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ウィリアムの作業場を抜け、ツバキの工房へと来た一行は早速く船へと案内され、エンジンを掛けると近場の海へと出て行く。少年の工房から船が出て行くという光景はそこまで珍しいものではなかったのか、特に怪しまれることもなく移動することができた。
「ここらでいいだろう・・・。この辺りは俺が試し乗りに良く使ってる場所だから、じじぃに怪しまれることもねぇ筈さ。さぁ!とっとと操縦を覚えて貰うぜ!」
海上で一度エンジンを切ると、そこで実際に操作をしながらエンジンの掛け方や操縦、停止の仕方までざっくりと三人にやらせていく。彼自身がそうだったのかは分からないが、口で説明されるよりも、実際に触らせるといったやり方がウィリアム達の教え方のようで、ひたすら同じような操作を繰り返しやらされていた。
「船本体の操縦はそれほど重要じゃねぇ。俺達にとって重要なのはボードの方だからな。どの道船の操縦が上手くなったところで、他の奴らには遠く及ばねぇからな・・・。そんな単純なら誰でも操縦ぐらい出来てるさ」
スタートの時点で他のチームから遅れを取ってしまっているシン達にとって、船の操縦など最悪の事態になった時用の応急処置だという少年は、他のチームにないモノでレースに挑んで行こうと言い出した。
それこそ彼の船に積んである特殊な細工を施してあるボードであり、マクシムとの会話でも言っていた最新技術なのだろう。シンとツクヨは既にその技術を体験しており、ミアも体験こそしてはいないものの見てはいた。
乗る者のスキルに呼応する特殊なボード。確かにこれがあれば様々な応用が効きそうなものだが、勿論このボードの操縦にも慣れておかなければならない。故に少年は船の操縦など早々に切り上げ、シン達にはボードの練習に取り掛かって欲しかったのだ。
「俺達の本命はコイツさ!他の奴らが持たねぇ技術で、劣っている部分を補う。しかもただ補うだけじゃねぇ。コイツなら十二分に勝負出来る性能がある!・・・まぁ、一台はハオランの野郎に渡しちまったから数は限られるが・・・」
ボードに施された特殊な加工には、希少価値の高い非情にレアな素材が使われており、彼が入手できたものでは三台作るのがやっとだったそうだ。そして一台はシン達よりも先に彼の元を訪れ、使用を契約したハオランに渡しているため、シン達が使えるのは残りの二台。
一応ボードは二人までなら乗れると言うので、ツバキも含めた四人 へんせいの彼らにとってはギリギリの台数だった。
「ミア、アンタは見てただけで乗ったことがねぇ・・・だろ?船の操縦はこの辺で切り上げて、先にアンタが練習するといい」
「分かった、先に使わせて貰うよ」
船からボードに乗ったミアがそのまま海へ滑り降りると、シン達が立ち上がるだけでも苦労していたボードに難なく乗って、バランスを保っていた。遠目で見ていただけにしてはやけに上手く乗りこなしている。彼女の俊敏さが運動神経に反映され、それを実現させているのだろうか。
「上手いもんだな。俺達は海上のボードに立つだけでも苦労してたのに、こうもあっさりと・・・」
「彼女なら何でもそつなくこなしそうだ。出会った時からそんなイメージだったな私は」
ミアのボード捌きに感心した様子でその姿を眺める二人。それを聞いたツバキが、彼女の上達の速さが何故のものなのか知った様子でシン達に話そうとする。
「なんだ、アンタら知らなかったのか?実は・・・」
「おいッ!・・・余計な口叩いてないで操縦を教えとけよ」
少年の言葉を遮るように、慌てて割って入るミアの声が少し離れた場所から聞こえてくる。言いかけた言葉を飲み込み、少年は一度目を瞑りながら口角を上げると、そのまま何事もなかったかのように二人への指導に戻った。
ツバキの指導を聞きながら、遠目にミアの方をチラッと見てみると、彼女は小声で何かを言いながら少しだけ頬を赤らめている様にも見えた。
シンとツクヨは知らないことだが、昨晩二人が夢中になってボードの練習をしていたすぐ翌日。二人が疲労から熟睡している間に、ミアは早朝に一人でツバキに頼み、二人に内緒でボードの練習をしていたのだ。
明日のレースに間に合わせるように、要点だけをしっかりと身につけていく一行は、その後も休む暇もなく練習を繰り返し、レースに疲れを持ち越さないよう早めに就寝する。
そしていよいよ、レース当日の時がやって来る。
「ここらでいいだろう・・・。この辺りは俺が試し乗りに良く使ってる場所だから、じじぃに怪しまれることもねぇ筈さ。さぁ!とっとと操縦を覚えて貰うぜ!」
海上で一度エンジンを切ると、そこで実際に操作をしながらエンジンの掛け方や操縦、停止の仕方までざっくりと三人にやらせていく。彼自身がそうだったのかは分からないが、口で説明されるよりも、実際に触らせるといったやり方がウィリアム達の教え方のようで、ひたすら同じような操作を繰り返しやらされていた。
「船本体の操縦はそれほど重要じゃねぇ。俺達にとって重要なのはボードの方だからな。どの道船の操縦が上手くなったところで、他の奴らには遠く及ばねぇからな・・・。そんな単純なら誰でも操縦ぐらい出来てるさ」
スタートの時点で他のチームから遅れを取ってしまっているシン達にとって、船の操縦など最悪の事態になった時用の応急処置だという少年は、他のチームにないモノでレースに挑んで行こうと言い出した。
それこそ彼の船に積んである特殊な細工を施してあるボードであり、マクシムとの会話でも言っていた最新技術なのだろう。シンとツクヨは既にその技術を体験しており、ミアも体験こそしてはいないものの見てはいた。
乗る者のスキルに呼応する特殊なボード。確かにこれがあれば様々な応用が効きそうなものだが、勿論このボードの操縦にも慣れておかなければならない。故に少年は船の操縦など早々に切り上げ、シン達にはボードの練習に取り掛かって欲しかったのだ。
「俺達の本命はコイツさ!他の奴らが持たねぇ技術で、劣っている部分を補う。しかもただ補うだけじゃねぇ。コイツなら十二分に勝負出来る性能がある!・・・まぁ、一台はハオランの野郎に渡しちまったから数は限られるが・・・」
ボードに施された特殊な加工には、希少価値の高い非情にレアな素材が使われており、彼が入手できたものでは三台作るのがやっとだったそうだ。そして一台はシン達よりも先に彼の元を訪れ、使用を契約したハオランに渡しているため、シン達が使えるのは残りの二台。
一応ボードは二人までなら乗れると言うので、ツバキも含めた四人 へんせいの彼らにとってはギリギリの台数だった。
「ミア、アンタは見てただけで乗ったことがねぇ・・・だろ?船の操縦はこの辺で切り上げて、先にアンタが練習するといい」
「分かった、先に使わせて貰うよ」
船からボードに乗ったミアがそのまま海へ滑り降りると、シン達が立ち上がるだけでも苦労していたボードに難なく乗って、バランスを保っていた。遠目で見ていただけにしてはやけに上手く乗りこなしている。彼女の俊敏さが運動神経に反映され、それを実現させているのだろうか。
「上手いもんだな。俺達は海上のボードに立つだけでも苦労してたのに、こうもあっさりと・・・」
「彼女なら何でもそつなくこなしそうだ。出会った時からそんなイメージだったな私は」
ミアのボード捌きに感心した様子でその姿を眺める二人。それを聞いたツバキが、彼女の上達の速さが何故のものなのか知った様子でシン達に話そうとする。
「なんだ、アンタら知らなかったのか?実は・・・」
「おいッ!・・・余計な口叩いてないで操縦を教えとけよ」
少年の言葉を遮るように、慌てて割って入るミアの声が少し離れた場所から聞こえてくる。言いかけた言葉を飲み込み、少年は一度目を瞑りながら口角を上げると、そのまま何事もなかったかのように二人への指導に戻った。
ツバキの指導を聞きながら、遠目にミアの方をチラッと見てみると、彼女は小声で何かを言いながら少しだけ頬を赤らめている様にも見えた。
シンとツクヨは知らないことだが、昨晩二人が夢中になってボードの練習をしていたすぐ翌日。二人が疲労から熟睡している間に、ミアは早朝に一人でツバキに頼み、二人に内緒でボードの練習をしていたのだ。
明日のレースに間に合わせるように、要点だけをしっかりと身につけていく一行は、その後も休む暇もなく練習を繰り返し、レースに疲れを持ち越さないよう早めに就寝する。
そしていよいよ、レース当日の時がやって来る。
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