20 / 47
こちらの世界
大事な話
しおりを挟む
あれから時間は流れて、もう夕方になっていた。
うみは一緒にご飯を食べるだけでは足りなかったのか、三人で一緒に本屋に寄ったりゲーセンで遊んだりした。
めいもうみも楽しそうにしていたから、それはそれでよかったのだろう。
ほんのりと夕日に照らされたオレンジ色の道を歩いていると、うみが私の方をじっと見つめる。
「な、なに?」
「ううん、すっごく楽しかったなーって思って」
うみの笑顔は夕日よりまぶしく見えて、思わず顔を逸らしてしまいそうになった。
でもそんなことをしたら「照れてるー!」とかからかわれそうだから、すんでのところで留まってまっすぐ見返した。
「おー、今日は素直だねぇ」
「からかうなよー」
「あはは」
そうしたことで、見事立場逆転できたのだった。
とまあ、こんな感じでイチャイチャ――じゃなくてわちゃわちゃ楽しんでいたけど、どうももう一人の妹の様子がおかしい。
原因と理由は……わかるようなわからないような。
それを私が言ってしまうと自惚れだと言われかねないので、なにも言わないことにする。
口は災いの元で、言わぬが花だから。
……なにか違う気もするが、細かいことは気にしない。
めいからなにか言われることはなかったけど、その代わり今日の夜がやばいことになりそうだなという予感はした。
予感がするだけで終わればいいけど……そうはならないだろう。
私は冷や汗をかきながら覚悟を決めた。
「ただいまぁー!」
「ただいまー……」
あれからめいは終始口数少なく、帰り道で一度も口をきかなかった。
いつもは頼んでもいなくても場を賑やかにするのに。
「うーん、お母さんはまだ帰ってないっぽいねぇ」
うみはおおげさなほどキョロキョロしながら辺りを見回す。
お母さんがいないことは、返事がない時点でみんな気づいているだろうに。
というか、うみのテンションもおかしい気がする。
いつもよりテンションが高いというか、からげんきというか。
「……お姉ちゃん……」
うみのことを見ていると、めいが私の腕に大きな胸を押し付けながら呼びかけてきた。
ふ、ふかふか……じゃなくて!
腕の感触に集中しつつ、私はめいの顔を見た。
声色もそうだったが、寂しそうに私の顔を覗き込んでくる。
「あの……いえ、なんでもないです……」
明らかになんでもなくなさそうだ。
私はめいの手をぎゅっと握って、耳元でささやく。
「話があるの。先に部屋で待ってて」
めいは驚いたように目を丸くしていたが、すぐに微笑んで「わかりました」と去っていく。
さあ、ここからが本番だ。
これから、姉妹兼恋人になるために必要な試練が始まる……!
☆ ☆ ☆
「……それで、話ってなんですか?」
「あー、やっぱいきなりそうなるよねぇ……」
私は頭をボリボリかき、どうしたものかと悩む。
話す覚悟はできているが、どういう順序で話すかの準備はまったくしていない。
覚悟ができているなら早くしろよという感じなのだが、ここにきて勇気が出ない。
私はどれだけ臆病なのだろう。
めいにとってプラスであろうことを報告するだけなのに、どうしてこうも言葉が出てこないのか。
のどが詰まって息苦しい。肺に酸素が行き渡っていないようだ。
胸が苦しくて、このまま心臓発作にでもなってしまいそうだった。
この先に訪れる景色は明るいのかはわからない。もしかしたら……失望、されてしまうかもしれない。
でも、それでも、私はめいともっと仲良くなりたい。
もう赤の他人ではいられなくて。
もっと近い存在になりたくて。
私は、めいの――〝特別〟でいたい。
そのために必要な話なのだ。
「めい、あのね、私――んっ!?」
やつとの思いで私が口を開いた時、めいがその口を塞いできた。
一口サイズのチョコレートで。
「ちょ、な、なに?」
「……入れたかったからです」
「うわぁ……鮮やかなほどだね……悪びれていない……」
「悪いと思っていないのでっ」
そうツーンとそっぽを向く。
拗ねているサインなのだろうが、なんで拗ねているのかわからない。
拗ねるような話をするつもりではないのに。
「お姉ちゃんがなにを話すつもりなのかはわかっています。元カノさんのことですよね」
「え、うん。そうだけ……え?」
うんうんと当然のように頷いてしまったが、こやつは今なんと……?
「その人のことがずっと忘れられなくて、今も時々思い出しちゃって、こっそり想ってたの知ってるんですから」
「え、え、え、ちょ、ちょっと待っ」
「でも、ようやく吹っ切れてわたしにそのことを話そうとしてくれたんですよね。嬉しいです」
私はまだなにも言っていないのに、言いたいことを先回りされてしまう。
しかも全部合ってるから反論ができない。
本当にこいつはエスパーかなにかなのではないだろうか。
そうじゃないと説明がつかない。
「ありがとうございます、お姉ちゃん」
「うーん……色々言いたいことはあるけど……どういたしまして」
感謝されたのなら、この言葉を真っ先に出すのが礼儀というものだろう。多分。
とりあえず色々と疑問はたくさんあるのだが、一番言いたいのは……
「なんでチョコレートねじ込んできたの?」
「え、お姉ちゃんの口から直接聞きたくなかったので……」
モジモジと申し訳なさそうに小さくなるめいを見て、少し可愛いと思ってしまった自分が情けなかった。
うみは一緒にご飯を食べるだけでは足りなかったのか、三人で一緒に本屋に寄ったりゲーセンで遊んだりした。
めいもうみも楽しそうにしていたから、それはそれでよかったのだろう。
ほんのりと夕日に照らされたオレンジ色の道を歩いていると、うみが私の方をじっと見つめる。
「な、なに?」
「ううん、すっごく楽しかったなーって思って」
うみの笑顔は夕日よりまぶしく見えて、思わず顔を逸らしてしまいそうになった。
でもそんなことをしたら「照れてるー!」とかからかわれそうだから、すんでのところで留まってまっすぐ見返した。
「おー、今日は素直だねぇ」
「からかうなよー」
「あはは」
そうしたことで、見事立場逆転できたのだった。
とまあ、こんな感じでイチャイチャ――じゃなくてわちゃわちゃ楽しんでいたけど、どうももう一人の妹の様子がおかしい。
原因と理由は……わかるようなわからないような。
それを私が言ってしまうと自惚れだと言われかねないので、なにも言わないことにする。
口は災いの元で、言わぬが花だから。
……なにか違う気もするが、細かいことは気にしない。
めいからなにか言われることはなかったけど、その代わり今日の夜がやばいことになりそうだなという予感はした。
予感がするだけで終わればいいけど……そうはならないだろう。
私は冷や汗をかきながら覚悟を決めた。
「ただいまぁー!」
「ただいまー……」
あれからめいは終始口数少なく、帰り道で一度も口をきかなかった。
いつもは頼んでもいなくても場を賑やかにするのに。
「うーん、お母さんはまだ帰ってないっぽいねぇ」
うみはおおげさなほどキョロキョロしながら辺りを見回す。
お母さんがいないことは、返事がない時点でみんな気づいているだろうに。
というか、うみのテンションもおかしい気がする。
いつもよりテンションが高いというか、からげんきというか。
「……お姉ちゃん……」
うみのことを見ていると、めいが私の腕に大きな胸を押し付けながら呼びかけてきた。
ふ、ふかふか……じゃなくて!
腕の感触に集中しつつ、私はめいの顔を見た。
声色もそうだったが、寂しそうに私の顔を覗き込んでくる。
「あの……いえ、なんでもないです……」
明らかになんでもなくなさそうだ。
私はめいの手をぎゅっと握って、耳元でささやく。
「話があるの。先に部屋で待ってて」
めいは驚いたように目を丸くしていたが、すぐに微笑んで「わかりました」と去っていく。
さあ、ここからが本番だ。
これから、姉妹兼恋人になるために必要な試練が始まる……!
☆ ☆ ☆
「……それで、話ってなんですか?」
「あー、やっぱいきなりそうなるよねぇ……」
私は頭をボリボリかき、どうしたものかと悩む。
話す覚悟はできているが、どういう順序で話すかの準備はまったくしていない。
覚悟ができているなら早くしろよという感じなのだが、ここにきて勇気が出ない。
私はどれだけ臆病なのだろう。
めいにとってプラスであろうことを報告するだけなのに、どうしてこうも言葉が出てこないのか。
のどが詰まって息苦しい。肺に酸素が行き渡っていないようだ。
胸が苦しくて、このまま心臓発作にでもなってしまいそうだった。
この先に訪れる景色は明るいのかはわからない。もしかしたら……失望、されてしまうかもしれない。
でも、それでも、私はめいともっと仲良くなりたい。
もう赤の他人ではいられなくて。
もっと近い存在になりたくて。
私は、めいの――〝特別〟でいたい。
そのために必要な話なのだ。
「めい、あのね、私――んっ!?」
やつとの思いで私が口を開いた時、めいがその口を塞いできた。
一口サイズのチョコレートで。
「ちょ、な、なに?」
「……入れたかったからです」
「うわぁ……鮮やかなほどだね……悪びれていない……」
「悪いと思っていないのでっ」
そうツーンとそっぽを向く。
拗ねているサインなのだろうが、なんで拗ねているのかわからない。
拗ねるような話をするつもりではないのに。
「お姉ちゃんがなにを話すつもりなのかはわかっています。元カノさんのことですよね」
「え、うん。そうだけ……え?」
うんうんと当然のように頷いてしまったが、こやつは今なんと……?
「その人のことがずっと忘れられなくて、今も時々思い出しちゃって、こっそり想ってたの知ってるんですから」
「え、え、え、ちょ、ちょっと待っ」
「でも、ようやく吹っ切れてわたしにそのことを話そうとしてくれたんですよね。嬉しいです」
私はまだなにも言っていないのに、言いたいことを先回りされてしまう。
しかも全部合ってるから反論ができない。
本当にこいつはエスパーかなにかなのではないだろうか。
そうじゃないと説明がつかない。
「ありがとうございます、お姉ちゃん」
「うーん……色々言いたいことはあるけど……どういたしまして」
感謝されたのなら、この言葉を真っ先に出すのが礼儀というものだろう。多分。
とりあえず色々と疑問はたくさんあるのだが、一番言いたいのは……
「なんでチョコレートねじ込んできたの?」
「え、お姉ちゃんの口から直接聞きたくなかったので……」
モジモジと申し訳なさそうに小さくなるめいを見て、少し可愛いと思ってしまった自分が情けなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜
M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。
そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。
そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――?
「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」
誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。
……
ここから朱美の全ルート攻略が始まる!
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる