58 / 104
19.05.20
しおりを挟む
施設でグループワークをした。ディスカッションで各々の意見を出しあい、自分以外の考えを広く受け入れることが趣旨だ。テーマは苦手な人との接し方。確かに多様な意見が出て面白かった。私は苦手な人と上手く関わることが出来なくて休職したと思っているので参考になった。苦手な人の良いところを書き出すとか、苦手なところを書き出して再検討するとか。この中で意見の1つに、相手に嫌いだと宣言すると言うものがあった。広く意見を聞くと言う点では有益だった。私にはそれが出来ないと思ったし、それが出来る人はこういう施設に来ないタイプの人だと思ったからだ。その人は自身を白黒ハッキリさせないと気が済まないタイプとしていて、それ故に心に悪い関わりは断ちたいと考えていた。それはそれでよいのだけれど、その人は他の人にも自身の考えを強要している空気があった。少なくとも、私はそう感じた。苦手な人とは関わらない方がいい、なんで言えないんですか、私には考えられない、など。こう自分の意見を強く伝えることが出来る人はいいと思う。一方で、そう言えない弱い人がいることも許してほしい。勿論、それが休職の一因なのである程度は強く言えるように矯正していったほうが良いのかもしれないが、全部をあなたと一緒にしないで欲しい。特にその強い人に反論はしなかったが、もしその人が本当に発言した通りに考えているならば、その割には周りの意見を気にしすぎなように思えた。真に自分が考えていることが正しいと思えるなら、このディスカッションは結論を出すものでもなく、他の誰かが何を言おうと気にしないのではないだろうか。私は、その強い人が必死に折れないようにしているように見えて、ある姿とありたい姿の差を見た気がした。
昨日からの続き。ついにミントが東京に出てくる。これは休職の少し前だった。夏に休み始めたので、6月くらいだった。まだ梅雨だったけれど、その日は晴れていた。
会うのを散々渋っていた割には、会うことを決めたしまってからは逆に割り切り楽しみにすることとした。前日にも「会うのドキドキする」なんて、やり取りをして、実際に会うことは確かに楽しみだった。
それでも不安はあった。実際に会ってみて全然上手くいかなかったらどうしよう、みたいな不安もあったし、結婚相手に後から何か言われる不安、そもそもヤクザみたいなのが出てくる不安。いつだってネットで知り合った人とリアルで会うときには憑き物の類。
これもまたいつも通りだが、当日のギリギリまで行くかどうか悩んだ。ここで縁が終わっても、仕方の無い気もあった。そうするべきにも思えたが、結局は行った。新宿でぽつりと私を待つ裏切られたミントを想像したくなかった、などと言いつつ、全ては性欲だった。
待ち合わせ場所は紀伊國屋書店前。聞いていた服装の通りのキャリーバッグを持った女の子がいた。確かにミントだった。不安そうな顔をしていた。彼女の性格からすれば私よりもずっと不安だったはずだ。
「ミントさん?」
わかっていても、一応聞いた。彼女は頷く。顔は暗いままだった。顔写真は事前に免許証のものを送っていたから、そこまで差異はないはずだけれど、緊張だろうか。
「はじめまして」
確かにそうだった。ずっと話をしていたけれど、初めましてだ。私もそう返す。不思議な感じだった。
「ご飯は食べた?」
横に首を振る。では、食事からにしましょうか、ということで新宿駅へ向かう。駅ビルの上で食事をしようと思っていた。キャリーバッグを持ってあげようとしたが、やんわり拒否された。会話は弾まなかった。お互いに緊張していた。ミントはずっと顔色が暗く、私はそれを乗り越えられるほどのコミュニケーション能力を持っていなかった。
昼食は和食にした。特に理由はない。空いていたから。食事後、改めて街に戻る気も起きず、ミントもどこか行きたいことがあるわけではなく、それどころか疲れているので休みたいと言うので、自宅に向かうことにした。
駅ビルのエスカレーターを降りている途中で、会社の後輩とすれ違った。普段は会わないのに、こんなときだけ会ってしまうと言うのは、やはり人生は面白く出来ているなと感じる。後日、一緒にいた人が誰か尋ねられたので、親戚だと誤魔化した。誤魔化せてはいないのだろう。
そんなちょっとしたトラブルもありつつ、私はミントを家へと連れ込む。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。ついにミントが東京に出てくる。これは休職の少し前だった。夏に休み始めたので、6月くらいだった。まだ梅雨だったけれど、その日は晴れていた。
会うのを散々渋っていた割には、会うことを決めたしまってからは逆に割り切り楽しみにすることとした。前日にも「会うのドキドキする」なんて、やり取りをして、実際に会うことは確かに楽しみだった。
それでも不安はあった。実際に会ってみて全然上手くいかなかったらどうしよう、みたいな不安もあったし、結婚相手に後から何か言われる不安、そもそもヤクザみたいなのが出てくる不安。いつだってネットで知り合った人とリアルで会うときには憑き物の類。
これもまたいつも通りだが、当日のギリギリまで行くかどうか悩んだ。ここで縁が終わっても、仕方の無い気もあった。そうするべきにも思えたが、結局は行った。新宿でぽつりと私を待つ裏切られたミントを想像したくなかった、などと言いつつ、全ては性欲だった。
待ち合わせ場所は紀伊國屋書店前。聞いていた服装の通りのキャリーバッグを持った女の子がいた。確かにミントだった。不安そうな顔をしていた。彼女の性格からすれば私よりもずっと不安だったはずだ。
「ミントさん?」
わかっていても、一応聞いた。彼女は頷く。顔は暗いままだった。顔写真は事前に免許証のものを送っていたから、そこまで差異はないはずだけれど、緊張だろうか。
「はじめまして」
確かにそうだった。ずっと話をしていたけれど、初めましてだ。私もそう返す。不思議な感じだった。
「ご飯は食べた?」
横に首を振る。では、食事からにしましょうか、ということで新宿駅へ向かう。駅ビルの上で食事をしようと思っていた。キャリーバッグを持ってあげようとしたが、やんわり拒否された。会話は弾まなかった。お互いに緊張していた。ミントはずっと顔色が暗く、私はそれを乗り越えられるほどのコミュニケーション能力を持っていなかった。
昼食は和食にした。特に理由はない。空いていたから。食事後、改めて街に戻る気も起きず、ミントもどこか行きたいことがあるわけではなく、それどころか疲れているので休みたいと言うので、自宅に向かうことにした。
駅ビルのエスカレーターを降りている途中で、会社の後輩とすれ違った。普段は会わないのに、こんなときだけ会ってしまうと言うのは、やはり人生は面白く出来ているなと感じる。後日、一緒にいた人が誰か尋ねられたので、親戚だと誤魔化した。誤魔化せてはいないのだろう。
そんなちょっとしたトラブルもありつつ、私はミントを家へと連れ込む。
細かい話は明日以降に続ける。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる