真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
23 / 62
第一章 吸血少女は傷つけたい

デートの続きをしたい

しおりを挟む
「ご、ごめん! つい気持ちが高ぶっちゃって……」
「いや……これはこれでいいかも……なんか興奮した」
「え?」

 あたしの一言に渚はきょとんとする。
 そしてあたしはそんな渚をそっと抱きしめる。
 さっき渚にやられたような強引なものじゃなく、優しい感じに。
 すると、渚もあたしを抱きしめ返してきた。

「あははっ……なんかこういうのもいいね」
「うん……なんだか落ち着く」

 そうしてしばらく抱き合っていたあたしたちだけど、渚から身体を離す。
 そしてお互いの顔を見つめ合うと、あたしたちは笑みを浮かべた。

「それにしても花恋ちゃん、よく犬飼ってること覚えてたね。私そんなに話したっけ?」
「まあね。渚に関することならなんでも覚えてるよ。渚がおねしょした時とか」
「いつの話してるの!?」

 顔を真っ赤にする渚。
 なんだか今日の渚は顔を赤くしてばかりだ。
 その顔を見てあたしは満足げに笑う。

 それにしても、あの時はほんと可愛かったなぁ。
 もちろん今の渚も可愛いけど、おねしょした時の渚のギャン泣きが忘れられない。
 思い出しただけでゾクゾクして、口元が緩んでしまう。

「うふふふふ……」
「え、なんで笑ってるの?」
「だって、ねぇ?」
「もう! 昔の話はこれくらいにしよう!?」

 恥ずかしくなったのか、渚は自分の頭をわしわしと掻く。
 そういう風に照れてる姿もまた可愛いと思ってしまった。
 でもこれ以上いじるのは可哀想なので止めておくことにしよう。

 せっかくのクリスマスデートが台無しになってしまう。
 ……この前はおしおきしたくて台無しにしてしまったけど。
 今日は絶対に楽しいデートにしてみせるんだから!

「ねぇ、渚。これからどうする? どこか行きたいところある?」
「そうだなぁ……ちょっとお腹空かない? ずっと外にいると寒いし近くのコンビニで肉まんとかおでん買って食べようよ」
「おお! それいいね! そうしよそうしよ!」

 渚の提案にあたしは笑顔で賛成した。
 コンビニへ行って、肉まんとおでんを買って外にあるベンチで食べることになった。
 暖房がよく効いた店内から外に出ると、冷たい風があたしたちの身体に突き刺さってくる。
 寒いけれど、これくらいの方があたたかいものを美味しく感じられるはず。

「はい、渚の分」
「ありがとう」

 あたしは袋の中から肉まんを取り出すと半分に分けて片方を渚に手渡す。
 受け取った渚はそれを頬張った。

「はぁぁ……美味しい……」
「ん~……あったかいね……」

 ほかほかの肉まんを手に持っているだけで、寒さなんて吹っ飛ぶ気がする。
 冷え切った指先もあたたまったところで、あたしも肉まんを食べ始める。

「んむっ……」

 肉まんを一口食べた瞬間、あまりの熱さに舌を火傷してしまうんじゃないかと思った。
 慌てて口を開けて息を吹きかけて冷ます。
 ふぅーっと吹きかけていくと、少しだけマシになったので再び肉まんを食べる。

「はふっ……生き返る……」
「うん。これ買ってよかったね」

 隣を見ると、渚はあたしが肉まんを頬張っているところを微笑ましそうに見ていた。
 やっぱり……と思って、肉まんを飲み込む。

「もしかして、コンビニ行こうって言ったのはあたしのため? 寒くないようにって」
「あー……自分が寒かったからっていうのもあるけどね。でもまさかバレるなんて」
「そりゃわかるよ。だってこんなにも気遣ってくれる人いないもん」
「……花恋ちゃんには敵わないなぁ」

 はぁ……とため息をつく渚。
 あたしはその言葉の意味がわからなくて首を傾げた。
 そのセリフを言うのはあたしじゃなかろうか。

 こんなにもあたしのこと気遣ってくれる優しくてあたたかい恋人なのに、あたしはそういう愛情表現を傷つけることに使ってしまう。
 苦痛に顔を歪ませたり涙を流したりしている表情が大好きだから、どうしても恩を仇で返すようなことになってしまう。

 ――それなのに、どうして渚はこんなにも優しくしてくれるのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする 〜彩る季節を選べたら〜

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)
ライト文芸
「一緒の高校に行こうね」 恋人である幼馴染と交わした約束。 だが、それを裏切って適当な高校に入学した主人公、高原翔也は科学部に所属し、なんとも言えない高校生活を送る。 孤独を誇示するような科学部部長女の子、屋上で隠し事をする生徒会長、兄に対して頑なに敬語で接する妹、主人公をあきらめない幼馴染。そんな人たちに囲まれた生活の中で、いろいろな後ろめたさに向き合い、行動することに理由を見出すお話。

処理中です...