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各々の目的の為に
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デイヴィスの計画を聞き、彼の中で情報を吟味しているのか、腕を組み目を閉じてしまうツバキ。彼の返事を待つデイヴィスが視線をシン達の方へ向けるが、その計画が現実的であるかはツバキの方が正しい判断を下せるだろう。
助け舟を求める視線に、ミアもツクヨも目を閉じ首を横に振りお手上げといった様子で何も口を出すことはしなかった。だがシンだけは、デイヴィスにとってプラスとなり得るであろう発言をした。
「ツバキ・・・。あのボードと俺のスキルがあれば、誰にも気づかれることなくキングの船に近づくことが出来る。デイヴィスを送り届けるだけなら、俺達の存在がキング達に知られることはないんじゃないか?」
シンの言葉を聞き、ツバキが目を開ける。通常であればこんな危険な計画に手を貸すなど、受けるメリットが無いはず。それなのに何故か肯定的な発言をするシンに、彼は疑問を抱かざるを得なかった。
「何故だ?」
「・・・え?」
「何故こんな無謀な計画に手を貸そうとするんだよ。キングがどうなろうと、俺達には何の関係もないことだろ?優勝候補を一つ潰したところで、レースでの敵は他にもいる・・・。人脈が広く、何を考えているか分からんキングなんかに関わったって、ろくなことにはならない筈だろ」
ぐうの音も出ない程の正論。何処まで世界に根を張っているか分からないキングの組織を刺激することは、藪を突いて蛇を出すようなもの。彼の命を狙って、良い事など何一つ無い。そう、普通の人間であれば・・・。
シン達の場合、キングを殺そうが生かそうが、彼の組織に命を狙われるか全世界から指名手配されるかのどちらかしかないのだ。それならば一筋の希望に望みを乗せ、シン達の犯した罪を知るであろうキングの首を討ち取り、口を封じてしまえればこれまで通り、WoFの世界での目的を追うことが出来る。
シンの中でツクヨの言葉が蘇る。後顧の憂いを断つことは、これからの彼らの人生においても重要なことになる。そのことがシンの胸中で大きなポイントとなり、デイヴィスの計画が稀に訪れるチャンスのように思えて仕方がなかった。
「・・・グラン・ヴァーグの酒場でキングに会った・・・」
「なッ・・・!?キング本人と会ったのか!?」
組織のボスであるキングが、レースの会場に訪れていることは別段珍しいことでもなく、当たり前のことといえば当たり前のことなのだが、彼の活動を快く思っていない連中が居るのも事実。
他の海賊達に比べ、彼の命を狙う者は多い。そんな人物であれば、公の場に姿を現すのは極力避けたいと思うのが普通だろう。だが酒場で会った彼は、とても普通だとは思えなかった。
それはキングが異常者であるという意味ではなく、いつ何時に命を狙われても平気だという余裕が垣間見えたからだ。故にボディーガードの付き人も付けず、女を連れ回り派手な装いに身を包み遊び倒す程の振る舞いが出来るのではないだろうか。
そんな人物に弱みを握られていれば、気が気ではないだろう。いつキングから情報が漏れるか分からない。ふとした瞬間に命を狙われるなど、堪ったものではない。
「そこで奴が、俺達のことを知っているということを聞いた・・・」
「・・・?それが何か問題でもあるのか?」
「奴が俺達の弱みを握っている可能性があるんだ・・・。だから、できれば口を封じておきたいと思ってる・・・」
神妙な面持ちで話すシンの表情を見て、ただ事ではないことを悟るツバキ。どうやらその弱みとやらは、クラスや弱点を知られているなどのような程度の知れたものではなく、彼らの命を脅かすものであることが窺えた。
だからこそ彼は、メリットのないデイヴィスの計画に賛成的であったのだ。ただならぬ事情を察したツバキは、シンの言葉も含め更に頭を悩ませた。しかしながら、ここまでのシン達の活躍も決して侮れない成果を生んでいる。
ツバキの売名に力を貸しているのは彼らだけではない。チン・シー海賊団の最大戦力であるハオランもまた、彼のボードを使いシン達の先を行き、レイド戦が行われているであろう場所まで向かっている。
そして何よりも大きいのは、レースで生き延びていくことにおいて、協力な同盟を結べたことだ。優勝候補とまで称される大船団を率いるチン・シー海賊団に加え、規模こそ彼女程ではないが十分過ぎる程の戦力を持つグレイス海賊団。
例えレースで上位に入れなくとも、ハオランをバックアップすることに全力を注げば、ツバキの作り出したボードが一躍世間を賑わせることに繋がるだろう。勿論、ハオランへの協力に力を注げば、チン・シー海賊団の援護や救助も得られる筈だ。
つまり、例えシン達がレースで活躍出来なくなろうとも、ハオランを勝たせればツバキの目的は一応達成されることになる。最善をいえば、自らが乗る船で優勝することが一番望ましいことではあるが、彼の技術力を世界へ示せば、師匠であるウィリアムもツバキのエンジニアとしての実力を、認めざるを得なくなるに違いない。
いろいろな可能性に思考を巡らせ、ツバキは漸くその口を開く。
「・・・分かった。コイツの無謀な計画に協力しても良い。但し、俺達が計画に加担していることを、キングの組織に知られないことが条件だ。面倒ごとに巻き込まれることだけは御免だからな・・・」
「ツバキ・・・」
「それに、俺達の優勝が絶望的になったとしても、協力を得ることが出来たチン・シー海賊団のハオランを優勝させちまえば、俺の目的は果たせるしな・・・。最悪、キングの組織と一戦交えることになったら、あの女を頼るのも一つの手かもな。アイツらもこっちに恩があるんだ、無碍には出来ねぇ筈だろ」
これでツクヨに続き、ツバキの賛成も得ることが出来た。ミアは元よりシンに決定権を委ねると言っており、シン自身もデイヴィスの計画には賛成派だった。これで仲間達の意見は一致し、デイヴィスの計画への協力を決断することが出来る。
「意見は纏まったようだな?・・・そんじゃぁ、早速返事を聞かせてもらおうか」
「あぁ、アンタのキング暗殺計画に協力しよう・・・。だが当初の予定通り、アンタをキングの乗る船に潜入させるだけだが・・・。それで構わないか?」
シンの決断に満足そうな笑みを浮かべたデイヴィスは、二つ返事で彼の申し出を了承した。
「勿論だとも!協力の内容を提示したのは俺だからな。それ以上のことはしなくていいさ。俺をキングの元へ連れてってくれたら、アンタは直ぐに姿を眩ませてくれて構わない」
そういうと彼は、シンに手を差し出す。計画への協力を感謝するのと共に、一緒に互いの目的を達成させようと結束の握手を交わす。
助け舟を求める視線に、ミアもツクヨも目を閉じ首を横に振りお手上げといった様子で何も口を出すことはしなかった。だがシンだけは、デイヴィスにとってプラスとなり得るであろう発言をした。
「ツバキ・・・。あのボードと俺のスキルがあれば、誰にも気づかれることなくキングの船に近づくことが出来る。デイヴィスを送り届けるだけなら、俺達の存在がキング達に知られることはないんじゃないか?」
シンの言葉を聞き、ツバキが目を開ける。通常であればこんな危険な計画に手を貸すなど、受けるメリットが無いはず。それなのに何故か肯定的な発言をするシンに、彼は疑問を抱かざるを得なかった。
「何故だ?」
「・・・え?」
「何故こんな無謀な計画に手を貸そうとするんだよ。キングがどうなろうと、俺達には何の関係もないことだろ?優勝候補を一つ潰したところで、レースでの敵は他にもいる・・・。人脈が広く、何を考えているか分からんキングなんかに関わったって、ろくなことにはならない筈だろ」
ぐうの音も出ない程の正論。何処まで世界に根を張っているか分からないキングの組織を刺激することは、藪を突いて蛇を出すようなもの。彼の命を狙って、良い事など何一つ無い。そう、普通の人間であれば・・・。
シン達の場合、キングを殺そうが生かそうが、彼の組織に命を狙われるか全世界から指名手配されるかのどちらかしかないのだ。それならば一筋の希望に望みを乗せ、シン達の犯した罪を知るであろうキングの首を討ち取り、口を封じてしまえればこれまで通り、WoFの世界での目的を追うことが出来る。
シンの中でツクヨの言葉が蘇る。後顧の憂いを断つことは、これからの彼らの人生においても重要なことになる。そのことがシンの胸中で大きなポイントとなり、デイヴィスの計画が稀に訪れるチャンスのように思えて仕方がなかった。
「・・・グラン・ヴァーグの酒場でキングに会った・・・」
「なッ・・・!?キング本人と会ったのか!?」
組織のボスであるキングが、レースの会場に訪れていることは別段珍しいことでもなく、当たり前のことといえば当たり前のことなのだが、彼の活動を快く思っていない連中が居るのも事実。
他の海賊達に比べ、彼の命を狙う者は多い。そんな人物であれば、公の場に姿を現すのは極力避けたいと思うのが普通だろう。だが酒場で会った彼は、とても普通だとは思えなかった。
それはキングが異常者であるという意味ではなく、いつ何時に命を狙われても平気だという余裕が垣間見えたからだ。故にボディーガードの付き人も付けず、女を連れ回り派手な装いに身を包み遊び倒す程の振る舞いが出来るのではないだろうか。
そんな人物に弱みを握られていれば、気が気ではないだろう。いつキングから情報が漏れるか分からない。ふとした瞬間に命を狙われるなど、堪ったものではない。
「そこで奴が、俺達のことを知っているということを聞いた・・・」
「・・・?それが何か問題でもあるのか?」
「奴が俺達の弱みを握っている可能性があるんだ・・・。だから、できれば口を封じておきたいと思ってる・・・」
神妙な面持ちで話すシンの表情を見て、ただ事ではないことを悟るツバキ。どうやらその弱みとやらは、クラスや弱点を知られているなどのような程度の知れたものではなく、彼らの命を脅かすものであることが窺えた。
だからこそ彼は、メリットのないデイヴィスの計画に賛成的であったのだ。ただならぬ事情を察したツバキは、シンの言葉も含め更に頭を悩ませた。しかしながら、ここまでのシン達の活躍も決して侮れない成果を生んでいる。
ツバキの売名に力を貸しているのは彼らだけではない。チン・シー海賊団の最大戦力であるハオランもまた、彼のボードを使いシン達の先を行き、レイド戦が行われているであろう場所まで向かっている。
そして何よりも大きいのは、レースで生き延びていくことにおいて、協力な同盟を結べたことだ。優勝候補とまで称される大船団を率いるチン・シー海賊団に加え、規模こそ彼女程ではないが十分過ぎる程の戦力を持つグレイス海賊団。
例えレースで上位に入れなくとも、ハオランをバックアップすることに全力を注げば、ツバキの作り出したボードが一躍世間を賑わせることに繋がるだろう。勿論、ハオランへの協力に力を注げば、チン・シー海賊団の援護や救助も得られる筈だ。
つまり、例えシン達がレースで活躍出来なくなろうとも、ハオランを勝たせればツバキの目的は一応達成されることになる。最善をいえば、自らが乗る船で優勝することが一番望ましいことではあるが、彼の技術力を世界へ示せば、師匠であるウィリアムもツバキのエンジニアとしての実力を、認めざるを得なくなるに違いない。
いろいろな可能性に思考を巡らせ、ツバキは漸くその口を開く。
「・・・分かった。コイツの無謀な計画に協力しても良い。但し、俺達が計画に加担していることを、キングの組織に知られないことが条件だ。面倒ごとに巻き込まれることだけは御免だからな・・・」
「ツバキ・・・」
「それに、俺達の優勝が絶望的になったとしても、協力を得ることが出来たチン・シー海賊団のハオランを優勝させちまえば、俺の目的は果たせるしな・・・。最悪、キングの組織と一戦交えることになったら、あの女を頼るのも一つの手かもな。アイツらもこっちに恩があるんだ、無碍には出来ねぇ筈だろ」
これでツクヨに続き、ツバキの賛成も得ることが出来た。ミアは元よりシンに決定権を委ねると言っており、シン自身もデイヴィスの計画には賛成派だった。これで仲間達の意見は一致し、デイヴィスの計画への協力を決断することが出来る。
「意見は纏まったようだな?・・・そんじゃぁ、早速返事を聞かせてもらおうか」
「あぁ、アンタのキング暗殺計画に協力しよう・・・。だが当初の予定通り、アンタをキングの乗る船に潜入させるだけだが・・・。それで構わないか?」
シンの決断に満足そうな笑みを浮かべたデイヴィスは、二つ返事で彼の申し出を了承した。
「勿論だとも!協力の内容を提示したのは俺だからな。それ以上のことはしなくていいさ。俺をキングの元へ連れてってくれたら、アンタは直ぐに姿を眩ませてくれて構わない」
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