ストーキングは愛の証!【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
35 / 50
第三章 これが真実だ!

不良道まっしぐら?

しおりを挟む
 ○月○日

 さっちゃん先輩、私を連れ出してどうするつもりだったんだろう。
 でも、私の手を優しく引っ張ってくれて、嬉しかったな……
 今日は楽しかったけど、はしゃぎすぎてちょっと疲れちゃった。これを書くのも一苦労なぐらい体調悪いし。
 もう今日は寝よう。今日はさっちゃん先輩のおかげでいい夢を見れそうだ。
 いつかさっちゃん先輩と「おはよう」や「おやすみ」を言い合えるようになりたいな……

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

 道をまっすぐに進む。
 不良になるという道を、まっすぐに。
 沙友理一人ではこんな景色を見ることはできなかっただろう。
 隣にいてくれている人がいなかったら、多分無理だったに違いない。

「今更だけど、こんなことして大丈夫なのですか……?」
「今更すぎますね……」

 沙友理が不安になって呟いた言葉に、華緒がツッコむ。
 呆れた声をしていたが、顔は柔らかくほころんでいる。

「私はさっちゃん先輩と一緒にいたいので、私のことが心配なら大丈夫ですよ。これまで真面目に授業受けてきたので一日くらいサボってもどうってことないです」

「えっへん」と胸を張りながら答える華緒。
 その様子を見て、沙友理は思わず「ふふっ」と吹き出す。
 不思議と沙友理の不安は解消されていた。

「ありがとうなのです」
「いえいえ。それで、これからどうしましょうか?」

 そう言えば、こうして学校をサボったはいいものの、具体的に何をするかは全くのノープランだった。
 二人はしばらく悩む。
 だけどせっかくサボったのなら、何か有意義なことをしたいと思っている。
 言ってしまえば、楽しいことがしたいのだ。

 しかし、二人は学生で制服姿。
 平日の昼間に学生が入っても変じゃない場所なんて限られている。
 その中で楽しいことなんて思いつくはずがなかった。
 そんな時、沙友理は一つだけ思いついた。

「公園とか……どうなのですかね?」
「公園? 公園に行くんですか?」
「はい、そこでならゆっくりなお話できそうだなと思ったのですよ」

 自分の提案に自信がなさそうに、沙友理はチラチラと華緒の表情を窺う。
 それが華緒の目にどう映ったのか、華緒はふっと表情を柔らかくする。

「私はそれで充分ですよ。さっちゃん先輩と公園でまったり……悪くないです」

 嘘でもなんでもなく、本心からの言葉だろうというのは沙友理にもわかった。
 触れた手から、直接感情が流れ込んでくるようだった。
 そうなれば、沙友理の感情も華緒に伝わっているのだろう。

 二人はまさに一心同体という感じだった。
 沙友理の感覚で、だが。

「じゃあ近くの公園まで出発なのです!」
「おー!」

 二人はずっと手を繋いだまま、目的地に向かって出発した。
 まるで手を離したら死んでしまうとでも言うように。

 そうして、二人は公園のベンチに座る。
 平日の昼間ということもあってか、いつもより人気がない。
 これは沙友理たちにとっては好都合だ。
 人目を気にする必要がないから。

「公園ってなんか知らないけどすごく落ち着くのですよね~」
「わかります。子供の頃はあんなにはしゃいでいたのに、今はベンチでゆっくりしてる方が性にあってるなんて不思議です」
「いっちゃんも遊具とかで遊んでいたのですか?」
「ええ、まあそれなりに」
「全然想像つかないのです」

 そんなふうに他愛もない話をしながら暇をつぶす。
 老後とかにこうして二人ベンチに腰掛けて駄弁るのも悪くなさそうだと、沙友理は思った。

 本当に、華緒といるとなんだって楽しい。
 ……痛いことをされるのは嫌だが。
 それを抜きにして、華緒との何気ない日常を手放したくない。
 たとえ、なにがあったとしても。

「はぁ……はぁ……」
「って、大丈夫なのですか!?」

 沙友理が考え込んでいる間に、華緒の様子が一変した。
 苦しそうに息を吐いている。
 胸とお腹の辺りを押さえてうずくまる。

 なにが起きたのだろう。
 目の前の光景に思考が追いつかない。
 さっきまであんなに楽しく笑いあっていたのに。

「と、とりあえず救急車……っ!」

 沙友理は慌ててスカートのポケットからスマホを取り出すが、華緒に止められる。

「な、なにを……」
「い、いつもの……こと……なので……大丈夫、ですから……」
「大丈夫なようには見えないのですけど……」

 呼吸が浅く、口からヒューヒューという音が聞こえる。
 大丈夫な状態でないのは明白だ。
 華緒はそれでも頑なに首を横に振る。

「平気、です……すぐに治まる……ので……」
「な、なら、お家に連れてくのです。しっかり掴まってるのですよ」

 このままここにいれば、通りがかった人に不審に思われかねない。
 それなら、病人を今運んでいると見せた方がいい。
 家に行けば華緒の症状を治す薬があるかもしれないし。

「どうにもならないようだったらすぐに病院に叩き込むのですからね。その時は救急車に乗ってもらうのです……!」
「……ありがと……ございます……さっちゃん先輩」

 沙友理は具合の悪そうな華緒に肩を貸し、公園を後にした。
 ここから歯車のようなものが狂っていくことになるが、今の二人にそれを知るよしはなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...