ストーキングは愛の証!【完結済み】

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第三章 これが真実だ!

この少女は何者?

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 ○月○日

 あ、やばい。さっちゃん先輩を差し置いてちょっと眠っちゃった。
 しかも寝る前の習慣で日記書いてたから、この日に書くのが二つになっちゃったよ。
 それにしても、さっちゃん先輩のあの様子……なんか引っかかるんだよな……
 うーん……まあ、一人で考えてても仕方ないし、明日にでも聞いてみようかな。
 明日も会えるんだし、恋人同士なんだし、きっと大丈夫だよね。

 ――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。

 ☆ ☆ ☆

 沙友理は必死に歩く。
 沙友理と華緒は20cm以上の身長差がある。
 華緒の方が高く、体重もそれに相まっているのだ。
 だからこそ、沙友理にかかる負荷も相当なものだった。

「ふぬぬ……」
「だ、大丈夫ですか……さっちゃん先輩……」
「大丈夫なのですよ。なんのこれしき……!」

 華緒はだいぶ呼吸が楽になったようだ。
 しかし、安心はできない。
 また症状がひどくなるかもしれない。

 その前に家に連れていかなければ、大変なことが起きてしまうだろうというのは目に見える。
 少し無理をしてでも、責務を全うしなくては。

「んむむ……」

 沙友理がふんばって角を曲がると、いきなり目の前に人影が!

「きゃっ……!」
「ひゃあっ……!」

 華緒を背負っているから、沙友理は避けることができなかった。
 その人影とぶつかり、全員バランスを崩して道にたおれた。
 その時とっさに華緒をかばって、沙友理が下敷きになる。

「あ、ご、ごめんなさっ……大丈夫ですか……?」

 沙友理の状態が尋常ではないようで、その人はとても心配そうに声をふるわせている。
 やがてその人は手を伸ばして、沙友理たちを引っ張る。
 それにつられ、沙友理はゆっくりと立ち上がる。

 その時、ちゃんと相手の顔と容姿を見た。
 どこかの学校の制服を着ていて、スカートは膝丈。まじめそうな印象がある。

 華緒と同じくらいの身長。紫がかった黒色の短い髪。
 前髪はきちんと切りそろえられているが、毛先が所々跳ねている。
 瞳も髪と同じく、紫色に輝いている。それはまるでアメジストのようで、沙友理は思わず目を奪われた。

「あ、あの……?」

 その人が、不思議そうに首を傾げた。
 顔が少し赤くなって、涙目になっている。
 人に注目されるのは苦手なようだ。

「あ、ごめんなさいなのです。あなたこそ、怪我はないのですか?」
「え? あ、はい。私は大丈夫です……」
「ならよかったのです」

 こんなところに長居するわけにはいかない。
 一刻も早く、華緒を家に帰さねば。

「じゃ、さよならなのです」
「え……? わ、わかりました。お気をつけて……」

 沙友理はすばやく挨拶を終え、せっせと華緒をかつぐ。
 その時ボトッという音が聞こえた気がしたが、そんなことに構っていられない。
 華緒は相変わらず顔色が優れないようだし。

「あ、あの……っ!」

 少女が声をあげるも、沙友理は取り合わない。
 他の人に構っている余裕はないのだ。
 その少女を置き去りに、沙友理は華緒の家へ向かった。

 幸い、華緒の家にすぐ着いた。
 沙友理はさっそく華緒をベッドに寝かせ、薬箱を持ってくる。
 このままよくならなかったら心配だ。
 華緒には、早くよくなってもらいたい。

「いっちゃん、早くよくなるのですよ……」

 沙友理は華緒の手を握り、涙目でそう呼びかけた。
 薬を飲ませたおかげか、少し顔色がよくなった気がする。
 今はすやすや寝息を立てて眠っている。

「よかったのです……今は落ち着いているようで……」

 家には誰もいなかったが、華緒のおばあさんは買い物にでも出かけているのだろうか。
 帰ってきたら、ちゃんと説明しなくてはならない。
 そう考えながら台所へ向かう。
 料理は苦手だが、華緒になにか食べさせれば活力が出るのではないかと思ったから。

「勝手に借りるのもあれなのですが……今は緊急事態だし仕方ないのですよね」

 沙友理は自分に言い聞かせるようにして、台所に立つ。
 するとその時。

 ――ピンポーン。

 軽快にインターホンが鳴った。
 わざわざインターホンを使うということは、来客なのだろうか。

「はいはーい。ちょっと待つのです~」

 沙友理はこの家の人ではないが、今動ける者は自分しかいない。
 出ないという選択肢もあるけど、沙友理には思いつかなかったようだ。

「はーい? ……あれ、もしかして……」
「あ、その、さっきぶりです……」

 沙友理が扉を開けると、さっきぶつかった少女が立っていた。
 わざわざ怒りにでも来たのだろうか。
 しかし、どうもそんな雰囲気ではない。

「えっと、多分これ、あなたたちのですよね……? あ、違ってたらいいんですけど……」

 そう言って少女が差し出したのは、使い古されたであろう一眼レフ。
 だけど手入れはしっかりされていて、とても大事にされているということが窺える。
 しかし、沙友理には見覚えが――

「え……? これって……」

 ――あった。
 その一眼レフは、以前沙友理が道端で見かけたことがあるものだった。
 それがわかったのは、紐の色が真っ赤なのが印象的だったから。
 そしてその中には、おそらく沙友理が写った写真が入っているに違いない。
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