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えっちな姉妹百合は朝を迎える
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「しまった……」
朝がきて一番に口をついて出た言葉がこれだった。
昨夜は色々と大変で恥ずかしくて嬉しくて幸せな思いをした気がする。
私にそんな思いをさせた張本人は、隣ですやすや眠っている。
「うあああ……もう引き返せなくなっちゃったよぉ……」
私はその場で悶える。
これが初めての経験というわけではない。
だけど、どうにも慣れない。
何かを失ってしまって、だけど何かを得たような……そんな気分だった。
そんな気分になった時、ふとある疑問がわく。
「そういや、私とめいって……付き合ってる……のかな……」
問題はそこだった。
最初から大好きと言われ続けてきたが、付き合ってほしいとは言われていない。
告白してほしいとかそういうことではなく、単にこの関係がどういった名前で呼ばれるのかはっきりさせたいだけだ。
「姉妹? ……いやでも血が繋がってるわけじゃないし。それなら友だち? ……はこんなことしないか。まさかセフレ……!?」
それが一番自然な答えだった。
実際にそういうことをしてしまったわけだし。
私は、私の全部をめいにあげたのだ。
今更それがなかったことになるわけではない。
……でも。
そういうことをする前に、めいは「お嫁さんになります」と宣言してくれていた。
あれを、信じてもいいのだろうか。
「……あ、お姉ちゃん。おはようございます」
「あ、う、うん……おはよ……」
もやもや考えていると、めいが起き出した。
すごく眠そうに目をこすっている。
その手はまだ湿っているように見えた。
それがどうしてかを聞く勇気は、私にはない。
「えへへ、お姉ちゃんのお汁すごく美味しいので一晩中舐めちゃってました」
……聞かなくても勝手に答えてくれた。
しかもすごく恥ずかしい。
「そ、そっか……」
私はそれしか言えなかった。
他に何を言えと言うのだろう。
でも、めいはそれだけでも満足してくれたようだ。
今までに見たこともないくらい輝いた笑顔を浮かべている。出会って間もないけど。
「じゃあ朝ごはんにしましょう! お姉ちゃんいつも朝は市販のパン一個だけでしょう? わたしが美味しい朝ごはん作ってあげます!」
「え、なんでそんなことまで知って……」
「いいから! うみさんの分も作りますので!」
めいに引っ張られ、私はリビングへと引きずられる。
寝起きにぐいぐい相手のペースに持っていかれるのは少し不愉快だった。
でも、めいはすごく楽しそうだったから、無理やり引っ張らないでなんてとても言えなかった。
その後、真っ裸だということに気づいて慌てて部屋に戻ったのは内緒である。
「お姉ちゃんにわたしの作ったご飯食べてほしかったんですよね~! これでやっと夢が叶います!」
「あー、でも……勝手にキッチン使うの、お母さんが許してくれるかどうか……」
「それなら大丈夫です! もう既に昨日の夜に許可を得ていますので!」
「え、はや……」
昨日の夜……もしかして私がお風呂に入っている時だろうか。
でもずっと視線を感じていたんだけど……まあ、深くは考えないことにしよう。
もしかしたらうみが覗いていたのかもしれないし。
それはそれで怖いけど。
「さ、ということで! お姉ちゃんたちに料理を振舞っちゃいます!」
「へー、めいさんが作るのかぁ。楽しみだね、うい」
「てかなんでうみもしれっと混ざってんの?」
いつの間にか私の隣に座っていたうみが、キラキラを目を輝かせている。
ほんといつの間に来たんだ、こいつ。
「じゃあ何にしましょうか。リクエストありますか?」
「え、今から決めるの?」
「当然です! お姉ちゃんたちの好きなものじゃないと振る舞う意味がありませんので!」
「じゃあ、あたしはスクランブルエッグがいい!」
「えー……じゃあ、私はハム食べたいな……」
「了解です! ちょっと時間かかるかもですが、とびきり美味しいの用意します!」
そう言って、めいはご飯の支度をする。
その間暇だなと思ってテレビをつけると、子供向け番組が放送されていた。
「わー、懐かし! まだやってんだね!」
うみはすごくはしゃいでいる。
自分が子どもの頃に観ていた番組が今もやっていると知ると、テンションがあがるのも無理はない。
かくいう私も、うみと同じ気持ちだ。
「普段休みの日は10時くらいまで寝ちゃってるからな~。最近観てなかったからなんか不思議な気分……」
私とうみは子供向け番組に合うような年齢ではなくなってしまったが、子どもに戻った気持ちになってテレビを観た。
今もその番組を楽しめるなんて、私は子どもの心が残っているのだろうか。
少し恥ずかしいけど、嫌な気持ちにはならなかった。
「お待たせしました~!」
そうこうしているうちに、いい匂いが漂ってきた。
その匂いがお腹を刺激して、お腹が空いているということを示す。
要するにお腹が鳴ったのだった。
「もー、待ちきれない! いただきます!」
それはうみも同じだったみたいで、ガツガツとご飯を自分の口の中にかき込んでいく。
私は恐る恐る小さくしたハムを口に入れる。
……あ、美味しい。
「美味しい……すごい……朝からこんな豪華なもの食べたことないのもあってすごく新鮮……」
「わー! よかったです!」
私の語彙力皆無な感想にも、めいは手を合わせて喜んでくれている。
その顔が見られるなら、もうなんでもいっか。そう思ってしまう自分がいて、なんだかよくわからなくなる。
「……これでお姉ちゃんの胃袋、つかめましたかね……」
「ん? なんか言った?」
「別に何もっ! あ、おかわりもあるので遠慮なくどうぞ」
「わーい!」
そんなこんなで、私は (もしかしたらうみも)見事にめいに胃袋をつかまれたのだった。
朝がきて一番に口をついて出た言葉がこれだった。
昨夜は色々と大変で恥ずかしくて嬉しくて幸せな思いをした気がする。
私にそんな思いをさせた張本人は、隣ですやすや眠っている。
「うあああ……もう引き返せなくなっちゃったよぉ……」
私はその場で悶える。
これが初めての経験というわけではない。
だけど、どうにも慣れない。
何かを失ってしまって、だけど何かを得たような……そんな気分だった。
そんな気分になった時、ふとある疑問がわく。
「そういや、私とめいって……付き合ってる……のかな……」
問題はそこだった。
最初から大好きと言われ続けてきたが、付き合ってほしいとは言われていない。
告白してほしいとかそういうことではなく、単にこの関係がどういった名前で呼ばれるのかはっきりさせたいだけだ。
「姉妹? ……いやでも血が繋がってるわけじゃないし。それなら友だち? ……はこんなことしないか。まさかセフレ……!?」
それが一番自然な答えだった。
実際にそういうことをしてしまったわけだし。
私は、私の全部をめいにあげたのだ。
今更それがなかったことになるわけではない。
……でも。
そういうことをする前に、めいは「お嫁さんになります」と宣言してくれていた。
あれを、信じてもいいのだろうか。
「……あ、お姉ちゃん。おはようございます」
「あ、う、うん……おはよ……」
もやもや考えていると、めいが起き出した。
すごく眠そうに目をこすっている。
その手はまだ湿っているように見えた。
それがどうしてかを聞く勇気は、私にはない。
「えへへ、お姉ちゃんのお汁すごく美味しいので一晩中舐めちゃってました」
……聞かなくても勝手に答えてくれた。
しかもすごく恥ずかしい。
「そ、そっか……」
私はそれしか言えなかった。
他に何を言えと言うのだろう。
でも、めいはそれだけでも満足してくれたようだ。
今までに見たこともないくらい輝いた笑顔を浮かべている。出会って間もないけど。
「じゃあ朝ごはんにしましょう! お姉ちゃんいつも朝は市販のパン一個だけでしょう? わたしが美味しい朝ごはん作ってあげます!」
「え、なんでそんなことまで知って……」
「いいから! うみさんの分も作りますので!」
めいに引っ張られ、私はリビングへと引きずられる。
寝起きにぐいぐい相手のペースに持っていかれるのは少し不愉快だった。
でも、めいはすごく楽しそうだったから、無理やり引っ張らないでなんてとても言えなかった。
その後、真っ裸だということに気づいて慌てて部屋に戻ったのは内緒である。
「お姉ちゃんにわたしの作ったご飯食べてほしかったんですよね~! これでやっと夢が叶います!」
「あー、でも……勝手にキッチン使うの、お母さんが許してくれるかどうか……」
「それなら大丈夫です! もう既に昨日の夜に許可を得ていますので!」
「え、はや……」
昨日の夜……もしかして私がお風呂に入っている時だろうか。
でもずっと視線を感じていたんだけど……まあ、深くは考えないことにしよう。
もしかしたらうみが覗いていたのかもしれないし。
それはそれで怖いけど。
「さ、ということで! お姉ちゃんたちに料理を振舞っちゃいます!」
「へー、めいさんが作るのかぁ。楽しみだね、うい」
「てかなんでうみもしれっと混ざってんの?」
いつの間にか私の隣に座っていたうみが、キラキラを目を輝かせている。
ほんといつの間に来たんだ、こいつ。
「じゃあ何にしましょうか。リクエストありますか?」
「え、今から決めるの?」
「当然です! お姉ちゃんたちの好きなものじゃないと振る舞う意味がありませんので!」
「じゃあ、あたしはスクランブルエッグがいい!」
「えー……じゃあ、私はハム食べたいな……」
「了解です! ちょっと時間かかるかもですが、とびきり美味しいの用意します!」
そう言って、めいはご飯の支度をする。
その間暇だなと思ってテレビをつけると、子供向け番組が放送されていた。
「わー、懐かし! まだやってんだね!」
うみはすごくはしゃいでいる。
自分が子どもの頃に観ていた番組が今もやっていると知ると、テンションがあがるのも無理はない。
かくいう私も、うみと同じ気持ちだ。
「普段休みの日は10時くらいまで寝ちゃってるからな~。最近観てなかったからなんか不思議な気分……」
私とうみは子供向け番組に合うような年齢ではなくなってしまったが、子どもに戻った気持ちになってテレビを観た。
今もその番組を楽しめるなんて、私は子どもの心が残っているのだろうか。
少し恥ずかしいけど、嫌な気持ちにはならなかった。
「お待たせしました~!」
そうこうしているうちに、いい匂いが漂ってきた。
その匂いがお腹を刺激して、お腹が空いているということを示す。
要するにお腹が鳴ったのだった。
「もー、待ちきれない! いただきます!」
それはうみも同じだったみたいで、ガツガツとご飯を自分の口の中にかき込んでいく。
私は恐る恐る小さくしたハムを口に入れる。
……あ、美味しい。
「美味しい……すごい……朝からこんな豪華なもの食べたことないのもあってすごく新鮮……」
「わー! よかったです!」
私の語彙力皆無な感想にも、めいは手を合わせて喜んでくれている。
その顔が見られるなら、もうなんでもいっか。そう思ってしまう自分がいて、なんだかよくわからなくなる。
「……これでお姉ちゃんの胃袋、つかめましたかね……」
「ん? なんか言った?」
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そんなこんなで、私は (もしかしたらうみも)見事にめいに胃袋をつかまれたのだった。
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