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浮遊する氷塊
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目覚めた蟒蛇は再び身体を動かし始め、荒れた海域に海流を作り出す。キング海賊団の船員達が作り上げた氷像は、蟒蛇の身体に削り取られ氷塊が次々に海へと落ちて行く。
そして蟒蛇は、海域にいる海賊達に自分が魔法の力をその身に宿した、“魔物“であることを思い出させた。
砕けた氷塊が、蟒蛇と同じ青白い光に包まれると、ゆっくりと海から取り除かれるように上空へと持ち上げられ、浮遊し始めたのだ。明らかに自然現象ではない。巨体を活かした芸当というものとも違う。
浮遊する氷塊の数やその大きさから、これほど強力で広範囲の魔法を一人で行える人間などそうはいない。キング海賊団の術師達のように、複数人で協力して魔法を発動すれば不可能ではないが、この状況でそんなことをしている者など、この海域にはいなかった。
「船長ッ!モンスターの様子がッ・・・!」
「おぃおぃおぃ・・・マジかよ・・・。全く、休ませるつもりは無いってことかい?」
暗雲広がる空に、荒れ狂う海。そして巨大な蟒蛇が自分の縄張りを鬱陶しく漂う船を睨む中、周囲の大気中には氷の塊が無数に浮遊するという光景を目の当たりにして、次に蟒蛇が何をやらかすのかを想像したキングは、その光景に佇む蟒蛇の巨大な瞳から目を逸らさない。
「お前らは何も心配するこたぁ~ねぇよ。先ずは指示通りに動けぇ!」
キングは船員達の士気を落とさぬよう声をかける。その中で一人の船員が、キングが蟒蛇から離れる途中で拾って来たモノについて尋ねた。
「・・・船長・・・これは一体どうするので・・・?」
船員の言った“拾いモノ“に対し、僅かに蟒蛇から視線を向けたキングは、口角を上げて不敵な笑みを浮かべて答える。
「そいつはなぁ~・・・。この後の橋渡しに使うんだよ。だ・か・ら!丁重にしまっておいてねぇ~」
偶然見つけてしまった船員がキングの指示を受け、彼の持ち込んだモノを船内へ運ぶ。橋渡しとだけ告げられ、何に使われるのかその用途も知らぬまま、まるで高価なガラス細工でも運ぶかのように慎重に安全な場所へと持っていった。
船の外では、自分の部隊へ戻る為準備を進めていたジャウカーンが、彼専用に改造された小さな船に乗り、移動を開始していた。キングを乗せている船も蟒蛇からなるべく距離を取る為、全力で後退していた。
「そんじゃぁボスッ!また後でぇーッ!」
ジャウカーンの乗る船は、ガスを利用した推進力を使っており、後方から吹き出すガスに彼の炎を点火して爆風を利用し、凄まじい勢いでキングの船から離れて行った。ジャウカーンを見送り、キングは蟒蛇の攻撃に備える。
何の為に氷塊を魔力で持ち上げたのか。そんなもの、考えるまでもなかった。打ち砕き放置するのではなく、あの魔物はそれを利用しようというのだろう。つまり蟒蛇は、持ち上げた氷塊を自分の海域を汚す有象無象共に投げてよこそうとしているのだ。
一方、先陣を切り、蟒蛇の攻撃で態勢を崩されていたエイヴリー海賊団は、キングが蟒蛇の相手を引き受けている間に、海に振り落とされていた船員達の殆どを回収し、戦力を整え蟒蛇の変化した姿と、奥に広がるいつの間にか現れた、浮遊する氷塊による攻撃に備える。
「あらぁ?いつの間にあんな物が出来たのかしら・・・?」
「さぁて・・・どっちの仕業かねぇ」
「アンタはどっちの仕業だと思うの?ロイク」
「あのデカブツじゃないことを祈る・・・。あんな巨体であんなマネまでされちゃぁたまったモンじゃない。想像するだけでも寒気がする」
「・・・それ、向こうの空気が流れて来てるだけじゃないの?」
上空で戦場の様子を窺っていたリーズとロイクが、戦いの真っ只中にいるとは思えないような、落ち着いた会話を繰り広げていた。リーズの一言でロイクは黙りこくり、上空から見下ろした戦況をエイヴリーに伝えに降下していく。
リーズは、言い負かされたかのように船へ降りていったロイクを眺めながら、タクティシャンのスキルで大きく変化させた蝙蝠の上で、妖艶に足を組んでいた。船上ではエイヴリーが、遠目に見える魔力を帯びた氷塊を眺め、いつでも迎撃出来る準備を整えていた。
「様子はどうだった、ロイク」
「キングはモンスターの元を離れたようです。一隻だけ抜きん出た船がありますが、恐らくそれがキングの乗る船でしょう」
「氷塊の発生源は分かったか?」
「いえ・・・俺が上空に上がってみた時には既に、海面が凍っていました。キングの船団によるものか、モンスターによるものかは分かりませんでした・・・」
申し訳なさそうにするロイクだったが、エイヴリーは彼を責める気など更々なかった。寧ろその働きを褒めたエイヴリー。ロイクは未だに心の中に引っ掛かっている、あることをエイヴリーに尋ねた。
「まだ・・・マクシムの行方は分かりませんか・・?」
マクシムと共に、蟒蛇の攻撃を防いだロイクは責任を感じていた。防衛の手段はマクシムの提案だったが、移動手段はロイクの召喚したドラゴンだった。数を増やしたり、蟒蛇の気を逸させる為に攻撃を仕掛けたりと、何かもっと出来ることがあったのではないかと思っていた。
「今は目の前のことに集中しろ。アイツはそう簡単にくたばるような奴じゃぁねぇ」
「えぇ・・・そう、します・・・」
エイヴリーは、蟒蛇による氷塊の攻撃を乗り切るのにはロイクの力が必要だと励まし、彼に迎撃の為のドラゴンを召喚させる。
そして蟒蛇は、海域にいる海賊達に自分が魔法の力をその身に宿した、“魔物“であることを思い出させた。
砕けた氷塊が、蟒蛇と同じ青白い光に包まれると、ゆっくりと海から取り除かれるように上空へと持ち上げられ、浮遊し始めたのだ。明らかに自然現象ではない。巨体を活かした芸当というものとも違う。
浮遊する氷塊の数やその大きさから、これほど強力で広範囲の魔法を一人で行える人間などそうはいない。キング海賊団の術師達のように、複数人で協力して魔法を発動すれば不可能ではないが、この状況でそんなことをしている者など、この海域にはいなかった。
「船長ッ!モンスターの様子がッ・・・!」
「おぃおぃおぃ・・・マジかよ・・・。全く、休ませるつもりは無いってことかい?」
暗雲広がる空に、荒れ狂う海。そして巨大な蟒蛇が自分の縄張りを鬱陶しく漂う船を睨む中、周囲の大気中には氷の塊が無数に浮遊するという光景を目の当たりにして、次に蟒蛇が何をやらかすのかを想像したキングは、その光景に佇む蟒蛇の巨大な瞳から目を逸らさない。
「お前らは何も心配するこたぁ~ねぇよ。先ずは指示通りに動けぇ!」
キングは船員達の士気を落とさぬよう声をかける。その中で一人の船員が、キングが蟒蛇から離れる途中で拾って来たモノについて尋ねた。
「・・・船長・・・これは一体どうするので・・・?」
船員の言った“拾いモノ“に対し、僅かに蟒蛇から視線を向けたキングは、口角を上げて不敵な笑みを浮かべて答える。
「そいつはなぁ~・・・。この後の橋渡しに使うんだよ。だ・か・ら!丁重にしまっておいてねぇ~」
偶然見つけてしまった船員がキングの指示を受け、彼の持ち込んだモノを船内へ運ぶ。橋渡しとだけ告げられ、何に使われるのかその用途も知らぬまま、まるで高価なガラス細工でも運ぶかのように慎重に安全な場所へと持っていった。
船の外では、自分の部隊へ戻る為準備を進めていたジャウカーンが、彼専用に改造された小さな船に乗り、移動を開始していた。キングを乗せている船も蟒蛇からなるべく距離を取る為、全力で後退していた。
「そんじゃぁボスッ!また後でぇーッ!」
ジャウカーンの乗る船は、ガスを利用した推進力を使っており、後方から吹き出すガスに彼の炎を点火して爆風を利用し、凄まじい勢いでキングの船から離れて行った。ジャウカーンを見送り、キングは蟒蛇の攻撃に備える。
何の為に氷塊を魔力で持ち上げたのか。そんなもの、考えるまでもなかった。打ち砕き放置するのではなく、あの魔物はそれを利用しようというのだろう。つまり蟒蛇は、持ち上げた氷塊を自分の海域を汚す有象無象共に投げてよこそうとしているのだ。
一方、先陣を切り、蟒蛇の攻撃で態勢を崩されていたエイヴリー海賊団は、キングが蟒蛇の相手を引き受けている間に、海に振り落とされていた船員達の殆どを回収し、戦力を整え蟒蛇の変化した姿と、奥に広がるいつの間にか現れた、浮遊する氷塊による攻撃に備える。
「あらぁ?いつの間にあんな物が出来たのかしら・・・?」
「さぁて・・・どっちの仕業かねぇ」
「アンタはどっちの仕業だと思うの?ロイク」
「あのデカブツじゃないことを祈る・・・。あんな巨体であんなマネまでされちゃぁたまったモンじゃない。想像するだけでも寒気がする」
「・・・それ、向こうの空気が流れて来てるだけじゃないの?」
上空で戦場の様子を窺っていたリーズとロイクが、戦いの真っ只中にいるとは思えないような、落ち着いた会話を繰り広げていた。リーズの一言でロイクは黙りこくり、上空から見下ろした戦況をエイヴリーに伝えに降下していく。
リーズは、言い負かされたかのように船へ降りていったロイクを眺めながら、タクティシャンのスキルで大きく変化させた蝙蝠の上で、妖艶に足を組んでいた。船上ではエイヴリーが、遠目に見える魔力を帯びた氷塊を眺め、いつでも迎撃出来る準備を整えていた。
「様子はどうだった、ロイク」
「キングはモンスターの元を離れたようです。一隻だけ抜きん出た船がありますが、恐らくそれがキングの乗る船でしょう」
「氷塊の発生源は分かったか?」
「いえ・・・俺が上空に上がってみた時には既に、海面が凍っていました。キングの船団によるものか、モンスターによるものかは分かりませんでした・・・」
申し訳なさそうにするロイクだったが、エイヴリーは彼を責める気など更々なかった。寧ろその働きを褒めたエイヴリー。ロイクは未だに心の中に引っ掛かっている、あることをエイヴリーに尋ねた。
「まだ・・・マクシムの行方は分かりませんか・・?」
マクシムと共に、蟒蛇の攻撃を防いだロイクは責任を感じていた。防衛の手段はマクシムの提案だったが、移動手段はロイクの召喚したドラゴンだった。数を増やしたり、蟒蛇の気を逸させる為に攻撃を仕掛けたりと、何かもっと出来ることがあったのではないかと思っていた。
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