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入部届と赤点の壁
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1
放課後の職員室。
その重厚な引き戸の前で、僕は石像のように固まっていた。
手には、少し手汗で湿った「入部届」。背後には、なぜか付き添いの凛がいる。
「……先輩。入室までのタイムラグが長すぎます。酸素の無駄です」
「分かってるよ。でも、心の準備が……」
「深呼吸一回で十分です。行きますよ」
凛が無慈悲にも僕の背中を押し、ガララッ! と引き戸を開け放った。
一斉に向けられる教師たちの視線。
その奥、窓際のデスクに、彼女はいた。
二年C組担任、現代文担当。そしてバレー部顧問。
佐多恭子(さた きょうこ)。
黒縁メガネの奥の瞳は常に冷徹で、生徒からは畏怖を込めて『鉄の女』と呼ばれている。
「……失礼します」
僕がデスクの前に立つと、佐多先生は赤ペンで小テストの採点をしていた手を止め、ゆっくりと顔を上げた。
「何だ、日向。進路相談にはまだ早いが」
「あ、いえ。……その、これをお願いします」
僕は震える手で、入部届を差し出した。
佐多先生はそれを受け取ると、無表情のまま紙面を眺めた。
そして、僕の隣にいる凛(一年生マネージャー)と、入部届の筆跡を交互に見て――フッと、冷ややかに鼻を鳴らした。
「……綺麗な字だな。お前が書いたのか?」
「えっ、あ、それは……凛ちゃんが……」
「まあいい。……で? 本気か?」
メガネの奥の瞳が、僕を射抜く。
「中学時代に県選抜だったことは知っている。だが、プレッシャーに耐えきれず、決勝前に逃げ出したことも聞いているぞ。……今さら戻って、続くのか?」
痛いところを突かれる。
心臓が早鐘を打つ。でも、昨日のシューズの感触と、今朝のレシーブの熱が、まだ身体に残っている。
「……続けます。今回は、自分で決めたので」
精一杯の虚勢を張る。
佐多先生はしばらく僕を見つめていたが、やがて引き出しから一枚のプリントを取り出し、デスクの上に叩きつけた。
「威勢がいいのは結構。……だが、現状が見えていないようだな」
それは、先日行われた実力テストの個人成績表だった。
赤ペンで囲まれた順位が、目に飛び込んでくる。
『学年順位:95位 / 180人中』
「……真ん中より下だ」
佐多先生が冷徹に告げる。
「本校は進学校だ。『文武両道』が絶対の校訓であり、部活動は学業に支障をきたさない範囲でのみ許可されている。……分かるか、日向?」
彼女はメガネの位置を直した。
「お前のように、ただでさえ主体性がなく、成績も下降気味の生徒が運動部に入ればどうなる? バレーに逃げれば成績は落ち、成績を気にすればプレーが鈍る。どっちつかずになり、最終的には両方から逃げ出す。……目に見えているな」
「っ……」
反論できない。
図星だった。僕はここ一年、バレーから逃げた罪悪感で、勉強にも身が入っていなかった。
「どうせ僕なんて」という思考が、全ての行動を鈍らせていたのだ。
「入部届は預かっておこう。だが、ハンコは押さん」
「そ、そんな……!」
「条件を出そう」
佐多先生は、赤ペンを指揮棒のように立てた。
「来週の月曜日。『第1回・学力到達度テスト』があるな」
「は、はい」
「そこで学年50位以内に入れ。一教科でも赤点を取ったら即アウトだ」
「ご、50位!?」
僕は思わず叫んだ。職員室中の先生が振り返る。
今の95位から、たった一週間で45人も抜かなければならない。しかも桜島南は県内有数の進学校だ。上位層の壁は、コンクリートのように分厚い。
「無理です! いきなりそんな……!」
「無理なら諦めろ」
佐多先生は冷たく切り捨てた。
「自分の生活すら管理できない人間に、コートの中で瞬時の判断などできるわけがない。……違うか?」
ぐうの音も出ない。
これは、単なる意地悪じゃない。僕の「甘え」に対する、正当な指摘だ。
諦めるしかないのか。
僕が俯きかけた、その時だった。
「――承知しました。その条件、飲みます」
横から、凛とした声が響いた。
僕ではない。
種子島凛だ。
「おい凛!?」
「先生。条件を確認します。彼が50位以内に入れば、正式に入部を認め……ついでに、部室のエアコン修理の予算申請も通してくださいね?」
凛は一歩も引かず、佐多先生を真っ直ぐに見据えていた。
佐多先生が、面白そうに目を細める。
「……ふん。一年坊主が、大きく出たな」
「自信ではありません。計算です」
「いいだろう。ただし、日向。もし達成できなければ、入部は却下。種子島、お前もマネージャーとしての管理責任を問い、活動時間を制限する」
それは、凛まで巻き添えにするという通告だった。
だが、凛は不敵に笑った。
「構いません。……私の計算(プラン)に『不可能』はありませんから」
凛は僕の襟首を掴み、強引に職員室から引きずり出した。
「ちょ、凛ちゃん!?」
「行きますよ先輩。議論している暇があったら単語の一つでも覚えてください」
パタン、と扉が閉まる。
佐多先生は、嵐のように去っていった二人を見送り、微かに口角を上げた。
「……さて。どう足掻くか、見せてもらおうか」
2
廊下に出た瞬間、僕は膝から崩れ落ちた。
「……無理だよ凛ちゃん。50位なんて取ったことない」
「取らせます。先輩の脳のスペックは悪くありません。ただ、使い方が非効率なだけです」
凛はスマホを取り出し、猛スピードで何かを打ち込み始めた。
「今から一週間、部活の時間はすべて『勉強』に充てます。私が作成する『対・佐多先生用カリキュラム』を、死ぬ気でこなしてください」
「えぇ……」
「――ちょっと待ったぁッ!!」
その時。
廊下の向こうから、またしてもピンク色の弾丸が飛んできた。
聞き耳を立てていたのか、楓だ。さらにその後ろから、雫も優雅に歩いてくる。
「凛ちゃん! 悠真に無理させないでよ! 50位なんて、今の悠真には……」
「だから、やらせるんです。……霧島先輩、貴女の成績は?」
「え? う、ウチ? ウチはほら、文系なら学年20位くらいだし……?」
楓が意外と優秀なことに驚く。そういえば彼女、教えるのは上手いんだった。
「なるほど。使えますね」
「人を使えるとか言うな! ……でも、悠真が困ってるなら、ウチが勉強見るよ! 悠真の家で、つきっきりで教えてあげる!」
「いえ、私の家(データルーム)で管理します」
「はあ!? ダメに決まってるでしょ! 密室じゃん!」
ギャーギャーと揉める二人。
すると、雫が僕の隣に音もなく立ち、ポツリと言った。
「……美術室、静かよ」
「え?」
「私の家、画集とか洋書ばっかりだけど、世界史と古典なら満点取らせてあげられるわ。……それに、先生も来ないし」
雫が耳元で囁く。
「勉強に疲れたら、私のモデルになればいいわ。……癒やしてあげる」
誘惑だ。甘い誘惑だ。
凛が手を叩いた。
「決まりですね。今日から一週間、『日向悠真・50位ランクアップ作戦』を決行します。場所は日替わり。講師は得意科目の担当制」
「なんであんたが仕切ってんのよ!」
「効率です。……先輩、落ちたらバレー部廃部ですからね? 死ぬ気でペンを握ってください」
僕は天を仰いだ。
ボールを拾う前に、数式と英単語を拾わなければならない。
こうして、僕の逃げ場のない「地獄の勉強合宿」が幕を開けた。
3
桜島南高校の放課後は、独特の緊張感に包まれる。
特にテスト一週間前は、部活動が原則停止となり、校内はピリピリとした「受験戦争」の空気に支配される。
そんな中、僕は3人の家庭教師(兼・管理者)によって、日替わりで連れ回されていた。
【Day 1:数理の迷宮と、管理者の鞭】
場所:アミュプラザ鹿児島 B1F フードコート
「……遅いです。思考が停止しています」
種子島凛が、冷徹に告げる。
テーブルの上には、積み上げられた数学Ⅱ・Bと物理の参考書。そして、凛が用意した謎の色のドリンク(自作の脳活性化スムージーらしい)。
「もう無理だよ凛ちゃん……。三角関数とか、バレーに関係ないだろ」
「大ありです。ボールの軌道、回転数、落下地点の予測。すべて物理法則に従います」
凛はタブレットを指先で弾き、複雑な放物線のグラフを僕の目の前に突きつける。
「先輩の脳(CPU)のスペックは低くありません。ただ、OSが古いだけです。……いいですか? 佐多先生の出題傾向を過去5年分解析しました。この微分の応用問題、このパターンが出る確率は94.8%です」
「よ、予言者かよ……」
「統計学です。……さあ、この公式を脳に焼き付けてください。覚えるまで帰宅許可は出しません」
凛の指導は、教育というより「インストール」だった。
理屈よりも「パターン」を叩き込む。
最初は戸惑ったが、数式を眺めているうちに、不思議な感覚に陥った。
(……あれ? このグラフの動き……ドライブサーブの軌道に似てる?)
数字が、動きとして見える。
ボールの落下点を予測するように、数式の「着地点(答え)」が見える気がした。
「……そうです。その感覚です」
僕のペンが走るのを見て、凛が小さく頷いた。
「数字の『流れ』を読んでください。先輩の目なら、できるはずです」
***
【Day 2:甘い檻と、文系の誘惑】
場所:悠真の自宅(夜)
翌日の夜。僕は自宅の勉強机に向かっていた。
今日は文系科目(英語・国語)の追い込みだ。
講師役は、霧島楓。
「はい、悠真! ここテストに出るよー! マーカー引いて!」
「……うん」
「えらいえらい! 頑張ってるねぇ。……ねえ、ちょっと休憩しない?」
開始してまだ20分だ。
楓はベッドに腰掛け、なぜか持参したタッパーを開け始めた。
「見て! フルーツポンチ作ったの! 糖分補給しよ?」
「ありがたいけど、さっき夕飯食べたばかりだよ……」
「別腹だよ! ほら、あーん!」
楓がスプーンを突き出してくる。拒否権はない。僕は口を開ける。甘いシロップの味が広がる。
楓は満足そうに微笑むと、僕の背中に後ろから抱きついた。
「……ねえ、悠真」
耳元で、甘い声が囁く。
「もう勉強なんていいじゃん。50位なんて無理だよ。そんなに頑張らなくていいよ」
「え?」
「テストが悪くても、私が慰めてあげる。また昔みたいに、放課後ずっと一緒に遊ぼうよ。……その方が楽しいでしょ?」
甘い毒だ。
楓の体温と、甘い匂いが思考を溶かしていく。
そうだ、頑張らなくてもいい。ここでペンを置いて、彼女の胸に飛び込んでしまえば、どんなに楽だろう。進学校のプレッシャーも、バレーの恐怖も、全部忘れられる。
「……楓」
僕はシャーペンを強く握りしめた。芯が折れる音がした。
「ごめん。……僕、バカだけど、今回だけは逃げたくないんだ」
楓の腕が、一瞬強張る。
そして、ゆっくりと離れていった。
「……そっか。悠真は、行っちゃうんだね」
寂しそうな声。でも、彼女はすぐにいつもの明るい声を作った。
「分かった! じゃあ、私が『最強のカンペ(まとめノート)』作ってあげる! これさえ覚えれば完璧だから!」
彼女なりの、精一杯の応援(過保護)だった。僕はそのノートを受け取り、再び机に向かった。
***
【Day 3:静寂の歴史と、覚醒】
場所:神宮司 雫のマンション(アトリエ)
最終日は、社会科(世界史)。
場所は、初めて入る雫の自宅マンションだった。生活感が皆無で、画材と本だけが積み上げられた、まるで美術館のような部屋。
「……年号を暗記しようとするから、頭に入らないのよ」
雫は教科書を閉じ、紅茶を優雅に啜りながら言った。
「歴史は『人間の感情』の記録よ。……日向くん、君の得意分野でしょう?」
「え? 僕の?」
「そう。『過剰共感』。……君は人の顔色を読むのが得意なんでしょう? なら、歴史上の人物の顔色も読めるはずよ」
雫は画集を開き、一枚の肖像画を指差した。フランス革命の指導者、ロベスピエール。
「見て。この男の目、何を感じる?」
「えっと……偉そうだけど、なんか……怯えてる?」
「正解。彼は恐怖政治を行ったけれど、誰よりも自分が断頭台を恐れていた。だから、先に他人を殺したの。……君と同じ、臆病者ね」
その言葉を聞いた瞬間、無機質な文字列だった歴史の教科書が、急に色を帯びて見え始めた。
恐怖、野心、愛憎。
文字の裏にある「感情」が、僕の脳内に流れ込んでくる。
(……分かる。こいつは、焦ってる。こっちは、裏切ろうとしてる)
僕の特殊能力――人の思考を読む力が、勉強とリンクした瞬間だった。
バレーボールでスパイカーの意図を読むように、歴史の流れが読める。出題者の意図さえも、透けて見えるようだ。
「……すごい。全部、繋がって見える」
「ふふ。……君のその『感じ取ってしまう目』、勉強にも使えるのね。……皮肉だわ」
雫は僕の横顔をスケッチしながら、静かに微笑んだ。
彼女のナビゲートのおかげで、僕は「勉強」という行為の本質に触れた気がした。
4
そして、テスト当日。
目の下にクマを作った僕は、教室の机に向かっていた。
チャイムが鳴り、佐多先生が問題用紙を配り始める。
「始め!」
紙をめくる音。
僕は深呼吸をして、問題文に目を走らせる。
(……見える!)
数学の問1。凛が「94.8%出る」と言っていたグラフの変化形だ。数字の動きが見える。
英語の長文。楓が「ここ大事!」とマーカーを引いてくれた構文が、そのまま出ている。
世界史の論述。雫が語ってくれた「恐怖と感情」のストーリーが、鮮明に脳裏に蘇る。
ペンが走る。止まらない。
三人のヒロインから叩き込まれた知識と、僕の「読む力」が化学反応を起こしている。
迷わない。
ネクタイの色は選べないけれど、解答用紙の「正解」だけは、今の僕にははっきりと見えていた。
***
一週間後。放課後。
掲示板の前。
「……あった」
自分の名前を見つけた瞬間、僕は膝から力が抜けた。
『2年C組 日向 悠真 ―― 学年48位』
ギリギリだ。本当に首の皮一枚。
でも、条件はクリアした。
「……チッ。計算より2ランク下ですが、まあ誤差の範囲ですね」
背後で凛が安堵したように息を吐く。
「やったぁ! 悠真すごい! すごいよぉっ!」
楓が飛びついてきて、首に抱きつく。苦しい。
「……ふふ。私の教えた世界史、満点じゃない。ご褒美が必要ね」
雫が遠くで静かに微笑んでいる。
僕は三人に囲まれながら、大きく息を吐いた。
これで文句はないはずだ。
「……行くぞ、日向」
人混みをかき分けて、一ノ瀬隼人がやってきた。
彼は僕の背中をバンと叩き、ニカっと笑った。
「佐多先生への報告は後だ。……まずは体育館だろ。ユニフォーム、余ってるやつ用意してあるぜ」
僕は頷く。
今度は「仮入部」でも「見学」でもない。
正真正銘、バレーボール部の部員として。
僕は自分の足で、体育館への一歩を踏み出した。
放課後の職員室。
その重厚な引き戸の前で、僕は石像のように固まっていた。
手には、少し手汗で湿った「入部届」。背後には、なぜか付き添いの凛がいる。
「……先輩。入室までのタイムラグが長すぎます。酸素の無駄です」
「分かってるよ。でも、心の準備が……」
「深呼吸一回で十分です。行きますよ」
凛が無慈悲にも僕の背中を押し、ガララッ! と引き戸を開け放った。
一斉に向けられる教師たちの視線。
その奥、窓際のデスクに、彼女はいた。
二年C組担任、現代文担当。そしてバレー部顧問。
佐多恭子(さた きょうこ)。
黒縁メガネの奥の瞳は常に冷徹で、生徒からは畏怖を込めて『鉄の女』と呼ばれている。
「……失礼します」
僕がデスクの前に立つと、佐多先生は赤ペンで小テストの採点をしていた手を止め、ゆっくりと顔を上げた。
「何だ、日向。進路相談にはまだ早いが」
「あ、いえ。……その、これをお願いします」
僕は震える手で、入部届を差し出した。
佐多先生はそれを受け取ると、無表情のまま紙面を眺めた。
そして、僕の隣にいる凛(一年生マネージャー)と、入部届の筆跡を交互に見て――フッと、冷ややかに鼻を鳴らした。
「……綺麗な字だな。お前が書いたのか?」
「えっ、あ、それは……凛ちゃんが……」
「まあいい。……で? 本気か?」
メガネの奥の瞳が、僕を射抜く。
「中学時代に県選抜だったことは知っている。だが、プレッシャーに耐えきれず、決勝前に逃げ出したことも聞いているぞ。……今さら戻って、続くのか?」
痛いところを突かれる。
心臓が早鐘を打つ。でも、昨日のシューズの感触と、今朝のレシーブの熱が、まだ身体に残っている。
「……続けます。今回は、自分で決めたので」
精一杯の虚勢を張る。
佐多先生はしばらく僕を見つめていたが、やがて引き出しから一枚のプリントを取り出し、デスクの上に叩きつけた。
「威勢がいいのは結構。……だが、現状が見えていないようだな」
それは、先日行われた実力テストの個人成績表だった。
赤ペンで囲まれた順位が、目に飛び込んでくる。
『学年順位:95位 / 180人中』
「……真ん中より下だ」
佐多先生が冷徹に告げる。
「本校は進学校だ。『文武両道』が絶対の校訓であり、部活動は学業に支障をきたさない範囲でのみ許可されている。……分かるか、日向?」
彼女はメガネの位置を直した。
「お前のように、ただでさえ主体性がなく、成績も下降気味の生徒が運動部に入ればどうなる? バレーに逃げれば成績は落ち、成績を気にすればプレーが鈍る。どっちつかずになり、最終的には両方から逃げ出す。……目に見えているな」
「っ……」
反論できない。
図星だった。僕はここ一年、バレーから逃げた罪悪感で、勉強にも身が入っていなかった。
「どうせ僕なんて」という思考が、全ての行動を鈍らせていたのだ。
「入部届は預かっておこう。だが、ハンコは押さん」
「そ、そんな……!」
「条件を出そう」
佐多先生は、赤ペンを指揮棒のように立てた。
「来週の月曜日。『第1回・学力到達度テスト』があるな」
「は、はい」
「そこで学年50位以内に入れ。一教科でも赤点を取ったら即アウトだ」
「ご、50位!?」
僕は思わず叫んだ。職員室中の先生が振り返る。
今の95位から、たった一週間で45人も抜かなければならない。しかも桜島南は県内有数の進学校だ。上位層の壁は、コンクリートのように分厚い。
「無理です! いきなりそんな……!」
「無理なら諦めろ」
佐多先生は冷たく切り捨てた。
「自分の生活すら管理できない人間に、コートの中で瞬時の判断などできるわけがない。……違うか?」
ぐうの音も出ない。
これは、単なる意地悪じゃない。僕の「甘え」に対する、正当な指摘だ。
諦めるしかないのか。
僕が俯きかけた、その時だった。
「――承知しました。その条件、飲みます」
横から、凛とした声が響いた。
僕ではない。
種子島凛だ。
「おい凛!?」
「先生。条件を確認します。彼が50位以内に入れば、正式に入部を認め……ついでに、部室のエアコン修理の予算申請も通してくださいね?」
凛は一歩も引かず、佐多先生を真っ直ぐに見据えていた。
佐多先生が、面白そうに目を細める。
「……ふん。一年坊主が、大きく出たな」
「自信ではありません。計算です」
「いいだろう。ただし、日向。もし達成できなければ、入部は却下。種子島、お前もマネージャーとしての管理責任を問い、活動時間を制限する」
それは、凛まで巻き添えにするという通告だった。
だが、凛は不敵に笑った。
「構いません。……私の計算(プラン)に『不可能』はありませんから」
凛は僕の襟首を掴み、強引に職員室から引きずり出した。
「ちょ、凛ちゃん!?」
「行きますよ先輩。議論している暇があったら単語の一つでも覚えてください」
パタン、と扉が閉まる。
佐多先生は、嵐のように去っていった二人を見送り、微かに口角を上げた。
「……さて。どう足掻くか、見せてもらおうか」
2
廊下に出た瞬間、僕は膝から崩れ落ちた。
「……無理だよ凛ちゃん。50位なんて取ったことない」
「取らせます。先輩の脳のスペックは悪くありません。ただ、使い方が非効率なだけです」
凛はスマホを取り出し、猛スピードで何かを打ち込み始めた。
「今から一週間、部活の時間はすべて『勉強』に充てます。私が作成する『対・佐多先生用カリキュラム』を、死ぬ気でこなしてください」
「えぇ……」
「――ちょっと待ったぁッ!!」
その時。
廊下の向こうから、またしてもピンク色の弾丸が飛んできた。
聞き耳を立てていたのか、楓だ。さらにその後ろから、雫も優雅に歩いてくる。
「凛ちゃん! 悠真に無理させないでよ! 50位なんて、今の悠真には……」
「だから、やらせるんです。……霧島先輩、貴女の成績は?」
「え? う、ウチ? ウチはほら、文系なら学年20位くらいだし……?」
楓が意外と優秀なことに驚く。そういえば彼女、教えるのは上手いんだった。
「なるほど。使えますね」
「人を使えるとか言うな! ……でも、悠真が困ってるなら、ウチが勉強見るよ! 悠真の家で、つきっきりで教えてあげる!」
「いえ、私の家(データルーム)で管理します」
「はあ!? ダメに決まってるでしょ! 密室じゃん!」
ギャーギャーと揉める二人。
すると、雫が僕の隣に音もなく立ち、ポツリと言った。
「……美術室、静かよ」
「え?」
「私の家、画集とか洋書ばっかりだけど、世界史と古典なら満点取らせてあげられるわ。……それに、先生も来ないし」
雫が耳元で囁く。
「勉強に疲れたら、私のモデルになればいいわ。……癒やしてあげる」
誘惑だ。甘い誘惑だ。
凛が手を叩いた。
「決まりですね。今日から一週間、『日向悠真・50位ランクアップ作戦』を決行します。場所は日替わり。講師は得意科目の担当制」
「なんであんたが仕切ってんのよ!」
「効率です。……先輩、落ちたらバレー部廃部ですからね? 死ぬ気でペンを握ってください」
僕は天を仰いだ。
ボールを拾う前に、数式と英単語を拾わなければならない。
こうして、僕の逃げ場のない「地獄の勉強合宿」が幕を開けた。
3
桜島南高校の放課後は、独特の緊張感に包まれる。
特にテスト一週間前は、部活動が原則停止となり、校内はピリピリとした「受験戦争」の空気に支配される。
そんな中、僕は3人の家庭教師(兼・管理者)によって、日替わりで連れ回されていた。
【Day 1:数理の迷宮と、管理者の鞭】
場所:アミュプラザ鹿児島 B1F フードコート
「……遅いです。思考が停止しています」
種子島凛が、冷徹に告げる。
テーブルの上には、積み上げられた数学Ⅱ・Bと物理の参考書。そして、凛が用意した謎の色のドリンク(自作の脳活性化スムージーらしい)。
「もう無理だよ凛ちゃん……。三角関数とか、バレーに関係ないだろ」
「大ありです。ボールの軌道、回転数、落下地点の予測。すべて物理法則に従います」
凛はタブレットを指先で弾き、複雑な放物線のグラフを僕の目の前に突きつける。
「先輩の脳(CPU)のスペックは低くありません。ただ、OSが古いだけです。……いいですか? 佐多先生の出題傾向を過去5年分解析しました。この微分の応用問題、このパターンが出る確率は94.8%です」
「よ、予言者かよ……」
「統計学です。……さあ、この公式を脳に焼き付けてください。覚えるまで帰宅許可は出しません」
凛の指導は、教育というより「インストール」だった。
理屈よりも「パターン」を叩き込む。
最初は戸惑ったが、数式を眺めているうちに、不思議な感覚に陥った。
(……あれ? このグラフの動き……ドライブサーブの軌道に似てる?)
数字が、動きとして見える。
ボールの落下点を予測するように、数式の「着地点(答え)」が見える気がした。
「……そうです。その感覚です」
僕のペンが走るのを見て、凛が小さく頷いた。
「数字の『流れ』を読んでください。先輩の目なら、できるはずです」
***
【Day 2:甘い檻と、文系の誘惑】
場所:悠真の自宅(夜)
翌日の夜。僕は自宅の勉強机に向かっていた。
今日は文系科目(英語・国語)の追い込みだ。
講師役は、霧島楓。
「はい、悠真! ここテストに出るよー! マーカー引いて!」
「……うん」
「えらいえらい! 頑張ってるねぇ。……ねえ、ちょっと休憩しない?」
開始してまだ20分だ。
楓はベッドに腰掛け、なぜか持参したタッパーを開け始めた。
「見て! フルーツポンチ作ったの! 糖分補給しよ?」
「ありがたいけど、さっき夕飯食べたばかりだよ……」
「別腹だよ! ほら、あーん!」
楓がスプーンを突き出してくる。拒否権はない。僕は口を開ける。甘いシロップの味が広がる。
楓は満足そうに微笑むと、僕の背中に後ろから抱きついた。
「……ねえ、悠真」
耳元で、甘い声が囁く。
「もう勉強なんていいじゃん。50位なんて無理だよ。そんなに頑張らなくていいよ」
「え?」
「テストが悪くても、私が慰めてあげる。また昔みたいに、放課後ずっと一緒に遊ぼうよ。……その方が楽しいでしょ?」
甘い毒だ。
楓の体温と、甘い匂いが思考を溶かしていく。
そうだ、頑張らなくてもいい。ここでペンを置いて、彼女の胸に飛び込んでしまえば、どんなに楽だろう。進学校のプレッシャーも、バレーの恐怖も、全部忘れられる。
「……楓」
僕はシャーペンを強く握りしめた。芯が折れる音がした。
「ごめん。……僕、バカだけど、今回だけは逃げたくないんだ」
楓の腕が、一瞬強張る。
そして、ゆっくりと離れていった。
「……そっか。悠真は、行っちゃうんだね」
寂しそうな声。でも、彼女はすぐにいつもの明るい声を作った。
「分かった! じゃあ、私が『最強のカンペ(まとめノート)』作ってあげる! これさえ覚えれば完璧だから!」
彼女なりの、精一杯の応援(過保護)だった。僕はそのノートを受け取り、再び机に向かった。
***
【Day 3:静寂の歴史と、覚醒】
場所:神宮司 雫のマンション(アトリエ)
最終日は、社会科(世界史)。
場所は、初めて入る雫の自宅マンションだった。生活感が皆無で、画材と本だけが積み上げられた、まるで美術館のような部屋。
「……年号を暗記しようとするから、頭に入らないのよ」
雫は教科書を閉じ、紅茶を優雅に啜りながら言った。
「歴史は『人間の感情』の記録よ。……日向くん、君の得意分野でしょう?」
「え? 僕の?」
「そう。『過剰共感』。……君は人の顔色を読むのが得意なんでしょう? なら、歴史上の人物の顔色も読めるはずよ」
雫は画集を開き、一枚の肖像画を指差した。フランス革命の指導者、ロベスピエール。
「見て。この男の目、何を感じる?」
「えっと……偉そうだけど、なんか……怯えてる?」
「正解。彼は恐怖政治を行ったけれど、誰よりも自分が断頭台を恐れていた。だから、先に他人を殺したの。……君と同じ、臆病者ね」
その言葉を聞いた瞬間、無機質な文字列だった歴史の教科書が、急に色を帯びて見え始めた。
恐怖、野心、愛憎。
文字の裏にある「感情」が、僕の脳内に流れ込んでくる。
(……分かる。こいつは、焦ってる。こっちは、裏切ろうとしてる)
僕の特殊能力――人の思考を読む力が、勉強とリンクした瞬間だった。
バレーボールでスパイカーの意図を読むように、歴史の流れが読める。出題者の意図さえも、透けて見えるようだ。
「……すごい。全部、繋がって見える」
「ふふ。……君のその『感じ取ってしまう目』、勉強にも使えるのね。……皮肉だわ」
雫は僕の横顔をスケッチしながら、静かに微笑んだ。
彼女のナビゲートのおかげで、僕は「勉強」という行為の本質に触れた気がした。
4
そして、テスト当日。
目の下にクマを作った僕は、教室の机に向かっていた。
チャイムが鳴り、佐多先生が問題用紙を配り始める。
「始め!」
紙をめくる音。
僕は深呼吸をして、問題文に目を走らせる。
(……見える!)
数学の問1。凛が「94.8%出る」と言っていたグラフの変化形だ。数字の動きが見える。
英語の長文。楓が「ここ大事!」とマーカーを引いてくれた構文が、そのまま出ている。
世界史の論述。雫が語ってくれた「恐怖と感情」のストーリーが、鮮明に脳裏に蘇る。
ペンが走る。止まらない。
三人のヒロインから叩き込まれた知識と、僕の「読む力」が化学反応を起こしている。
迷わない。
ネクタイの色は選べないけれど、解答用紙の「正解」だけは、今の僕にははっきりと見えていた。
***
一週間後。放課後。
掲示板の前。
「……あった」
自分の名前を見つけた瞬間、僕は膝から力が抜けた。
『2年C組 日向 悠真 ―― 学年48位』
ギリギリだ。本当に首の皮一枚。
でも、条件はクリアした。
「……チッ。計算より2ランク下ですが、まあ誤差の範囲ですね」
背後で凛が安堵したように息を吐く。
「やったぁ! 悠真すごい! すごいよぉっ!」
楓が飛びついてきて、首に抱きつく。苦しい。
「……ふふ。私の教えた世界史、満点じゃない。ご褒美が必要ね」
雫が遠くで静かに微笑んでいる。
僕は三人に囲まれながら、大きく息を吐いた。
これで文句はないはずだ。
「……行くぞ、日向」
人混みをかき分けて、一ノ瀬隼人がやってきた。
彼は僕の背中をバンと叩き、ニカっと笑った。
「佐多先生への報告は後だ。……まずは体育館だろ。ユニフォーム、余ってるやつ用意してあるぜ」
僕は頷く。
今度は「仮入部」でも「見学」でもない。
正真正銘、バレーボール部の部員として。
僕は自分の足で、体育館への一歩を踏み出した。
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