姉妹百合なんて興味ない!……はず?

M・A・J・O

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こちらの世界

真相は闇の中

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 早くうみとめいを探さなくては……!
 お母さんの記憶から消されてしまったうみはもちろん、おそらく事件の発端となっているであろうめいも。
 いつもなら頼んでもいないのにそばにいるくせに、こういう時に限っていないなんて。

「……っ! うみー! めいー! どこにいるのー!?」

 家の近所を探し回るも、どこにもいない。
 通行人に話を聞きたいが、今テンパっているのと元からのコミュ障で上手く話せる自信がないためスルーだ。

「いつも、どうでもいい時はそばにいるくせに……こういう時だけ……っ」

 見慣れた景色でさえ、違和感の塊のように見えてしまう。いよいよ末期かもしれない。
 うみは一体どこにいるのか。
 いっそのことなんでもないように、いつものように家にいて「じゃーん、嘘でしたー。びっくりした?」とでも言ってもらいたいものだ。

 でも、お母さんのあの感じはマジでガチのやつだ。
 ふざけている感じではなかった。
 第一、ふざけていたとしたら血相を変えて飛び出す私を必死で止めただろうし。
 というか、いつも口うるさくどこか行く時は連絡しろとか勝手にどっか行くなとか怒るくせに、今日はいいのだろうか。

 いろいろと細かな違和感が拭いきれない。
 とりあえずそんなことは置いといて二人を探さなきゃ!

「あ……あら。久しぶりね、うい」
「えっ……その声……」

 ためらいがちに声をかけてきたのは、私の〝元カノ〟だった。
 ……なんで声をかけてきたんだろう。
 もう関わりたくないと言っていたのに。

「〝める〟……なんで……」
「なんでってなによ。それにしても随分と慌ててるみたいね。なにかあった?」
「そ、それは……」

 言おうかどうか迷った。
 正直、こうして普通に会話しているだけでも気まずさで逃げ出したくなっている。
 こんな状態で悩み事を話せるわけが……

 ……というか……なんでめるがここにいるんだろう。
 めるはここから電車二本乗り継いでたどり着けるところに住んでいるはずなのに。
 どうもうみやめいだけでなく、ツッコミどころが山ほどあるみたいだ。

 ……ちょうどいい。
 話を聞いてもらいつつ、疑問にも答えてもらおう。

「えっと、実は――」

 私はこれまで起きてきたこと、そして今起こっていることを拙いながらも話した。
 ちゃんと全部伝わっているか不安だが、めるならちゃんと受け取ってくれるだろう。

「なるほどね。妹さんか……私もういのお母さんみたいに『うみ』って子は知らないし、聞いたこともないわ」
「そっか……この様子だと私以外みんなの記憶から消えてそうな感じってことか……」
「ごめんなさいね。でも、めいって子はよく知ってるわ。ずっと……あなたにアピールしてたから」
「……え?」

 詳しく話を聞いていると、どうやらめいは私の知っているめいそのもののようだ。
 だとすると、気になるのはうみだが、その前に――

「あ、あの……ひとつ訊いてもいいかな……」
「ん? なにかしら?」
「……めるは、私とはもう関わりたくないって言ってたよね……どうして……」
「ん、え、ちょっ待って?」

 私が言おうとしていたことを止められ、いつの間にか俯いていた顔を上げる。
 そんな私の目に飛び込んできたのは、これ以上ないほど困惑した様子のめるだった。
 そして、めるが恐る恐るといった様子で、私の言葉を訂正する。

「もう関わりたくないみたいなことを言ったのは――あなたの方よ?」
「……へ?」
「私が振ったんじゃなくて、あなたの方から振ったのよ? だから私、あなたに声をかけるべきか迷ったのだけど……なんか、切羽詰まってるみたいだったから……つい……」

 なぜか申し訳なさそうな顔になるめる。
 いや、そんなことより、どうなっているんだ!?
 もうわけがわからない。
 頭が混乱して、ぐちゃぐちゃして、なにも考えられない。

 いや、でも、あの苦しみは確かに私が味わったものだ。
 手足の感覚がなくなって、心臓が止まりそうなのかバクバクしているのかわからなくて、いっそ死んでしまいたいと思ったあの感情は、確かに私のものだった――!

「ど、どういうこと……?」
「そ、そんなの私に訊かれてもわからないわよ……! どうしても諦めきれなくてあなたの家の近くに引っ越してきたけど……ずっと声をかけられなくて……つらくて……」

 引っ越した?
 そんな情報は入ってきていない。いや、入ってきていなくても、ずっと住んでいたらいずれわかることだ。
 だとすると、本来なら近くに引っ越してきていないはずだ。

 やっぱり、うみだけじゃなくてその他もろもろもおかしくなっている。
 今目の前にいるこの女の子は、確かに『める』という名前で、私と付き合っていて、私と別れた。
 だけど、どっちが振ったか、それに伴う引っ越しに関しては疑問がある。

 ここまで来ると、私が元からおかしくなっていたようにしか思えない。
 でも、そんなのを認めたくない。
 だってうみは、確かに私の妹なのだから……!

「……色々とありがとう。迷惑かけてごめん」
「え? いや、頼ってもらえる分には嬉しいから、迷惑なんてことはないけれども……」
「それと、最後にもうひとつだけ……いいかな?」
「なにかしら?」

 これは、聞いておかないといけない。
 私がおかしいかおかしくないかは、これに関わっているといっても過言はないのだから。

「私って……ネコだった?」
「ふぇっ!? え、えーっと……た、タチ……だったわよ……?」
「……そっか……」

 急激にネコのような顔になっためる。
 うん、よかった。私がおかしくなったわけではない。私にタチなんてできるわけがないから。心底安心した。
 それの確認ができて、とりあえずは一段落した。

 ……となると、おかしくなったのはお母さんとめるという可能性もあるが、この二人は同じようなことを口にしていた。
 うみを全く知らなくて、めいのことは詳しく知っている。
 でも、私の記憶がなんらかの方法で改ざんされたわけでもない。
 そうなると真相は――

「なるほどわからん」

 ――いまだ闇の中。
 出した結論は、もう帰って寝ようというものだった。
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