから賑やかな声が聞こえる中、沙友理は必死になって考えるのだった。
今日のさっちゃん先輩はずっとベッドの上でうずくまってたな……
もしかして体調でも悪いのかな……!?
あー、でも弱ってるさっちゃん先輩も素敵……いじめたくなっちゃう。
……それはいいとして、ちょっと心配。
さっちゃん先輩の家に入る勇気はまだないから……家族へのご挨拶とかいつかはしないといけないと思ってるんだけどね……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
クリスマス当日まではまだ時間がある。
実はまだ華緒のことを誘えていない。
プレゼントを買ってから気づいたが、そもそもクリスマスに会う約束をしていなかった。
なぜプレゼントを先に買ってしまったのか。
まあ、当日に会えなくてもプレゼントは他の日に渡すことはできる。
「でも、どうせなら当日会って遊びたいのですね……」
しかし、どう誘えばいいのだろう。
不審がられないだろうか。
今まで恋人なんてできたことなかったから、どう誘ったらいいかなんて沙友理にはわからない。
クリスマスは恋人と過ごすものなのだろうか。
沙友理はその日を、ずっと家族と一緒に過ごしてきた。
いつもは夜遅くまで仕事をしていて忙しいお母さんも、その日は早く帰ってきて家族全員で楽しく過ごすのだ。
そのため、沙友理の中では『クリスマスは家族と過ごすもの』というイメージが強い。
「うーむ、困ったのです……」
華緒も、もしかしたら家族と過ごすかもしれない。
だから気軽に誘えないでいる。
「うむむむ……」
「ねーちゃん、さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」
沙友理がベッドの上でうずくまっていると、理沙が訝しみながら近づいてきた。
そのことに気づいていたが、あえて無視する。
無視しているというより、気にしている余裕がないのだ。
「うぅ……理沙ぁ、誘う時ってどう言えばいいのですかね……?」
「え、なに……? もしかして華緒さんのことどう誘えばいいか悩んでるの?」
「そうなのですよ……」
「そんな気にせず普通に誘えばいいのに」
理沙は実にあっけらかんと言う。
それほど気楽になれたらどんなにいいか。
そんな風に唸りながらうずくまっている沙友理の頭に、理沙はチョップを繰り出した。
「あいたぁ!?」
痛みのあまり頭を押えて飛び上がると、理沙が仁王立ちしながら言った。
「気にしなくていいんだよ! 恋人なんだから遠慮すんなよ!」
理沙は、沙友理を元気づけようとしている。
それは沙友理にもわかった。
そうだ。華緒とは恋人同士で、何も躊躇うことはない。
第一、華緒は誘いを断らないような気がする。
根拠はないが、なんとなく沙友理の中の華緒像は『いい子』なのだ。
「明日、誘ってみるのです!」
「おー、その意気だよ! てか、ねーちゃんがこんなことで悩んでいるなんて珍しいよな」
「そうなのですか?」
「うん。だってねーちゃん、誘いたい時普通に誘ってそうだし。人当たりよさそうだからあんまり断られないだろうし」
理沙にそう言われて、沙友理はこれまでのことを振り返る。
確かに、断られた経験の方が少ない気がする。
「それに、華緒さんなら絶対断らないと思うけど」
「そうなのですよね!?」
理沙にそう言ってもらえて、はじめて安心できた。
実際どうなのかというのはわからないけど、他の人にそう言ってもらえると何か凝り固まっていたものが解されたような感覚がある。
一気に自由になったような、そんな気がした。
それがただの思い込みだとしてもいい。救われたのは事実だから。
「あ、でね、ねーちゃん。あたしがここに来たのは――」
「やっほー! ただいまー!」
ガチャンというドアが開く音がして、明るく元気な声が響いた。
幼く聞こえる声だが、沙友理よりもうんと年上の声だ。
「お母さん……!」
「おー! 娘たち! 元気にしてたかー!?」
「おう! あたしは元気だぜー!」
「そうかそうか、そりゃよかった!」
そう笑って、理沙の頭をわしゃわしゃ撫でる。それを受けて、理沙はお母さんと同じように笑う。
こう見ると、お母さんと理沙は本当に似ている。
さすが母娘という感じだ。
そうなると沙友理とは母娘でないということになってしまうが。
「沙友理はどう? ……って、ぐーたらしてるな。体調悪い? 悪いなら薬飲んでさっさと寝ろ! 悪くないならいつまでも寝てんじゃねー!」
「うわわ……お母さんバイオレンスなのです。わたしがもし病人だったらどうするのですか」
「“もし”ってこたぁ、病人じゃねーよな。ならさっさと起きやがれこんにゃろー!」
「起きる! 起きるのです!」
相変わらずパワフルな人である。というか、押しとか圧がすごい。
さすがはキャリアウーマンといったところか。
関係あるのかわからないけど。
「ところで、今日は帰りが早いのですね?」
「まーね。たまには仕事が早く終わる日もあるってことよ」
「なるほどなのです」
お母さんは連日の仕事の疲れも見せず、歯を見せて笑う。
沙友理は、そんなお母さんのことを尊敬している。
「ね、せっかく早く帰ってきたなら一緒になんかして遊ぼーぜー」
「おー、それもいいねぇ。沙友理はどーする?」
理沙がお母さんの手を引っ張って外へ連れ出そうとしている。
でも、今起きたばかりの沙友理には少しきつかった。というか、だるかった。
「わたしはいいのです……二人で遊んでていいのですよ……」
「そ? じゃ、行こうか!」
「おー!」
そう仲良く二人が消え去ると、急に部屋が静かになる。
それが落ち着くような寂しいような……よくわからなかった。
でも、これならどう誘おうか考えられる。
リビングから賑やかな声が聞こえる中、沙友理は必死になって考えるのだった。
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