真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

ぬいぐるみがほしい

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 渚と駅で別れたあと、あたしは犬のぬいぐるみを見かけた百貨店に寄った。
 この百貨店は渚へのプレゼントを買うのによく利用している。
 だから今日も例によってお世話になっているわけだ。

「……あった!」

 そこは小学生くらいの子が多く、高校生のあたしは少しだけ浮いているかもしれない。
 だけどそういう雰囲気にはおじけることなく、目当ての場所まで進んでいく。

「うん、これならきっと喜んでくれるよね」

 あたしが手に取ったのは、豆柴のぬいぐるみだった。
 顔が丸くて可愛いから選んだんだけど、渚はこういうの好きだろうか。
 渚の好みはわかっているはずなのに、なぜか不安になる。
 だけど、腹を括らなくては!

「よしっ! これにしよう!」

 ぬいぐるみを手に取ると、柔らかい感触が手を刺激した。
 その感触はぬいぐるみの中で一番と言っていいほどふわふわでもちもちしている。
 渚の好きそうなものじゃなくて、単にあたしが好きなものを選んでいる気がする。
 だけど、渚を絶対喜ばせるんだという気持ちでレジへと向かう。
 店員さんにプレゼント用のラッピングをしてもらい、あたしはそれを鞄に入れた。

 そしてそのまま家に帰ることにした。
 早く渡したいなあと思いながら歩いていると、無意識にスキップしていた。
 我ながら単純な人間だと思うけど、仕方ないと思う。
 だって好きな人のためにプレゼントを選ぶのはすごく楽しいことだもん。
 そうしてウキウキ気分のまま家に着き、玄関を開けると真っ先に自分の部屋に向かった。

 着いた瞬間、ラッピングを慎重に綺麗に外していく。
 簡易的なものだったから、戻す時も簡単にできそうだ。
 ぬいぐるみを取り出し、汚れやキズがないか確認する。

「これをこうして……うん、完璧」

 そのあとに、盗聴器と小型カメラを仕込んでおく。
 いつも通りやる作業なので、特になにも感じなかった。
 クリスマスプレゼントや誕生日プレゼントには、いつもこうして取り付けている。
 その映像や音を確認するのはたまにしかやらないが、こうしないとあたしのメンタルが持たない気がするから。

 ちなみに、盗聴器や小型カメラはお母さんがいつも用意してくれる。
 お母さん曰く「愛娘の頼みとあらば! その代わり今度また揉ませてね!」とのこと。
 この親にしてこの子あり、である。

「ふう、これで一安心かな」

 ひと仕事終えると、一気に疲れが出てきた。
 慣れているとはいえ、さすがのあたしにも精神的に来るものがある。
 でも、これは必要なことなのだ。
 渚は優しいから、もし気づいていたとしてもなにもしないでおいてくれるだろう。

 それに、気づいたところでどうなるわけでもない。
 あたしの嗜好を一応は受け入れてくれている渚のことだ。
 今さらこんなことで軽蔑したり拒絶したりしないだろう。

 だけどあたしはそんな渚だからこそ、受け入れてほしいのだ。
 今までも散々甘えてきたけれど、もうそれだけでは満足できない。
 あたしのことをもっとちゃんと見てほしい。
 そのために、この行為は必要不可欠なことなんだ。
 渚が、本当の意味であたしを受け入れてくれるために。
 そのためなら、あたしはどんなことも厭わない覚悟だ。

「……渚」

 自然と口から漏れたその名前は、あたしにとって特別なものだ。
 小さい頃からずっと一緒で、誰よりも長い時間を過ごしてきて。
 一緒にいない時は、寂しくて仕方なくて。

 渚がいない日々なんて考えられないくらい、大切な存在。
 そんな渚のことを考えるだけで、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。
 苦しいけど心地よい、不思議な感覚。
 あたしはその感情を噛みしめるように胸に手を当て、ゆっくりと目を閉じた。
 すると次第に意識が遠ざかり、やがて暗闇の中に溶けていく――
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