真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

M・A・J・O

文字の大きさ
24 / 62
第一章 吸血少女は傷つけたい

またお泊まりしたい

しおりを挟む
「それで、次はどこ行こうか」

 肉まんとおでんを食べ終わったあと、渚が優しく聞いてくれた。
 だけど、あたしは渚と一緒にいられればそれでいい。
 だから、何も答えないでただ黙って彼女の手を握る。
 すると彼女は少しだけ驚いた表情を見せたけど、すぐに笑顔になって握り返してくれた。

 そのまましばらく二人で黙ったままだった。
 人といる時の静寂に耐えられないという人もいるだろうけど、あたしは渚といる時の静寂は気にならない。
 この静けさも、渚との大切なひと時だから。

「今日は楽しかったよ。ありがとね、渚」
「いやいや、私はなにもしてないよ。こちらこそありがとう」

 お互いお礼を言い合うのも変な話だと思ったけれど、それでも言ってしまうくらいに今日のデートは本当に楽しかったのだ。
 ……でも、その楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。

「……もうすぐ終電の時間だね」

 渚がスマホを見ながらそう言う。
 時刻を見ると、確かに終電までもう少し時間があるようだった。

「そうだね。それじゃあ帰ろうか」
「うん、そうしようか」

 渚の返事を聞きながら立ち上がる。
 そして手を繋いだまま駅に向かって歩き出した。
 本当は帰りたくなかったけど、これ以上迷惑かけるわけにはいかない。

 それに、会おうと思えばいつでも会えるんだから、今は我慢しないと。
 そう自分に言い聞かせて、駅までの道のりを素直に歩く。
 その間、渚は何も言わずに隣を歩いていた。
 だけどやっぱり、このまま終わりたくない。
 そんな気持ちがふつふつ湧き上がってくる。

「……ねえ、渚」
「ん? どうしたの?」
「えっと、その……」

 勇気を出して声をかけたものの、そこから先がなかなか言葉にできない。
 普段はこんなことないのに。
 どうしてなのかわからない。

 なにか言わないと……
 そう思って口を開こうとすると、先に渚の声が聞こえてきた。

「あのさ、花恋ちゃんさえよければなんだど……今日うちに泊まってく?」

 それは意外な一言だった。
 もちろん嬉しい誘いではあるんだけど、あたしはなにをするかわからない爆弾を抱えているのに。
 渚がいいならいいのだけど、家で二人きりなんてあたしの性癖が爆発してしまう。

 ……と思ったところで、ふと気づく。
 そう言えば渚には妹がいたし、こんなに夜遅い時間なら両親も家にいるだろうと。
 それならあたしが暴走することもないし、素敵なクリスマスを過ごせるだろう。

「……いいの? 迷惑じゃない?」
「全然大丈夫だよ! って、私の家族のことよく知ってるでしょ。こんなことで迷惑なんて思わないって」
「それもそっか……じゃあお邪魔するね」
「えへへ、実は花恋ちゃんとまたお泊まりしてみたかったんだ」

 嬉しさを隠しきれない様子で喜ぶ渚。
 その姿はとても可愛くて愛おしくなる。
 いや、多分喜びはあたしも同じくらいあるけど。

 それと同時に、早く家に帰って一緒に過ごしたいとも思った。
 電車に乗って渚の家の近くの駅で降りると、駅前にあるコンビニに寄ってお菓子を買い込む。
 その後、渚の家に向かいながらコンビニ袋の中に入っているお菓子を取り出した。

「これ買ったんだー」
「おっ、期間限定のアイス! でも冬にアイスって……お腹痛くならない?」
「花恋ちゃん好きかなーと思って」
「まあ好きだけど……」

 なんでわざわざあたしが好きそうなものを選んでくれたのか不思議だったけど、その理由はすぐにわかった。

「喜んでもらえたかな?」

 渚はただ、あたしに喜んでもらいたくて買ってくれたのだ。
 きっと、ただそれだけ。
 そんな渚の底抜けの優しさに、あたしは胸が痛くなりながら「ありがとう」と返したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする 〜彩る季節を選べたら〜

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)
ライト文芸
「一緒の高校に行こうね」 恋人である幼馴染と交わした約束。 だが、それを裏切って適当な高校に入学した主人公、高原翔也は科学部に所属し、なんとも言えない高校生活を送る。 孤独を誇示するような科学部部長女の子、屋上で隠し事をする生徒会長、兄に対して頑なに敬語で接する妹、主人公をあきらめない幼馴染。そんな人たちに囲まれた生活の中で、いろいろな後ろめたさに向き合い、行動することに理由を見出すお話。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...