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こちらの世界
アイスクリーム
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とまあ、そんなこともあったが復縁したいという気持ちは時間が経つにつれて薄くなっていった。
失恋後しばらくはずっと未練タラタラだったけれども。
まあそれはともかく、私は今、この炎天下の中でアイスを食べに街に出てきていた。
「……なんでアイス屋に来てるんだ……?」
「だって暑いですし、おやつにもぴったりじゃないですか?」
「それならコンビニとかで買って家で食べる、でいいんじゃ……」
そう、私は別に好きでここに来たわけではない。
妹というか恋人というか……ともかく他人の意見に耳を傾けた結果なのだ。
なぜOKしてしまったのかと、今更ながらに後悔している。
「えー? こんないい天気の日に外で食べないなんてどうかしてますよ!」
「もうすでに私は暑さでどうにかなりそうだけど……」
腕を組んでふんっと鼻を鳴らしためいを置いて、私は猫背で歩き出す。
じりじりと太陽の光が皮膚を刺激してくる。
その刺激に涙を流す皮膚をタオルで拭いながら、街の喧騒から逃げるようにして日陰に隠れる。
「なにしてるんですか?」
「夏バテしそう……とにかく放っておいて……」
あどけない瞳が私の顔をのぞき込む。
私はその視線に耐えられず顔を逸らした。
彼女の茶色の髪の毛が陽の光を含んで眩しかったというのもある。
「あ、でももうすぐですよ! ほら!」
そう言ってめいが指さした先には『クリームパラダイス』と書かれたアイス屋さんがあった。
本当に近くて、歩いて一分もかからないほどの場所にそれはあった。
しかし――
「も、もう歩けそうにないから……一人で行ってきて……」
汗はびっしょりと全身を覆い、脳は長時間外に置かれた氷のように溶けている。
こんなんじゃ、歩くどころか立てもしない。
「大丈夫です! わたしが背負ってあげます!」
「はい?」
そうこうしているうちに、私はめいに背負われていた。
わたしは悪いと思い降りようとしたが、降りる気力もなかったので、このまま背負われることにした。
「つきましたよ!」
「はぁ……やっとか……」
私は安寧の地ができたと安堵した。
私はめいの背中から降りて地に足をつけた。
不思議と力が入り、倒れ込むことはなかった。
「ねぇ、なに頼みます?」
「私は……なんでもいいです……」
「じゃあ、定番のバニラにしましょうか!」
その後に起きたことは想像がつくだろう。
私はバニラアイスの美味しさと冷たさに体力を回復し、めいはとても楽しそうに……嬉しそうに私と駄弁った。
「また、来ましょうね!」
「次は……炎天下じゃない空の下でアイス屋に行きたいな……」
そうは言ったが、今日はとても楽しかった。
生理前ということもあって、イライラしてたりお腹が痛かったりしたのだが、少しは落ち着いた気がする。
「ふふん。わかってないですね、お姉ちゃん。炎天下だからこそアイスが美味しく感じられるんですよぉ」
……言いたいことはわからなくもない。
わからなくもないが、わざわざ暑い日に外に出たくない。
暑い日はクーラーの効いた家でアイスを食べるのが一番だろう。
文字通り汗を流してまで食べに来る理由がわからない。
「まあいっか。月イチの〝アレ〟が来るとお腹冷やしてたら余計痛くなるからなぁ……」
「そうみたいですねー。わたしはあんまり痛みはない方なので平気ですが」
「死ねばいいのに」
「シンプル悪口!? 酷くないですか!?」
これ以上喋られたら私の殺意が暴走しそうだ。
めいの口を塞ぐためにガムテープでも用意しておくべきだったか。
この子は本当に余計なことしか言わない。
生理の痛みが軽い人は気軽にその話題に触れてほしくないなと思った。
どうして痛みや症状に個人差があるのか。
男の人がわからないのはともかく、女の子同士でも分かり合えないから難しい。
「むむむぅ……一応メンタルケアはしてるのにぃ」
……生理中は身体的な痛みだけでなく精神的に不安定になる。
身体的なものは薬に任せているが、精神的な面ではかなりめいにお世話になっているのは事実だ。
「まあお姉ちゃんのお世話をするって条件で住まわせてもらってるわけですし、悪口は甘んじて受け入れましょう」
「受け入れるんだ!? かなりなこと言った気がするよ!?」
またまたこいつはなにを言い出すやら。
さっきのことを私なりに反省してはいたけど、めいはさらに上を行っているらしい。
……ほんとに受け入れ耐性すごくないか?
「わたしが本当に嫌なのはお姉ちゃんから拒絶されることです。さっきの言葉にそんな意味はないでしょう?」
「そ、それは……」
「だから大丈夫です。変わらず大好きですよ」
でも、ここで謝っておかないといけないような気がするけど。
めいは本当に聖人君子のような眼差しで見つめてくる。
……視線が痛い。
「ごめん……」
「え? 本当にいいのに……はっ! まさか『ごめん』って好きですよって言葉に対して!?」
「いやいや、違うから!」
普通に謝るだけのつもりが、壮大な勘違いをされた。
私がめいを嫌うことなど、万が一にもないというのに。
失恋後しばらくはずっと未練タラタラだったけれども。
まあそれはともかく、私は今、この炎天下の中でアイスを食べに街に出てきていた。
「……なんでアイス屋に来てるんだ……?」
「だって暑いですし、おやつにもぴったりじゃないですか?」
「それならコンビニとかで買って家で食べる、でいいんじゃ……」
そう、私は別に好きでここに来たわけではない。
妹というか恋人というか……ともかく他人の意見に耳を傾けた結果なのだ。
なぜOKしてしまったのかと、今更ながらに後悔している。
「えー? こんないい天気の日に外で食べないなんてどうかしてますよ!」
「もうすでに私は暑さでどうにかなりそうだけど……」
腕を組んでふんっと鼻を鳴らしためいを置いて、私は猫背で歩き出す。
じりじりと太陽の光が皮膚を刺激してくる。
その刺激に涙を流す皮膚をタオルで拭いながら、街の喧騒から逃げるようにして日陰に隠れる。
「なにしてるんですか?」
「夏バテしそう……とにかく放っておいて……」
あどけない瞳が私の顔をのぞき込む。
私はその視線に耐えられず顔を逸らした。
彼女の茶色の髪の毛が陽の光を含んで眩しかったというのもある。
「あ、でももうすぐですよ! ほら!」
そう言ってめいが指さした先には『クリームパラダイス』と書かれたアイス屋さんがあった。
本当に近くて、歩いて一分もかからないほどの場所にそれはあった。
しかし――
「も、もう歩けそうにないから……一人で行ってきて……」
汗はびっしょりと全身を覆い、脳は長時間外に置かれた氷のように溶けている。
こんなんじゃ、歩くどころか立てもしない。
「大丈夫です! わたしが背負ってあげます!」
「はい?」
そうこうしているうちに、私はめいに背負われていた。
わたしは悪いと思い降りようとしたが、降りる気力もなかったので、このまま背負われることにした。
「つきましたよ!」
「はぁ……やっとか……」
私は安寧の地ができたと安堵した。
私はめいの背中から降りて地に足をつけた。
不思議と力が入り、倒れ込むことはなかった。
「ねぇ、なに頼みます?」
「私は……なんでもいいです……」
「じゃあ、定番のバニラにしましょうか!」
その後に起きたことは想像がつくだろう。
私はバニラアイスの美味しさと冷たさに体力を回復し、めいはとても楽しそうに……嬉しそうに私と駄弁った。
「また、来ましょうね!」
「次は……炎天下じゃない空の下でアイス屋に行きたいな……」
そうは言ったが、今日はとても楽しかった。
生理前ということもあって、イライラしてたりお腹が痛かったりしたのだが、少しは落ち着いた気がする。
「ふふん。わかってないですね、お姉ちゃん。炎天下だからこそアイスが美味しく感じられるんですよぉ」
……言いたいことはわからなくもない。
わからなくもないが、わざわざ暑い日に外に出たくない。
暑い日はクーラーの効いた家でアイスを食べるのが一番だろう。
文字通り汗を流してまで食べに来る理由がわからない。
「まあいっか。月イチの〝アレ〟が来るとお腹冷やしてたら余計痛くなるからなぁ……」
「そうみたいですねー。わたしはあんまり痛みはない方なので平気ですが」
「死ねばいいのに」
「シンプル悪口!? 酷くないですか!?」
これ以上喋られたら私の殺意が暴走しそうだ。
めいの口を塞ぐためにガムテープでも用意しておくべきだったか。
この子は本当に余計なことしか言わない。
生理の痛みが軽い人は気軽にその話題に触れてほしくないなと思った。
どうして痛みや症状に個人差があるのか。
男の人がわからないのはともかく、女の子同士でも分かり合えないから難しい。
「むむむぅ……一応メンタルケアはしてるのにぃ」
……生理中は身体的な痛みだけでなく精神的に不安定になる。
身体的なものは薬に任せているが、精神的な面ではかなりめいにお世話になっているのは事実だ。
「まあお姉ちゃんのお世話をするって条件で住まわせてもらってるわけですし、悪口は甘んじて受け入れましょう」
「受け入れるんだ!? かなりなこと言った気がするよ!?」
またまたこいつはなにを言い出すやら。
さっきのことを私なりに反省してはいたけど、めいはさらに上を行っているらしい。
……ほんとに受け入れ耐性すごくないか?
「わたしが本当に嫌なのはお姉ちゃんから拒絶されることです。さっきの言葉にそんな意味はないでしょう?」
「そ、それは……」
「だから大丈夫です。変わらず大好きですよ」
でも、ここで謝っておかないといけないような気がするけど。
めいは本当に聖人君子のような眼差しで見つめてくる。
……視線が痛い。
「ごめん……」
「え? 本当にいいのに……はっ! まさか『ごめん』って好きですよって言葉に対して!?」
「いやいや、違うから!」
普通に謝るだけのつもりが、壮大な勘違いをされた。
私がめいを嫌うことなど、万が一にもないというのに。
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