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尽きる事なき闘争心
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徐々に火の手が回る囮船の甲板に倒れる人物を確認しようと、シルヴィが目を凝らす。すると、這いずって移動して来たであろう人物の後ろに立つ、もう一人のシルエットが燃ゆる炎の奥に見える。
「ッ・・・!」
必死の思いで這いずり救いを求めるルシアンは、背後に歩み寄る影の存在にまだ気付いていないようだ。意識が朦朧とし、視覚や聴覚といった器官がまともに機能していないのだ。
ゆらゆらと力無く、ルシアンを目指して歩み寄るシルエット。遠目からでは、その影が味方のものであるのか敵のものであるのか判別がつかない。しかし、それもルシアンへ接近することで様子が変わってくる。
もしその影が味方のものであるのならば、倒れているルシアンに何らかのアクションを起こしてもいい筈なのだが、彼の元まで辿り着くとその人影は立ち止まり、まるでトドメでも刺すかのように、倒れるルシアンに手をかざそうとしていたのだ。
「あれは味方じゃねぇッ!クソッ・・・間に合えッ!!」
シルヴィは再び鎖と手斧の投擲武器を取り出すと、最低限の回転で遠心力を溜め込み、ルシアンを狙う人影に向けて投げ放つ。最初の一投に加え、距離は近くなったものの、投擲に必要な予備動作を十分に確保出来ず、飛距離や回転数のみならず威力そのもの自体も大きく下がってしまった。
それでも、ルシアンに手を加えられるまでの時間を稼げればそれで良い。大した攻撃にならなかった分、船との距離は既にシルヴィの跳躍で乗り込めるくらいのものにまで達していたからだ。
「直接乗り込んで奴を叩くッ!お前は直ぐに船を脱出できるように、ボードを横につけて待機しててくれッ!」
グッとボードの上で、跳躍のため足に力を溜めるシルヴィを引き止めるように声をかけるシン。距離が近くなったとはいえ、病み上がりの身体という条件だけでなく、足場の悪いボードの上だ。果たして、彼女本来の力で飛ぶことが出来るのだろうか。
「まッ待て!こんな距離をその身体で飛べるのか?」
囮船との距離はシルヴィが倒れる前、敵前線の船へ乗り込んだ時よりも遠い。とてもじゃないが、届くとは到底思えない。しかし、彼女には到達出来るという確たるものと自信があるように見受けられる。
ルシアンの救出で距離が離れていて忘れていたが、その自信の正体はシンも知っているもの。そして何より彼にもその効果が乗っている。
「今度は一人じゃねぇからな・・・。見せてやるよ、グレイス海賊団の戦い方ってやつをよぉッ!!」
二人を乗せたボードが一瞬、グンと海へと沈むと彼女は宙を舞い囮船へと飛んで行った。その高さや飛距離から見て、これなら間違いなく届くであろうと予感させるものが感じられる。そこで初めてシンは思い出した。
彼女の無謀を確たるものへと昇華している正体。それは彼女が絶対の信頼を送るグレイスの能力。ダンサークラスによる複数のステータス向上効果、所謂“バフ”が盛られていることによるものだった。
「そうか!グレイスの・・・」
彼女が向かうよりも先に、船に乗り込んでいった投擲武器は狙い通りルシアンの元で立っていた人影に向かって飛んでいく。この調子であれば問題なく当たるだろう。シンもシルヴィもそう思っていた。
だが、狙われていた事を知ってか知らずかその人影は目前にまで迫った投擲を、それまでの動きからは想像も出来ない動きで避ける。人影の驚くべき身体能力はそれだけに留まらず、回転する投擲武器の中に腕を突っ込み、自らの腕に巻き付けていく。
次第に迫って来た鎖の端に括り付けられた手斧を掴むと、もう片方の手斧が身体に刺さろうがお構い無しに、手にした武器を大きく振りかぶり、這いずるルシアンの頭部目掛けて振り下ろした。
「ッ・・・!」
必死の思いで這いずり救いを求めるルシアンは、背後に歩み寄る影の存在にまだ気付いていないようだ。意識が朦朧とし、視覚や聴覚といった器官がまともに機能していないのだ。
ゆらゆらと力無く、ルシアンを目指して歩み寄るシルエット。遠目からでは、その影が味方のものであるのか敵のものであるのか判別がつかない。しかし、それもルシアンへ接近することで様子が変わってくる。
もしその影が味方のものであるのならば、倒れているルシアンに何らかのアクションを起こしてもいい筈なのだが、彼の元まで辿り着くとその人影は立ち止まり、まるでトドメでも刺すかのように、倒れるルシアンに手をかざそうとしていたのだ。
「あれは味方じゃねぇッ!クソッ・・・間に合えッ!!」
シルヴィは再び鎖と手斧の投擲武器を取り出すと、最低限の回転で遠心力を溜め込み、ルシアンを狙う人影に向けて投げ放つ。最初の一投に加え、距離は近くなったものの、投擲に必要な予備動作を十分に確保出来ず、飛距離や回転数のみならず威力そのもの自体も大きく下がってしまった。
それでも、ルシアンに手を加えられるまでの時間を稼げればそれで良い。大した攻撃にならなかった分、船との距離は既にシルヴィの跳躍で乗り込めるくらいのものにまで達していたからだ。
「直接乗り込んで奴を叩くッ!お前は直ぐに船を脱出できるように、ボードを横につけて待機しててくれッ!」
グッとボードの上で、跳躍のため足に力を溜めるシルヴィを引き止めるように声をかけるシン。距離が近くなったとはいえ、病み上がりの身体という条件だけでなく、足場の悪いボードの上だ。果たして、彼女本来の力で飛ぶことが出来るのだろうか。
「まッ待て!こんな距離をその身体で飛べるのか?」
囮船との距離はシルヴィが倒れる前、敵前線の船へ乗り込んだ時よりも遠い。とてもじゃないが、届くとは到底思えない。しかし、彼女には到達出来るという確たるものと自信があるように見受けられる。
ルシアンの救出で距離が離れていて忘れていたが、その自信の正体はシンも知っているもの。そして何より彼にもその効果が乗っている。
「今度は一人じゃねぇからな・・・。見せてやるよ、グレイス海賊団の戦い方ってやつをよぉッ!!」
二人を乗せたボードが一瞬、グンと海へと沈むと彼女は宙を舞い囮船へと飛んで行った。その高さや飛距離から見て、これなら間違いなく届くであろうと予感させるものが感じられる。そこで初めてシンは思い出した。
彼女の無謀を確たるものへと昇華している正体。それは彼女が絶対の信頼を送るグレイスの能力。ダンサークラスによる複数のステータス向上効果、所謂“バフ”が盛られていることによるものだった。
「そうか!グレイスの・・・」
彼女が向かうよりも先に、船に乗り込んでいった投擲武器は狙い通りルシアンの元で立っていた人影に向かって飛んでいく。この調子であれば問題なく当たるだろう。シンもシルヴィもそう思っていた。
だが、狙われていた事を知ってか知らずかその人影は目前にまで迫った投擲を、それまでの動きからは想像も出来ない動きで避ける。人影の驚くべき身体能力はそれだけに留まらず、回転する投擲武器の中に腕を突っ込み、自らの腕に巻き付けていく。
次第に迫って来た鎖の端に括り付けられた手斧を掴むと、もう片方の手斧が身体に刺さろうがお構い無しに、手にした武器を大きく振りかぶり、這いずるルシアンの頭部目掛けて振り下ろした。
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