ストーキングは愛の証!【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
44 / 50
最終章 ストーキングは愛の証!

運命の人との出会い?(パート2)

しおりを挟む
「あわわ、ごめんなさいなのです。急にこの子が暴れだしてしまって……」

 馬に乗っている子がひたすらに謝る。
 今の馬の状態は安定しているようだ。
 それにしても、あの状態で落ちなかったことが驚きだ。
 馬を乗りこなしているのかいないのか、よくわからない。
 ……いや、なんか暴走してたっぽいから乗りこなしていないのか。

「……え、あ、え……?」

 華緒の好きだった人は、腰が抜けた様子でへたり込んでいる。
 先程あんなことがあったから当然だろう。
 まだ状況を理解できていないようだ。
 かく言う華緒もまったく理解できていないが。

「ちょっとさっき聞こえてきたのですけど、土下座とかなんとか……?」
「え? あ、えーっと……」

 馬に乗っている子が華緒の方を向いたので、華緒は焦りながら答えようとする。
 だけど、どう答えたらいいものか……
 下手に答えたら、華緒の人に言えない部分も明らかになってしまう。
 よく知らない人に自分のことをひけらかすわけにはいかない。

「ふむ……」

 すると、馬に乗っている子はなにかを察したようで、馬から降りる。
 そうなると、ますますその子が小さく見える。
 華緒と頭一つ分くらいは違う。いや、もしかしたら二つかもしれない。
 それくらい小さかった。

 こんな小さな子が馬を操っているなんて信じられない。
 だからこそ、上手く操れなかったのだろうけど。

「土下座ならわたしがするのですよ」
「……え?」
「……は?」

 華緒とまだ道にへたり込んでいる人は、ほぼ同時に声を上げた。
 なぜ関係ない子が土下座をすると言いだしたのか。
 その意味がまったくわからない。

「わざとではないのですが……わたしだって、さっきはあなたを危ない目に遭わせてしまったのですよ。一歩間違えたら大怪我させてたかもしれないのです。だから謝るついでに土下座させてほしいのです」
「え、は、そんなこと急に言われても……そもそも、あたしは華緒ちゃんに土下座してほしかっただけで……」
「じゃあ、わたしがその華緒ちゃんの代わりもするのです」
「はぁ? 意味わかんないんだけど――ってかちかっ!」

 小さい子がずいっと顔を近づける。
 はたから見ている分には平気だが、額と額がくっつきそうな距離というのは当事者からしたらかなりきついものがあるだろう。
 そこまで近づかれると、逃げたくなるものだ。

「う……わ、わかったよ。土下座はどっちにもさせないよ……」
「あ、ありがとう……もう尾行しないから……ごめんね……」
「え、や、あたしもやりすぎたよ……ってか、華緒ちゃんってこんな大きな馬操る子と知り合いだったんだね」
「……え?」
「じゃ……」

 その人はそう言うと、カバンを持って逃げるように去っていった。
 ……別に、この小さい子と華緒は知り合いでもなんでもないのに。
 勝手に勘違いして許してくれた。
 これはラッキーと捉えていい……のだろうか。

「ふぅ……大丈夫なのですか?」
「え、あ、私ですか?」
「当然なのですよ」

「他にだれかいるのですか」と、無邪気に笑う。
 人々を虜にできるような笑顔だ。
 華緒は反射的に「この人を撮りたい!」と思った。
 それにしても、大丈夫かと訊くということは、初めから助けようとしてくれていたのだろうか。
 そんな風には見えないけれど。

「あ、よ、よかった……やっと、見つけました……」

 華緒が口を開こうとした時、また馬の足音が聞こえてきた。
 今度は真っ黒な馬だ。
 その上に、華緒と同じくらいの髪の長さの女の子が乗っている。
 女の子の髪も黒で、馬も黒。黒と黒でバランスが取れているように思う。
 そうやって華緒がなにか変なことを考えていると、小さい子が黒い馬に駆け寄る。

「沙織ちゃん! ごめんなさいなのです。馬に乗りたいってわがまま言って、その上敷地内を飛び出してしまって……」
「い、いえ……わ、私もちゃんと見てなかったので……先輩は初心者なのに……あの子もちょっと、扱いずらい子だし……」

 小さい子は、大人に怒られるのをおそれている子どものような顔をした。
 つくづく子どもっぽい。
 だが、黒髪の子はその子を「先輩」と呼んだ。
 小さい子の方が年上なのか……そうは見えないが。

「というか、そろそろ戻らないと……先生に怒られるかもしれないので……」
「あ、そうなのですね。戻らないと」

 そう言って、再び白い馬に乗ろうとする。
 ……正確には乗ろうとしていたが乗れなくて、仕方なく馬を引こうとしていた。

「あ、あの……!」

 もうこんなチャンスは二度とないと思って、華緒は勇気を振り絞った。

「なにか用なのですか?」
「え、えっと……お名前を……! お聞きしたくて……!」

 華緒が言葉に詰まりながらもなんとか伝えると、その小さい子はふふっと笑う。
 普通にしていてもほわほわした雰囲気なのに、笑うとそれが倍増してもはや天使にしか見えない。

「わたしは篠宮沙友理なのです。あなたは?」
「わっ、私は、稲津華緒っていいます!」

 お互い名乗るだけの自己紹介を終えて、小さい子――沙友理は黒髪の子とともに去っていった。
 華緒はなんだか妙な高揚感を覚えて、鼻歌を歌いながら帰る。
 そして、今日から新たな日記をつけることにした。
 その日記の名前は、のちに『さっちゃん先輩観察日記』となる。

 ☆ ☆ ☆

 ○月○日

 運命って本当にあるんだ!
 私が○○ちゃんを追いかけてたのも、その子に嫌なことされたのも、全部この時のためだったんだ!
 運命の人……沙友理さんに出会うために。
 さっそく今度から沙友理さんを尾行してみよう。
 どんな人でどんな性格で裏はないのか、今度はちゃんと把握しておかないとね。

 ――稲津華緒、『篠宮沙友理さん観察日記』より。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...