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第三章 これが真実だ!
あのカメラはやっぱり?
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○月○日
さっちゃん先輩、やっぱり変だよ。
朝起きた直後にこの日記書いているけど、一晩考えてたけど、なんかおかしい。
写真がいっぱいの部屋を見てもなんとも言わなかった……いや、むしろ嬉しそうだったのに。
やっぱり、さっちゃん先輩はカメラの中を見ていて、引いちゃったのかも……
さっちゃん先輩に嫌われたら……私は……さっちゃん先輩を○○してしまうかもしれない……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「ぶつかった後に落ちてたのであわてて声かけたんですけど、間に合わなかったみたいで……それでゆっくり後をつけたといいますか……」
「なるほどなのです……」
沙友理は少し申し訳なく思った。
少女が声をかけたことに気づかなかったのではなく、華緒を優先して無視してしまったから。
今更になって、なぜあんなことをしてしまったのかと後悔する。
でも、あの時は華緒を優先したかった。
華緒のことがなによりも大事だから。
「うーん、見覚えはあるけど誰のかわからないのですよね。本当にぶつかった時に落ちてたのですか?」
「え? はい。間違いないです……! ボトッという音が聞こえて、ちょうどその音がしたところにあったので……」
「な、なるほどなのです……」
それならば間違えるはずがない。
おそらく華緒のものだろう。
となると、沙友理を盗撮していたのは華緒ということになる。
いや、それは問題ない。
……ない、のか?
それはひとまず置いておいて、目の前の少女にお礼を言わなくてはならない。
「ありがとうなのです。ここまでわざわざ来てくれて……」
「あ、いえ、いいんですよ。むしろ余計なお世話かなとも思っていたので……」
「ふふっ、そんなことないのですよ。あ、名前訊いてもいいのですか?」
「あ、えっと、私は……美久里っていいます!」
その少女――美久里は恥ずかしそうに笑った。
また会えるかはわからないけれど、会えたらいいなとは思っている。
「わたしは沙友理というのです。またどこかで会えたらいいのですね」
「はい! またどこかで!」
美久里と挨拶を交わして、カメラを受け取る。
沙友理は美久里の姿が見えなくなるまで見送った。とても温かい気持ちになったが、問題は山積みだ。
まずは、このカメラをどう華緒に渡すか。
「……本当に、この中にわたしの写真があるのですかね……」
好奇心がうずき、だめだとわかっていながらも電源をつけてしまった。
おそるおそる画面を確認する。
するとそこには、当然というか案の定というか、沙友理が写っていた。
近所の人に挨拶をしている姿、理沙と仲良く本屋に入っていく姿、電車の中で居眠りしている姿……
実にバリエーション豊富な沙友理の姿が写されている。
やはりどれも輝いて見えて、自分が自分じゃないみたいに見える。
「すごいのですね……これも愛の力、ってやつだったりするのですかね……?」
沙友理は自分で言って恥ずかしくなったのか、顔をいちごのように紅くしていく。
ほどよく熟した沙友理は、その真っ赤な顔のまま家の中に入った。
その間、ずっとカメラの画面を見続けながら。
「……やっぱり、いっちゃんはすごいのですね……」
その画面を見続けていると、なんだか恥ずかしいような嬉しいような、不思議な気分になってくる。
そしてその不思議な気持ちというのが、どんどん変な気持ちへと変わっていく。
沙友理の思考回路は変なところへと行き着いた。
「わたしもやってみたら……なにか変わるのですかね……」
そう口にした途端、沙友理の中で新たな感情が芽生えた。
――華緒の写真を撮りたい!
沙友理は気づいたら走り出していた。
スマホを取り出し、華緒のいる部屋へいそぐ。
磁石が惹かれ合うように、そこが自分の居場所とでもいうように。
華緒のそばへ一直線に向かう。
「いっちゃん……!」
「ふぁえっ!? な、なんですか……?」
「あ、ごめんなさいなのです……起こしちゃったみたいで……」
沙友理がガラッと激しい音を立てながら華緒の部屋を開けると、華緒が飛び起きてしまった。
後悔と反省の念が襲うも、起きてしまったことは仕方ない。
なかったことにはできないのだから。
「それで、なにかあったんですか……?」
「あ、そうなので――」
そこで沙友理は言葉を止める。
写真を撮るということを、本人に話してもいいのだろうか。
本人に言うのは盗撮ではなく、ただの写真撮影的なことになるのではないだろうか。
それは、沙友理が求めているものではない。
だから沙友理は、華緒に伝えるべきことだけを伝えようと思った。
「あ、えっと……さっきぶつかった子がこれを届けてくれたみたいなのですよ」
「え、え、ありがとうございます……え、あの、中にある写真見てないですよね?」
「み、見てないのです」
とっさに嘘をついてしまった。
なぜか嘘をつかないといけないような気がしたのだ。
なぜかはわからないが。
「そうですか……それならよかったです……」
沙友理の様子を特に怪しむことなく流す華緒。
ひとまず安心だ。
「じゃ、わたしはこれで……」
「え、もう帰っちゃうんですか? もう少しいてくれても……」
華緒は沙友理の制服の裾を引っ張って、「帰らないで」というアピールをする。
だが、今の沙友理は自分のことでいっぱいいっぱいで、これ以上華緒といるとどうにかなりそうだった。
だから沙友理は、葛藤しつつも華緒の手を引き剥がす。
そして、動揺している華緒をおいて、逃げるように家へ帰っていく。
心の中で何度も謝りながら走り続ける。
「お、ねーちゃんおかえ――って、え!? ねーちゃん!?」
全力疾走をしたせいか、家に着いた時に沙友理は倒れてしまった。
その後、理沙が手厚く看病していたとか……
さっちゃん先輩、やっぱり変だよ。
朝起きた直後にこの日記書いているけど、一晩考えてたけど、なんかおかしい。
写真がいっぱいの部屋を見てもなんとも言わなかった……いや、むしろ嬉しそうだったのに。
やっぱり、さっちゃん先輩はカメラの中を見ていて、引いちゃったのかも……
さっちゃん先輩に嫌われたら……私は……さっちゃん先輩を○○してしまうかもしれない……
――稲津華緒、『さっちゃん先輩観察日記』より。
☆ ☆ ☆
「ぶつかった後に落ちてたのであわてて声かけたんですけど、間に合わなかったみたいで……それでゆっくり後をつけたといいますか……」
「なるほどなのです……」
沙友理は少し申し訳なく思った。
少女が声をかけたことに気づかなかったのではなく、華緒を優先して無視してしまったから。
今更になって、なぜあんなことをしてしまったのかと後悔する。
でも、あの時は華緒を優先したかった。
華緒のことがなによりも大事だから。
「うーん、見覚えはあるけど誰のかわからないのですよね。本当にぶつかった時に落ちてたのですか?」
「え? はい。間違いないです……! ボトッという音が聞こえて、ちょうどその音がしたところにあったので……」
「な、なるほどなのです……」
それならば間違えるはずがない。
おそらく華緒のものだろう。
となると、沙友理を盗撮していたのは華緒ということになる。
いや、それは問題ない。
……ない、のか?
それはひとまず置いておいて、目の前の少女にお礼を言わなくてはならない。
「ありがとうなのです。ここまでわざわざ来てくれて……」
「あ、いえ、いいんですよ。むしろ余計なお世話かなとも思っていたので……」
「ふふっ、そんなことないのですよ。あ、名前訊いてもいいのですか?」
「あ、えっと、私は……美久里っていいます!」
その少女――美久里は恥ずかしそうに笑った。
また会えるかはわからないけれど、会えたらいいなとは思っている。
「わたしは沙友理というのです。またどこかで会えたらいいのですね」
「はい! またどこかで!」
美久里と挨拶を交わして、カメラを受け取る。
沙友理は美久里の姿が見えなくなるまで見送った。とても温かい気持ちになったが、問題は山積みだ。
まずは、このカメラをどう華緒に渡すか。
「……本当に、この中にわたしの写真があるのですかね……」
好奇心がうずき、だめだとわかっていながらも電源をつけてしまった。
おそるおそる画面を確認する。
するとそこには、当然というか案の定というか、沙友理が写っていた。
近所の人に挨拶をしている姿、理沙と仲良く本屋に入っていく姿、電車の中で居眠りしている姿……
実にバリエーション豊富な沙友理の姿が写されている。
やはりどれも輝いて見えて、自分が自分じゃないみたいに見える。
「すごいのですね……これも愛の力、ってやつだったりするのですかね……?」
沙友理は自分で言って恥ずかしくなったのか、顔をいちごのように紅くしていく。
ほどよく熟した沙友理は、その真っ赤な顔のまま家の中に入った。
その間、ずっとカメラの画面を見続けながら。
「……やっぱり、いっちゃんはすごいのですね……」
その画面を見続けていると、なんだか恥ずかしいような嬉しいような、不思議な気分になってくる。
そしてその不思議な気持ちというのが、どんどん変な気持ちへと変わっていく。
沙友理の思考回路は変なところへと行き着いた。
「わたしもやってみたら……なにか変わるのですかね……」
そう口にした途端、沙友理の中で新たな感情が芽生えた。
――華緒の写真を撮りたい!
沙友理は気づいたら走り出していた。
スマホを取り出し、華緒のいる部屋へいそぐ。
磁石が惹かれ合うように、そこが自分の居場所とでもいうように。
華緒のそばへ一直線に向かう。
「いっちゃん……!」
「ふぁえっ!? な、なんですか……?」
「あ、ごめんなさいなのです……起こしちゃったみたいで……」
沙友理がガラッと激しい音を立てながら華緒の部屋を開けると、華緒が飛び起きてしまった。
後悔と反省の念が襲うも、起きてしまったことは仕方ない。
なかったことにはできないのだから。
「それで、なにかあったんですか……?」
「あ、そうなので――」
そこで沙友理は言葉を止める。
写真を撮るということを、本人に話してもいいのだろうか。
本人に言うのは盗撮ではなく、ただの写真撮影的なことになるのではないだろうか。
それは、沙友理が求めているものではない。
だから沙友理は、華緒に伝えるべきことだけを伝えようと思った。
「あ、えっと……さっきぶつかった子がこれを届けてくれたみたいなのですよ」
「え、え、ありがとうございます……え、あの、中にある写真見てないですよね?」
「み、見てないのです」
とっさに嘘をついてしまった。
なぜか嘘をつかないといけないような気がしたのだ。
なぜかはわからないが。
「そうですか……それならよかったです……」
沙友理の様子を特に怪しむことなく流す華緒。
ひとまず安心だ。
「じゃ、わたしはこれで……」
「え、もう帰っちゃうんですか? もう少しいてくれても……」
華緒は沙友理の制服の裾を引っ張って、「帰らないで」というアピールをする。
だが、今の沙友理は自分のことでいっぱいいっぱいで、これ以上華緒といるとどうにかなりそうだった。
だから沙友理は、葛藤しつつも華緒の手を引き剥がす。
そして、動揺している華緒をおいて、逃げるように家へ帰っていく。
心の中で何度も謝りながら走り続ける。
「お、ねーちゃんおかえ――って、え!? ねーちゃん!?」
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