World of Fantasia

神代 コウ

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新たな力

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大きな爆発音と共にシンとの意思疎通が取れなくなる。 しかし、パーティによる仲間のステータス欄では、まだシンは死んではいない。

霧散する煙の中、どういう状況かは分からないがシンは動かない。或いは負傷をして動けないでいるのか。

「シーフの男の方はスケルトンだけで十分だろう。後続のゾンビ共は全てガンスリンガーの方へ向かえ!」

メアはどうやらシンに対する編隊を決め、残りの人員を全てミアに差し向けることにしたようだ。これによりミアの負担が増える上に、攻められる方向が更に広がることになる。

今まで後方に下がりながら、弾幕を形成していたが、横からも攻められるとなると後退が加速し、追い詰められるまでの時間が更に短縮されてしまう。

「こっちに数を集めてきたか・・・ッ!」

堪らず後方へ飛びのく。
その間もミアは敵に銃弾を浴びせ続けた。

戦況に応じて武器を持ち替えているようで、ある程度距離のある中距離だと、反動があり弾は散らばるが威力に長けているアサルトライフルを使い、討ち漏らし接近してくるものにはショットガンやハンドガンに持ち替えている。

なので、一見大きく後退させられているように見えるがその実、着実に数を減らしている。

更に後方の木の上に飛び乗り、リロードをする。その瞬間、頬を何かが擦り血が垂れる。辺りを見ると、後続の中に弓を放っているモンスターがいる。

「遠距離もあるのかよッ・・・」

ゾンビは殴りによる近距離戦がメインだが、スケルトンは武器が扱える。これが後方で陣を張っているとなると、高い位置へ避難するのも安全ではなくなった。

そしてミアの目にをもう一つ、戦況を知る上で重要な情報が飛び込んできた。

上から見て初めて気がついた。
モンスターが蔓延っている戦場より少し離れたところで、新たなモンスターが出現している。つまり、倒しても倒してもモンスターは補充されていたのだった。

ミアは確認できるだけの弓兵を撃ち倒すと木から降り、再び武器を持ち替えて応戦する。

「やはり術者を始末する他ないか・・・」

だが、近づこうにもミアには手段がなかった。遠距離の理を生かそうにも高所は狙われている。このままでは・・・。



シンは生きていた。
何とか爆発から逃れていたのだ。スケルトンが火花を起こす前に、後ろへ飛ぶと、仰向けに倒れるようにして、自らの影の中へと飛び込んでいた。

これはパルディアの街でクエストをこなしている時に習得していたスキル。影の中を移動するというもので、自らの影に飛び込んだシンは影の中を進み、後方ドーム状の壁の外へと逃れていた。

だがスキルのレベルが低く、移動距離が短かったため十分な距離を確保出来ず、直撃は免れたものの爆風に巻き込まれ負傷してしまっていた。

「ぐっ・・・! 何とか・・・助かったが」

倒れこむシン。
そして無情にも、煙の中をモンスター達は突き抜け、シンに向かって来ている。

「おいおい・・・マジかよ」

いち早くシンの元に辿り着いたスケルトンが、手に持った剣を振り上げながら近く。そして狙いを定めると、思いっきり振り下ろした。

シンはそれを両の手に、逆手で持った二つの短剣で受け止める。力を振り絞りそれを弾き返すと、片方の短剣を持ち変えスケルトンの頭部へと投げる。

見事額に刺さる短剣。
急ぎ起き上がろうとするも、まだ爆発の余韻が残っており立ち上げることができない。

今度は二体のスケルトンが剣を振りかざす。
四つん這いのままシンは、スキルを使い自分の影に入り、間一髪で攻撃を避ける。

しかし移動できたのは僅か一、二メートルほどでしかない。這い出るように影から現れるシン。だが同じ手はもう使えない。

ちらっとミアの方を見る。
こちらに向かって来ていたモンスター達が向こうに合流しようとしている。

「これじゃ足手まといじゃないか・・・! 何とか・・・何とかしないとッ!」

その時、追い詰められたシンを助けるかのように影が独りでに動き出す。影は地を這い、シンに近いモンスターの影から順々に入っていく。宛ら影と影を繋ぐ鎖のように。

すると、シンに群がろうとしていたモンスター達の動きが止まった。影同士が繋がり、身動きが取れずにいるようだった。

「これは・・・!」

どういう効果なのか分からず、驚くシン。
だが立ち止まっている時間はない。シンは起き上がると、動けなくなっているモンスター達をそのままに、大きく迂回してメアに近く。

爆発の土煙もまだ晴れていない。メアはこちらへの攻撃の手を緩め油断している。この機を逃すことはできない。気づかれないように態勢を低くし、石碑や木々に身を隠しながらメアの背後へと向かう。



ミアをジリジリと追い詰めるメア。

「上位クラスの相手なんて初めてだ・・・。このまま終わらせるには勿体ない。今後のために、一つ試しておこう。俺の相棒でな・・・」

メアはロッドを出現させると、それを掴み両手を前に突き出す。メアの前方の地面に光の線が現れ、地を走るように線が何かを描いて行く。

みるみる内に線は魔法陣を描き、完成させると強い光を放つ。そして魔法陣から“ソレ”はゆっくりと姿を現した。

「さぁ、あいつはお前を楽しませてくれるのかな? なぁ、“ウルカノ”!」

聞き覚えのある名前が、メアの口から発せられた。だがその見た目は、シンとミアが地上であったウルカノの姿とは違い、悍ましい姿と目つきをしていた。

「アンデッドデーモン! ・・・だが、あれがウルカノだと!?」

ミアには到底信じられなかった。だがアレがウルカノ本人だろうと違うモノであろうと戦況は最悪になったことに変わりはない。

唯でさえ、雑魚モンスターの人海戦術に手を焼いているのにその上、上級モンスターの相手など出来る訳もない。

メアはここで、ある異変に気がついた。
シンに差し向けていたモンスター達が、一堂に会し動いていないのだ。単純に考えれば目標を達成し、次の指示を待っているだけにも見て取れる。

だが上位クラスの相方が、そうも簡単にやられるものだろうか。メアの脳裏に微かな疑問を残した。

召喚は間もなく完了する。
足元に落ちている小石に気を配らなくとも、今はこの召喚を確実に成すことを、メアは第一とした。

しかし、これが付け入る隙を与えてしまうことになる。

メアの言う“ウルカノ”が完全に姿を現わすその前に、シンとミア二人にとっての好機が訪れる。

メアの背後から風を切るように、鋭く飛んできたそれは、彼の喉を貫いた。

「・・・・・ッ!?」

突然の出来事に、メアの頭の中は真っ白になる。身体は背中を押されたように前に倒れ、喉に熱を感じ、生暖かい何かが首を伝って行くのがわかる。それと同時にメアが召喚したアンデッドの大群が、半数以上消滅した。

グッと痛みに耐え、我に帰るメア。一歩前に足を運び、踏みとどまる。刺さった物をこれ以上動かないように掴むが、痛みで握ることができない。その手を見てみると、そこには真っ赤に染まる掌に、刃物で切ったような傷が付いていた。

彼の喉に刺さっていたのは短刀だった。

メアは後ろを振り返る。そこにはメアまで残り二・三メートルに近づいているシンの姿があった。

咄嗟に後方へと飛び退くメア。
短剣を手にメアを追うシン。

この一撃は致命打になる。
だがそのチャンスは、メアとシンの間に入ってきた大きな手によって遮られてしまう。

メアの召喚は完了していた。
現れたアンデッドデーモンは、直ぐに二人の間に手を入れ、そのまま拳を握りしめると、シンにその岩のような拳を振り抜く。

シンは構えた短剣の矛先を、アンデッドデーモンの拳に変えると、短剣を逆手に握り振りかざし、向かってくる拳の動きに合わせて突き刺す。

それと同時に地を蹴り、宙を舞いながら拳を避ける。

飛び上がったシンは、メアに狙いを定めると、新たな短刀を手にし、投擲スキルで力を強化する。

力を溜め、一気に短刀を放つ。
遮るものはない。アンデッドデーモンはまだ振り抜いた拳を戻せない。

短刀が銃弾のようにメアに向かって行き、あと僅かで命中すると思われた時、青い炎纏った骨の手によって弾かれてしまう。

「な・・・ッ!?」

予想だにしないことにシンは戸惑った。
そして休む間も無く、今度はアンデッドデーモンがシンに向かって拳を振り抜く。

空中にいるシンにはそれを避ける術がなく、片膝と両腕を交差させ防御の態勢をとるが、シンの身体はボールのように吹き飛ばされる。

地面に叩きつけられる瞬間、自らの影に入るシン。叩きつけられる力は、地面の影から飛び出す力に変わり、打ち上げられる。

その途中、両脇の木にロープをつけた短剣を投げ放ち、打ち上げられる力を弱めると、そのまま無事着地することに成功した。

「あの炎は・・・」

シンはウルカノに聞いた話を思い出した。
村が襲撃され、黒いローブの男との戦いで、最後にメアが見せた新たな力。

青いオーラを纏った骸骨。

「普通の召喚魔法ではない・・・、召喚の儀を必要としない召喚・・・?」

メアを守った、青い炎を纏う骨はその炎を滾らせながら姿を現した。

それは上半身だけで、悪魔の骸骨の姿をしており、メアの背後で主人を守っている。

と、その時大きな銃声が鳴った。

銃弾はメアに向けて放たれたようだったが、それはアンデッドデーモンによって防がれていた。

「ウルカノ・・・お前はあの女をやれ。俺はあいつだ・・・、借りは返さないとな」

メアは喉に刺さった短刀に触れると、バチバチと何かのエフェクトを発生させていた。その後、首から突き抜けた部分を破壊すると、何事もなかったかのように喋り出した。

「なんだ・・・あれは?」

ただの回復とは違う、異様な光景。
それはまだ、メアと戦う上でシン達が知らない何かがあるという証明でもあった。
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