真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第二章 吸血少女は愛されたい

お嫁さんになりたい

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「というわけで、あたしが渚の身の回りのお世話するね!」
「……なんか、このやり取りデジャブだね」

 確かにあたしも前に同じようなやり取りをしたことがあるような気がしたけど、言わずにはいられなかった。
 だって、主婦というのもいわば仕事の一種であることに気がついたのだ。
 だったらあたしが渚のお嫁さんになるしかないだろう。

「まあ、だいたいはわかったよ。要するに花恋ちゃんは主婦も一種の仕事だと思ってるわけね」
「うん。だから渚のそばで働かせてもらいたいなーって」
「うーん……」

 渚は困ったように眉をひそめる。
 どうやら彼女はまだ結婚する気がないらしい。
 まあ、今は高校生だから無理だとしても、将来的にはそうしたいというだけの話なのだが。
 でも、渚とずっと一緒にいたいなと思う気持ちは本物だし、それくらいいいよね?
 そう思って見つめていると、渚は観念したのか、ため息をついて言った。

「本当は私から言おうと思ってたんだけど……しょうがないか」

 その言葉の意味がわからず首を傾げると、渚は苦笑して頭を撫でてきた。
 そして頬に手を当てて微笑む。
 なんだかすごく嬉しそうな顔をしている。

 ……えっ、なにこれ。どういうこと?
 突然の展開についていけないあたしを置いてけぼりにして、渚の顔が近づいてくる。

「……っ!?」

 唇に触れた柔らかい感触に頭が真っ白になった。
 キスされたのだと理解するまで数秒かかり、ようやく事態を理解した瞬間、顔が熱くなるのを感じた。

「花恋ちゃん、大好きだよ」
「へぁ?」

 混乱のあまり変な声が出てしまった。
 渚はそんなあたしを見てクスッと笑うと、もう一度軽く口づけてくる。
 それからぎゅっと抱きしめられ、耳元で囁かれた。

「私と結婚してください」

 夢かなと思った。
 だってこんな展開ありえないでしょう。
 あの渚があたしにプロポーズしてくるなんて。
 信じられない出来事にフリーズしていると、渚は少し不安げな表情をする。

「あー、やっぱり今言うのは失敗だったかな。本当は花恋ちゃんが卒業した時に言うつもりだったんだけど」

 失敗したと言う割にはどこか満足げな様子だ。
 さっきまでのあたしの提案を断りそうな雰囲気はどこに行ったんだろう。
 なんにせよ、あたしにとっては嬉しい誤算である。
 渚からの求婚を受けて断る理由などないし、むしろ大歓迎だ。

 だけどここで喜んで返事したら、まるで幼い子どもみたいじゃないか。
 ここは大人っぽく余裕のある対応をしなくては!

「ううん、嬉しいよ。まさか渚がそんなこと言ってくれると思わなかったから」
「そう? ならよかった」

 素直な感想を言うと、渚はホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
 そんな彼女にキュンときてしまう。
 もうすでに結婚してる気分になってきちゃったよ……
 いや、なんとしても結婚せねば!

「そういえば渚、前に『結婚は焦らなくていい』って言ってたのに……なんで急に心変わりを?」
「それは……ちょっとした心境の変化っていうか……」

 渚は照れくさそうに視線を逸らすと、言い訳するように言葉を濁す。
 それがとても可愛くて、愛おしく感じた。

「ねぇ、どうして?」
「うーん……花恋ちゃんが結婚したがってたから、かな」

 どういう意味だろうと小首を傾げると、渚はふわりと笑って答えた。
 よくわからないけど、とにかく渚があたしと結婚したいと思ってくれたことは間違いないようなので、よしとする。
 まあ、たぶん、あたしの熱量や押しに負けたからだと思われるけど。
 それでも、この先もずっと一緒に居てくれるつもりなのは変わらないようだったので、それだけで充分だった。

「えへへ、同棲だけじゃなくて結婚も約束しちゃった……幸せすぎてどうにかなりそう~!」

 あたしの悶えは、ただ目の前にいる渚にだけ届いたのだった。
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